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「炭水化物が人類を滅ぼす【最終解答編】植物vs.ヒトの全人類史」という本はとてもオススメ!

2018年01月12日 01時00分00秒 | 
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「炭水化物が人類を滅ぼす【最終解答編】植物vs.ヒトの全人類史」という本は、ベストセラー「炭水化物が人類を滅ぼす」から4年後にまとめられたもので、以下の大きく4つについて書かれています♪

(1)糖質制限の紹介
(2)糖質制限に関するアンケートの分析
(3)前作で未解決だった問題を解明
  ①インスリンの働きの真実
  ②最近の和食は本当に長寿食なのか
  ③「食べ物=カロリー」仮説の真実
  ④先史人類からの人口動態
(4)糖質制限から見えてくる初期人類の姿

(1)は糖質制限のおさらいで、糖質とは具体的に何か、糖質制限することによる体調改善の多くの具体例、食べて良いもの避けるべきもの、スウェーデンでの国家レベルでの実証実験内容、被災地での糖質食事により肥満増加が増えている事実等について分かりやすく書かれています♪
この(1)は糖質制限初心者には分かりやすい内容で、糖質制限を行っている方も改めて復習になり良いと思います♪

(2)は2014年3月に著者の個人サイトで行われた1599人のアンケート結果をまとめたもので、86%が体調が良くなったと回答し、体重は85%が減少、高血圧や高血糖・高脂血症・うつ症状・花粉症・アトピー性皮膚炎・ニキビ・歯周病なども大多数が改善しているとは驚きですね♪
特に糖質制限から元の糖質食に戻したのはわずか2.3%だったようです。

この(2)は私自身も感じている内容なので、まあ妥当な結果だと思います。
むしろもっと否定的な結果が多いのかと思っていましたが想像以上に糖質制限は健康に良いようです^_^;)

(3)は①では詳細にインスリンの本来の働きなどについて書かれていて勉強になります♪
また私自身も周りをみてそう思っていたのですが、清涼飲料水等の果糖ブドウ糖液糖の利用拡大が肥満を増やしていると思いましたね♪
また、

②はこれも私自身料理をするのでよく分かるのですが、一汁三菜の最近の和食は砂糖を始めとして芋類や根菜類など糖質を多く含む食材が多いので、本当にヘルシーかどうかは怪しいと思います^_^;)

③は今もはびこる「食べ物=カロリー」仮説の時代の流れやその治療理論が今でも使われていること、政治にも使われていることがよく分かります♪

また④は7万4000年前に始まった最終氷期で数千人規模にまでヒトの人口が激減したことにより、定住化が始まり、ヒトの脳が工夫や努力等の能力を獲得し、さまざまな道具を発明していったとは、ナルホドと思いましたね。
人類は元は狩猟民族ではなく、長い間は昆虫や小動物などを食べる採集民族だったとは興味深いです♪

(4)は全生命史、全人類史を仮説ですが、豊富な参考文献を元に解説したもので、これは凄いと思いましたね♪
かなり真実を追求していて、素晴らしいと思います♪

 最終氷期による局所的人口密度の増加がヒトのA10神経を刺激しドーパミンを多く分泌するようになり、またDRD4-7Rという冒険家遺伝子により発明の才能を後押しし、そして加熱デンプンが依存症・中毒性物質第1号となり糖質・糖類を好むようになったメカニズム等について詳しく解説されています。

また、ヒト500万年史は食物の入手法では次の3期に分けることができ、特に[1]の採集中心が実は長く、そこを研究することがヒトの健康を考える上で大切なのかと思いました♪
今後、多くの餌も必要としない昆虫食などが流行しそうです^_^;)
また実は大型動物等の狩猟中心の生活は過渡期だったんですね^_^;)

[1]500万年前~5万年前の採集中心の生活
[2]5万年前~1万年前の狩猟中心の生活
[3]1万年前以降の農耕中心の生活

 それから、実は糖質から成る植物の立場に立てば、その子孫を残すためにヒトをまんまと騙して操ったことになるとは面白いと思いましたね♪
何しろヒトは新たに畑を作っては種(子孫)をまき、水と肥料を与えてくれ、ライバルの植物を雑草と呼んで除去してくれるからです。
おまけに何ヶ月にも及ぶたゆまぬ労働奉仕の報酬としてヒトが受け取るのは栄養価がなくて健康を害する依存性物質(端的にいえば毒物)ですからね^_^;)

「炭水化物が人類を滅ぼす【最終解答編】植物vs.ヒトの全人類史」という本は、糖質制限の健康メリットが分かるだけでなく、全生命史・全人類史についても理解を深めることができ、しかも真実を追求していてとてもオススメです!

以下はこの本のポイント等です♪

・なぜ糖質摂取量を減らすのか。理由はそうするだけで、ほとんどの人は次に示すように、まるで生まれ変わったかのごとく体調がよくなるからだ。
 ・大多数の人は短期間で体重が減り、メタボ腹が凹んでスマート体型になる。
 ・不眠症やうつ症状が治る。
 ・高血圧、高脂血症が治る。
 ・肝機能が良くなる。
 ・歯周病が治る。
 ・思春期のニキビが治る。
 ・肌のさまざまな不調(皮膚炎など)が改善する。
 ・花粉症の症状が軽くなる。
 ・食後の眠気がなくなる。
 ・頭がスッキリして、脳みそがバージョンアップしたような爽快感が得られる。
 ・子どもは集中力が増して成績がアップする。
 ・子どもがキレなくなる。
逆に糖質制限で体調が悪くなったという人はほとんどいない。

