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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

自転車専用道路

2008-01-09 | 研究ノート
・昨日はD論審査会。午前に1つと午後に1つ。2つとも採種園に関連するテーマだったでので、久しぶりに育種にどっぷりとつかった感じである。それはいいとして、コメントや質問を英語で言わなければいけないので、こっちの方が緊張してたりして・・・。とにもかくにも、審査会自体はつづかなく終了し、ほっと肩の荷が降りた気分である。終了後には、育種センターの面々と久しぶりに再会。近況など聞くことができて、なかなか楽しかった。わざわざD論発表会のために上京してくれたとのことで、有難いことである。

・再び、講義に気持ちを切り替える。が、あまり切り替わらないままに、遅々として準備は進まない。とりあえず、FEMの審査を片付ける。reviewer loginをすると、今回の査読をあわせて2個の論文、4件のレビューを完遂したことが分かる。これだけ貢献しているんだけど・・・、ねえ。次いで、Hくんのトドマツ更新論文、要旨が字数オーバーということで、もう一度削りなおして送信。今度こそ、ほぼ”いける”のではなかろうか。



・東京駅界隈をそぞろ歩いていると、何やら見たことのない看板が・・・。うむ?歩行者と自転車を分けるラインのようだ。そういえば、朝のTVニュースでやっていたような・・・。しかし、歩行者達はラインを気にするでもなく、どちらのゾーンも適当に歩き、方や自転車もそのような暴走歩行者をすいすいと避けており(むろんラインを超えて・・・)、何やら不思議な光景である。

・地がき論文を再チェック。全体として”Improve”されたように感じる。指摘事項を検討する中で、だいぶタイトになってきたのではないだろうか。イントロの一部など、少々ミスがあったので修正。考察の構成も一部練り直し。更新密度の表を復活させた方が良さそうということで、体裁を整える。一通りできたので、Iくんに送る。こうして往復する中で少しずつ完成度が高くなっている(はずだ)が、最終的には北海道に帰ってからの過去のデータと文献のチェックが必要である。

機内空間

2008-01-07 | 研究ノート
・明日からのD論審査に備えて東京入り。例によって、機内で論文修正作業。誰もいない空間よりも、少しだけざわざわしている、こうした空間の方が不思議と集中できる。さて、いきなり先制パンチをくらった地がき論文だが、修正方針を変更することになった。よくよく考えてみると、今から現地調査をしても、高標高域では風害によって既に上層木が壊滅的になくなっているので、当時の状況は全く再現されない。外挿した3サイトだけでも、現在の毎木データに差し替えようかと思ったのだが、肝心の3サイト中2サイトが問題の高標高なのでこれも難しい。

・審査で指摘されたように、積雪、光条件などのサイトの環境に関する実データを取得することは確かに重要なのだが、更新当時の条件を再現することはやはり難しい(これは執筆当初にも検討していたんだった!)。取得して意味があるのは、気温や積雪などの標高とパラレルで年次変化があまりないようなデータだとすれば、むしろ既存研究の引用でマテメソと考察で触れるのがいいような気がしてきた。第一、詳細な環境データを取り、環境と更新の関係を調べるとすると、もはや別の研究になってしまうわけで、そもそも、今回はかなり記載的な内容だった(はずである)。

・というわけで、審査結果のうち、取り入れられるところとそうでないところを峻別しつつ、文章の中で修正できるところから修正していく。指摘事項をよく検討すると、タイトルが内容と合っていない気がしてきたので、まずはタイトル変更から検討。さらに、種多様度の解析と考察は思い切って削除する方針に変更。考察の順番も”論文の売り”が微妙に変化するのに合わせて、大きく入れ替えてみる。しばらく格闘した後、一応、”出来た!”と思われたので、Iくんに送信。

・年末にHくんから択伐林におけるトドマツ更新動態に関する修正原稿が送られていたので、こちらも一気に修正を加える。前回の修正原稿と査読結果はよく読むと、こちらの不手際もあったようで、まだまだ修行が足りないと実感。今度こそ、かなりいい感じに修正できた、と思えたので、いったん本人と共著者に送信。

・と、そろそろ森林学会の学術講演集の申し込み時期になってきたので、バタバタと作成してみる。こちらはまだまだだが、早めに準備しておかないと慌てることになりそうなんで・・・。新年早々、何やら慌しい。

