トランプと安倍晋三がどう逆立ちしようとも北朝鮮は非核化しない 金正恩独裁体制と非核化は逆説関係

2018-05-15 11:33:39 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 確かに非核化要求の国連決議による対北朝鮮経済制裁が効果を上げたのだろう、核の威嚇を使った対決姿勢をあれ程見せていた北朝鮮が2018年2月25日のピョンチャンオリンピック閉会式に合わせて高位級代表団を韓国に派遣、ムン・ジェイン(文在寅)韓国大統領との会談で「アメリカと対話をする十分な用意がある」と米朝対話の再開に前向きな姿勢を表明。

 2018年3月5、6日に大統領特使団トップとして北朝鮮を訪問した大統領府の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長が6日の記者会見で北朝鮮は朝鮮半島非核化の意思を明確にし、北朝鮮への軍事的脅威が解消されて体制の安全が保障されれば、核を保有する理由がない点を明確にした等を発表。

 さらに鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室が3月9日に訪米、核・ミサイル実験の停止を提示する内容と米朝首脳会談を提案する金正恩の親書をトランプに渡した。対してトランプはその提案を受諾。

 3月29日、韓国と北朝鮮は10年半ぶりとなる南北首脳会談の開催を4月27日に行うことで合意。

 2018年4月20日、金正恩は「我々には如何なる核実験、中長距離や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射も必要がなくなった。北部核実験場も自己の使命を終えた」と述べ、核実験とICBM発射の中止、北部核実験場の廃棄を宣言した。

 4月27日の38度線の板門店での南北首脳会談後、両国は共同宣言で冷戦の産物である長年の分断と対決の一日も早い終息と民族的和解と平和繁栄の新しい時代の構築、休戦協定締結65年になる今年、終戦を宣言して停戦協定を平和協定に転換、恒久的で強固な平和体制構築のために韓国・北朝鮮・米国の3か国、または韓国・北朝鮮・米国・中国の4カ国の協議開催を積極的に推進、完全な非核化を通じた核のない朝鮮半島の実現という共通の目標の確認等を宣言した。

 5月10日、トランプはツイッターで米朝首脳会談を5月12日にシンガポールで開催することを明らかにした。その後、トランプは中西部インディアナ州で支持者を前に演説。

 トランプ「私は平和な未来と世界の安全を追求するためキム委員長と会う。関係はいい。非常によいことが起きる。大成功となるだろう。韓国や日本、中国などにとって素晴らしい合意をつくる」(NHK NEWS WEB

 5月13日、北朝鮮は4月20日に宣言していた核実験場廃棄を5月23日から25日の間にアメリカと韓国、中国、ロシア、イギリスの報道機関を招いて公開することを明らかにした。

 トランプは早速ツイッターで応じた。「北朝鮮が6月12日の米朝首脳会談の前に核実験場を廃棄すると表明した。ありがとう。とても賢く、丁重な行動だ!」(NHK NEWS WEB

 東アジア及び米朝の緊張緩和ムードが一気に高まっている。トランプが楽観的なのは北朝鮮を完全非核化に持っていけば、ムン・ジェイン(文在寅)韓国大統領に嗾けられたノーベル平和賞も夢ではないと夢想しているからなのだろうか。

 安倍晋三も従来から北朝鮮に対して完全非核化を求めている。5月11日、フジテレビの番組で米朝首脳会談について次のように発言しているとその要旨をマスコミが伝えている。

 「産経ニュース」/2018.5.11 22:49)

 安倍晋三「米朝首脳会談は史上初めて行われる歴史的な会談だ。米国と密接に連携できる場所(シンガポール)で良かった。核兵器を含むすべての大量破壊兵器とあらゆる射程の弾道ミサイルを完全に検証可能な形で不可逆的に廃棄(CVID)し、拉致問題で前進があるか。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が決断するかどうかだ。

 今までうまくいかなかったのは、見返りのタイミングを間違えたからだとトランプ米大統領にも言っている。制裁解除や援助はCVIDを達成した後だ。米朝でトランプ氏が得意なディール(交渉)で突破口を開いてほしい。ここですべてが決まれば一番いいが。

 金氏は速いスピードで、非常にダイナミックな判断をしている。会った人によると、最終的に一人で判断し、判断に自信を持っているようだ。国際社会の出来事を熟知し、自分の国にどういう問題があるかよく知っているという。問題を解決する必要性について十分に認識している可能性はある。

