9月(2012年)に入って、首都圏の水がめである利根川水系の水不足が深刻になってきつつあります。
このため、渇水対策連絡協議会(東京、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬で構成)は9月11日から10%の取水制限をすると発表しました。
日本はアジアモンスーン地帯に属しており、年間の平均降水量は1,700ミリで世界平均の約2倍です。このため、一般的には日本の水は豊富にあるような感じを受けます。しかし、地域によっては、深刻な水不足に悩まされているところもあります。
日本の約1割の人口が生活する東京都でも、水の確保が大きな問題となっています。2007年には、暖冬で水源地帯での降雪が少なく6月の降雨量も少なかったために、同月の東京都向け貯水状況は一時最低水準にまで落ち込みました。東京都の水道水は、その約8割が利根川・荒川水系から供給されており、群馬県などの水源地帯の降水状況に大きく左右されています。
(東京都水道局では、水の確保の他に、団塊世代の大量退職による現場技術力の低下と水道料金の未払い問題も懸念材料となっているようです。特に、漏水率は3.6%と極めて低く世界でもトップ水準を誇っていますが、現場技術力の低下は漏水率の増大に直結して水不足の危険をはらんでいます。)
このような国内の直接的な水不足問題の他にも、日本では既に海外から多くの水を輸入しています。これは、ミネラルウォーターの話ではなく、1990年代初頭にロンドン大学のアラン教授によって提唱された「バーチャルウォーター(仮想水)」という概念です。
仮想水とは、農産物や製品の生産に使用された水を、これらの製品を購入した人が間接的に消費したとする考え方です。
東京大学生産技術研究所の沖大幹教授等のグループは、生産国(輸出国)と消費国(輸入国)とでは水消費原単位が異なる点に注目して、『消費国(輸入国)でもしそれを作っていたとしたら必要であった水資源量が、仮想投入水量(virtually required water)である。』という考え方をとっています。
これによると、精練後の小麦1Kgには約2000倍(2トン)の水が使われ、牛(正肉)1㎏には20,700倍(約21トン)の水が使われていることになります。家畜の飼養には、飼料だけでなく多くの水も必要なことがわかります。
参考 『世界の水危機、日本の水問題』 東京大学生産技術研究所 沖 大幹教授
沖大幹教授等のグループが試算した結果によると、日本の仮想水の総輸入量は年間で約640億m3(立方メートル)と推計されています。これは日本国内における年間総水資源使用量約900m3の3分の2程度であり、また年間灌漑用水使用量の590億m3よりも多くなっています。日本が最も多くの仮想水を輸入しているのは米国からで、約61%(389億m3/年)と推計されています。
また、海外からの仮想投入水の内訳は、農作物:約63%、畜産物:約35%、工業製品:約2%となっています。
このように、日本は海外(特に米国)に多くの水を頼っており、食料自給率の低下(食料輸入の増加)が水の輸入を増やしているとも言えます。
一方、温暖化が進むことで、これからは年間降水量だけで水の確保量を判断することが難しくなってきます。
それは、ゲリラ豪雨に代表されるようなきわめて短時間の大量降雨が多くなって、水が河川に滞留する間もなく海に流出してしまうケースが多くなるからです。
このため、年間降水量が多い地域でも渇水に悩む時代がやって来ます。
また、温暖化で海面の温度が上昇すると海水が大量に蒸発することで、気圧の配置に変更が生じたり、降雨量の地域差が大きくなってくることが予想されます。
私たち生活者としては、節水に努めるとともに、温暖化ガスである二酸化炭素の排出削減にももっと真剣に取り組むことが必要です。
(過去の記事に一部加筆しました。)
【主な参考文献】
・環境goo 仮想水(バーチャルウォーター)
・東京大学生産技術研究所 沖 大幹教授 『世界の水危機、日本の水問題』
・日経ビジネス 2007.7.2号 「東京都の水が危ない」
・ホームページ「環境と体にやさしい生き方」