新年早々

2008-01-04 | 研究ノート
・昨晩、たまったメールを開けると、FEMから地がき論文の審査結果が送られてきていた、10月17日投稿なのでかなり早い返答に入る部類だろう。それはよかったのだが、結果は何とUnacceptableであった。昨夜は頭が真っ白になって何も読めなかったのだが、冷静にコメントを読んでみる。1箇所はミスリーディングされてしまったようだが、そのほかはむしろきちんとした指摘である。どちらかというと、よく読んでもらっていると考えた方が良さそうだ。

・解析やデータの取り方自体に対する根本的なコメントが多く、簡単には答えられない。後半には、この知見はリージョナルな森林管理には役立つと思うが、Publicationには、新規データの取得や再解析やなど、抜本的な改訂が必要となっている。これは、本来、メジャー・リビジョンの範疇ではなかろうか、とも思うんだが・・・。

・Iくんと電話会談。これらの指摘を検討せずに他の雑誌に投稿したところで、やはり厳しいかもしれないということで、思い切って再調査を行うことに。やはり現在の成木のデータと環境のデータを追加するしかない。幸い、施業が近くで行われているので、冬季にしてはアクセスが良さそうだ。不幸中の幸いである。いきなり厳しい展開だが、こんなことで負けてたまるか。投稿論文執筆講座をやっちまった手前、この論文を落とすわけにはいかんのである。結局、体力勝負になりそうだが、頑張るしかない、のである。

氷の世界

2007-12-26 | 研究ノート
・マイナス20度。本日、富良野の最低気温である。たしかに、ゴミステーションまでの短距離でも、踏みしめる雪の音がまるで違っていた。こういう日は一点の曇りもないような晴天になる。芦別岳がヒマラヤ(?)のように輝いており、空知川からは水蒸気が立ち上る。雪国の醍醐味。本日、誠に勝手ながら”My仕事納め”なので、祝福されているような気持ちになる。



・朝一番にメールを見ると、トドマツ交雑論文がIくんから早くも戻ってきていたので、さらに再改訂を行う。イントロがくどい、ということで見直してみると、確かにくどい。自分ではまりこんでいると見えなくなる典型のようなもので、昨日の完成したと思ったものは幻であった・・・。ということで、増殖したイントロを削ったり、一部を考察に移動させたり、順番を入れ替えたりと・・・。針葉分析の目的も少しだけ修正すると、ようやく納まりがよくなった。再び、Iくんに送ってチェックしてもらうと、今度はうまく修正できたとのゴーサインを頂く。微修正を経た後、完成原稿をつくばに送信。

・放置気味になっていたエゾノウワミズザクラのジェネット構造に関する論文もようやく投稿できる運びとなったので、北方林業へ送る。年末の駆け込み投稿である。メールで送ってよろしいという許可が下りたので、大変楽になった。講義準備とD論審査。遅々として進まぬままに、部屋の片付けについかまけてしまいそうになるところを気持ちを奮い立たせて、講義での設問を作る。プレゼン用資料もちまちまと直す。

・唐突だが、Ritland (2002)が開発したMLTRというソフトが本当に大丈夫なんだろうか(マーカーの精度などによって妙なバイアスが生じないのか??)、という疑念を持ったので、今更ながらHeredityの論文をダウンロードする。Mixed mating modelとはずいぶん古くからある考え方だということ(当たり前か・・・)を改めて知る。こうした基礎勉強は思い立ったときにやらないと・・・。それにしても、Ritland(2002)の論文は一向に頭に入らない。自分のデータでソフトを動かしてみた方がいいのかもしれん。

・と、あまり進まぬまま、本年度の業務はこれにて終了。4時過ぎに職場の皆さんに年末のご挨拶。明日から、年休で珍しく関西方面での年越し予定である。出勤予定は新年の4日。ということで、メールなどは、しばらく反応できないかもしれません。 皆様、よいお年を。

しし座の運勢

2007-12-25 | 研究ノート
・投稿中の論文の音沙汰がないような気がしていたので、各論文の投稿日をもう一度チェック。最初のヒノキ論文は8月25日で、なんと4ヶ月も経過している。自分に審査依頼が来たときには期日を守っているのに、自分が投稿すると4ヶ月も放置されるのではたまらんので、編集部に確認のメールを出す。次の地がき論文は10月17日、トドマツ種子散布論文は11月11日、ウダイカンバ繁殖成功論文は12月20日である。ううむ、結局、全てが年越しとなってしまったか・・・。目覚ましテレビによれば、しし座の今日の運勢は最悪らしい。何でもやり残した仕事がのしかかってくるとか、なにやら今年を象徴しているような・・・。