 (金氏が「なぜ日本が拉致問題を我々に直接言ってこないのか」と発言したとの報道について)見方によっては、それに応じるかもしれないという分析ができるだろうと思っている。日朝首脳会談は、拉致問題の解決につながらなければならない。ただ会って1回話をすればいいということではない。

 (日朝)首脳会談が実現されればいいと思う。日朝国交正常化は極めて重要なピースだ。金氏は米朝、南北首脳会談だけをやればいいのではないと判断してほしい。

 アメリカのボルトン安全保障政策担当大統領補佐官が5月13日にアメリカのABCテレビのインタビューに応じて次のように発言している。

 ボルトン「北朝鮮の非核化については譲れない。それは核兵器だけという意味ではない。弾道ミサイルや生物・化学兵器もあり、話し合わなければならないことはいろいろある。

 金正恩朝鮮労働党委員長や、北朝鮮の政府は、大量破壊兵器を保有しないほうがいいという戦略的な決定をする必要がある。非核化のプロセスが不可逆的に完全に進む必要がある。それに先立って、見返りを送るべきではない」(NHK NEWS WEB

 不可逆的完全な非核化の確認まで見返りを与えないというのは理解できる。弾道ミサイルや生物・化学兵器の廃棄もアメリカ側からしたら当然な要求だろう。

 しかし後者のこの要求は北朝鮮に対して「国家安全保障上の軍事的衣を脱ぎ捨て、裸になれ」との要求に等しくならない保証はない。このことは次の国務省声明とトランプ自身の言葉によって明らかになる。

 5月2日米国務省声明「(北朝鮮の)人権侵害について我々はなお深く懸念しており、非常に遺憾に思っている。(北朝鮮に)最大限の圧力を掛ける方針と合わせ、人権侵害の責任を追及していく」(ロイター/2018年5月3日 / 06:47)

 国家規模の人権侵害は独裁体制によって産出される。当然、人権侵害の責任追及は独裁体制の追及となり、人権侵害の完全な払拭は独裁体制の崩壊、民主化によってのみ達成される。

 こういったプロセスが考えられる以上、北朝鮮が米国が提示した体制の保障に応じて核兵器だけではなく、生物・化学兵器から通常兵器である弾道ミサイルまで放棄した場合の軍事的無防備は人権侵害追及というトロイの木馬によって米側が体制の保障を如何に言おうと、独裁体制側は体制の保障が体制の保障とならない危険性を常に抱えることになる。

 この理を金正恩は十分に弁えているはずだ。

 トランプはアメリカ第一主義を抱え、アメリカの膨大な貿易赤字を解消する姿勢を示している。2018年4月16日、米南部フロリダ州での会合での発言。
 トランプ「貿易取引に関しては、我々の友好国の方が敵国より悪くなっている。日本や韓国など多くの国に巨額の貿易赤字を抱えている。殆ど全ての国との取引で、我々は大変多くの仕事とお金を失っている。米国は長年、出し抜かれてきた」(東京新聞/2018年4月17日 夕刊)

 そう、友好国とは日本や韓国等の民主国家であり、トランプは独裁国家、あるいは独裁的国家を「敵国」としている。中国やロシアが後者に当たり、貿易赤字問題を抱えていないが、北朝鮮も独裁国家として「敵国」という位置づけになる。

 トランプが深く認識して「敵国」という言葉を使ったかどうかは分からないが、民主国家と独裁国家、あるいは独裁国家と類似の国家とは経済面での国益は妥協できても、国家体制という点では本質的には相容れないことを示唆した。国家体制によって決まってくるそれぞれの人権の質・人権の状況に関しては決して交わらないことを暗に言い当てた。

 父子継承の金正恩独裁体制国家が独裁体制国家であり続ける以上、民主国家米国にとっては本質的には「敵国」であるという地位を与え続けることになる。当然、金正恩独裁体制の北朝鮮も、独裁体制を維持する限り、米国以下の日本や韓国を相互に「敵国」と位置づけることになり、対峙する姿勢を常に内心に持つことになる。

 このような関係が将来的にも想定される以上、北朝鮮にとって国家安全保障上、核兵器はおろか、生物・化学兵器から通常兵器である弾道ミサイルまで放棄して、いわば国家安全保障上の軍事的衣を脱ぎ捨て、裸になるということが果たしてできるだろうか。

 金正恩が北朝鮮国民に向かって独裁体制の終焉を告げ、国家指導者の地位を降りて民主化を宣言、民主的な選挙による新しい指導者の選出にまで持っていったとき初めて、米側が言う体制の保障は言葉通りの意味を持つ。米国等の民主国家からの人権侵害の追及はなくなり、人権侵害の追及が独裁体制を崩壊させるトロイの木馬に変身する危険性も去る。