・糖質とは炭水化物の一部であり、炭水化物のうちの食物繊維以外のものと定義されている。炭水化物の分類法にはまだ定まったものがなく、用語も一部混乱しているようだが、一般的には次のように説明されている。
 ・炭水化物=糖質+食物繊維
 ・糖質=単糖、オリゴ糖(二糖類、三糖類以上)、多糖(デンプン等)、糖アルコール
 ※糖類=単糖+二糖類
ちなみに、糖質を含まないお酒としてコンビニなどに並んでいるのが、糖類ゼロの缶酎ハイと、糖質ゼロの第三のビールだが、二糖類と単糖類を含まないのが糖類ゼロ、二糖類、単糖類に加えてオリゴ糖も含まないのが糖質ゼロだ。単糖類は、ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、ガラクトースなどであり、二糖類はショ糖(いわゆる砂糖)、麦芽糖、乳糖などだ。二糖類を分解(加水分解)すると次のように2分子の単糖になる。
 ・ショ糖=ブドウ糖+果糖
 ・麦芽糖=ブドウ糖+ブドウ糖
 ・乳糖=ブドウ糖+ガラクトース
ちなみに血糖値とは血液中に溶け込んでいるブドウ糖の濃度のことである。

・血糖値を上げる作用が強いのはデンプン、ショ糖、そしてブドウ糖であり、それ以外では乳糖も血糖値を上げるがその程度はデンプンやブドウ糖に比べればマイルドだ。それ以外の食物繊維や難消化性オリゴ糖、糖アルコール、果糖、ガラクトースの炭水化物には血糖上昇作用はないか、あっても軽微であり、気にする必要はなさそうだ。つまり制限すべきターゲットは加熱デンプン、ショ糖、そしてブドウ糖のみとなり、これらの摂取を可能な限り少なくするというのが糖質制限の基本的な考え方だ。

・【食べていいもの、食べるべきもの】
 ・肉類
 ・魚介類
 ・脂質類(バター、ラード、オリーブ脂は摂取すべきでマーガリンは摂取すべきではない)
 ・野菜類(葉物野菜全般、ブロッコリー、大豆、もやし、キノコ類全般、海藻類全般)
 ・果物類(アボカド、種実類(ナッツ類)(アーモンド、クルミ、ピスタチオ、ピーナッツは糖質が少ないが栗は糖質が多い)
 ・蒸留酒(ウイスキー、ブランデー、ウォッカ、テキーラ、ラム、焼酎(芋焼酎、米焼酎、泡盛は全て糖質ゼロ)、その他の蒸留酒全て(ジン、アクアビット、白酒等)
 ・一部の醸造酒(糖質オフの第三のビール、糖質オフの日本酒、フルボディの赤ワイン、辛口の白ワイン)
【摂取を避けるべき食品・食材】
 ・穀物(=主成分はデンプン)→絶対に避けるべき食品
 ・コメ(白米、玄米、餅、お菓子(あられ、せんべいなど)
 ・小麦(パン、麺類(ラーメン、うどん、パスタ)、ピザ生地、餃子の皮、春巻きの皮)、お菓子(ケーキ、クッキー、ドーナツなどお菓子全般)、お好み焼き、たこ焼き、もんじゃ焼きなど
 ・トウモロコシ(お菓子(さまざまなスナック菓子)、ブドウ糖果糖液糖、コーンスターチ
 ・ソバ(蕎麦、そば粉(クレープなど))
 ・野菜類(根菜類など(レンコン、人参、カボチャ、ニンニク、ゆり根)、タマネギ、トマト、芋類(ジャガイモは極めてデンプンが多い)、ジャガイモを使った料理すべて、ポテトサラダ、フライドポテト、ポテトチップスなどお菓子、ブドウ糖果糖液糖、その他の芋類)
 ・砂糖(絶対に避けるべき)(お菓子全般、調味料としての砂糖(焼き肉のタレ、すき焼き、様々な和食・中華料理の味付け)、清涼飲料水のほとんど全て、スポーツ飲料のほとんど全て、栄養ドリンクのほとんど全て)
 ・果物(果糖は速やかに皮下脂肪になり肥満の原因になるので避けるべき)、果物全般(例外はアボカド)、ドライフルーツ全て(生の果物より糖質が多い)
 ・醸造酒(ビール、日本酒、紹興酒、マッコリ、甘いリキュール、カクテル、甘い白ワイン、ライトボディ・ミディアムボディの赤ワイン)

・国家レベルで実証実験をしてしまったのがスウェーデンだ。以前は「肥満の原因はカロリーの過剰であり、カロリーを減らすためには脂肪摂取を減らさなければいけない」というのが世界的な常識だった(悲しいことに日本では現在でも常識である)。それを受けてスウェーデンでは1985年から国民の健康増進のために国家レベルで脂肪摂取制限が行われ、15年間でバターの消費量は半分以下になった。しかしこの期間に国民の肥満率は逆におよそ1.5倍に増加し、糖尿病患者も増えてしまった。つまり脂肪摂取の減少と肥満・糖尿病の増加が同時進行したわけだ。原因は脂肪摂取量を減らすために「低カロリーな炭水化物」の摂取量が増えたことにあった。この苦い経験をもとに、「肥満と糖尿病の原因は脂肪でなく炭水化物ではないか」と考える医師が現れ、炭水化物摂取を減らす職生活提唱され、その結果、肥満と糖尿病は減少した。現在ではスウェーデンの国民の4人に1人は糖質制限をしているという。