・さて、トドマツ交雑論文の改訂作業にかかる。午前中から修正作業にかかるが、イントロ、マテメソ、結果、考察とそれぞれにかなりの部分を改訂したため、意外と時間がかかった。お昼をはさんで再び執筆作業。イントロの論理構成はだいぶ固まったようだが、考察に少々甘いロジックが残されているようである。しかし、自分自身で検討できる段階はほぼ終了したように思われるので、Iくんに返却して確認してもらった後に、筑波のこれまたIさんに見ていただくことにする。

・立て続けに、審査中のD論2つの修正パートが到着。昨日、指摘したばっかりだが、もう送ってもらわないと間に合わんという、お互いにタイトなスケジュールである。はい、読みます・・・。

・突然思い出したが、投稿論文執筆講座にゲスト参加していただいた東京のIさんのマルハナバチ的な(?)ホームページを紹介させていただく許可(?)が降りたのであった。ところで、なぜか本日登場した人物のイニシャルは全てIだ。ちなみに、朝一番にお電話を頂いたのも東京のI先生だった。ま、そんなことはともかく、このホームページ、全体的にバランスが取れていて、写真やデザインもとても素敵である。少しは参考にして、自分のホームページのレイアウトも改訂したいところ、なんだけど・・・。

Stacy (2001) Amer J Bot読解

2007-12-22 | 研究ノート
・東京とんぼ返り。昨日は、ゼミと忘年会に出席。ゼミでは、光環境とアオキの繁殖様式の関係とか、「サイバーフォーレスト」なるものの紹介など、相変わらず多彩である。忘年会は、なんと浅草橋からの屋形船がその舞台。船からみる夜景も実にきれいで何とも風流ではあるが、時に少し揺れるのが”玉に瑕”か・・・。

・機内では、Stacy(2001)Amer J Bot を久しぶりに読んだ。この研究は、Waser & Price (1989) Evolutionの実験を高木種・大スケールで行ったものということができそうだ。対象樹種はSyzygiumとShoreaの熱帯の高木種2種(散布型はそれぞれ鳥と風)で、各樹種3母樹に対して、Syzygiumでは、自殖、135m、500m、1km、12km、Shoreaでは、自殖、25m、2km、10km、35kmと5つの異なる距離階級に分布する個体の花粉を人工交配させて、結果率、圃場での発芽率、実生生存率、1年生苗のサイズ、Cummulative fitnessを測定している。

・どのくらいの母樹-父親距離で子のパフォーマンスが良くなるかを検討したところ、自殖のパフォーマンスが低いのは当然として、近隣木との交配もパフォーマンスが落ちる。これはもともと遺伝構造があるため、二親性近交弱勢の結果だと考えられる。興味深いのは、いずれの樹種でも数kmの個体と交配したときにできた子のパフォーマンスが最もよく、数10km離れた個体との交配では子のパフォーマンスが下がることである。これをStacyは遠交弱勢と呼んでいるが、高木種で遠交弱勢が生じる証拠を提示した点で本論文は新しい。

・もっとも、きれいな結果が得られているのは結果率で、発芽率や1年生の生存、成長では、交配距離の影響は消滅している。振り返って、トドマツ交雑論文では、まず針葉樹で遠交弱勢(local x locaと比べての・・・)が認められること、19年という長期間が経過しても、その効果が消滅しないことであろう。論文の位置づけという点でこの論文はやはり重要だ。少し丁寧に引用することにしよう。

オーパ

2007-12-20 | 研究ノート
・昨晩、「開口健」の名著”オーパ”の高橋昇カメラマンが亡くなったというニュースを報道ステーションで見たので、本棚から”オーパ”を取り出して久しぶりに眺める。”アマゾンの釣り紀行”、と一言では片付けられないこの本の写真は、たしかに凄みのようなものが感じられる。文章も冴え渡っていて、本当にアマゾンに行きたくなってしまう本である。

