通訳案内士の気ままな生活

現役通訳ガイドのブログです。プライベートから気になる収入などの話まで!?包み隠さずお話します!

1964年の通訳案内業

2010-07-15 09:06:24 | 通訳案内士のあり方
1964年と言えばガイドのみなさんならすぐお分かりになると思いますが
東京オリンピックの開催された年です。

当時の大変面白い資料を発見しました。

昭和39年の運輸白書です。
こちらに「外客接遇に関する現状と問題点
という項目がありそこで当時のインバウンド観光に関する施策と
通訳案内業についての分析、課題などが書かれています。

読んでいて思うのは
もともとの国家資格化の目的は
「わが国においては,昭和24年に,ガイドの資質,語学力,一般常識および観光に関する特殊知識の水準を高め,外客接遇の向上を図ることを目的として通訳案内業法が制定さ札同法によりガイドの国家試験,就業に関する免許等の制度が定められた。」
とあるように、ガイドの質を高めるための制度化だったことが分かります。

現在では観光庁は、外国人観光客保護?のために作られた制度で、現在は時代遅れと説明していますが、元々の目的はあくまで国を代表するガイドの資質向上のためというのがうかがわれます。
ガイドなんて誰でもできます。
でも質を確保するのは簡単ではありません。
敢えて国家資格化したのはきちんとした理由があるのです。
当時の担当官はそれをよく理解されていたようです。

まあ、60年も経ってしまえば創設当初の意図を覚えている人もいないので、
観光庁が都合のいいように解釈してしまうのも仕方ないのかもしれませんが。

さらに共感できるのは
「ガイドは,外客に快適な旅行をさせるためにきわめて重要な役割を果たすものであり,その資質能力を高めることが必要であることは先に述べたところであるが,そのためには,通訳案内業試験や研修等の諸施策のみならず,それとともにガイドの収入状態を安定向上させ,素質ある者をガイドに専念させうる体制を作ることが必要である。この点については,来訪外客数の増大やオフシーズンの解消を図る等,国の基本的な観光政策の確立にまつ面が大きく,前途多難な問題であるが,とりあえず,ガイドの主要な使用者である旅行あつ旋業者においても,その提供する旅行あつ旋サービスの良否がガイドの分担する旅行案内サービスの良否による面が多いという点にかんがみ,それぞれ自己の企業内において優秀なガイドが安心して働けるような体制を確立していくことが必要である。」
「現在の試験は合格者がガイド業務に従事することができる最低限の能力を保証するものであつて,実際に業務を行なうには,さらに,広い知識と経験が要求される。これには経験と研修が必要であるが,現在はガイドについては弁護士,医師,公認会計士等の国家試験に通例みられる研修又は見習の制度等がなく,わずかに船拍振興会からの補助金の交付をうけ,日本観光通訳協会が主催して,その年の合格者を対象に短期間の研修を行なつているにすぎず,現在は主として仕事をしながら経験を積むという方法によつている。今後ガイドの資質をいつそう向上していくためには,この研修制度を拡充し,既成のガイドに対する講習制度を設ける等の措置が必要である。」

という記述です。
当時の担当官は大局に立ってものごとを考えていたというのがわかります。

現在では、ガイドが生き残っていくには
ガイド個人がもっと努力をすべきというガイド個人に責任転嫁する議論が多いですが
当時は国がきちんと観光政策を実施し就業機会を増やし
使用者である旅行業も優秀なガイドが安心して働ける体制作りに責任があり
また他の国家資格と同じく実務経験を積む研修制度の確立が必要

というふうに、国や旅行業者の責任を明確にしています。

また試験についても観光庁の案では
旅程管理能力を試験で試すと言うばかげた案もあるそうですが
それこそ研修や実務で身に付けて行くべき分野で
まだ素人な人を試験で知識だけ試しても何の意味もありません。
資格を取ったらすぐ誰でもプロとしてみなされ
OJTの機会も与えられないというのが問題なのです。

現在の、規制緩和、地方分権という流れにあって
国もだいぶ無責任化したものだなぁと思います。
また企業も、コスト最重視で人を育てることを止めてしまいました。
当時はきちんとした理念をもって皆さんお仕事をされていたことでしょう。

ただ、こういった問題点が50年前から認識されているにもかかわらず
いまだに改善されないまま同じ議論が繰り広げれているのは残念なことです。

また当時ならではのエピソードとして
「本年度の合格者934名のうちには,通常の通訳案内業試験の合格者のほか,オリンピック時における来訪外客の増大に対処するため,外国に2年以上居住した経験を有する者を対象として実施した,臨時通訳案内業試験の合格者199名が含まれている。」
という記述もあります。
オリンピック対応のために特別枠も設けたんですね。
なんだか将来に希望溢れる時代って感じがします。
2016年の東京オリンピックも実現すれば良かったですね。

なんだか現代社会の薄っぺらさを感じてしまいました。

みなさんはどう感じるでしょうか?

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1 コメント

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『坂本龍馬と嫁:お龍(おりょう)との出会に、まっこと似ちょるぜよ』 (智太郎)
2010-07-18 23:12:18
お世話になります。 共通するキーワード=「責任転換」でしたので、トラックバックをさせて戴きました。<m(__)m>
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