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「本当は怖い動物の子育て(竹内久美子)」という本はとてもオススメ!

2013年09月06日 01時00分00秒 | 
<金曜は本の紹介>

「本当は怖い動物の子育て」の購入はコチラ

 この「本当は怖い動物の子育て」という本は、動物行動学研究家が書いた本で、具体的に様々な動物の例を示しながら、まずはいかに動物が効率よく子孫を残すようにできているかを説明しています。

 種の保存ではなく、あくまで自分の遺伝子のコピーをいかに残すかということで動物は存在しているということにはナルホドと思いましたね。

 一見不思議に思える動物の子殺しについても同様の理由のようです。

 そして、人間の子供に対する虐待の内容等についても説明があり、その解決策としてモソ人の母系家族を示し、母親だけでなく、おじ・おばを中心に子育てするというのには考えさせられましたね。

 これを走婚というのですが、生涯で平均7~8人を相手にし、相手のルックスや人柄、若さを求めるので、かっこいい子孫が残るという側面もあるようです^_^;)

特にこの本では以下について書かれていました。

・パンダは双子を産むが基本的には1匹しか育てない(1匹はスペア。最近は双子すりかえ法で双子を育てることが可能となった)
・クマの仲間は冬眠の影響で着床遅延を起こす
・グリズリーは1匹しか生まれなかった場合は育児放棄して次の年に2~3頭産むことに賭けることがある
・ハヌマンラングールというサルは、新リーダーの雄が最初にする仕事は乳飲み子を殺すこと。すぐに自分の子孫を残す必要があることからメスを発情させるため。
・マウスの場合は、新たなオスの登場でメスの妊娠が中断して流産や吸収される
・ジリスの授乳中のメスは、栄養のために仲間の子を食べることがある
・ラッコのオスは、メスの鼻に噛みついて交尾し、排卵を起こさせる(交尾排卵。ミンクは首筋が流血、ネコはペニスにとげがあり引き抜く際に痛み)
・人間には、長い間会えない夫婦、大停電、巨大ハリケーン、クリスマスなど喜びにしろ恐怖にしろ日常的に味わえないような大きな心の揺れを感じると排卵する
・タガメのオスは卵を世話するが、ほかのメスが卵を壊し交尾を求める
ことがある
・コオイムシはオスが卵を背負って育てる
・タツノオトシゴはオスの育児嚢に卵を生ませ、そこで受精させ育てる
(オスは確実に自分の子を育てる)
・タスマニアデビルの子は20~40頭生まれるが、そこで乳首にありつけるのは4匹だけで命がけ
・イヌワシは2つ卵を産み、兄弟で闘い1匹だけ生き残る(二羽とも育てあげるのは
エサに恵まれず難しいため)
・豚の乳首は14個あるが乳がよくでる乳首を巡って子豚に争いがありマイ乳首をゲットする
・チンパンジーのメスは大人になると生まれた集団から出ていくが、乳飲み子を抱えていると発情と排卵が抑制されているため子殺しが起きる
・オオジュリンという鳥は、一夫一妻または一夫二妻の婚姻形態だが、浮気の子が55%いた。しかしオスは浮気の子には育児に手抜きがあった。
・ヒヒのオスはこれぞと思ったメスが抱いている子の世話をして、次の発情のときに交尾の優先権が得られる
・アヨレオ族では、子供を産んだ際に母親が生かすか殺すかを決める。殺す理由は父親のサポートを得られないとき、奇形児の場合、双子の場合(どちらかを殺す)、上の子と年が接近しすぎて育てられない時。ただ母親が年をとると子供を殺さなくなる
・人間の男の場合は、自分の子ではない乳飲み子を抱えた女と結婚・同居したとしても、女が発情して交尾することができるので子殺しはおきにくい。
・モソ人の社会では母方オジが父親の代わりとなり、心強い後見人になっている

 この本は、動物とは何か、子供への虐待を防ぐことについて考えさせられる良い本だと思います。

とてもオススメです!

