ハナママゴンの雑記帳

ひとり上手で面倒臭がりで出不精だけれど旅行は好きな兼業主婦が、書きたいことを気ままに書かせていただいております。

『大草原のビッチの告白』 ③ “Bunny”

2019-08-19 20:40:15 | ひと

『大草原』ファンの皆さま、長らくお待たせいたして申し訳ございません。

9連休を利用して、連載の続きを書き始めましたので、どうぞご覧くださいませ!

 

*       *       *

 

《  からのつづき 》

 

皆さん覚えてますよね? “Bunny” (邦題: 『ネリーの落馬』) のエピソード。

アリソンによると、『大草原』 ファンと話すとき、例外なく全員が、一番好きなエピソードとしてこれを挙げるのだそうです。

性別、年齢、国籍に関係なく。

ネリーのビッチぶりが特別に光るエピソードでしたよね。

第3シーズンのエピソードのひとつで、アメリカでは1976年10月18日に放映されたようです。

 

クリスマスに大好きな母さんにストーブをプレゼントするため、オルソンさんに愛馬バニーを売ったローラ。

ネリーがバニーを手荒く扱ったため、バニーはある日暴走し、ネリーは落馬します。 意識を取り戻しつつあったとき母親(オルソン夫人)が

「こんなことになったのは、すべてローラのせいよ!」 と言うのを聞き、ローラに意地悪する最高のチャンスが訪れたとほくそ笑むネリー。

脚が動かなくなったフリをし、でも健気を装ってバニーとローラを責めることはせずに、ローラの罪悪感を深めさせます。

その結果ローラはネリーのためにあれこれ駆けずりまわり、宿題を引き受け、好意をもっていた男の子を(ネリーも彼に好意をもっていたため)遠ざけます。

いっぽうネリーは座っているのに飽きてしまい、お人形を抱いて踊っているところを弟のウィリーに見られると、彼を脅して口を封じます(下右)。

  

 ネリーのそんな仮病もとうとうローラの知るところとなり、ローラは 「新鮮な空気は体にいいから」 とネリーを製材工場裏手の丘に連れ出して、

丘の下に位置する池に向かって、車椅子ごとネリーをプッシュ! 悲鳴を上げながら丘を下り、池に落ちたネリーは立ち上がり、ちょうどその場を

通りかかって娘が立ち上がるのを目撃したオルソン夫人は 「奇跡だわ!」 と喜びに満ちた雄叫びを上げて気絶。

珍しく男気を見せたオルソン氏はローラにバニーを返してくれ、ローラは好きな男の子と釣りに行き、町は救われ、

ローラへの復讐を誓うネリーを除いた全員が、その後は幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし。

・・・少なくとも翌週のエピソードまでは。

   

 

実はあのエピソードは、大変な苦労をもって製作されたそうです。 それというのも・・・

撮影が始まるすぐ前に、自分でも信じられないような間抜けさでもって、アリソンはスケートボード中に腕を骨折!

完全に間抜けだったと自認する理由は、

① TV出演者はスケートボードやスカイダイビングなど負傷の危険のあるスポーツはしないことになっている。

② ヘルメットも肘や膝を守るための保護具も一切着けていなかった。

③ 命をかけたエキサイティングなスタントをしていたわけでもなかった。

どうしようかと考えながらスケートボード上に立っていたときに突然転びそうになり、頭から落ちるのを防ぐため咄嗟に腕を出し、

その腕を骨折して大きな石膏のギプスをつける羽目になったのでした。 指の付け根から手首と肘を過ぎて肩の近くまで。

アリソンのエージェントは、 『大草原』 のプロデューサーであるマイケル・ランドンとケント・マックレイに、電話で報告します。

アリソンは腕に小さなギプスをつけています。 なぁに、深刻なものではありません。・・・・・

 

 

アリソンの怪我の程度を見て撮影スケジュールを変更する必要があるか判断するために、ミーティングが開かれました。

皆が彼女に優しく、マイケルは彼女の鈍重さをからかい、じつは喧嘩して怪我をしたのだろうとジョークを飛ばし、ギプスの一番目立つ位置に

真先にサインしました。が、一瞬だけアリソンをしっかりと見据えると、わずかな脅しの響きをこめた真剣な声で、言いました。

「オーケー、でももう二度と君がスケートボードをすることはない・・・ そうだろう?

「も、もちろんです、もう二度とスケートボードはしません、二度と。」

笑顔に戻ったマイケルは、彼女の背中を叩いて「もう行っていいよ。」

しかしながら、彼女が部屋を出てドアを閉めた途端、マイケルの叫び声が聞こえました。

「何てこった!ちっぽけなギプスだと!?あの忌々しいものを見たか?」

続けて机に拳を叩きつける音が数回と、ゴミ箱が蹴飛ばされて部屋を飛んでいく音。

「あんなものをつけられて、一体どうしろっていうんだ?」

次に訪れたのは、静寂と、つぶやき声と、ささやき声。

 