・高血糖状態は体にとって極めて危険である。高血糖は酸化ストレスの原因になり、AGEとなって様々な糖尿病合併症を起こすからだ。高血糖はまさに諸悪の根源であり、人体にとって過剰なブドウ糖は毒物以外の何物でもないのだ。ところが、高血糖に対する身体の反応はノンビリしていて危機感のカケラもない。その結果、全身の微小血管は2時間もの間、過剰ブドウ糖で痛めつけられることになる。これを論理的に説明しようとしたら「動物の体はそもそも、高濃度のブドウ糖を毒物として認識していないから」と考えるしかない。もしも体が高濃度ブドウ糖を毒物として認識していたら膵臓ではなく肝臓が直接取り込んで分解して無毒化するはずだ。しかし、ブドウ糖は体内で糖新生で作られて網膜や赤血球で消費される内因性物質であり、しかも高濃度になることが絶対にない物質である。だから肝臓はブドウ糖をスルーするのだ。なぜ自然界では血糖上昇が起こらないのか?それはヒトが農耕を始める前の世界では、そもそも糖質はごくわずかしかない物質であり、血糖を上げるほどの量がなかったからだ。

・ヒトが農耕を開始する前の世界では、糖質は特定の生物の特定の部位にだけ存在する物質だった。大ざっぱにまとめると次のようになる。
【植物】
▼葉、茎・・・ブドウ糖
▼根  ・・・デンプン
▼果実 ・・・果糖
▼花密 ・・・ショ糖、ブドウ糖、果糖
【動物】
▼グリコーゲン・・・ブドウ糖の重合体
▼ハチミツ  ・・・ブドウ糖、果糖
▼昆虫が体内に貯蔵(ミツツボアリ、アリマキ)
植物は光と水と二酸化炭素からブドウ糖などの糖を合成して生存のためのエネルギーとして利用するが、光合成ができない夜間などにエネルギー不足に陥らないように、水溶性の糖を茎や幹の師管を通して根に送り、そこでデンプンという不溶性の高分子に変えて貯蔵している。このような理由から、葉や茎には水溶性の糖(単糖類や二糖類)が含まれ、根には不溶性のデンプンガ含まれる。しかし葉や茎に糖が含まれているかというとそうでもない。たとえばメープルシロップはサトウカエデの樹液を濃縮したものだが、樹液に含まれるショ糖は3%前後であり、1リットルの樹液中で30gとなる。つまり洗面器一杯(3リットル前後)の樹液を一気飲みでもしない限り血糖は上がらないのである。植物の根にはデンプンガ含まれるが、これはβデンプンであって動物は吸収できず、根を食べても血糖が上がることはない。また花蜜は量が少ないし、果実の果糖はそもそも血糖を上げない糖だ。また現在の糖度(=ショ糖濃度)の高い果実は、品種改良によって作られたもので、自然本来のものではない。つまり本来の植物に含まれる糖質では血糖は上がらないことがわかる。一方、動物の筋肉や肝臓にはグリコーゲンが含まれるが、体重の1%以下の量である。つまり1kgの肉を食べたとしてもグリコーゲンの摂取量は10gであり全てブドウ糖に変化したとしても血糖は上がらない。さらにハチミツを常食とする動物はいにし、ミツツボアリはオーストラリアにしかいない。またアリマキを食べて血糖を上げるほどの糖を摂取することも不可能だ。要するに先史時代のヒトが、動物や植物を食べて血糖が上がることはなく、これは他の動物も同様だったのだ。だからあらゆる動物は「血糖値を下げるための専用ホルモン」が必要なかったのだ。

・インスリンの本来の機能は何だろうか。インスリンには次のような作用がある。
①グルコース輸送(筋細胞や脂肪細胞でのグルコースの取り込み促進)
②糖代謝(グリコーゲン合成・解糖促進、糖新生抑制)
③脂質代謝(脂肪合成促進、分解抑制)
④成長促進(タンパク質合成促進、分解抑制)
動物でも先史時代のヒトでも血糖値が上がることがないので、①、②は中心的作用ではなくなる。残るのは③と④だが「④に必要なエネルギーを貯蔵するための③」と考えるとスッキリする。要するにインスリンは【タンパク質合成とそれに必要なエネルギー源(脂肪)を蓄積するためのホルモン】なのである。これまでインスリンの中心的機能と考えられてきた①は「③中性脂肪に転換できる物質(=ブドウ糖)があれば中性脂肪に転換して脂肪細胞に取り込ませる」機能だったのである。もちろん、インスリンがこの機能を果たせば、ブドウ糖は中性脂肪に返信するので血糖値は低下するが、これはあくまでも「結果的にオマケとして血糖が下がった」だけのことである。インスリンにとってはいわば予期せぬ効果であろう。ヒトが糖質摂取をして高血糖が常に起こるようになったために、本業よりも副業(副作用?)の方がクローズアップされ、そちらの方が本業と誤解されただけのことだ。またインスリンのターゲットである「中性脂肪に転換できる物質(ブドウ糖)」は血管内に留まって逃げることはないので、転換作業にスピーディさは求められないのだろう。その結果「上昇した血糖値が正常値に戻るまで2時間かかる」のではないだろうか。ちなみに脂肪合成/蓄積を促すホルモンには、インスリンの他にエストロゲン、グレリン(食欲促進ホルモン)、コルチゾールなどがあり、一方脂肪分解を促進するホルモンには、成長ホルモン、グルカゴン、ノルアドレナリン、アドレナリン、テストステロン、甲状腺刺激ホルモンなどがある。つまり脂肪代謝はセーフティネットもバックアップ体制も完璧である。

