雑誌を購読していると、なかなか自分の研究が進まない。雑誌に掲載されている文を読んでいると、それに関わるものをさらにさがし出して読むということがあるからだ。だから、なかなかすべてを読むことはできなくなる。それでも、と思い、少しずつ読んでいくのだが、ほぼ読み終わる頃、新しい月になり、『地平』や『世界』の新しい号が送られてくる。しかし、読んでいないと、現在の政治社会状態について、気づきができない。
たとえば、地方から若い女性が東京など首都圏に流れていき、地方に若い女性がいなくなり、結婚できない男性が増えていく・・・・地方は衰退していく、などということが指摘され、何とか対策をたてようと自治体が考えはじめているという。
それに対して、片山善博さんは、政府が推進してきた地方行革を自治体が積極的におこない、役所の正規職員を減らし、非正規に依存するようになったことが原因だという。
浜松市でも、鈴木修の強い要請によって、現在の静岡県知事・鈴木康友は、積極的に市職員の定数削減に励んできた。だから、浜松市役所やその出先で熱心に働いているのは、非正規の女性である。それは図書館も同じである。民間委託していて、それぞれの図書館長は委託された民間会社の社員であるが、実際に働いている司書らはその会社の非正規労働者である。
片山さんは、こう書いている。
政府はこれまで自治体に対して職員定数削減などの地方行革を求め、自治体はそれに応じた。業務が減らない中で定数削減を行うため、正規職員を非正規職員に置き換えたり、公共施設の管理を指定管理制度により民間事業者に委託したりして、名目上でのみ削減した。
いずれにしても、そこで働く人たちは不安定な雇用と低賃金の官製ワーキングプアになる。例えば図書館の司書は本来は知的で魅力のある仕事であり、特に若い女性に人気が高いが、最近ではそれが軒並み官製ワーキングプアと化している。司書資格を得て、ぜひ郷里の図書館で働くことを願う女性がいたとしても、生涯非正規職にとどまるとしたら、きっと二の足を踏むに違いない。
図書館司書に限らない。保育所の保育所しかり、最近では教員の非正規化も目立つ。ともあれ自治体は政府の要請に応えて地方行革に邁進した。政府から行革先進自治体など持ち上げられ、悦に入っていたところ、ふと足元を見たら「女性や若者に選ばれない」地域になっていた。こんな戯画的なことがあちこちで現実に起こっている。
片山さんの言うとおりである。
ただでさえ魅力が少ないところで、非正規労働者としてシコシコと仕事をして生きていくより、東京などで華やかな生活をしてみたい、という気持ちになるのはある意味で当然である。
若い人たちを引き留められる魅力はあるのか、あるいは正規として働く場があるのか、それが地方には問われているのだろう。
国からの要請に素直に従っていったら、地方の状態はさらに悪化する。政府は、ずっと前から、東京一極集中政策をとってきた、その一環として地方で暮らせなくさせてきたのだ。地方行革もその一つであった。
上から言われることに唯々諾々と従うのではなく、自分のアタマで考えろ、ということである。