しばらくするとドアが開き、マイケルはいつも通りの笑顔に戻っていました。まるで何事もなかったかのように。

ふたたび部屋に招き入れられたアリソンは、解決方法が見出されたと聞かされます。

“Bunny” のエピソードでは、落馬したネリーが重傷のふりをすることになっているから、ネリーは腕を折ったことにして、

アリソンのギプスは19世紀風のギプスで覆ってしまい、前半部分の撮影を終える。

後半部分は、ネリーの腕が順調に回復し小さなギプスで済むようになってから、カメラのアングルでカバーしつつ撮影する。とのことでした。

しかしマイケルは、アリソンの髪を指で掻き混ぜながら、もう一度、念を押すのでした。

「いいね、スケートボードはもう二度となしだ、わかったね?もしまたスケートボードをして腕を折ったりしたら・・・」

間をおいたマイケルの顔からは、突然チャールズ・インガルスの笑みが掻き消えて:

「・・・もう片方の腕をへし折るからね!」

そして彼は高笑いしました。ジョークです、もちろん。でもアリソンは、スケートボードはひとつきりではない理由でもって、

自分の安全のためには避けるべきだと肝に銘じたのでした。

 

“Bunny” のエピソードのクライマックスは、もちろん、騙されていたことに気づいたローラによる、ネリーへの復讐シーン。

このエピソードが多くの人に愛される理由は、それが名画 『何がジェーンに起こったか?』 を彷彿とさせるからだろうと、アリソンは感じています。

実際のところ、ローラがネリーの車椅子を押して坂を上り始めるや否や、スタッフやキャストから、くすくす笑いやささやき声が漏れ出しました。

「なんてこった、見てみろよ!」 「まるでそっくりだ!」 「ああ、でも車椅子に座っているのは別の方だ!」 「ブランチの復讐だな!」 ・・・

 

まず最初の、小高い丘の上からローラによってネリーが乗った車椅子が突き落とされるシーン。

車椅子の背には、頑丈な鋼鉄のケーブルが取り付けられており、車椅子は少し下っただけで止まりました。

でもアリソン自身と車椅子を繋ぐシートベルトのようなものは何もなかったので、片腕が使いものにならないアリソンは、

使える方の片腕で、車椅子から滑り落ちないよう必死につかまっていたそうです。

 

そして、坂をがたごとと下ってきた車椅子からネリーが飛び出て、池にどぼん!と落ちるシーン。

このシーンは、スタントの女性によって、見事に演じられました。坂道を下る車椅子から振り落とされることなく、カツラを外してしまうことなく、

完璧な宙返りを決めて、怪我ひとつなく、池に飛び込んだ彼女。アリソンは大いに感銘を受けました。

続いて、車椅子に乗ったネリーが坂を下るシーンです。このシーンは、インガルスの家の近くの丘で撮影されました。

丘の斜面は、下った先に池があるわけでもなく、傾斜もずっと緩やかでしたが、悲鳴を上げながら坂を転がり落ちる

アリソンを出来るだけ長く撮影できるよう、やたら長い部分が選ばれました。カメラ用には仮の線路が敷かれましたが、

アリソンが乗った車椅子は、ロープが繋がれているだけ。優先順位は明らかでした: 上等のカメラは、子役の交代よりもずっと高くつく。

岩だらけの丘の斜面を、19世紀風の車椅子はごとごとと下っていきます。当時の車椅子は屋外での使用は想定されていなかったので、

当然シートベルトなどありません。はね上がった車椅子が着地するたびに、アリソンはしたたかに尾てい骨を打ちつけました。

歯をがちがち鳴らし、死にたくない一心で、アリソンは必死に車椅子にしがみついていました。

 

 最後は、池に落ちたネリーが立ち上がるシーンの撮影です。このときアリソンは、まだ骨折の治療用のギプスをつけていました。

このギプスは濡れると分解してしまうため、ゴミ用のビニール袋でしっかり包んで輪ゴムでしっかり留め、その上に19世紀風の添え木をつけました。

さて池ですが、ハンソンさんの製材所の脇にあるあの池は、人工の池で、撮影用に造られたものでした。

実のところ、『大草原』のウォルナット・グローヴは、すべてが作りものでした。あの土地はシミ・ヴァレーという、水が一滴もない砂漠で、

インガルスの家の脇を流れる小川も、製材所の水車を回す小川も、外からポンプで人工的に汲み上げられたものでした。

 人工的な池のため、ネリーが落ちる池の水はよどんで、べとべとした藻でいっぱい。どんなバイキンやパラサイトが居ることか。

その中に全身を浸し、藻をぶらつかせよどんだ水を滴らせ、泣き声を上げながら立ち上がらなければならないのです。

撮影のセッティングを待ちながら、池のほとりに立つマイケルとアリソン。

マイケルは訊ねました。「君の家にプールはあるかい?」

「いいえ?」とアリソン。

「そうか、よかった。」 マイケルは明るく笑いました。 「これの後では、トイレでだって泳げるさ!」

深く息を吸い込み、固く目をつぶって、アリソンは飛び込みました。・・・

池から這い上がったアリソンには、べたべたや藻に加えて、小さなカタツムリまで、髪や体にいくつもくっついていました。

 

 

《  につづく 》

 

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