・アメリカでは急速に果糖ブドウ糖液糖の利用が広まり、瞬く間に炭酸飲料、果実飲料、スポーツドリンク、シリアル、ジャム、パン、ヨーグルト、ケチャップ、ゼリー、アイスクリーム、低脂肪食品など膨大な食品に使われるようになった。もちろんそれらの食品は日本に輸入され、さらに日本独自の食品(焼き肉のタレ、麺つゆ、鍋料理のスープの素、みりん風調味料、乳酸飲料、ノンオイルドレッシングなど)にも使われるようになった。20世紀後半までは果糖は「果物にだけ含まれる糖」だったが、いつの間にか様々な飲食物に含まれる糖になっていて、我々は知らず知らずのうちに様々な食品から果糖を摂取していたのだ。あまりにも多種多様な食品に果糖ブドウ糖液糖が含まれているため普通に生活していても果糖は必ず口に入るようになっている。現在世界中で肥満が深刻化しているが、その一翼を担っているのは間違いなく、果糖ブドウ糖液糖だろう(果糖は速やかに中性脂肪になるから)。20世紀の肥満は先進国に特有の「ぜいたく病」だったが21世紀の肥満は途上国と先進国の貧困層で増加しているのが特徴だ。21世紀型肥満が貧困に結びついているのは穀物と果糖ブドウ糖液糖を含む飲食物は最も安価であり、低所得者層はこれらを選ぶしか選択の余地がないからだ。これは日本も例外ではなく低所得層での肥満増加が問題になっている。この人体実験の最悪のシナリオは、果糖由来のTAGEによるさまざまな疾患(糖尿病合併症、心筋梗塞、動脈硬化、骨粗鬆症、白内障、非アルコール性肝炎、アルツハイマー病など)の急増だろう。

・「一汁三菜」とは「ご飯に汁もの、おかず3種(主菜1品、副菜2品)で構成された献立」のことをいう。深く考えてみればツッコミどころ満載である。そもそも、一汁三菜とはコメを中心とした食事様式でい、煎じ詰めれば「コメを食べるために工夫された食べ方」に過ぎず、「コメ無しの一汁三菜」は食事として成立しない。食事の中心はあくまでもコメである。おまけに食材にはイモ類や根菜類など、糖質を多く含むものが多用されているし、さらに「和食の味付けの基本は、さしすせそ(砂糖、塩、酢、醤油、味噌)」といわれるように、砂糖はまず最初に入れるべき調味料であり、大量に使われることが多い。また大量の砂糖で甘くした郷土料理は全国各地にあって料理を勧められて甘さに閉口したことは一度や二度ではない。つまり和食とは「多くの糖質を食べさせる食事」であり、食後に血糖の急上昇をきたして大量のインスリンを分泌させるという意味で「時代遅れの不健康な食事」なのである。

・日本人の食を考える上で極めて重要な資料が「日本の長寿村・短命村」(近藤正二、サンロード出版)である。これは東北大学医学部衛生学教室の近藤教授が1925年から36年間かけて全国990カ所以上の町村を自らの足で歩いて訪れ、実際にどんなものを食べているのか、毎日の生活はどうなのかを詳細に記録した貴重で類いまれなる労作である。内容を要約すると次のようになる。
●食材はその土地で採れるものに限られ食材のバラエティに乏しい
●毎日同じものを食べていて料理法のバラエティも乏しい
●隣り合った村同士なのに、食事(食材)が全く異なっていることがまれではない。
●コメを多食する地域もあれば、ほとんどコメを食べない地域もある。
●コメを多食する村は短命村であり、長寿村はない。野菜や海藻を多食する村は全て長寿村
●村人たちは「○○を食べる(食べない)のはこの村の風習だから」と回答している。
つまい昭和初期~中期の日本各地の村の住人は現在でいう「和食」という概念がまるで通用しない食事を食べていた。しかも村ごとに食材は異なっていて、共通性すら見いだせないのである。何しろ和食の基本ともいうべきコメを食べない地域もあるのだから一汁三菜はそもそも存在すらしていない。

・糖質制限について説明すると決まって「脂肪を好きなだけ摂取しても太らないのはなぜか?高カロリーの脂肪が肥満の原因とならないのは不合理ではないか」という質問をいただく。なぜ脂肪を摂取しても太らないのか。理由は単純で、食品中の脂肪は皮下脂肪にも内蔵脂肪にもならないからだ。つまり脂身たっぷりの豚バラ肉を心ゆくまで食べても、オリーブ油を飲んでもその脂肪は皮下脂肪にならないのだ。肥満とは要するに脂肪細胞中の中性脂肪が増え、脂肪細胞が肥大することにより起こる現象だ。脂肪細胞に中性脂肪の蓄積を促すホルモンの代表格はインスリンであり、インスリン分泌を促す糖質が肥満の唯一の原因だ。逆に脂肪を摂取してもインスリン分泌は起こらないので、肥満にはならない。肥満の原因はあくまでも摂取すると必ずインスリンを分泌させる糖質だけなのだ。

・経口摂取した脂肪と肥満とは本来無関係であり、脂肪にしてみれば「無実の罪」を着せられたようなものだ。ところがここに糖質が絡んでくると話が違ってくる。
〔脂質と糖質の同時摂取〕→〔糖質によるインスリン分泌〕→〔血中の遊離脂肪酸濃度低下〕→〔腸管からの脂肪吸収が再開〕→〔インスリンの作用で脂肪細胞に中性脂肪蓄積〕となるからだ。つまり脂質単独では太らないのに脂質と糖質が組み合わさると肥満の原因になってしまうのだ。油と糖質(炭水化物)の組み合わせは実に魅惑的だ。ヒトは油まみれの炭水化物が大好きなのだ。チャーハン、焼きそば、焼きうどん、背脂たっぷり系ラーメン、バターをたっぷり塗った焼きたてのトースト、豚しょうが焼き定食、揚げパン、フライドポテト、じゃがバター、ドーナツ、かりんとう、サーターアンダギー・・・これらの文字を読んだだけで、パブロフの犬のようにヨダレが出てくるのだ。そしてこれらはセイレーンの歌声のように「肥満の世界」に誘うのだ。

