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からみ・鍰の由来(2) 辞典を引く

2021-02-07 09:23:57 | 趣味歴史推論
 からみ・鍰に関して辞典を引いた。

1. 日本国語大辞典第二版第三巻(小学館 2001)
からみ【鍰】 [名]
 鉱石を溶かして精錬するとき生ずるかす。かなくそ。
 *梅津政景日記-慶長18年(1613)8月6日「其内にからみ御座候を、ゆりわけ、のみばき  のゆりものをは、おけに入、からみをは込に入」
 *日本山海名物図会(1754) 1.銅山床家「石土の湯となりたるをからみといふ」
 *随筆・凌雨漫録(1804-30頃か)「真韛(まぶき)といふは、銅より白め、殻実(カラミ)をぬき取て正味斗りに仕上て」

2. 諸橋大漢和辞典 巻11 (大修館 初版昭和32年 平成元年修訂第二版)
【鍰】クワン、ゲン、ヱン
 ①目方の単位 ㋑100分の3斤 ㋺6両3分の2 ㋩6両
 ②わ、環

3. 新字源 (角川 1968)
【鍰】カン(クワン)
 (形声。 音符爰 ヱン→クワン)
 ①貨幣のめかた。6両
 ②わ(輪)環
 日本語の語義 からみ。鉱石を精錬したときに出るかす。

4. 漢和辞典改訂新版(旺文社 1986)
【鍰】カン(クワン) ゲン
 解字 形声。金と、音を表す爰エン(カンは変わった音)とから成る。
 意味①貨幣の目方。6両(周代の1両は約16g)をいう。
   ②わ(輪)。=環
 国語の語義 からみ。鉱石を精錬したときに出るかす。鉱滓コウシ

5. 新字源 (角川 1968)
【柄】ヘイ ヒヨウ がら
なりたち 形声。木と、音符丙ヘイ(とる意→秉ヘイ)とから成り、手にとる木、「え」の意を表わす。
意味①え。器物のとって。
  ②つか。刀剣の手でにぎるところ。
  ③もと(本)「徳之柄也」
  ④いきおい。権力。「政柄」
  ⑤しろ(代)、材料。「話柄」
日本語の語義 がら。㋐きれ地などのもよう ㋑大きさ。体格。㋒身分。性質。品格。「人柄」

6. 漢和辞典改訂新版(旺文社 1986)
【柄】ヘイ ヒヨウ がら・つか
 解字 形声。木と、音を表す丙ヘイ(握り持つ意→秉ヘイ)とで、木でできた器物のにぎりの部分、「え」の意を表す。
 意味①。器物のえ。取っ手。
   ②つか。刀剣の手で握る処。
   ③支配する力。権力。「政柄」
   ④材料とするもの。「話柄」
 国語の語義 がら。 ㋐織物の模様。㋑大きさ。体格。「大柄おおがら」㋒身分・品格・性質。「人柄」㋓種類。「銘柄」

7. 日本国語大辞典第二版第三巻(小学館 2001)
からみ【辛味】[名]
(形容詞「からい」の語幹に接尾語「み」のついたもの。後に「あじ」を意味する「み(味)」の意識がまじっている)
①からいこと。からさ。ひりひりと舌をさす辛さ。
②食物に辛い味を添えるもの。とうがらし、ワサビ、からし、ショウガ、大根おろし、その他、味覚、嗅覚を刺激する辛さをもったもの。辛味料(しんみりょう)。やくみ。かやく。

考察
1. からみは、慶長18年(1613)までさかのぼれた。梅津政景日記を見てみよう。
2. 柄実は、佐渡金銀山で使われていた。柄の読みは「がら」なので、柄実 は、GARAMI と発音された可能性がある。「がらみ」なので「柄実」を当て字にした可能性がある。
発音が GARA とすると「がら」の1字の当て字は、「柄」しか漢和辞典にない。KARAとすると「から」の当て字は、「空」「唐」「殻」「辛み」「絡み」など多くある。
3. からみ、カラミでは濁点を打っていない可能性もあるので、KAかGAを決められない。但し、辛味はKARAMIとしか発音しないので、少なくとも多田銀銅山の「からみ」はKARAMI と発音されたであろう。辛味の当て字の記録は貴重である。 
4. 随筆・凌雨漫録(1804-30頃か)では、「殻実をぬき取て正味(しょうみ)ばかりに仕上て」とあり、殻(実)は、「からKARA」 としか発音しないので、1804-30年頃は、一般的には KARAMI と発音されていたのであろう。
5. 鍰は、諸橋大漢和によれば中国の漢字では、①貨幣の目方、6両(約100g)②輪、環 であり、鉱滓の意味はなかった。新字源などには、日本語の語義としてからみがある。やはり、誰かが、鍰を仮借したのは確実である。からみを漢字1字で表記したいと思った人が、日本で意味を持って使われていない漢字であることを条件として探した結果、からみが緩く流れる様を見て、爰を旁とし、金偏にした漢字「鍰」を仮借したのであろうか。鍰の成り立ちの形から見ると中国の「目方6両や輪」より、日本の「からみ」の方がぴったりである。


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