Along with the Mekong

メコン川の流れのように

劇団昴 八月の鯨

2006年12月22日 | なんでもない日常のこと
大学時代の恩師のお招きで、閉館が決まった三百人劇場の最後の公演『八月の鯨』の、本当に最後の最後の千秋楽に行ってきた。

静かな芝居。アメリカはメイン州の海辺の別荘を舞台にしたアメリカの作家の作品だけれど、その静謐なつくりはチェーホフっぽい。軸になるのは年老いた姉妹。隔世の気配漂うよう暮らしぶり・・・『三人姉妹』と『桜の園』を彷彿とさせる。アメリカ人がこういう静かな芝居を観るのかなあと思ったけれど、アメリカ人が演出すると全然違う作品に仕上がるのかもしれない。

それにしてももうこの手の翻訳劇についてくる観客は限りなく少なくなっているだろう。リアリズムでもなく、ファンタジーでもなく、観ているこちらが視点を定めるのにちょっとばっかし不安になる芝居だもん。かつては随分通った三百人劇場だけれど、これも時代ということだわね。しみじみ・・・

で、今日のお話は老いていく姉妹の話、つーことで、終演後センセイに「mameさんにはちょっと申し訳ない芝居だったかな」なんて言われてしまった。やさしいセンセイは、「年寄り向きのサミシイ芝居でしたね。今度はもっと若い人向けの楽しい芝居に誘いますね」と続けてくださったけれど、ワタシはこの芝居に満ちていた哀愁に共感もしていたし、姉妹もいないワタシはもっとサミシイかも、とひとりごちていたというのが正直なところ。

観劇後はセンセイとお茶をした。センセイとお会いするのは実は15年ぶりくらいのこと。今日も本当によく思い出してお誘いくださったと思う。感謝。

センセイは、ワタシが不義理を重ねている15年の間に、22歳年下の若い奥様と再婚され、今は、幸せいっぱいのご家庭を築いておいでだ。出会いから3ヶ月のスピード結婚だったことを、今日初めて聞いた。奥様の押しかけ女房だったそうな。やるな~

記憶力抜群のセンセイは「mameさんは○○○しましたよね」なんて、本人も忘れていた学生時代の無茶苦茶な暴れん坊ぶりをしっかり覚えていて、若かったワタシの甘くてちょっぴりほろ苦い記憶を呼び起こしてくださる。好奇心と情熱のカタマリだったあの頃のワタシ。世の中にコワイものなんてなかったもんね。あの頃に比べたら、大人になった分、いろんなことが怖くなったし、好奇心も情熱もぐぐっと下降の一途をたどっている今のワタシはやっぱりサミシイ存在になっているのだろうか。

年とともに失うものの多さに涙したい、ちょっぴりセンチメンタルな気分の今のワタシ。失ったものの代わりに手に入れたものって、何かあるのかしらん・・・

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