・ヒトは4万年前からゆっくりと人口を増やしていったが、実はそれよりさらに3万年前に、ヒトの人口は世界全体で数千人程度にまで激減したことがわかっている。7万4千年前に始まった最終氷期に、7万3千年前のスマトラ島のトバ山の巨大噴火が加わって、急激な気候の変化が起きたからだ。ヒトはこの時、絶滅してもおかしくない限界ギリギリの数まで個体数を減らしたが、逆にこの頃からヒトの脳はそれまでにない能力(工夫や努力など)を獲得し、さまざまな道具を発明していったのだ。この脳の変化も定住化に伴って起きたものである。

・遊動生活から定住生活へというライフスタイルの変化には、さまざまな要因が関与していたと考えられ、私は次のような要因を想定している。
 ●急激な寒冷化により生息に適した範囲が狭まり移動範囲が制限された。
 ●生物相が激変し、採集だけでは食料調達が難しくなった
 ●ほ乳類をターゲットとする狩猟が始まり、その後、動物が寒冷適応で大型化すると、多人数での狩りが必要になった。多人数が共同作業するためには、移動しないで定住した方が都合が良くなった。
 ●狩りが成功すると大量の肉が得られ、肉があるうちは移動する必要がなくなった。
 ●火を使うために定住が必須になった

・局所的人口密度の増加がA10神経を刺激し、ドーパミンを多く分泌するようにあるというシナリオは妥当なものと思われる。問題はそれがなぜヒトの脳に創造能力と工夫への飽くなき挑戦を生み出したのかだ。その鍵を握っているのがDRD4-7R遺伝子と思われる。ドーパミン受容体はさまざまな組織に存在し、ヒトでは5種類の受容体が確認されている(D1~D5)。このうちDRD4はD4受容体の形成に関わる遺伝子でDRD4-7R遺伝子はDRD4の変異型であり、全人口の2割がこの変異遺伝子を持っていることがわかっている。そしてDRD4-7Rの別名は「冒険遺伝子」である。これまでの研究によると、DRD4-7Rを持つ人の特徴は「新しもの好き」であり、リスクを恐れず、挑戦心が強く、新しい場所・食べ物・考え方にチャレンジするのを好む傾向があるという。一方DRD4-7Rを持たない人は新しい食べ物や考え方を警戒し、用心深く振る舞うことがわかっている。4万5千年前に突如として新型の石器を作り始めたのはこのDRD4-7Rを持っていた個体なのではないだろうか。つまりチャレンジャーの資質を持っていた個体がチャレンジャーとして目覚めたのだ。しかし人間の2割が冒険家遺伝子を持っているのであれば、初期のホモ・サピエンスの2割もこの遺伝子を持っていたはずだ。それなのにこの2割はなぜチャレンジャーとして目覚めなかったのか。理由は、彼らの脳でドーパミンがほとんど分泌されていなかったためだ。DRD4-7R遺伝子を持ち、冒険家に変身させる変異型ドーパミン受容細胞があったとしても、肝心のドーパミンがなければ変異型ドーパミン受容細胞は機能しないからだ。

・ヒトの脳のA10神経は、正常範囲内の血中ブドウ糖には反応しないが、食後の高血糖には反応してドーパミンを分泌する。同じブドウ糖なのに反応が異なるのはなぜだろうか。理由は、生命の本質である「恒常性(ホメオスタシス)の維持」に関わっている。血糖値が一定に保たれている理由は、赤血球のようにエネルギー源としてブドウ糖しか使わない臓器があることと、ブドウ糖はエネルギー源としては質は良くないものの、手軽にエネルギーが取り出せる使い勝手の良い便利な物質だからだろう。しかし1万2千年前にヒトが加熱したドングリ(デンプン)を食べた時、食後に血糖濃度が通常の倍以上に上昇するというありえない現象が起きた。恒常性が保たれている状態とは「一定のリズムで演奏されるワルツ」のようなものだが、加熱デンプンによって典雅なウィンナワルツがなんの前触れもなく突然ヘヴィメタルかアアヴァンギャルド・ジャズになったのだ。これは混乱するなという方が無理だ。だから過剰なブドウ糖はA10神経を刺激し、大量のドーパミンが分泌されたのだ。そのドーパミンを受け取った神経回路の一つが報酬系だったため、加熱デンプンは「依存症・中毒性物質」第1号となった。血糖の急上昇もヒトにとっては予期せぬ出来事だったが、それが中毒物質に変身する事も想定の範囲外だった。その後、ヒトはコムギという生産性の高い植物に出会ったこどで、より大量の糖質を一気に摂取できるようになり、さrにはサトウキビに出会ったことで、大量のショ糖まで手に入れてしまう。好きな時に好きなだけ中毒物質(糖質、糖類)を摂取できるようになり、A10神経は休む間もなくドーパミンを分泌している。

