『東京新聞』の「主役は官僚と産業界」(2012年1月9日)を読み、そうだなと思う。日本の政策は、産業界と官僚が決める。政治家は、官僚と産業界が決定したことをなぞるだけだ。別にここに記された軍事政策だけではない。TPPでも、放射能の除染でも同じだ。彼らはがっちりとスクラムを組み、表面的には「国益」だと思わせる仕草をしながら、自らの利益を確保していく。いつまでたっても庶民は、彼らの利益を提供する働きアリなのだ。
正月三が日が終わり、防衛省に防衛産業の社員が押しかけている。背広組の局長室や陸海空幕僚監部の幕僚長室、部長室を回り、新年のあいさつを交わす。
再就職した背広組幹部や元将官らが水先案内人を務める。先輩が顔を出せば、後輩が門前払いできるはずもない。仕事らしい仕事もないのに現役当時と比べ、七割程度の年収を保障されている彼らの数少ない公式行事のひとつなのだ。
防衛省が毎年一兆円近い武器調達費を支払っている契約高上位二十社に過去十年で三百人以上の将官ら高級幹部が顧問や嘱託として再就職している。「人とカネ」を通じた防衛省と防衛産業の癒着は明らかだ。調達費に天下り幹部の報酬が含まれてはいないか。
民主党政権は出身官庁による再就職あっせんを禁止したはずだが、二〇一〇年防衛省だけで五百二十九人が取引先に再就職した。若年退職者はあっせんできるきまりとはいえ、五十歳も半ばになって若年はない。官僚の軍門にくだった政権の指示など、「何処(どこ)吹く風」といわんばかりだ。
年の瀬に野田内閣は武器輸出三原則を緩め、米国や友好国との武器共同開発・生産に踏み出すことを可能にした。防衛産業からの支持と引き換えに「平和国家」の看板を降ろすというのか。ずる抜けの天下り禁止をみても、この国の主役は官僚であり、産業界であることは明らかだろう。(半田滋)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2012010902000066.html