※健康参考:首こり、肩こりのサイト
よくわかる首こり、肩こり解消法
このため、渇水対策連絡協議会(東京、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬で構成)は9月11日から10%の取水制限をすると発表しました。
日本はアジアモンスーン地帯に属しており、年間の平均降水量は1,700ミリで世界平均の約2倍です。このため、一般的には日本の水は豊富にあるような感じを受けます。しかし、地域によっては、深刻な水不足に悩まされているところもあります。
日本の約1割の人口が生活する東京都でも、水の確保が大きな問題となっています。2007年には、暖冬で水源地帯での降雪が少なく6月の降雨量も少なかったために、同月の東京都向け貯水状況は一時最低水準にまで落ち込みました。東京都の水道水は、その約8割が利根川・荒川水系から供給されており、群馬県などの水源地帯の降水状況に大きく左右されています。
(東京都水道局では、水の確保の他に、団塊世代の大量退職による現場技術力の低下と水道料金の未払い問題も懸念材料となっているようです。特に、漏水率は3.6%と極めて低く世界でもトップ水準を誇っていますが、現場技術力の低下は漏水率の増大に直結して水不足の危険をはらんでいます。)
このような国内の直接的な水不足問題の他にも、日本では既に海外から多くの水を輸入しています。これは、ミネラルウォーターの話ではなく、1990年代初頭にロンドン大学のアラン教授によって提唱された「バーチャルウォーター(仮想水)」という概念です。
仮想水とは、農産物や製品の生産に使用された水を、これらの製品を購入した人が間接的に消費したとする考え方です。
東京大学生産技術研究所の沖大幹教授等のグループは、生産国(輸出国)と消費国(輸入国)とでは水消費原単位が異なる点に注目して、『消費国(輸入国)でもしそれを作っていたとしたら必要であった水資源量が、仮想投入水量(virtually required water)である。』という考え方をとっています。
これによると、精練後の小麦1Kgには約2000倍(2トン)の水が使われ、牛(正肉)1㎏には20,700倍(約21トン)の水が使われていることになります。家畜の飼養には、飼料だけでなく多くの水も必要なことがわかります。
参考 『世界の水危機、日本の水問題』 東京大学生産技術研究所 沖 大幹教授
沖大幹教授等のグループが試算した結果によると、日本の仮想水の総輸入量は年間で約640億m3(立方メートル)と推計されています。これは日本国内における年間総水資源使用量約900m3の3分の2程度であり、また年間灌漑用水使用量の590億m3よりも多くなっています。日本が最も多くの仮想水を輸入しているのは米国からで、約61%(389億m3/年)と推計されています。
また、海外からの仮想投入水の内訳は、農作物:約63%、畜産物:約35%、工業製品:約2%となっています。
このように、日本は海外(特に米国)に多くの水を頼っており、食料自給率の低下(食料輸入の増加)が水の輸入を増やしているとも言えます。
一方、温暖化が進むことで、これからは年間降水量だけで水の確保量を判断することが難しくなってきます。
それは、ゲリラ豪雨に代表されるようなきわめて短時間の大量降雨が多くなって、水が河川に滞留する間もなく海に流出してしまうケースが多くなるからです。
このため、年間降水量が多い地域でも渇水に悩む時代がやって来ます。
また、温暖化で海面の温度が上昇すると海水が大量に蒸発することで、気圧の配置に変更が生じたり、降雨量の地域差が大きくなってくることが予想されます。
私たち生活者としては、節水に努めるとともに、温暖化ガスである二酸化炭素の排出削減にももっと真剣に取り組むことが必要です。
(過去の記事に一部加筆しました。)
【主な参考文献】
・環境goo 仮想水(バーチャルウォーター)
・東京大学生産技術研究所 沖 大幹教授 『世界の水危機、日本の水問題』
・日経ビジネス 2007.7.2号 「東京都の水が危ない」
・ホームページ「環境と体にやさしい生き方」
※健康参考:首こり、肩こりのサイト
よくわかる首こり、肩こり解消法