以下はこの本のポイント等です。

・動物とは、種のためでも、集団のためでもなく、自分の遺伝子のコピーをいかに残すかという命題の下、行動する存在です。いまでに根強い信仰があり、人々が何ら疑いを抱くことなく使っている「種の保存」、「種の繁栄」という言葉ですが、実は既に40年ほど前に否定されています。もし自分の遺伝子のコピーを残すことよりも、種や集団のために尽くすことを優先させる遺伝的性質を持った個体がいたとしましょう。その個体は種や集団のために精一杯振る舞うことで、どうしても自分の遺伝子のコピーを残すという面がおろそかになってしまう。周りの者に大変「献身的」なその個体は、とにかく自分の遺伝子を残すことだけを目的として振る舞うという、いわば「自分中心」の連中との遺伝子を残す競争に破れ、消え去ってしまうのです。種のために行動する個体など決していない。種は結果として残っているにすぎないということになるのです。

・ツキノワグマの交尾期は6~8月。その期間に卵の受精が起き、すぐに着床してしまうと秋頃に出産ということになります。子はすぐに冬ごもりせねばならず4ヶ月以上もの冬ごもりの間に、絶食中の母親がお乳を与えざるをえなくなってしまう。そんなことは無理です。結局のところ、食べ物が豊富な春に母親がいっぱい食べ、いっぱいお乳を出せるよう出産の時期を延期したい。しかし一方で食肉目の特徴として、妊娠期間が本来とても短い。どうしたらよいものか。その解決策こそが、着床遅延でした。受精はしたが、長らく着床を保留状態にし、結果的に妊娠期間を延ばす。着床遅延とは、まずはスケジュール調整のためというわけなのです。

・アメリカクロクマやグリズリーの子は普通、2~3頭かもうすこし多く生まれることもあるのですが、問題は一頭しか生まれなかった場合です。その子を遺棄する、つまり育児放棄することがあるというのです。なぜこんな理解に苦しむような行動をとるのでしょうか。一頭とはいえ、せっかく生まれた子なのです。その理由は彼らの出産間隔の長さが関係しています。出産の間隔は、アメリカクロクマでは2~4年、グリズリーで4~5年です。この長い間にはほ乳類の大原則である、母親が子に乳を頻繁に与えていることにより発情せず、排卵も起こらないという状態が続きます。もし、一頭で生まれてきた子をきちんと育て上げようとすると、次に子を得るチャンスは、アメリカクロクマでは最悪で4年後、グリズリーで5年後になってしまう。しかし、一頭だけ生まれた子の育児を放棄してしまえば、その年の交尾期に早くも発情し、次の子をつくることができるのです。とすれば二頭、あるいは三頭を得られるでしょう。こちらの選択の方が断然有利に自分の遺伝子のコピーを残すことができる。それがために、ただ一頭しか子が産まれなかった場合には、とても育てる気になれない、育児放棄してしまおうという遺伝的プログラムが進化してきたのです。

・ハヌマンラングールというサルのリーダーは、エルノスケというオスザルに完全に群れから追放され、子どものうちでもオスは父の敗走に従いました。そしてオスグループのうちエルノスケ以外の面々は、せっかく戦いに参加したというのに、エルノスケによって追放されてしまいました。元のハレムのメンバーのうち、残っているのはメスと、子どものメス、そして性別とは関係なく、まだ母親の乳を飲んでいて、その胸に抱かれている乳飲み子です。そんなときに「事件」は発生します。新しくリーダーの座についたエルノスケが真っ先にしたこと。それが乳飲み子を殺すこと。子殺しです。初めのうちはエルノスケから我が子を守ろうと必死に逃げ回るメスたちですが、体力の差もあり、とてもではないが守り切ることはできません。抱いていた我が子は次々に咬み殺されてしまいました。しかし驚いたことに、一週間かそこらすると、メスたちはぶるぶると首を震わせ、他でもないその犯人に対し、尻を向けて交尾を促すポーズをとるようになったのです。ほ乳類のメスには普通、子に頻繁に乳を与えている限り、子が乳を吸うという刺激によって、発情もしなければ、排卵を抑えられるメカニズムがあります。しかし乳を吸う者がいなくなってしばらくすると、発情と排卵が再開されるのです。ここで子を殺された母親の豹変ぶりを責めることはできません。我が子を守りきることができないのであれば、次善の策としては、できるだけ早く発情して新しいオスとの間に子をつくる。それ以外に自分の遺伝子のコピーをよく残す道はないのです。乳飲み子を殺した新リーダーを責めることも、やはりできません。もし彼が随分お人好しな性質であり、旧リーダーの乳飲み子を殺さず、彼らが離乳するのを待っていたとしましょう。ハヌマンラングールの授乳期間は1年くらいに及ぶので、その間ずっと待っていなければ交尾のチャンスは巡ってきません。しかもそうこうするうち、今度は自分の体力が衰えてハレムから追放される立場となり、まったく子を残さないまま立ち去ることにもなりかねません。実際、リーダーの交代劇は早くて1~2年で起きているのです。そんなわけでこのようなお人好しの性質や行動がオスに備わるよう進化することはありません。逆にハレムを乗っ取ったら即、子殺しをするという遺伝的プログラムだけがよく残ってきたというわけなのです。ハヌマンラングールの子殺しに似た例はライオンにもあります。群のリーダーが、群の乗っ取りによって変わっていくようなタイプの社会を持つほ乳類を見つけたら、まず間違いなく子殺しが行われているでしょう。

