東日本大震災から1年。未曾有の震災を経験した日本。1年を経て、復旧・復興はどうでしょうか。特に、原子力発電所の問題は?世界的な科学雑誌といえば、ネイチャーとサイエンスです。我々のようなライフサイエンスの研究者も、ネイチャーとサイエンスに掲載されるような研究をしたいと考えている雑誌です。この2つの世界を代表する科学誌が今週、そろって最新号の表紙に東日本大震災関連の写真を掲載したそうです(ASAHI.COM)。8日付英科学誌ネイチャーは、津波被害に遭いながら生き残った岩手県陸前高田市の「奇跡の一本松」を使い、「がれきからの復興」との見出しを添えたそうです。また、9日付米科学誌サイエンスは、事故前の2010年8月に撮影されたという東京電力福島第一原発のプルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料用の冷却プールの写真を採用し、炉心溶融に関する記事などを掲載したそうです。世界も日本の今後を注目しているということですね。
先日、インフルエンザウイルスが人間の体内で増殖する際の鍵となるたんぱく質が発見されたというニュースが報道されました(YOMIURI ONLINE)。インフルエンザウイルスは、人間の細胞に侵入すると、細胞側の様々なたんぱく質と結びつくが、増殖の際に、どのたんぱく質を利用するかは不明だったそうです。そこで細胞のたんぱく質のうち、エネルギー生産を担う「ATP合成酵素」を構成する「F1β」に着目し、F1βの量を減らす操作をしたところ、細胞から出てくるウイルスが減少するのが確認されたというのです。ATP合成酵素は、細胞内のミトコンドリアに多くあります。ウイルスは細胞膜に含まれるF1βを利用して増殖していたということです。また、このメカニズムはA型、B型インフルエンザに共通だったということも明らかになったそうです。より効果的な新薬の開発につながる研究成果ですね。
高血圧などで血管が傷つくと炎症を起こし、動脈硬化の要因となるため、血管の最も内側にある血管内皮細胞で炎症反応が出ないような遺伝子操作を行ったところ、平均寿命が通常より3割も延長したマウスが作成できたという先日ニュースが報道されました(YOMIURI ONLINE)。通常はマウスの寿命は平均で約1年9か月から2年程度です。この遺伝子操作で作ったマウス約20匹を比較したところ、平均寿命が約2年3か月であったそうです。平均して3割程度の延長が認められ、最長で約2年8か月生きたマウスもいたそうです。この遺伝子操作により、筋肉内の血流と活動量が上昇したとも。カロリー制限は寿命を延長させることは知られていますが、今回の実験ではカロリー制限はしていないそうです。ということは、血管内皮細胞の炎症を抑える新薬を作れば、長寿になるかも?
先日、血液型がO型の人は、十二指腸潰瘍のできやすさが他の血液型に比べて1.4倍であるというニュースが報道されました(YOMIURI ONLINE)。十二指腸潰瘍患者と健常者計約3万3000人の遺伝子の違いを調べたところ、血液型を決める遺伝子がこの潰瘍のできやすさに関係していることがわかったというのです。O型の遺伝子をもつ人は、日本人に最も多いA型に比べて1.43倍、この病気になりやすかったそうです。B型やAB型は、A型とほぼ同程度だったそうです。血液型は、赤血球の表面にある表面抗原というタンパク質の存在や種類で決まる。共通の遺伝子でつくられる同じ物質が腸の粘膜にもあり、潰瘍の原因となるピロリ菌が付着する目印になっている可能性があるそうです。さて・・・・・。
切断された神経の再生を促すタンパク質が発見されたそうです。「SVH」と呼ばれるタンパク質で、このタンパク質を作れないようにすると再生がおきないものの、過剰に作るようにすると再生する確率が大幅にアップするというのです。もともと末梢神経は再生可能と言われていますが、その確率が問題でした。今回の発見によりひょっとすると末梢神経だけでなく中枢神経の再生にもつながるかもしれません。ただし、今回の研究で用いた生物は線虫です。まだまだヒトへの道のりは長いかもしれません。
