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社労士受験支援塾(三好塾)

社会保険労務士受験に役立つ情報をお伝えしたいと思っています。

労働相談事件簿(40)店長、所長は使用者か?

2007-01-03 02:52:00 | 労働相談事件簿
店長、所長は使用者か?

事件1
(アルバイト)店長の退職時の賃金不払い。フランチャイジーのオーナーが「売り上げが減っているのに、休憩を取っていないと労働時間を増やされていたので、やめるまでに余分に払った賃金を返せ」と退職月の賃金の支払いを拒んでいるもの。
事件はいまだに解決していない。

勿論事件の結末に関心があるが、私が疑問に思うのは、この店長は使用者たり得ないなのか?と言うもの。他のアルバイトから見れば店長はあくまでも店長であり、使用者ではないのか?

前回の労働法コンメンタール等を参考にすれば、“一定の権限を与えられているか否か”が判断の基準になりそう。しかし、“一定の権限を与えられているか否か”を外から見るのは難しい。

事件2
退職金が約束通り支払われないと言う事件。その際「退職金を請求したのは勤務していた営業所長か?」と監督署が問うと「営業所長に催促したが、その件は社長に」と所長は権限がないことを示唆。この所長も使用者ではなかったのか?

一方、残業代の支払いを巡って「管理監督者」が問題になるが、この管理監督者は労働者であることは紛れもない事実。労働者であるが、残業代等については適用除外されると言うのが正しい解釈。この管理監督者の行政解釈に銀行の支店長が例示されるが、銀行の支店長は使用者ではないのか?

例えば、36協定の締結者を見る場合、銀行の支店長は殆ど使用者側。店長は使用者側のときもあれば、労働者過半数代表者のときもある。労働者過半数代表者のときに、監督署が「店長だから労働者過半数代表者になり得ない」と問うと「店長には権限を与えていない。だから労働者である」と答えられ、労働者過半数代表者として認める。

要は実態に照らして判断すると言うが、結構わかりにくい。この問題も引き続き研究していきます。
(担当:社労士久)

労働相談事件簿(39)14年間定期健康診断なし

2006-12-22 01:53:16 | 労働相談事件簿
14年間定期健康診断なし

本当に健康診断は“終了"ではありません。先日はAから次のような相談がありました。
『入社してから1、2年目のときに健康診断をしてから14年ぐらい定期健康診断が一度もない。今年に入ってから体調が悪くなり肝硬変を患っていた。その後大腸がんの疑いがあるとのことで、ポリープを切除、大腸がんの手術もした。この間B社長の許しもあり休職した。「半年でも1年でも休んでまた働けば良い」と言われていたのに、職場復帰して間もなく、突然B社長に「健康保険証を返し、退職願を書いてくれ」と言われ、やむなく退職願を書いてしまった。どうしたら良いか?』と言うもの。

差し詰め、退職の“強要”であり退職による補償を求め、不調の場合は労働局にあっせんを申請することとしたが、その前にB社長に補償について話合いをしないか聞いてみることにした。B社長は「Aはもともと体調不良を理由にサボる奴。定期健康診断などしなくても、年中健康診断をしているのと同じ。退職願も納得して書いた筈だ。どうするか考える」との返事。翌日「Aの言い分を聞く。話合いをするのでBに伝えて欲しい」との返事。早速Bに伝え話合いをさせることにしました。

定期健康診断なしの問題は今のところ直接採り上げられていませんがどうなりますか?

改めて健康診断について労働安全衛生法の規定を見ておきましょう。
労働安全衛生規則(抜粋)
第44条(定期健康診断)
事業者は、常時使用する労働者(第45条(特定業務従事者の健康診断) 第1項に規定する労働者を除く。)に対し、1年以内ごとに1回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
第52条(健康診断結果報告)
常時50人以上の労働者を使用する事業者は、第44条、第45条又は第48条(歯科医師による健康診断)の健康診断(定期のものに限る。)を行なつたときは、遅滞なく、定期健康診断結果報告書(様式第6号)を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

後半に続くか?
(担当:社労士久)

労働相談事件簿(38)ノロウィルスに感染、無給で就業禁止にできるか?

2006-12-21 02:05:56 | 労働相談事件簿
ノロウィルスに感染、無給で就業禁止にできるか?