・発情したマウスのメスをオスと同居させ、交尾が終わったところでオスをメスから引き離します。しばらくしてそこへ新たなオスを同居させる。メスは前のオスの子を妊娠しているものの、まだ出産しておらず、もちろん乳飲み子もいない。さてどうなるでしょうか。実はマウスなどの場合には、新たなオスの登場によってメスの妊娠が中断してしまい、胎児が流産となったり、吸収されたりしてしまうのです。これをブルース効果といいます。このブルース効果の持つ意味は、オスの側からすれば、まさにハヌマンラングールの子殺しの「早め」版。メスに一刻も早く自分の子を産ませるという意味があります。では、メスにとってはどうかというと、もし今妊娠している子を産んだおしても、たいていのほ乳類の定めとして新しいオスによって殺され、そのオスとつがうことになる。どうせそうなる運命にあるのなら、早々に流産して、新しいオスとの繁殖を一刻も早く実現させる方が、エネルギーの面で得だということになるのです。実際、新しいオスと同居したメスは、わずか数日で発情を再開します。

・ジリスのすべてのメスが、他人の子殺しをするわけではありません。子殺し犯は少数派です。彼女たちは何のために子殺しをするのでしょう。このようにメスが”犯行”に及ぶのは、彼女が授乳中のときに限られていました。また殺すおいっても手当たり次第に子を殺しているわけではなく、数頭の子のうちの一頭程度です。そういうわけで、自分の子の将来の競争相手をあらかじめ抹殺しておこうということではなさそうです。子を殺された母親が、巣を立ち退くかというと、そうではありません。すると子を殺し、その空いた場所へ自分の子を移住させようとしているわけでもない。結局、子殺しをするメスがちょうど授乳中であるということがポイントでした。授乳中には栄養が、特に動物性タンパク質が必要になる。そのために、食べることを目的として子を殺しているのだろうと考えられるのです。

・ラッコのメスが背を反らすと、オスは背後からメスの鼻に噛みついて離しません。こんな手荒なステップを踏まないと交尾が成立しないのです。実際、メスが負う傷は相当な深手で、傷跡が残るほど。鼻に傷を持つラッコのメスがいたら、彼女は少なくとも交尾の経験があり、おそらくは出産の経験もあるのでしょう。ラッコと同じように、交尾の際にオスがメスに深手を負わせるのはミンクです。この場合には首筋が標的となり、やはり流血の惨事となります。実はネコも、ラッコやミンクほどではないものの、交尾の際、メスが痛い思いをします。ネコのペニスには、根もとに向かってトゲが生えていて、挿入時には何ともないのに、引き抜く際にメスに激しい痛みを与える。メスは「ギャー」と一声あげ、振り返ってオスをにらみつけます。なぜメスは、わざわざ痛い思いをさせられるのでしょう。それはこれらの動物では、交尾の刺激によって排卵が起きるからです。これを交尾排卵といいます。つまり、オスはメスに激しい痛みを味わわせることによって、より効率よく排卵を起こさせようとしているのです。交尾排卵の動物は、イタチ、ネコ、ウサギ、そしてジャイアントパンダを含む、クマの仲間などです。実は交尾排卵である動物はオスとメスが普段別々に暮らしているということがポイントです。

・長い間会えない人間の男女や、大停電、巨大ハリケーン、クリスマスなど喜びにしろ恐怖にしろ、日常的にはまず味わえないような大きな心の揺れを人々が感じると、女は思わず排卵してしまうようなのです。痛みではない別の刺激が排卵を促しているのではないか。人間も、交尾排卵に似た部分を持っていると考えられるのです。