・さて、見切ったと思っていた査読だが、ちゃんと読むと、やはり手をかけねば終わるはずもなく・・・。10時ぐらいまでかかってようやくコメントを書き終えて、編集者に送信。そんなこんなで、昨日とは打って変わって、スロウな一日である。とりあえずちまちまと講義準備。遺伝子頻度、ヘテロ接合度の算出のための設問作成に手間取る。しかし、”Introduction to Conservation Genetics”という教科書は、この辺の説明が実に分かりやすい。この本に載っているTarr et al. (1998) Mol Ecolのフィンチのデータを使うのが一番良さそうだということで、論文をダウンロードしたり、フィンチの下調べをしたり・・・。やっぱり生物の姿が分からないと、論文の内容もなかなか頭に入らない。

・投稿論文執筆講座の一部をWeb上にアップする。ついでに、講義で使用したプレゼン資料も掲載してみる。そんなことをやっている暇があったら、先にやることがあるだろう、と自分で自分に突っ込みを入れたくなってしまう。昔から宿題とかをやらなきゃいけないときに限って、急に机の片付けとか始めちゃたりしたりするんだよねえ。投稿中の論文に関する記述をだいぶ削ってしまったので、少々、物足りなくなってしまった。Webページにも書いたけど、「どうしてもフルの読本が見たい」という奇特な方(?)がいれば、お送りしますのでご一報を。

・長らく放置していた58林班のアカエゾマツの試験地の測定データを入力。この試験地は、実は(?)、湿地林(8林班,680m標高)と高山帯(9林班,1100m標高)の産地試験となっていて、環境の異なる産地間の比較ができる設計である(単木混交)。さくっとみたところ、2006年の段階では、根元径・苗高ともに、実は高山帯の方が有意に大きいが、2007年の段階では、根元径はやはり高山帯の方が大きいものの、苗高は湿地帯が追いつき、有意ではなくなっている。

・試験地を設定した当初は、実は、低標高・湿地産が勝つと予想していた。それだけに、高山帯が勝つとは意外である(もしかしたら追い越されるのか・・・?)。ブロックや母樹の効果などをもう少しきちんと解析すると結果も変わるかもしれないけど。全体的に見て、生存については問題なさそうなので、これからの成長経過が楽しみの試験地である。

再建築

2007-12-19 | 研究ノート
・Iくんから窒素や葉面積などの解析結果が送られてきた。頃合やよし、ということで、それを元にトドマツ交雑論文を改訂する。赤を入れていくとイントロも想像以上に大きく変更することになった。イントロの第一パラグラフはようやくタイトになり、だいぶん満足である。考察も構成を大きく変更。随所に、昨日紹介した論文も引用した。

・英語の論文の場合、慣れないうちは、一度書いた文章をなかなか壊せなくなってしまうものだが、1週間くらい時間が経つと自分の文章の粗が見えてくる。叩き壊しては再構築することが肝要である。午後3時過ぎに改訂作業がひとまず完了。Iくんに送信し、今後のスケジュールを決める。年末までに草稿が完成する希望的観測。



・夕食時の晩酌のつまみにチコリーが登場。この野菜、そのまま食べても瑞々しいのだが、イクラをのせて食べると絶妙である。アボガドとわさびを乗せてもいけそう・・・。天心農場というところで栽培されているそうな。新しい味、発見である。

Kitzmiller (2005) Forest Science発掘

2007-12-18 | 研究ノート
・今年度は、27日から店じまいの予定である。ということで、考えてみれば、職場に来るのは、あと4日しかない。あたふたと、出張命令とか年末の休暇届など、事務的処理を済ませる。

・再び標高別の関連論文集めを行う。coniferとelevationとcommon gardenなどで検索するよりも、coniferの代わりにpinusとかabiesといった属名を入れた方がうまくヒットすることが分かった。seed transferなどで探してみると、標高域で種子配布区域を制限した方がいいとする考え方はアメリカやヨーロッパではかなり古くからあるらしいことが分かってきた。

・集めた論文の中では、Kitzmiller(2005)によるポンデロサマツの産地試験に関する論文が参考になりそうだ。場所は北カリフォルニアのシエラネバダ山脈で低標高(といっても1000m)と高標高(1500m)の2サイトで、いくつかの地域や標高域を含んだ17産地によるProvenance試験を行っている。低標高では自生苗がいいパフォーマンスを示すが、高標高域ではむしろ移植苗の方がいいパフォーマンスを示している。

・トドマツでは低標高でも高標高でもいずれも自生苗がいいパフォーマンスを示しているので、結果としては逆である。頭で考える限りでは、高標高域こそ自然選択が厳しいので、自生苗の有利性が発揮されそうなものなんだが、カリフォルニア全体がマイルドだからなのであろうか・・・。この論文の最後では、種子配布区域について考察を行っているのだが、高標高サイトにおける移植苗のパフォーマンスの良さからか、少々、どっちつかずの結論となっている。