・食後血糖上昇に100%例外なく反応するのが中脳のA10神経だ。穀物を1万年食べようが、1億年食べ続けようが、A10神経は食後の血糖上昇に反応し続けるのだ。【①古い部品や機能は絶対に取り外さないこと】という基本仕様があるためだ。そしてA10神経は大量のドーパミンを分泌し報酬系を刺激する。この反応もA10神経と報酬系の間にシナプス形成がある限り例がいなく起こる反応だ。ドーパミンを受け取った報酬系は幸福感を生み出し、さらなる快感を求めてまた穀物を摂取したくなる。これがあ糖質依存症だ。つまりホモ・サピエンスの脳から報酬系が完全消失するような突然変異でも起きない限り、糖質依存症の発症を防ぐ手段はないのである。また【①古い部品や機能は絶対に取り外さないこと】という基本仕様のため、報酬系がドーパミンに反応しなくなる方向への「進化」も起こり得ないのだ。要するに、ヒトの消化管が穀物用にいかに進化しようと、食後高血糖は防げないし、高血糖に対する脳の反応も変えようがないし、変わりようがないのである。毎日タバコ吸えば、ニコチン依存症から離脱できるだろうか。毎日覚醒剤を打てば、覚醒剤に反応しない脳になって覚醒剤中毒から抜け出せるだろうか。穀物を毎日食べれば脳のA10神経は高血糖に反応しなくなり、糖質依存症でなくなるだろうか。もちろんそんなバカなことはない。いずれの場合も、依存症はさらに悪化するばかりだ。ヒトの脳に依存症発症物質(穀物、ニコチン、覚醒剤など)がある限り、報酬系は否応なしに反応し続けるからだ。依存症から離脱するための手段は、ただ一つ、摂取をやめることしかないのである。

・先史時代のヒトの脳の基本仕様は、「努力しない、頑張らない、困ったら逃げる」であり、ヒトの脳が「努力する、頑張る、困難に立ち向かう」仕様にになるのは今から5万年前以降のことで、ヒトの歴史500万年からすると、つい最近の変化である。つまり人類史500万年は、
●「努力しない脳」の500万年前~5万年前
●「努力する脳」の5万年前~現在
に分けられるのだ。当然、食料調達方法も、「努力しない脳」時代と「努力する脳」時代で異なっていたと考えるべきだろう。前者の時代は「努力しない、頑張らない」方法で食料を得、後者の時代は「努力する、頑張る」ことで食料を確保したはずだ。このように考えると、先史時代を「狩猟採集時代」と呼ぶのはおかしいことに気が付く。採集には「努力、工夫、闘争心」は必要ないが、狩猟には「努力と工夫、闘争心」が必要だからだ。つまり「努力しない脳」時代のヒトには狩猟は不可能なのだ。それは実際に草原に立ってみるとわかる。草原は昆虫の宝庫だ。バッタにしろイモムシにしろ、栄養豊富で食べ応えのある「獲物」で溢れていて、道具なしに手づかみでも十分過ぎるほどのタンパク質が得られる。一方、中型~大型獣となると、簡単に捕まえられないどころか、捕まえようとして大けがすることだってある。獲物が大型になればなるほど、習性を観察して研究する必要があり、綿密な計画と殺傷能力の高い武器の開発が必要となる。これらは「努力する脳」時代になって備わった脳の機能によってのみ可能だ。

・これらのことから「努力しない脳」時代のヒトは採集で食料を得ていて、「努力する脳」時代になって初めて狩猟を開始したとするのが妥当である。この考えが正しいとすると、ヒト500万円史は「食物の入手法」で次の3期に分けることができる。
●500万年前~5万年前の採集中心の生活
●5万年前~1万円前の狩猟中心の生活
●1万年以降の農耕中心の生活
ちなみに、現代の狩猟採集民の調査から初期人類の姿を探ろうとする研究が多いが、これはおそらく的外れだろう。現代の狩猟採集民は「努力する脳」時代のヒトであり、「努力しない脳」時代のヒトとは思考も行動も全く別物だからだ。

・「人類は長距離走を武器にした狩猟者だった」という説もあるが、これには無理があるようだ。確かにヒトは長距離走に長けているのは事実だが、獲物を追って走り続けたら、乳飲み子を抱えているメスと子どもはついていけず、集団はバラバラになってしまうからだ。その瞬間を、ヒトを獲物とするヒョウなどのネコ科大型補食獣が見逃すはずがない。補食獣にとって、メスと子どもだけの集団は「食べ放題のバイキングコース」である。先史時代のヒトは、ネコ科大型補食獣の襲撃撃退するために、乱婚型血縁関係集団を作り、数の力によって群れ全体で防御してきたのだ。鋭い爪も牙もなく、強い力もなく俊敏な運動能力も高い知能も持っていない初期のヒトがサバンナで生き延びるためには、集団防衛するしかないのだ。だから集団のメンバーは、子どもや子どもを抱いたメスの移動スピードに合わせて歩き、集団がバラバラにならないように調節したはずだ。集団で行動するためには、その集団でもっとも遅いメンバーに合わせて歩くしか選択の余地はないのだ。長距離走の能力が狩りに活かされるようになったのは、定住化以降、すなわち今から1万2000年以降のことだろう。定住に適した場所に複数の集団が集まって暮らすようになれば、狩猟担当、採集担当、子育て担当、防衛担当のように、役割ごとに行動できるようになり、それまでの「集団全員で同一行動」をする必要がなるからだ。ちなみに「ヒトは長距離ランナーの狩人説」説は、20世紀後半のランニング・ブームを背景に生まれたのではないかと想像している。