・タガメのオスもメスも1回の繁殖シーズンの間に複数の相手と交尾し、メスは最大で4回くらい繁殖できます。オスが卵を世話し、孵化させるまでの期間(10日くらい)よりも、メスが次に産卵する準備が整うまでの期間の方が短いのです。当然、繁殖市場ではメス過剰の状態に陥ってしまいます。そんなわけで、まだ卵の世話をしている最中のオスの元へ産卵の準備が整った別のメスがやってくることがあります。普段は狩りに使っている頑丈な前脚で、いきなり卵塊をばりばりと壊してしまうのです。オスは破壊を阻止しようとはするものの、何しろメスよりも体が小さいのでムダな抵抗に終わってしまいます。そうするとオスとしては、どうするのか。驚いたことにオスは、憎きそのメスとすんなりと交尾に至ってしまうのです。メスを懲らしめたところで何らメリットはありません。卵はもう生き返ってはくれないのです。オスにとっては今、最も身近にいるメスと交尾することが次の繁殖への一番の近道となるのです。

・コオイムシは日本では本州、四国、九州にすんでいて、体長は2cmくらい。水田や水草の多い池や沼にすみ、小魚やオタマジャクシ、モノアラガイなどの貝を食べています。タガメと同じように強力な前脚で獲物を捕らえ、口吻から消化液を注入し、中身を溶かして食べるのです。5~6月の繁殖期に、オスは中脚を使って波を起こし、メスを誘います。そしてやはりこまめな交尾と産卵を繰り返すのですが、背中に卵を産んでもらうべくオスはメスの体の下に潜り込みます。メスはオスの上に乗っかり、卵を産みつけていく。後脚を使ってオスの体をくるくると回し、産みつけるのに適した場所を探したりもします。オスの体には最大で60個くらいの卵が産みつけられますが、それらにはたいてい複数のメスの卵が混じっています。相手のメスは違っても、背負っているのはそのオスの子であることにまず間違いはありません。だからオスは熱心に世話をし、保護することができるのです。

・オスが紛れもなく我が子だけを得て、しかも保護についても完璧に成し遂げる-この道をついに極めたのは、みなさんがよくご存じのタツノオトシゴです。オスが水面付近で育児嚢の入り口を開くと、メスは輸卵管を差し込んで数個の卵を産みます。オスは育児嚢を閉じ、体を揺らして受精を促す。実は育児嚢の一番上の端に精子の出口があり、卵が産み込まれ、通過していくときに受精が起きるのです。受精はオスの体内で行われるというわけ。これなら、いくら何でも他人の子が育児嚢に紛れ込むなどということはありえません。これがタツノオトシゴのオスが我が子だけを完璧に得るという道を極めた結果です。

・有袋類のタスマニアデビルの子の数は20~40頭にも及びます。育児嚢の中の乳首の数はたった4つだというのに。そこでこの”先着4名”の座をかけ、「米粒」たちが産道の出口から育児嚢まで、命がけのレースを展開することになります。タスマニアデビルの赤ちゃんは母親のもじゃもじゃの毛をかきわけかきわけ、約8cmのレースに命をかけます。4つの乳首にそれぞれ到達した”先着の4名”は、ひとたび乳首に食らいついたら、何が何でも離さない。当然、その他の者たちは飢えて死ぬしかなくなってしまいます。タスマニアデビルの母親はこのように、敢えて過酷な条件を多数の子に課し、乳首にいち早く到達できる、体力、気力に優れた子を選んでいると考えられます。

・チンパンジーは複数のオスと複数のメス、そしてその子どもたちからなる数十頭から100頭くらいの集団をなしていて、婚姻形態は乱婚的です。メスはオトナになると生まれた集団を出て行き、どこかの集団に属する。さらにはその集団から別の集団へと移籍することもあります。この移籍のとき、もし乳飲み子を連れていたなら危険極まりない。乳飲み子を抱えているために発情と排卵が抑制されており、しかもその赤ん坊は彼女の移籍先の集団のオスたちの子どもではないのだから。当然のことながら子殺しが起きます。メスの発情を再開させるのが第一の目的ですが、ハヌマンラングールなどとは違い、チンパンジーの場合にはもう一つの大きな理由がある。食べるため、です。チンパンジーは植物性のものを食べますが、実は肉が大の好物で、普段からアカコロブスやヒヒ類のような小型のサルなどを襲って食べています。だから殺した子どもを食べない方が不自然なのです。子殺しをしたライオンも当然、子を食べています。

