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浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

国際法のルールから見るべきである

2022-05-12 13:54:56 | 国際

 ロシアのウクライナ侵攻に関して雑多な言説が流布している。私は当初から、この事態を国際法の観点から評価すべきであることを書いてきた。しかし流されてくる情報を読むと、国際法の観点をまったく顧慮しない言説が多いことに気づく。

 日本評論社が発行している『法律時報』(2022年5月)の「法律時評」に岩月直樹立教大学教授が「ロシアによるウクライナ軍事侵攻」を書いている。読んでみて、まったく同意できる内容であった。

 すでに私は、この問題に関して国際法学者の松井芳郎名古屋大学名誉教授が記したものを読んでいるが、いずれも同様の見解である。いずれも、ロシアによるウクライナ侵略は、いっさいの正当性をもたない、ということであり、さらにいえば、とくに第2次世界大戦後の国際秩序に対する挑戦であること、は共通理解といえよう。

 岩月論文は、プーチンがウクライナ侵攻の理由として挙げた事項はいずれも否定されることを指摘する。

 まず「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」という東部ウクライナで「独立国」を装っている「両国」は、ロシアによる支援により活動する武装勢力であること、ロシア以外の国家から国家としての承認を得ていないことを指摘する。

 さらに「内戦下において、国家としての実態を備えていない反政府勢力による独立宣言に対し、他国がむやみに国家承認を行うことは「尚早の承認」と呼ばれ、それ自体で違法な干渉行為とされる」と指摘している。

 国家として承認されていない「両国」との「集団的自衛」を、ロシアはウクライナ侵攻の理由としているが、それを「認めることは難しい」。

 また東部ドンバス地方のロシア系住民に対する「ジェノサイド」が行われていると、ロシアは主張するが、国連人権高等弁務官事務所などからそのような事実は報告されていない。逆に、「両国」支配下においてこそ、国連人権高等弁務官事務所の活動が制限されていることが記されているほどだ。

Report on the Human Rights situation in Ukraine

 「ジェノサイド」を根拠に、ウクライナへのロシア軍の侵攻を正当化する言説が流布しているが、その根拠すら怪しいのである。ロシアがいう「ジェノサイド」について、ロシアですら「ジェノサイド条約が定めるものとは異なる」と言明しているほどだ。

 岩月教授は、

ロシア・プーチンの主張、「ロシア帝国の一部であったウクライナがソ連時代にロシアから切り離されたのは大きな過ちであり、そこへ西側諸国が手を伸ばすことによってロシアの安全が大きく脅かされている。ロシアから切り離されたウクライナが国家としての実体を備えたことはなく、西側諸国はその支援の下でウクライナを自らに都合のよい体制へと転換し、NATOをさらに東方へ拡大しようとしている。このようなウクライナからロシアに脅威が及ぼされ続ける限り、ロシアは安心できず、発展することも、存在することもできない」、を例示し、それは「19世紀流の「国の自己保存」の訴えそのものである。国際社会は19世紀末から現在にいたるまでに、戦争違法化、主権平等、武力行使禁止、国際紛争平和的解決、集団的安全保障、人権の国際的保護、強行規範の存在の承認を初めとして共通利益に基礎づけられた国際法と国際秩序を発展させ、築き上げてきた。演説に見られる「自己保存」の主張はそれらを放擲し、正当因が存在すると自らが判断した場合には戦争に訴えることを国に認めていた伝統的国際法の時代に引き戻そうとするものである。」と指弾する。

 ロシアの「国の自己保存」に基づく軍事侵略は、「絶対的に認められない」ことであることを確認していかなければならない、のである。

 ロシアが行ったことは、絶対的な悪である、と私は考える。ウクライナのゼレンスキー政権に問題や瑕疵があったとしても、軍事侵攻したロシアは絶対的に悪なのである。即時ロシアは撤退し、ウクライナに謝罪・賠償・補償し、当然国連の常任理事国から降り(その資格はすでにない)、世界に謝罪しなければいけない。そして世界は、ロシアの蛮行を国際法の条規にしたがって裁かなければならない。

 営々と築き上げられてきた平和を維持する国際法の原則を、ロシアの蛮行によって崩してはならないのだ。

 


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