・先史時代のヒトの食物は、動物性タンパク質がメインで、植物性食料の割合は少なく、せいぜい果実や柔らかい若い芽程度だったと考えられる。それ以外の木の葉や草は硬くで苦いものが多く、食べにくいからだ。周囲に昆虫などの食べやすい動物性タンパク質が豊富に見つかるのに、何もわざわざ食べにくくて苦いものを選ぶ者はいない。そういう状況が変わったのは、最終氷期の終了で植生が変わり、大きな堅い実をつける広葉樹林が出現したからだ。そこでヒトは初めて、堅果類の実(ピスタチオやアーモンドなど。生で食べられて味も良かった)を食料とし、その後の食料不足からコムギの実を加熱して食べるようになった。これ以降、植物は「重要な食物」となり、ヒトは「食べられる植物」探しに奔走することになる。定住による人口増加と都市への人口集中は、大量の食料を必要としたからだ。やがて中国大陸に定住したヒトが、「噛んでいるとクセになる葉」を見つける。それがカフェインを含むチャノキの葉であった。脳にダイレクトに届いたカフェインはA10神経にキャッチされ、放出されたドーパミンは報酬系を刺激した。未知の体験であるカフェインの覚醒作用と報酬系刺激はヒトを魅了し、ヒトは「もっと簡単に摂取する方法」を模索するようになる。工夫と努力は前頭連合野が最も得意とする分野だったからだ。そこで「抽出」という技術が確立し、茶のカフェインは飲んで摂取できるものになった。おそらくこのことで茶の人気が上がり、それと同時に値段も釣り上がっただろう。こうなると神仙思想や不老不死、万能薬などのキャッチコピーとセットで茶を売る知恵者が出現するのは時間の問題だ。つまり、「噛んでいるとクセになる葉」は商品になり、クセになる度合いが強ければ強いほお、高値で売れることになる(強い習慣性を持つから)。そこで「クセになる葉」探しが行われ、やがてコーヒーが発見され、その延長線上にコカやケシがある。かくして地表の耕作地には、依存症物質を含む植物が大量に栽培されることになった。もちろんこれらの作物は、穀物・イモ類を含めて「栄養はなく体に悪い」という点で共通している。これらの植物は単に、報酬系がもたらす一時的快楽のために栽培されているのだ。この観点からすると、ヒトが栽培している植物で「摂取して身体にいいもの」は、実はわずかでマメ類、葉物野菜、堅果類、キノコ類、海藻類くらいだろうか、それ以外の圧倒的多数の栽培植物(穀物)は「摂取すると健康を損なうもの」なのである。これを植物側から見ると、「子孫を残すためにヒトをまんまと騙して操った」となるだろう。何しろヒトは、新たに畑を作って種(子孫)をまき、水と肥料を与えてくれ、ライバルの植物を雑草と呼んで除去してくれるのだ。しかもそういうきつい仕事を何ヶ月も休まずに続けてくれるのである。植物から見れば、ヒトは有能で勤勉で従順で反抗心のない理想的奴隷である。おまけに何ヶ月にも及ぶたゆまぬ労働奉仕の報酬としてヒトが受け取るのは、栄養価がなくて健康を害する依存性物質(端的にいえば毒物)なのだ。

・人々の生活を支えている食物の大部分は穀物であり、穀物の供給が途絶えれば、栄養不足者は飢餓状態に陥り、飢餓状態にある者は死に直面することになる。つまり最貧困層・貧困層の命は日々の穀物供給量で左右されるのだ。これが「ヒト70億の大繁栄」の不都合な真実だ。要するに私たちは「穀物は栄養に乏しい依存性食物」と分かった後でも、穀物と一緒に生きるしかないという袋小路に入り込んでしまったのだ。この袋小路の入口に誘ったのは、植物(穀物)だ。そして加熱デンプンがA10神経を介してもたらした快感を前に、前頭連合野は「快感を持続的に得るために何をすべきか」を割り出し、そのために必要な行動を決定し、目標達成まで「努力せよ、忍耐せよ」と命じたのだ。しかし快感を基準に決めた目的の行き着く先がどこなのかは、さすがの前頭連合野も予測できなかった。140億個のニューロンと150兆個のシナプスからなるヒトの脳は、宇宙誕生の謎に迫り、素粒子の構造を解き明かそうとしている。脳の思考能力を凌駕するコンピュータを作ろうとし、生命誕生の瞬間に肉薄しようとしている。そんな無限とも思える能力を持つ脳が、脳を持たない食物の仕掛けたトリックにまんまと騙され、1万年間も操られ、現在もまだいいようにあしらわれているのだ。

・農耕(穀物)がもたらしたのは、低身長化だけではない。各地の遺跡調査からは、農耕開始とともに、離乳期の乳児死亡率が上昇したことが確認されている。原因は、離乳食として与えられた穀物粥だと考えられている。それまでデンプンを摂取したことがない乳児にデンプンしか含まない粥を食べさせると、消化不良から下痢を起こすからだ。そして下痢が続けば低タンパク血症となり、これが命取りとなったと考えられている。同様の「離乳期の下痢多発」は、現在のアフリカ各地でも報告されていて、主犯は離乳食として与えられるトウモロコシ粥と目されている。ちなみに現代の狩猟最終民は、4歳頃まで母乳のみで育てたり(クンサン族)、母親が子どもに咀嚼した肉を口移しで与えたり(イヌイット)することで離乳期を乗り切っている。

・歯周病と虫歯の発生は一般に次のように説明されている。
①口腔内常在菌のミュータンス菌はショ糖を基質として、グルコシルトランスフェラーゼという酵素の作用でグルカン(ブドウ糖が結合した重合体)を生成。グルカンが歯牙表面に結合して歯垢となる。
②ミュータンス菌はショ糖や麦芽糖を分解して乳酸を産生するため、口腔内は酸性になり、エナメル質の脱灰(分解)が起こる。
これらのことから明らかのように、虫歯や歯周病の原因はショ糖と加熱デンプンである(加熱デンプンは唾液中のアミラーゼの作用で麦芽糖に分解されるから)。ちなみに、タンパク質と脂質では、ミュータンス菌は歯垢を作ることも乳酸を発生させることもできないため、タンパク質と脂質は歯周病や虫歯の原因にはならないようだ。実際、先史時代の歯牙の化石には虫歯の痕跡はほとんどなく、同様に穀物摂取をしていない各地の先住民にも虫歯がほとんどないことが報告されている。一方で狩猟採集生活から農耕生活に移行すると同時に虫歯が増え、先住民の生活に砂糖と穀物が持ち込まれると歯周病と虫歯が増加する。

