将人とともに together with Masato

For the parents in the world, whose children have autism.

読売新聞の「編集手帳」

2008年01月08日 | 想い
最近、読売新聞の「編集手帳」にはまっています。ワープロが出現して以来、手書きで物を書く事が極端に少なくなり、インターネットを使った情報発信まで出来るようになると、普通の人が気軽に文章を不特定多数の人様に見てもらえるようになりました。ネット情報は身近で速い生の情報ですが、やはり素人の文章はそれなりのものです。久々に見たプロの方の文章は違います。何度も読み返し、文章が脳裏に焼き付いてしまった、次の一文をご紹介します。

「葉隠」は武骨な書物のようでいて、時折、思いがけない文章に出合う。「聞書第二」の条に、「恋の至極は忍ぶ恋と見立て候(そうろう)」とある。無上の恋とは、胸に秘めた片思いのことだと◆青春期は片思いの季節といわれるが、老いのなかで再び、その季節を知る人もいる。伴侶に先立たれた人が天上に寄せる思慕の情もまた、呼んで届かぬ「恋の至極」に違いない◆今年3月、79歳で死去した作家、城山三郎さんの遺稿が見つかった。46年間を連れ添い、7年前に68歳で亡くなった妻、容子さんの面影がつづられている。「そうか、もう君はいないのか」。題名が心にあいた深い空洞を伝えている◆「天から妖精が落ちて来た」と胸をときめかせた出会いを語り、がんと分かって、「大丈夫。おれがついてる」と抱きしめた悲しみを語る。「五十億の中で ただ一人『おい』と呼べるおまえ…」にあてたラブレターでもあろう◆浜口雄幸、広田弘毅、石田礼助…男の人生を原稿用紙に彫り刻んできた城山さんは、菊池寛や吉川英治、松本清張などのいわゆる"男子専科"の系譜に連なる作家とみなされてきた。「女を書けない」と評されたこともあった◆書けなかったのではあるまい。無上の恋を、「恋の至極」を書く対象は城山さんにとって、この世にたった一人しかいなかったのだろう。(2007. 12. 20/読売新聞/東京朝刊/一面/編集手帳)

読売新聞「編集手帳」 第13集―朝刊一面コラム (13) (中公新書ラクレ 268)
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竹内政明の「編集手帳」〈第1集〉―読売新聞コラム (中公新書ラクレ)
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