『植物 オヤジ』

日々出会う植物たちの「たくましさ」と「美しさ」を再発見する、ハードボイルド・ボタニカルライフ。音楽、美食なども。

ア・ボ・カ・ド

2014年08月02日 | 日記
アボカドの種は以前から気になっていた。
あの立派な種を簡単に捨てていいものだろうか。
つるりとした赤ちゃんの頭のような卵形の種は
持ち重りがして存在感がある。
こいつから双葉がでたらかわいいし、テーブルに置いたらおしゃれだな。
一念発起して小さな鉢に植えたのは5月のことだった。


      

おしゃれな食卓をイメージしながら水を切らさないように世話をした。
1週間目、変化はない。
2週間目、そろそろ芽が出るかと思うがやはり変化がない。
1ヶ月後、全く変化がない。

飽きっぽいオレはこの時点で既に興味関心がなくなっていた。
そればかりか、赤ちゃんの頭だと思っていたものが急にオヤジのハゲ頭に見えてきた。
人肌のように黄色くテカっているところなどは日焼けしたハゲ頭そっくりだ。
人の知覚とはおそろしい。
興味を失ったとたんにそれは天から地へ身を落とす。
オレはこのハゲ頭をいつまで世話するのだ?
あろうことか、ハゲ頭には亀裂がはいり、頭蓋骨陥没的状況になってきた。

もはやおしゃれではない。

赤ちゃんを育てていたはずが、いつの間にかじいさんの介護に変わってしまったのだ。
見えないふりをしながらそれでも乾いたら気の毒なので水やりはつづけた。


         

昨日ひさしぶりにじっくりと見た。
地殻変動ばりに亀裂はひろがり、その痛々しく割れた頭にひもみたいなゴミがついている。
除けようとおもったら、それは発芽だったのだ。
使い終わった爪楊枝のような新芽にかわいさはない。
ハゲ頭からのびた1本のたよりない髪の毛はまるでサザエさんの父さんだ。
かくして今日から彼は「波平」となった。

もはやおしゃれではない。

が、楽しくほほえましい存在となった。
遠く逝ってしまわれた波平(声優)さんを忍びつつ
新しい父さんを見守りたい。

嗚呼、ボタニカル。