ある食品会社からの相談(質問)。「社員若しくは社員の家族がノロウィルスに感染した場合に無給で就業禁止にしても良いか?」と言うもの。

先ず、モデル就業規則
第○条(就業禁止等) 
1 他人に伝染するおそれのある疾病にかかっている者、又は疾病のため他人に害を及ぼすおそれのある者、その他医師が就業不適当と認めた者は、就業させない。
2 従業員は、同居の家族又は同居人が他人に伝染するおそれのある疾病にかかり、又はその疑いのある場合には、直ちに所属長に届け出て、必要な指示を受けなければならない。 
などと規定されている。

ところでノロウィルス(感染性胃腸炎)が4類感染症であることを知っている人は少ないであろう。

即ち、1類感染症(エボラ出血熱、ペスト等)から3類感染症(腸管出血性大腸菌(O-157を含む)感染症)及び指定感染症(現在該当なし)については国の就業制限の対象となっており、4類感染症については労働安全衛生法に基づく就業制限の対象となるのであります。言い換えれば4類感染症については、モデル就業規則にも規定している通り会社が判断するのではなく“医師(産業医又は専門の医師)が認めたときに限り”労働安全衛生法に基づき就業を禁止することができるのです。

国による就業禁止措置が講じられた場合及び労働安全衛生法に基づく就業禁止措置であれば無給としてもOKなので、回答は「ノロウィルスに感染した社員及び家族が罹患した場合は“医師(産業医又は専門の医師)が必要と認めれば”無給で就業禁止にしても良い」にしたいと思います。
(担当:社労士久)

労働相談事件簿(37)不倫、社有車全損、懲戒解雇

2006-12-15 03:20:19 | 労働相談事件簿
不倫、社有車全損、懲戒解雇

事件のあらましは次の通りです。
社員のAが不倫相手と車に乗っていたのを見つけたAの妻が、昨夜Aが乗ってきていた社有車で追いかけ追突し、社有車を全損させた挙句、不倫相手にケガを負わせたと言う事件。
この後、Aが事実を偽って事故報告してきたため「始末書の提出と減給の制裁」の処分を課したが、Aは年次有給休暇を全て消化し、退職願を出してきたらしい。
先の事故報告が事実に反していることが、不倫相手が「社有車による事故」と言うことでB社に保険請求して来てため判明。

B社の相談は「このAを虚偽の事故報告を提出する等、悪質かつ無責任なので懲戒解雇とし退職金を減額したいが、解雇予告除外認定が受けられるか?」と言うもの。

結構複雑でしょう。この事件にはテーマがいろいろあります。
1.不倫を理由とする解雇の可否
2.始末書の提出と減給の制裁(懲戒処分)
3.退職前の年次有給休暇の取得
4.退職金の減額 
5.解雇予告除外認定 
今まで採り上げていないテーマについては、今後投稿したいと思っています。

さて、この回答実は「解雇予告手当除外認定は難しい」なのだが、「認定できる」と言う意見もあったようです。

このシリーズ最後の紹介は「企業所有の社有車により事故が発生した場合、それが業務中の事故であればもちろん、業務中とはいえない従業員の無断使用の場合でも、また、ひいては盗難にあった社有車の事故の場合でも、企業の責任は生じうることになります」http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/management/compliance/050315_car/
(担当:社労士久)

労働相談事件簿(36)マイカー通勤で事故

2006-12-13 02:51:33 | 労働相談事件簿
マイカー通勤で事故

マイカー通勤の事故についての相談(質問)がきた。「社員がマイカー通勤の途中で交通事故を起こしたが、会社に責任があるか?」と言うもの。

「会社がマイカー通勤を容認していると、会社の使用者責任を問われるリスクがある」と言うのが回答。

会社が社員のマイカー通勤の途中で事故を起こしても会社の使用者責任を問われないようにするためには、
①マイカーを会社の業務に一切使用させないこと。
②公共の交通機関の同等の通勤手当しか支給しないこと。
③社員用の駐車場を用意しないこと。
等の措置をとり、
会社が社員のマイカー通勤により利益を得ていると評価され得る関係を断ち切る必要があるそうです。

参考に、自治体が使用者責任を問われた裁判に関しての次の記事をお読みください。http://www.kobe-np.co.jp/news_now/news2-434.html

(担当:社労士久)

労働相談事件簿(35)解雇予告手当の時効(その2)

2006-12-07 02:22:42 | 労働相談事件簿
解雇予告手当の時効その2(自論の展開)

