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豊橋創造大学大学院健康科学研究科生体機能学のつぶやき

神経再生には痛みが必要

2012-10-24 08:30:14 | 研究
痛みを抑えるために主に脳内で作られる物質(脳内マリファナ)が、切断された神経の再生を妨げる働きもすることが分かったそうです(ナショナルジオグラフィック)。神経再生のためには“痛み”も必要なのかもしれないということのようです。ヒトの体内でも、けがをした時などに痛みを和らげるために脳や末梢神経などで作られるマリファナに似た構造の物質「アナンダミド」の作用に着目した研究で明らかになったそうです。神経軸索を切断した線虫(C.エレガンス)では約65%の軸索が再生したが、アナンダミドを投与した線虫では約25%しか再生しなかったというのです。アナンダミドは「三量体Gタンパク質」と呼ばれる細胞内の因子を介して、軸索再生のシグナルを妨げていることも突き止められたそうです。今回の研究結果は、直ちにヒトにも当てはまるものではありませんが、アナンダミドによる同様な作用はヒトでも起きている可能性があり、ヒトの体内で合成されたアナンダミドの量が多いと、より強い鎮痛反応を誘導し、同時に軸索再生も阻害することが推測されるそうです。このことは、切断神経に痛み(再生痛)がある方が、神経機能の回復が起きやすいという臨床的な経験則にも符合しているそうで、欧米などで神経性疼痛の治療に用いられている医療用大麻などの投与は、もしかすると痛みの緩和と引き換えに軸索再生を阻害している可能性があるそうです。我々が行っている筋損傷からの再生実験と同じような見解になりますね。興味深いです。
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