・オオジュリンはアフリカ北部からユーラシア大陸、日本にかけてすんでいる、ホオジロに近い鳥です。河川敷、湖や沼の近くの草原や湿原で、草の根元付近に枯れ草を集め、お椀型の巣をつくります。一夫一妻、または一夫二妻の婚姻形態なのですが、それはあくまで形式。オスもメス浮気に情熱を傾けていることは言うまでもありません。DNAフィンガープリント法を使って調べたところ、58の巣のうち、一羽でも浮気の子が混じっているのは50にものぼりました(86%)。またヒナ216羽のうちでは、118羽(55%)が浮気の子だったのです。ところがオスには、こんな信じられない能力がありました。浮気の子どもがどれほど混じっているかを察知。それに応じて、”育児放棄”する。巣の中にいる子が我が子でない度合いが高い場合ほど、全体的にエサやりの頻度が低いのです。実際、オスのエサやりの手抜き加減は、DNAフィンガープリント法を用いて調べた、巣の中に浮気の子がどれほどいるかという割合と驚くほど一致していたのです。

・では、オオジュリンの場合、オスは巣の中に我が子ではない子がどれほど含まれているかをどうやって推定するのか。彼らは、ヨーロッパカヤクドリのトリオのように、簡単にライバルの行動が把握できるわけではありません。いったいどんな情報を利用するのか?それが、メスの怪しい行動。卵の受精の確率が高い時期に、彼女が自分に隠れてどれほど秘密の行動をとっていたかということ。怪しさ、イコール浮気の可能性なのです。オスはそんな複雑な情報を、随分長い期間にわたって記憶することができるというわけなのです。

・似たような行動をサバンナにすむ多くのヒヒのオスがとることが知られています。彼らは時々、これぞと思ったメスが抱いている子にやたらと興味を示し、せっせと世話をやく場合があります。その子はおそらく自分の子ではありません。ではどうしてそんなに熱心に、「優しいオジちゃん」を演じることにしているのか。もちろん下心があってのこと。そのメスと子どもによい印象を与えておけば、彼女が次に発情したときに、交尾の優先権が得られるというわけなのです。

・注目したのは、アヨレオ族という、南米のボリビアとパラグアイの国境付近に住む先住民でした。アヨレオ族は狩猟採集生活と焼畑農業を営んでおり、男は普通、妻の家族といっしょに住み、妻の下の権威の下に置かれます。といっても完全な母系制社会ではないそうです。しかし問題なのは、女が男と正式に結婚するまでの期間です。何人もの男と付き合ったり、同棲したりするのですが、その過程でできた子を、信じられないほどの確率で殺すのです。ある女は17歳から22歳の間に6人の男と同棲し、生まれてきた3人の子を殺しました。24歳のときにようやく正式に結婚すると、その後産んだ4人の子どもはちゃんと育てています。また別の女は6人の子を殺した後に、4人の子に恵まれ、やはりちゃんと育てているのですが、最後の子は何と45歳のときに産んでいました。ちなみに彼女たちの出産は次のような過程を踏みます。出産が迫った女は森に入り、近親の女たちが立ち会う。彼女は枝の上に座るか、枝からぶら下がる格好でいきみ、子は水で柔らかくしてある地面に産み落とされる。近くの地面にはあらかじめ穴が掘られており、もし子を殺すのであれば、人の手に触れないよう、棒で転がして穴に埋める。子を受け入れるのであれば、穴にはその子の胎盤が埋められるー。つまり、先の二人の女性にはそれぞれ、3人と6人の、生まれたばかりの我が子を埋めた過去があるというわけなのえす。なぜこんなにも多くの子を犠牲にした挙げ句、子を産み育て始めるのでしょうか。どういう場合に子を殺すのかという問いに、女たちはこう答えました。まず、父親から確実なサポートが得られそうにないとき。正式な結婚相手ではない男との子どもを殺す理由は、ここにありました。しかし、それ以外の場合でも、次のような場合には殺すと答えています。奇形児や双子が生まれたとき(双子の場合にはどちらかを殺す)。そして、生まれた子が上の子と年が接近しすぎていて、もし育てるとすると上の子の生存が危うくなりそうなとき。いずれにしても育てようとしても育てきれなさそうだとか、既に相当なところまで育った上の子の生存が危うくなりそうなとき、ということらしいのです。この判断は当の女に委ねられており、どう選択しても罰せられることはありません。その判断のための文化や風習、掟が存在しているのです。アヨレオ族では生まれたばかりの子を穴に埋めたことのない女はいないと言います。そして先の二人の女性のように、若いときほど子を殺す確率が高く、年をとるに従いその確率は減っていく。39歳以上になると、まったく殺さなくなります。若いときにはまだまだ繁殖のチャンスはいくらでも残されていて、人生をトータルで、いかに子を残すかという観点で考えればよい。その選択肢の中には、若くして産んだ子は将来の繁殖のために不利になるなどの理由で殺すことも大いにある。一方、年をとるにつれ、将来の繁殖のチャンスはだんだんと減っていきます。そうすると将来の繁殖のために、今生まれた子を殺すなどと言っている場合ではなくなり、次第に殺す確率は減っていくのです。

