くらぶとろぴか

きもちはいつもシパダンの海の中。シパダンとコタキナバル旅の備忘録、ときどき弾丸、そしてホームワークアウトおたく。

銀塩映写会(12)Coral Bleaching

2013-02-07 08:38:08 |  水中写真
1997年、インドネシアの森林火災による煙害=ヘイズが東南アジア全域に蔓延した。
森林火災は森の住人、オランウータンの命をおびやかし、都市部にいる人々の健康をも害した。
もとはインドネシアの焼畑農業から飛び火しての山火事。
陸続きのカリマンタンからボルネオにも、ヘイズはやってきた。
KKにいたら、晴れの日でもグレーの空で、キナバル山の稜線がまるで見えない日が続いた。
ホテルは宿泊客にマスクを配布していたし、KKの町ゆくローカルは皆、南国らしからぬマスク着用。
海上の視界も悪くて、ヘタレなボートマンの送迎にあたった人たちは、センポルナからシパダンまで漂流の憂き目に・・・
セレベス海を半日漂ったあげくにセンポルナに戻り、午後になって、山だてがしっかりできるボートマンと交代して島に着いたら午後5時だったとか。
もちろんシパダンも空はグレー。
そして、なんとなくきな臭い空気で、のどがイガイガ。
幸い、1週間ほどで風向きがかわり、サバ州を漂っていたヘイズは劇的に解消した。
マレー半島側は深刻なヘイズが続いていても、KKは青空。
よかったー、と思ったのもつかの間。
こんどは、この山火事が引き金となって起こったといわれるエルニーニョ現象で、98年には、水温が31度まであがった。
シーガルで潜っていても寒くならないし、時には、ラッシュとボードショーツで潜ったりもした。
ホンソメワケベラに傷口をクリーニングされて流血したのでやめたけど。
暖かい水中でダイバーの体は楽。
でも、水中の無脊椎生物に異変が。
28度を越えると、サンゴと共生している褐虫藻がサンゴやイソギンチャクを離れはじめ、30度ともなると、もう耐えられないらしい。
褐虫藻がサンゴやイソギンチャクの様々な色を出しているのだが、99年春、クマノミの棲むイソギンチャクは、不自然な蛍光ピンクと白に。


ハードコーラルも、だんだん白くなり・・・




そして夏には、ほとんど白。


もっと白くなり、


もう、真っ白白。


サンゴは1年で、石灰質の岩になってしまった。


なにしろ当時は、シパダンに年3~4回通っているクレージーぶりだったので、数か月ごとに島を訪れるたびに劣化する水中環境に、そのつど衝撃を受けた。
1999年、こうして美しかったシパダンのリーフトップは、白い荒野になってしまった。
シパダンだけではない。
世界中のほとんどの海のサンゴが白化してしまった。
発端は山火事、行き着いた先はサンゴの白化現象。
陸でやったことが、陸だけではなく、海にも大きなインパクトを与えたのを、1ダイバーとしてKKとシパダンを訪れただけで、その一部始終を目の当たりにしたわけだ。
ミレニアム、21世紀のはじまり数年間は、藻のはえたサンゴと白く朽ち果てたサンゴの死骸が水底を構成していた。
一説に何十年かかるかといわれた、サンゴの回復であるが、2004年の終わりから、徐々にサンゴが戻ってきて、今はまた、ピッキピキ。
でも、地球は温暖化しているので、予断は許さない。
私にできることは、節電くらいしかないけれど、われわれダイバーが、もう真っ白なイソギンチャクやサンゴ礁を見ることはありませんように。