・糖質制限の唯一の問題点(?)は、糖質摂取なしで「不二子ちゃんボディ」を維持できるかどうかである。たぶん「肝機能に留意しつつ、果糖摂取で皮下脂肪を維持」すれば、不二子ちゃんは糖質制限しつつグラマラスボディを維持できるはずだ。

・デンプンの多いドングリはそのままでは不味かった。おそらく面白半分に加熱してみたチャレンジャーがいて、加熱すると食べられることを発見し、しかも噛んでいるとほのかに甘くなった。甘さは食べ物のサインだ。つまり加熱することで新しい食べ物を創り出せる可能性が見えてきた。これで食料が増え、定住期間はさらに延びていった。だが定住化により人口が増加し(主な要員は乳児期死亡の減少)、次第に食料が不足してくる。遊動生活であれば、移動すれば食料不足は解決するが、何世代も定住すると、移動生活のノウハウは失われていく。移動生活のノウハウは移動生活の中で受け継がれるものだからだ。だから彼らには定住しつつ生き延びるしか選択肢はなくなり、何がなんでもその地で食料を調達しなければならなかった。追いつめられた彼らには「加熱」という武器があった。何しろ「加熱」は食べられなかったものを食料に変える「魔法の杖」なのだ。おそらく様々な食物を加熱してみたはずだ。そしてヤギの餌だった草の穂を熱した時に、奇跡が起こる。加熱した草の穂は食べることができ、しかもほのかに甘かったのだ。もちろん甘さは食べ物であることを意味する。それが小麦だった。しかも肥沃な三日月地帯は原種小麦の原産地であり、他の植物を圧倒して群生していた。これで草原は巨大な食料庫に変身し、食料不足は一気に解消した。

・1万2000年前のヒトには、自然のデンプンを加熱すると立体構造が変化して甘い人工物に変化することなど与り知らぬことだった。だから1万2000年前のヒトはこのトリックに騙されて、加熱デンプンを食べ続けたのは無理からぬことだった。彼らはいわば無知ゆえに騙されたのだ。だが1万2000年後のヒトも、このトリックを見破れずにいる。ヒトは1万2000年経っても、この点に関しては無知なままだった。それどころか、医学はこのトリックが正しいことを大前提にした理論体系・治療体系を構築し、さらに大多数の人間は「甘いものは脳の栄養/体のエネルギー源」と信じ込んでいる。そして本来は植物を食べないはずの肉食動物でさえ、加熱した穀物(デンプン)を与えれば食べるようになるため、そうした餌を与えている(ほとんどのドッグフードやキャットフードは穀物入りだ)。これまでさまざまな「植物が動物に仕掛けた罠・トリック」を見てきたが、結果的にはこの「加熱すると食べられるようになる/甘くなる」というトリックは、植物の深慮遠謀の最たるものという気さえしてくる。27億年前、シアノバクテリアは地球環境そのものを一変させた実績があり、植物の葉緑体はシアノバクテリアの一種が植物細胞と共生したものだ。そんな植物にとっては、「地球全体を酸素化したのに比べたら、動物・ヒトを操るなんてチョロいもの」なのかもしれない。

・穀物で生きていけるヒトの数の上限はどのくらいだろうか。現在の穀物生産量から計算すると、「すべての人類が穀物のみを食べ、生産した穀物は全てヒトの食料とし、一日の摂取カロリーを2000kカロリーに制限」という厳しい条件下でも112億人である(「地球のからくり」に挑む」のデータから試算)。全人類が「1日2玄米4合と味噌と少しの野菜を食べ」という生活に徹したとしても112億人が限界なのだ。

・動物では恒温動物(牛、豚、鶏など)の飼育から、変温動物(昆虫など)の飼育に転換することが絶対に必要だ。一般に、牛肉1kg、豚肉1kg、鶏肉1kgの生産には、穀物はそれぞれ11kg、7kg、4kgが必要だといわれているが、これはあまりに効率が悪すぎる。恒温動物では体温の維持のために基礎代謝の7割が使われ、餌に含まれるエネルギーの多くは熱となって失われるからだ。その点、変温動物は体内で熱をあまり作らないため、多くの餌を必要としない。変温動物には、無脊椎動物、魚類、両生類、は虫類があるが、飼育の容易さと餌がヒトと競合しない点で昆虫が最右翼だろう。その体はタンパク質と脂質に富んでいて理想的であり、宗教的タブーの対象でもない。そして何より数が多く、少なくとも計算上は数十億~100億人分のタンパク質は昆虫で賄えそうだ。そして先進国もよやく1万年間忘却していた食材としての昆虫の重要性に気がつき始めたようだ。近未来に待ち受けている「これまでに経験したことがない」事態の前には、昆虫以外に選択の余地はないことは明らかだからだ。実際、アメリカ西海岸では、2015年頃から食用コオロギがスタミナ食としてヒットして、アメリカ各地でコオロギの養殖農場が作られているし、国連も「世界の食糧危機を救う食材」として、昆虫食を推奨している。さらに2018年1月1日からEUでは昆虫食の取引が自由化されることが決まっていて、昆虫食を取り巻く環境は急速に変化しているようだ。

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