・子殺しが起きる論点を、デイリーとウィルソンは3つに分類しました。
 論点1 赤ん坊が男にとって、本当に自分の子かどうか
 論点2 赤ん坊の質はどうか
 論点3 現在の環境は、子育てにとって適切か
 こうして並べてみると、論じられている内容はこの本の前半で見てきた動物たちの場合とやはり驚くほどの重なりがあることに気づかされます。

・先住民の社会では子殺しの研究はあっても、虐待についての研究はほとんどありません。貴重な一つの例は、南米パラグアイの狩猟採集民、アチェ族についてのものです。彼らの社会では、実の両親に育てられた子の15歳までの死亡率が19%であるのに対し、実母と継父によって育てられた場合には43%にも達しました。継父が継子に日常的に暴力を振るっている、病気で苦しんでいる彼(彼女)を放っておく、あるいは今一つ十分に食べ物を与えない、などという要素が積み重なり、こんな大きな差となって現れるのでしょう。

・そもそも社会が母系制であると、争いが少なく、穏やかなものとなる傾向があます。父系制であると、たとえば妻が産んだ子がはたして自分の子かどうかと夫は疑い、それは夫の一族全体の問題ともなりますが、母系制ならそんな問題はないのです。女が産んだ子は、絶対のその女の子。子の父が夫であろうがなかろうが、その女の子ども。一族全体から見ても、紛れもなく一族のメンバーであるのです。こうしてみると母系制社会は人々が暮らすうえで、また子が成長するうえで、理想的な面が多いと言えるでしょう。ほ乳類の社会は、母と子の結びつきが強いので母系制であることが基本です。にも拘わらず、人間の社会は父系制であることが圧倒的です。母系制はアマゾンの奥地や太平洋の島々といった、他とかけ離れたごく限られた地域にしか存在しません。それはなぜなのか。残念ながら母系制社会には一つの問題点があるのです。他の部族との争いに弱いということでした。戦うのはもちろん男たちです。その男たちが、母系制社会ではいわばお婿さん連合となり、基本的に血縁関係がありません。かたや父系制社会では、男たちに血縁関係がある。父と息子、兄弟、従兄弟やオジと甥といった者たちの連合です。両タイプの集団が戦ったら、どちらがより結束がかたく、勇敢に戦うのか。言うまでもなく、男たちに血縁関係がある方です。そのようなわけで母系制社会をつくっていると、父系制社会の集団に滅ぼされやすい。こうして母系制社会は滅ぼされていったか、そうなる前に父系制にシフトしていったはずです。今の時代にまだ少しだけ母系制の社会が存在しているのは、そこが他の部族が領土として魅力を感じないような、よほどの辺境の地だからということになるでしょう。

・母系制社会には、人が暮らし、子を育てるうえで実に多くのメリットがあります。若い女が未婚のまま父親のわからない子を身ごもり、出産しても、その子は一族の子に変わりがないということで一族が育ててくれます。女が子連れで離婚しても、出て行くのは男の方なので、子はやはり一族の者たちに保護される。女が子連れで再婚、または事実上の再婚をした際に、子が継父や内縁の夫から虐待される、といった問題も女の一族の監視の目があるためにほとんど発生しません。女がもしダンナの子ではない子を産んでも、これもまた一族の子であることに変わりがなく、歓迎される。ダンナとしては腹立たしく、地団太を踏んだとしても、妻の一族に押し切られる形になります。嫁と姑の確執、小姑による嫁いじめも父系制社会であればこそ発生するものです。