 要するにアメリカが北朝鮮の国家体制の保障をどう言おうと、金正恩が父子継承の独裁体制に拘る間は、独裁体制にとって国家安全保障上の軍事的衣を脱ぎ捨て、裸になるのと同然のトランプや安倍晋三が求める“完全で検証可能且つ不可逆的な非核化”には決して応じないだろうということである。

 2018年1月8日の当「ブログ」に次のように書いた。参考に。

 〈独裁国家は民主国家と経済上の国益を一致させることができても、国民統治に関しては基本的人権の点で国益を一致させることができない。その点で国益を一致させたなら、独裁国家はたちまち独裁国家でなくなる。

 独裁者は独裁体制を危険に陥れる国内の勢力に対しては言論の抑圧や集会の制限、あるいは禁止等の方法を用いて強権的な取締まりを行い、国外の勢力に対しては軍事的手段で独裁体制を守ろうとする。

 北朝鮮の金正恩にとっては国外の勢力からの独裁体制を死守する唯一無二の保障が核ミサイルの装備であって、そうである以上、放棄することはあり得ない。

 以前トランプが核放棄の条件として北朝鮮の国家体制の保障を口にしたことがあるが、金正恩は父子継承の金一族の独裁体制の国民統治と民主体制のそれとの国益上の利害の不一致・価値観の不一致が一度の保障によって解消されない永遠性を弁えていて、独裁体制死守の絶対的保障をアメリカ本土攻撃可能な核ミサイルの所有から変える意志を持っていないはずだ。

 北朝鮮が独裁国家体制を取る間は永遠に相交わることのない、常に相反する国民統治方式の軌跡を相互に描くことになる以上、「今後ともあらゆる手段による圧力を最大限まで高めて」いって、「北朝鮮の側から話し合いたいと言ってくる状況」を作ることができたとしても、その話し合いにしても「時間稼ぎに利用される」ことに変わりはない。

 つまり最大限に高めた圧力が北朝鮮の核ミサイル装備の放棄に繋がる保証はない。既に米本土到達可能なICBMを保有したとしていることが北朝鮮の強みとなるはずだ。この強みを背景に以後、様々な時間稼ぎで北朝鮮を確固とした核保有大国に育てていくことになるだろう。

 安倍晋三にしてもトランプにしても、鈍感・無知な点を相共通させて、金正恩が独裁国家体制指導者として核保有を独裁体制死守の最大国益とせざるを得ないことに気づかずに圧力によって核ミサイルを放棄させることができると固く信じている。

 北朝鮮が核保有を放棄せざるを得ない状況に追い込まれたとき、それは金正恩にとって祖父から父親へ、父親から自身へと受け継いできた父子継承の独裁体制を守る手段を失って、独裁体制の終焉を意味することになり、暴発の始まりに転換しない保証はない。〉

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2015年4月2日首相官邸に文科省・農水省出向内閣参事官まで雁首揃えたのは加計獣医学部実現密談

2018-05-14 12:03:40 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 2018年5月10日の柳瀬唯夫参考人招致衆院予算委で柳瀬唯夫は自民党の後藤茂之に「なぜ加計学園関係者の方と知り合いになられたのでしょうか」と問われて、「「以前、総理とご一緒した際に加計学園の関係者の方とお会いしたことがございました。その後、平成27年の2月から3月頃だったと思いますけども、加計学園の事務局の方から上京する際に『お伺いしたい』という申し入れがありまして、官邸でお会おしました」と答弁している。

 「総理とご一緒」とは立憲民主の長妻昭の同予算委質問で2013年の5月6日に安倍晋三の山梨県鳴沢村の別荘近くの河口湖のゴルフ場でゴルフコンペとバーベキューに安倍晋三と共に参加したことを言い、その際、加計学園理事長加計孝太郎と加計学園事務局長とお会いした記憶があると答えている。

 そして約2年近く後の2015年4月2日に「加計学園の事務局の方から上京する際に『お伺いしたい』という申し入れがあり」首相官邸で面会した。

 続いて、面会の「際、獣医学部が過去50年余り新設されていないこと。四国(地方)には、鳥インフルエンザなどの感染症対応の獣医師が不足していること。過去、構造改革特区で今治市から何度も獣医学部新設を申請してきているが、実現していないことというふうなお話があったと思います。

 その際に従来の構造改革特区と別に新たに国家戦略特区制度が始まったという話も出たようにも思いますけども、そのときには特に具体的な話にはならなかったように思います」と答弁している。