「(即時)解雇されたが、解雇予告手当が支払われない」との“訴え”があった場合、使用者が本当に解雇したのかが問題になる。本当に(即時)解雇したのなら解雇予告手当が支払われなければ労働基準法第20条(解雇の予告)違反である。労働基準監督署に訴えがあれば、監督署は法違反として使用者に解雇予告手当を支払うよう指導する。この際、監督署はこの解雇が有効か無効かを判断はしない。

法違反を是正するため解雇予告手当を支払うよう勧告するのである。

これは、解雇されて直ぐに訴えがあるか、後になって訴えがあるかには関係ない。即ち解雇予告手当不払いの訴えがあったときに根本的に問題になるのは「本当に解雇したのか、されたのか」なのであり、後になって訴えがあった場合でも「解雇予告手当が時効により消滅した」と言うことは無いのである。それでは、解雇予告手当不払いはいつまで訴えられるのか?後になって訴えがあった場合に解雇されたことを立証できれば監督署は是正勧告するのか?

ポイントは立証できるかに行き着く。解雇された人は立証しなければならないが、退職証明による立証は時効2年に阻まれるのが一般である。但し、使用者が証明すれば監督署は是正勧告するのか?と言うことになる(実際には考えられない仮説→この仮説に対しては公訴時効3年が限界)。

最後に「解雇予告手当は、新たに就職するまでの間の労働者の生活を保障するためのものであるから、その支払いに条件その他の負担を付けることは許されない」と言う昭和40.11.1名古屋地裁判決が平均賃金の30日分(以上)の解雇予告手当の意義を現していると思いますが、いつまでも解雇予告手当不払いを放置している者に、解雇予告手当を保障する意義があるのか?と言う観点からすればせいぜい「2、3か月後辺りが限界」と言うのが案外現実的なのかも知れないと思ったりしています(これは感情論→やはり法律的には一般には解雇予告手当については時効の問題は生じないが基本です)
 
本日も結論に至りません。本件に関しコメントをお寄せください!
(担当:社労士久)

労働相談事件簿(34)解雇予告手当の時効

2006-12-06 03:42:06 | 労働相談事件簿
解雇予告手当の時効

「3年前に解雇されたが、解雇予告手当が支払われていない。請求できるか?」
この相談(質問)難しいんですね。今回結論は出せませんが、取り敢えず記事にしておきます。

先ず、
①労働基準法第115条(時効)に関して、労働法コンメンタールでは
「労働基準法第20条(解雇の予告)に定める解雇予告手当は、解雇の意思表示に際して支払わなければその効力は生じないものと解されるので、一般には解雇予告手当については時効の問題は生じない(昭和27.5.27基収*第1906号)。」としている。*基収とは労働“ 基準”局長が疑義に応えて発する通達

次に
②遡って、労働基準法第114条(付加金の請求)に関しては
「本条が付加金を請求し得る場合として定めているのは、次の4つの場合である。
1.使用者が解雇予告手当を支払わないとき
2.休業手当を支払わないとき
3.割増賃金を支払わないとき
4.年次有給休暇の賃金を支払わないとき
としているが、時効については「・・・また、前条の付加金の請求権は、除斥期間*が定められており、裁判上の請求によってのみ取り上げられるものであるので、本条の消滅時効とは関係がない。」としている。*除斥期間とはある種の権利について法律上定められた存続期間。法律関係(権利関係)の速やかな確定のために定められている。消滅時効に似ているが、必ずしも一定の事実状態が継続していることや当事者の援用を必要とせず、また時効の中断、時効の停止が認められない点で時効と異なる。

本日最後は、私は参加しておりませんでしたが“教えてgoo”に丁度同じ質問ありましたので、参考に紹介しておきます。良回答(20ポイント)者は次のように言っています。「解雇そのものではないですが、解雇予告手当の請求権などは労働基準法第115条の規定により、2年で消滅します。解雇の罰則の規程の適用に関しては、労働基準監督官は刑事訴訟法の規定に基づく司法警察員(労働基準法第102条)の職務を行うことになるので、時効に関しては刑事訴訟法250条6号の規定により、3年になります。」http://oshiete1.goo.ne.jp/qa2458969.html

本日はこのくらいにしておきますが、早めに結論を導き出したいと思っています。
本件に関しコメントをお寄せください!
(担当:社労士久)

労働相談事件簿(33)「法テラス」その2(おすすめ)