・デイリーとウィルソンが様々な研究を経てもっとも虐待のリスクが高いと結論づけた状況。それが、ステップ・ファミリーでした。彼らはまずアメリカで1976年に全米人道協会(AHA)によって虐待と認定された87,789件のデータを利用し、分析しました。それによると0~2歳の子どもが虐待されるリスクは、「実の親+継親」の家庭、つまりステップ・ファミリーが、実の親どうしの家庭よりも7倍も高いことがわかった。一方カナダ、オンタリオ州のハミルトンでも調査を行いました。すると1983年では、就学前の子どもが虐待されるリスクは、ステップ・ファミリーの方が実の親どうしの家庭よりも40倍も高いという結果が出たのです。アメリカでの値、7倍よりも随分大きな値として出ていますが、それはカナダでの虐待の基準がアメリカよりも厳しく設定されているということ。

・人間の女は乳飲み子を育てながらであっても、”発情”して男を受け入れ、子が殺されないようにするという大変画期的な生理的機能を備えました。それなのになぜ、こんなふうに子が虐待されるがままにしておくのでしょうか。デイリーとウィルソンはずばりこう言っています。「赤ん坊は新しい関係にとっての足手まとい」だから。また、離婚などにより、幼な子を女手一つで必死に育てている女が、新しい男の登場によって豹変。急に我が子を育児放棄し始めたりすることがあります。それは、新しい男との今後の繁殖を有利にし、優先したいから。もし連れ子がいるとわかるとすると、新しい男が急に醒めて、逃げてしまうかもしれない。そうではなかった場合にも、将来子が虐待されることになるかもしれないなど、いずれにしても「足手まとい」になるからなのでしょう。もちろん、すべてのステップ・ファミリーで深刻な虐待が起きたり、ましてや子どもが死に至るわけではありません。むしろ、虐待がない家庭のほうが多いのです。

・モソ人の社会は母系制。ならば男は婿入りをするのかというと、そうではありません。そもそもモソ人には結婚という概念が存在しないのです。走婚と呼ばれる彼らの婚姻形態では、夜、男が女の元へと通います。しかし子が生まれてもなお、同居しない。その点では日本の古代の妻問婚に似ている場合があります。男女の出会いがあるのは、農作業の合間や祭りのとき、あるいは宗教的な集まりの際など。男が女に何らかのプレゼントを渡し、女が受け取ったらOKのサイン。夜、女は花楼と呼ばれる、走婚用の二階の部屋で男を待ち、男は塀をよじ登り、窓から侵入する。このとき、間違った男を招き入れたりしないよう、あらかじめ合図を決めておきます。イヌやニワトリの鳴きまねなどです。男はどんなに疲れていても、明るくなる前に帰らなければなりません。子が生まれるとようやく母屋に出入りし、数日泊まることを許されますが、それでも住むことは許されない。結婚の儀式も入籍もないのですが、子が生まれて初めての満月の夜に「満月酒」という儀式があります。父親の家族(母か姉妹)が母親の家族を訪問し、村人も招いて行うこの儀式で、一応父親のお披露目となるのですが、それだというのに中心人物であるはずの父親は、参加しない決まりとなっているのです。この後、本当の父親が誰なのかが確認される儀式としては、成人式があります。男の子も女の子も満13歳になったら大人と認められ、走婚を始めてもよいとされる。この成人式の後、父親の実家に挨拶に行くことになっています。とはいえ彼らはそこには既に行ったことがあったりするのですが、正式な訪問はこのときだけなのです。

・走婚では別れるのも簡単で、男は女の元へ通わなくなればよいし、「もう来ない」と告げるとか、女の元に置いてあるわずかな荷物を引き上げるだけでもよい。女も男に「もう来ないで」と告げるか、男の荷物を戸の外に放り出してしまう、あういは戸を閉めるなど、男を入らせないという意志を示せばよい。こうして走婚の相手は、生涯に平均で7~8人にのぼるといいまう。相手を選ぶ際、はたして何を重視するかですが、女は男に地位や財産を求めることはないし、その必要もありません。生まれてきた子は、自分と血縁者たちが育てるのだから。その代わり、男本人の人柄やルックスのよさ、才能などを重視します。男も女に対し、ルックスのよさ、若さ、人柄を求める。こんなふうに相手選びをしていると当然のことながら男も女も、美男美女でスタイルがよく、スポーツや音楽などの才能に恵まれてくるよう進化するはず。実際、モソ人はびっくりするくらいにかっこいいのです。モソ人の女は、長期間つきあっている恋人の他に、短期間つきあうだけの恋人も持つことがあります(この短期の恋人については走婚の相手としてカウントされない)。そんな事情もあって、生まれた子の本当の父親が誰なのか、わからないこともあります。しかし女とその家系の者たちにとっては、そんなことは問題にはなりません。その子はその家系の子であることには変わりがなく、家系全体で育てるのだから。子の養育をするのは、母親の他に、母方のオバ、そして母方のオジなどです。母方オジは自身が走婚をしていて、自分の子がよそにいたとしても一切その実子の養育には関わりません。育てるのは、自分の姉妹の子である甥や姪なのです。