ビタミンEを摂取しすぎは骨粗鬆症を誘発する危険性があるという研究結果が発表されました。ビタミンEは脂溶性ビタミンの1つで、抗酸化作用があることが知られています。そもそも脂溶性ビタミンは過剰摂取は様々な副作用を引き起こすことが知られていますので、摂取には注意が求められています。今回の過剰摂取については、さらにその基準を下げるべきだというもののようです。ビタミンEは骨を壊す破骨細胞を活性化するということで、今回の研究結果となっているそうです。ちなみに化粧品にもビタミンEを含んだあるいはビタミンEの効用をうたったものがあります。ハンドクリーム等にも含まれているものがあると思います。脂溶性なので、皮膚から吸収されやすいので、こちらも適度に使用するというのが良いのかもしれません。でも、経皮的な吸収量はあまり気にしなくてもよいのでしょうか。
栄養が貧困で「海の砂漠」とも呼ばれる熱帯や亜熱帯の海でサンゴが成長する仕組みが解明され、栄養の供給経路は水温の変化などに応じて主に2ルートあることが分かったそうです(毎日jp)。サンゴはクラゲやイソギンチャクと同じ仲間で、サンゴ礁を形成する種類は「造礁サンゴ」と呼ばれるそうです。共生する褐虫藻が光合成で作った栄養分や、触手が採取するプランクトンなどを餌にしていることは知られていたそうですが、生育域付近の海では生物が生きるのに必要な元素(栄養塩)が十分になく、褐虫藻やプランクトンがどこから栄養塩を取っているかを含め栄養の供給経路は長年の謎だったそうです。そこで、造礁サンゴの骨格には木の年輪のように成長時期の栄養状態が記録されることに注目し、石垣島と沖ノ鳥島で採取したサンゴ骨格に含まれる質量の異なる窒素(窒素同位体)の比率を分析したところ、水温が低い時期は栄養塩が豊富な深層水と、高水温期は表層水と窒素同位体の比率が近かったそうです。したがって、サンゴは低水温期や台風の時には深層水に由来する栄養塩を取り込み、高水温期には大気から窒素を取り込む細菌類から微量な栄養を得ていると考えられると考えられるそうです。また、石垣島のサンゴの分析では、河口に近いサンゴほど窒素が多く、人間生活の影響も確認されたそうです。
群れで生活する魚の中に厳密な夫婦関係を保っている種があることを世界で初めて確認したそうです(毎日jp)。「ペアボンド」(夫婦の絆)を維持する魚は通常、2匹だけで縄張りをつくるそうです。群れでのペアボンドは確認が困難で、研究例はなかったそうです。研究は、アフリカ中部のタンガニーカ湖のカワスズメ科の熱帯魚(体長約5センチ)に注目したそうです、この魚は数千匹の群れをつくるそうですが、メスが卵や稚魚を口の中で育て、体長9ミリ程度になると一部をオスの口内に移す習性があるそうです。そこで、23匹の成魚(オス14、メス9)と口内の子供72匹のDNA型を鑑定したところ、成魚の口の中の稚魚はいずれもその成魚の子で、両親も同じであることが分かったそうです。つまり、夫婦をしっかりと認識しているということですね。
先日、口臭の主な成分である硫化水素を使って、人間の歯の組織から肝臓の細胞を効率よく作ることに成功したというニュースが報道されました(YOMIURI ONLINE)。虫歯の治療で抜いた歯を使って、肝細胞を作製することにつながる成果だそうです。硫化水素と言えば、あの温泉の独特のにおい、卵の腐ったような臭いがする有害物質ですね。研究は、歯の細胞に対する硫化水素の有害性を調べるなかで、細胞の変化を促す働きを発見したそうです。歯髄と呼ばれる歯の内部組織から、様々な細胞に変化できる幹細胞を取り出し、化学物質などを添加することで肝細胞の作製に成功しました。さらに微量の硫化水素を加えたところ、2~4倍効率よく肝細胞に変化し、硫化水素を加えた方が、細胞の形や肝機能も良かったそうです。この硫化水素が肝細胞に効率よく変化させるメカニズムは、詳しく分かっていないそうでです。この研究、そもそも口臭研究から派生したものだそうです。アイデアは意外と身近な所に・・・・・。
喫煙者はたばこを吸わない人に比べ糖尿病になりやすく、禁煙しても5年未満だと発症リスクは高いまま、という調査結果が発表されました(MSN産経ニュース)。この調査は、国立がん研究センターを中心とした研究チームが行ったものだそうです。調査は、10都府県の40~69歳の男女計約5万9千人を1990~2003年の期間で10年間にわたり追跡したそうです。喫煙者は男女ともに、たばこを吸わない人と比べて糖尿病を発症するリスクが高い傾向があることが裏付けられたというのです。禁煙して5年未満の場合、女性は吸わない人に比べ発症リスクが2・84倍、男性は1・42倍と高いままだったとも。男性を対象とした分析では、禁煙前に吸っていた1日当たりの本数が多いほどリスクは高く、1日25本以上だと2・15倍と判明したそうです。