 一般的にはアポイントを取るとき、用向きを先ず伝える。ゴルフコンペとバーベキューで一度会っただけの加計学園の事務局長が用向きを何も伝えずに「お伺いしたい」という理由だけで面会を要請するのは不自然であるし、要請された側がそれだけの理由で面会を承諾することも不自然で、常識的には先ずあり得ない。

 首相秘書官である柳瀬唯夫が河口湖のゴルフ場で安倍晋三と加計孝太郎と加計学園事務局長と「ご一緒した」と言うことなら、首相官邸での柳瀬唯夫と事務局長の面会は安倍晋三の口添えがあったと考えなければならない。その口添えを隠蔽するために何も用向きを伝えなかったように装わなければならなかったと考えることもできる。

 これこれの用向きを伝えられて面会しましたと言うと、そこから安倍晋三の口添えが炙り出されないとも限らないから、事務局長が口にした用向き自体を「お伺いしたい」一言に省略することになったということなのだろう。。そして口にすることができなかった用向きを面会時に「今治市の何度にも亘る獣医学部新設申請が実現していない」とか、「国家戦略特区制度が始まった」といった用向きにもならない話を紹介することですり替えることになった。

 用向きを明らかにせずに「お伺いしたい」だけで会ったという体裁を取ったために、「この私の面会でございますけれども、政府の外の方からアポイントの申し出に対しては、時間が許す限りお受けするように心がけておりましたので、特別扱いをしたことはございません。

 実際、私は総理秘書官時代、物理的に日本にいないとか、物理的に時間がないということはあったかもしれませんが、私が総理秘書官時代、私が覚えている限りはアポイントの申し入れをお断りしたことはございません」などと、加計学園事務局長との面会を特別扱いではなく、誰とでも面会するかのように答弁しなければならなくなった。

 2015年4月2日の首相官邸で柳瀬唯夫は愛媛県と今治市の職員、そして加計学園事務局長と面会時に同席者がいた。
 
 柳瀬唯夫「官邸に各省から出向してきている職員に獣医学部新設に関する状況という方(かた・ママ、)について伺った記憶がございます。学部新設ということで、文部科学省なのか、獣医ということで農水省なのか、感染症対策ということで厚労省なのか、ちょっとどこなのか分からなかったので、3省からの出向者に聞いたと思います」

 「獣医学部新設に関する状況という方(かた)について」と口にしているが、「獣医学部新設に関する状況という方面について」と言うべきところを、答弁メモに「方面」と書き入れてあったが、「方」だけを頭に入れて発言してしまったのかもしれない。

 主意は大学認可権限を持つ文科省と獣医師関係の法律や獣医療が所掌事務の農水省、感染症対策等の獣医公衆衛生行政を所管する厚労省からの出向者が出席していたということになる。

 愛媛県今治市が国家戦略特区制度を利用して「国際水準の獣医学教育特区」の適用を提案したのが2015年6月4日であり、それよりも2カ月も前に文科省以下の三者に愛媛県と今治市の職員、さらに加計学園事務局長の面会者を加えて一堂に会し、尚且この面会の前に面会者が特区の事業認定権限を持つ内閣府藤原豊地方創生推進室次長に既に面会して、藤原豊が「要請の内容は総理官邸から聞いており、県・今治市がこれまで構造改革特区申請をされてきたことも承知」といった発言をしたと愛媛県文書に記載されている点を踏まえれば、獣医学部新設の実現はあと残すところ文科省と農水省と厚労省が認めるかどうかに掛かっているのだから、これはもう歴とした獣医学部新設実現に向けた密談と見なければならない。

 2016年10月21日作成とされている文科省発見の「10/21萩生田副長官ご発言概要」と題した文書には、〈和泉補佐官からは、農水省は了解しているのに、文科省だけが怖じ気づいている、何が問題なのか整理してよく話を聞いてほしい、と言われた。官邸は絶対やると言っている。〉との文言が証明しているように首相官邸面会の2015年4月2日時点では文科省は日本獣医師会と共に獣医学部の新設には反対していた。

