学校を卒業すると、広く学ぶことがなくなり、遅れた知見をそのまま持ち続けることがある。『現代思想』の10月号、「〈人種〉を考える」を読んでいて、みずからがもつ知見がいかに遅れていたのかを教えられた。
瀬口典子氏の「人種概念の歴史と生物人類学における頭蓋骨多様性研究の進展」を読み、この記述と同様の認識を持っていたことを恥じた。
「半世紀上も前に人種概念が科学的根拠を欠くことが証明されたにもかかわらず、アメリカの警察や司法機関では、依然としてアジア、ヨーロッパ、アフリカの三大陸やFolk taxonomyに基づく時代遅れの人種観が広く浸透している。」
コーカソイド、ネグロイド、モンゴロイドという分類が意味をなさなくなっていて、「20世紀以前、「人種」は固定された不変の生物学的カテゴリーと見なされていた。しかし、現在では「人種」には生物学的な実体がなく、それは実際には社会的、歴史的、政治的な文脈の中で構築されたものであることが明らかになっている。」
人類を多様性を持った存在として、その多様性は「人の移動や遺伝子の流動や遺伝的浮動を通じて地域的な類似性や多様性が生じ、それぞれの集団の独自の歴史が形成された」という理解に到達しているというのだ。
この論文を読んで、専門分野ではないものをきちんと学ぶことが必要だと思った。とにかく、「「人種」概念には生物学的な根拠がない」ということを、しっかりと脳裡に刻んでおかなければならない。