・論文のイントロでは、種子配布区域と標高の関係に切り込んだ先行研究も紹介されており、非常に参考になりそうである。北カリフォルニアの場合、緯度よりも標高の方がより厳しい種子配布区域を設定すべきという考えがあるそうで、ポリシーとして地理的距離で80kmなのに対して、標高では152mでゾーニングするというポリシーが一般的となっている(現実的には守られていない、のか??)。ともかく、かなり詳しい種子配布区域のマップも掲載されており、各国の事情の違いが分かって面白い。

・この論文の考察では、低標高のサイトでは早期(5年生)のパフォーマンスと25年目の結果は非常に相関が高かったが、高標高では5-12年生の結果と25年生の樹高成長はかなり異なり、20年生と25年生では似ていたことから、20年以上の長期研究が必要だという結論が導かれている。これは、トドマツ標高別でも使えそうなロジックである。この原著となっているConkle(1973)Forest Scienceの古い論文も集める必要があるねえ、これは・・・。

モデル選択

2007-12-17 | 研究ノート
・朝起きると、車の上には雪が5cm以上もはらりと積もっている。こういう雪のときは窓ガラスは凍らない。しかし、そろそろ起床してからの最初の仕事が”雪はね”という時期になりそうである。



・午前中、会議室にて閉じこもっての1時間ほど打ち合わせ。ようやく一連の作業が完了。ようやく解放されたところで、トドマツ標高別の解析に戻る。結局、低標高植栽と高標高植栽に分けるか、ということで元に戻るが、730mの扱いが相変わらず厄介である。おそらく、ネズミとか風害の”想定外の”要因で異様に生存率が悪いために、かえって930mや1100m植栽よりもパフォーマンスが低い。

・あれこれと操作してみたものの、主観的に低標高と高標高を区別してしまうところがどうしても気に入らない(そもそも、どういう風に区分するのがいいかを調べたいわけだし・・・)。ということで、種子産地、標高差を説明変数にしつつ、さらに植栽地も要因として入れてしまう技を考えついた。こうすると、各植栽標高別に推定値が計算される。

・相変わらず、730mが変な挙動を示すのは文章として説明すればいいとして、このモデルの方がすっきりと結果を見せることができそうだ。生存率からみれば、530m以下と730m以上には圧倒的な違いがあり、樹高成長からみれば、730mはちょうど中間に入るといったところである。これをどう解釈するかが問題だが、いずれにしても700m付近の標高の取り扱いは注意が必要ということにはなるだろう。

・と、もう一つの審査D論が届いて、現実世界に引き戻される。そうでした、これもちゃんと読まないといけないわけで・・・。試しに、100ページを超える英文を2冊を小脇に抱えてみると、軽くめまいが。

・午後にOBのKさんが訪ねてきてくださった。このお方こそ、トドマツ標高別試験地の仕掛け人である。ちょうど解析していたところだったので、「これ幸い」と細かいところを色々とお聞きする。開芽時期には種子産地による明瞭な違いがなかったというのは間違いないらしい。なるほど、生に近いデータも公開されていて、2年生時点では、4月30日からの起算日数が530m産の11.6日に対して、1100m産で11.8日である。

・しかし、「冬芽形成は早かったかも」というお話も伺う。データはと見れば、冬芽形成は530m産の33.9日に対して、1100m産では29.2日となっている。生育期間でも530m産の53.3日に対して1100m産が47.9日となっており、高標高産の次代苗の方が明らかに短い。ということで、生育期間が一因とする論旨には問題がなさそうである。

・ところで、重大なことに気がついたのだが、これまで交雑試験地に使用された高標高母樹の自生標高を1100mと呼んでいたのは、実は1100mと1200mの両方が混じっていたことが判明。っていうか、科研報告書の記載が間違っとる。危ないところであった。交雑に使用した母樹については、樹木園と東山に接木苗セットがあるということで、F2を作出できる可能性が出てきた。しかし、花粉親については残念ながら接木しなかったらしい。これは、少々残念である。

・それにしても、こうして先輩方の素晴らしい偉業のおかげで、面白い論文が書けるわけなので、本当に感謝しなくてはいけない。美唄のKさんではないが、果たして自分が何か将来の後輩たちに何を残せているのか・・・、反省する年の暮れである。