2006-11-28 01:01:45 | 労働相談事件簿
おすすめ「法テラス」

事件30でご紹介した「法テラス」はやはりおすすめ。
過日私の所に相談に来た事件28の“集団解雇”の青年(?)達が目出度く(?)解雇予告手当の支払いを受け、今度は残業手当の支払請求をするため「少額訴訟」を視野に入れ簡易裁判所に行ったところ、「法テラス」を紹介されたそうだ。「法テラス」に電話をすると早速翌日には弁護士の相談の予約を受け、直ぐに相談を受けられたそうだ。しかも残業手当の請求等に親身に相談に乗ってくれたとのこと。前にも書いたが、応対振りが良さそう。「法テラス」のPRになるが、こういう機関はありがたい。本日のご紹介コーナーは賑やか。じっくりとお読みください。
先ず「(財)法律扶助協会」(同協会の民事法律扶助事業を法テラスが引き継いだもの)http://www.jlaa.or.jp/
次に再度「法テラス」http://www.houterasu.or.jp/
最後に「少額訴訟」http://www.courts.go.jp/saiban/syurui/minzi/minzi_04_02_02.html
もうひとつ最後に
お知らせ
ブックマークの「良回答集」に
(14)18.11.19“試用期間中の休み”http://oshiete1.goo.ne.jp/qa2549138.html
が加わりました。お読み下さい。
(担当:社労士久)

ご連絡:タイトル「労働相談Q&A」を「役立つブログを創りたい」に変更します。

労働相談事件簿(32)身内の労働問題

2006-11-25 03:09:13 | 労働相談事件簿
身内の労働問題

まず、教えてgooの質問コーナーから。“給料を支払わない父親”http://oshiete1.goo.ne.jp/qa2553402.html
今回は私は参加していません。

私のところにも最近親子間、兄弟間のトラブルの相談に来る。なかなか厄介なもので、やはり身内のトラブルは、他人間とは違うドロドロしたものがある。
親子間でも、兄弟間でも労働契約上のトラブルなら労働基準法に照らして考えれば良いのだが、労働基準監督署に申告をしたり、労働局に助言・あっせん、はたまた裁判所に告訴するのはどうも情が絡んでアドバイスしにくい。また、身内特有(?)なのか、トラブルだと言っている割には、給料だけは払われていたり(他人だったらとっくにクビ?)、家庭内の権力争いを持ち込んでいるだけのような感じだったりしてスッキリしない。
親子間のトラブルは、娘さんが言いたいだけいって「しようがない」で終わったが、兄弟(弟が社長)間のトラブルは、兄が社員を巻き込んで会社の労働基準法違反(残業代不払い等)を暴きたいと言っている。こちらはどうなるかまだわかりません。
(担当:社労士久)

労働相談事件簿(31)採用内定取消し

2006-11-23 01:14:31 | 労働相談事件簿
採用内定取消し

「採用」は普通就業規則のはじめの方に規定されています。

今回は採用が内定していたAさんが内定を取り消けされた事件です。
事件は、AさんがB社の社員募集に応募。面接の後採用が内定、後日正式に採用手続をすることになっていたのですが、採用手続前に、B社が内定を取り消してきたことから始まりました。

「採用」は労働基準法では特に規定されておらず、労働基準監督署が立ち入る問題ではないのです。
しかし、現在は労働局が労働紛争を裁判の前に労使が自主的に解決することを支援する「助言」とか「あっせん」の制度があります。

採用の内定を取り消されたAさんは、この「あっせん」の制度を利用することにして、B社に補償金の支払を請求したのです。
B社はミスを認めて補償金の一部を支払い、和解を求めてきたというのが事件の“概略”です。

採用は使用者の裁量により自由にできますが、いったん決めた採用の内定を取り消しすると「解雇並み」の補償を求められることがあるという一例です。

モデル就業規則の規定

第2章 採用、異動等
第4条(採用手続き) 
会社は、就職希望者のうちから選考して、従業員を採用する。
第5条(採用時の提出書類)
1 従業員に採用された者は、次の書類を採用日から2週間以内に提出しなければならない。
① 履歴書
② 住民票記載事項証明書
③ 健康診断書(3か月以内のもの)
④ 前職者にあっては、年金手帳及び雇用保険被保険者証
⑤ その他会社が指定するもの
2 前項の提出書類の記載事項に変更を生じたときは、速やかに書面でこれを届け出なければならない。

ワンポイントレッスン
何故健康診断書を(3か月以内のもの)にするのか?

労働安全衛生規則
第43条(雇入時の健康診断)
事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、3か月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない

お知らせ:ブックマークの「良回答集」に18.11.21“解雇予告通知等のあて先”が加わりました。お読み下さい。
(担当:社労士久)