・モソ人のような社会を、我々がそのまま真似るわけにはいきません。しかしながら現代社会から子の虐待をなくすための大きなヒントを、彼らの社会から得ることはできるはずです。モソ人の社会でひと際目をひく特徴は、母方オジが子の父親の代わりとなり、心強い後見人になっているということです。彼らは、我々の社会における実の子とまったく変わらないくらいの役割を果たします。いや、父親よりも確実に血のつながりがある、母方のオジ・・・。母方のオジは、母親や母方のオバと同様に同じ女から生まれている。父親違いであったとしても同じ女から生まれていて、子にとって絶対に血がつながっている存在です。ぶっ飛びすぎ、現実的ではない、と笑われるかもしれませんが、我々の社会においても、この母方オジという存在にスポットライトを当ててみるというのはどうだろうか、と私は思います。男には、自分の姉妹が産んだ子である、甥っ子、姪っ子を、「オジばか」と言えるくらいに溺愛する人もいることを私はよく知っています。そしてそもそも男が、姉妹の産んだ子をそこまで可愛がるという心理が進化したのは、彼らと確実に血がつながっているからこそなのです。


<目次>
はじめに
第1章 パンダの育児放棄
 アメリカ探検隊の狙い
 アドベンチャーワールドはなぜか高打率
 双子の「良い方」にだけ
 「すりかえ」育児の劇的効果
 お乳の量が物語る「戦略」
第2章 クマの産児調整
 ときを待つ受精卵
 子どもを産むのにまずい時期
 まだある着床遅延の意味
 一頭しか生まれてない!
第3章 ハヌマンラングールの子殺し
 ハレムに生きる宿命
 新リーダーが真っ先にすること
 メスの秘策は「ブルース効果」
 ゲラダヒヒの出産ラッシュ
 私の飼育ケージの中で起きたこと
 隣のオバちゃんにご用心
第4章 ラッコの暴力行為
 鼻にキズ持つメスは
 交尾排卵とはなにか
 交尾排卵は人間にも?
第5章 タツノオトシゴの自己改造
 こまめすぎる交尾
 「凶悪」メス、あらわる
 卵は背中に産んでくれ!
 メスから「子宮」を奪ってまで
 とにかく大きなメスがいい
 出産前夜の怖い真相
第6章 タスマニアデビルのキョウダイ殺し
 生き残るのは”先着4名”
 巣のなかの一騎打ち
 ブタの赤ちゃんと乳首”格差”
 口裂け魚の好物は
 マグロ完全養殖への難関
 共食い屋が生まれる環境
第7章 オオジュリンの浮気対抗術
 一夫一妻制はタテマエ
 「怪しい」データを収集
 「ヘルパーさん」の下心
 「母親スイッチ」は人間の願望
第8章 先住民たちの虐待
 南米アヨレオ族の掟
 子殺しが起きる3つの論点
 人間が回避したリスク
第9章 赤ちゃんか、”精励”か
 むき出しの好戦的民族
 少女の下した決断
 スティングと日本人支援家
 母系制社会で女が離婚すると・・・
 母系制社会vs父系制社会
第10章 母親たちは進化したか
 児童虐待はいつ「罪」になったか
 危険度合いが跳ね上がるとき
 赤ん坊は「足手まとい」?
 アメリカ人も、日本人も・・・
 オーソドックスな虐待要因
 現代ならではの3つのリスク
第11章 壮絶事件の根と芽
 「双子」に重なったリスク
 「子どもがいなくなればいい」
 障害としつけのはざまで
 「なぜ末っ子だけを?」に答える
 里子はなぜ難しいのか
おわりに-虐待がありえないモソ人に学ぶ

面白かった本まとめ(2013年上半期)

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