 「農水省は了解している」としているが、前文科相松野博一が加計学園関係の文書の文科省追加調査報告の記者会見で安倍晋三の腰巾着内閣官房副長官の萩生田光一が内閣府に対して獣医学部新設の応募を加計学園1校に絞るよう仕向ける「文科省修正案」と題したメールには、〈獣医師の需給を所管する農林水産省及び厚生労働省において、今後の獣医師の需要の動向を明らかにした上で、それに照らして今治市の構想が適切であることを示すとともに、当該決定に記載の「獣医師が新たに取り組むべき分野における具体的な需要」を踏まえ、新設可能な獣医学部の規範を示すこと。〉(文飾は当方)との記載があるが、最初に「獣医師の需要」動向を明らかにしてから「今治市の構想が適切である」か否かを判断するのが当たり前の順序であるにも関わらず逆の順序となっているのは、「今治市の構想」に合致するように「獣医師の需要」を当てはめる、あるいは操作するという意味を取る。

 このことは農水省は当初は「獣医師の需要は足りている」としていたことが証明する。

 「2017年5月23日 農林水産委員会」

 共産党紙智子「農水省の従来の見解というのは、獣医師の需要は全体としては足りているということだったわけですね」
 
 農水相山本有二「獣医師の需給につきましては、終始一貫、全体としては需要と供給のバランスは整えられているという認識であることは伝えさせていただいております。

 ただ、家畜とペット、言わばそれぞれ獣医師さんの専門分野が違っておりまして一概に言えないわけでございますが、ペット一頭当たりの診療回数が増加しておりまして、ペットの数は少なくなっているものの、都会におけるペットの獣医師さんの需要というのはかなりあるものと認識しております。

 ただし、酪農、畜産の盛んな地域におきます産業動物医、獣医師あるいは公務員獣医師の皆さんは不足感がかなりあるわけでございまして、その需給バランスをどう整えていいのか、そういったことについては私ども、獣医学部やあるいは獣医師会の皆さんが是非やっていただきたいと期待を掛けていたわけでございます」――

 「獣医師の需給につきましては、終始一貫、全体としては需要と供給のバランスは整えられているという認識」でいたが、獣医師の専門分野の違いから言うと、「一概に言えない」と微調整している。

 何のことはない、「今治市の構想」に合致するよう、農水省としての「獣医師の需要」に対する考え方を軌道修正するに至った。小手先の操作以外の何ものでもない。

 2015年4月2日の首相官邸に文科省と農水省の出向参事官が臨席していたことを柳瀬唯夫がこの参考人招致で認めたことを受けて、両省共に認めるに至った。柳瀬が認めなければ、認めなかったに違いない。

 但し当時の文科省と農水省が獣医学部新設に反対であったとしても、出席参事官が反対派とは限らない。反対派の参事官を出席させても何の意味はない。気脈を通じることができ、それぞれの省庁に対して新設賛成を働きかけるに力となる参事官の出席であってこそ、首相官邸を舞台に一堂に会した意味が出てくる。

 柳瀬唯夫は2013年5月6日に安倍晋三の山梨県鳴沢村の別荘近くの河口湖のゴルフ場で加計学園理事長加計孝太郎及び加計学園事務局長と会い、2年近くあとに首相秘書官としてアポを受けているのだから、獣医学部新設のこの密談を賛成派として指揮していたことになる。

 このことは愛媛県文書が証明する。何しろ、加計学園獣医学部新設を「首相案件」としていたのだから。

 柳瀬唯夫は自民党の後藤茂之に対しては3省からの出向者が出席していたと言っていたが、立憲民主の長妻昭との遣り取りでは文科省と農水省からの出向者2名としている。 

 長妻昭「当日ですね。官邸の会談の4月2日ですね、文科省から出向している角田内閣参事官ですね、農水省からの青山内閣参事官も同席してると思うんですが、これは柳瀬さんがお呼びして、同席させたんですか」

 柳瀬唯夫「あのー、私自身が、すみません、獣医学部に関して全く詳しくございません。事前にどいうことなのかという状況、まあ伺ったことはありまして、同席をお願いしたということでございます」

 長妻昭「と言うことは、これ常識的に考えて、記録によると、一時間半だということなんですね、会談。これ、こういう青山参事官とか角田参事官、メモしているはずなんですよ。ほぼメモしてますよね。録音されてるかどうか分かりませんけれども、このメモは出して頂けませんか」

 柳瀬唯夫「私は全くメモを取っておりませんから、その二人の方がメモを取っていたかどうか、私には、ちょっと分かりかねます」

 対して長妻昭は、安倍晋三が一点の曇りもないと身の潔白を訴えているのだから、メモは積極的に出した方がいいとか、むしろ積極的に出した方がいいとかとノーテンキな応じ方をしている。

 構造改革特区制度時代から獣医学部新設を狙っている愛媛県と今治市、加計学園側からしたら、新設が難しい状況云々を聞くことだけのためにわざわざ首相官邸に訪れるはずはないし、何よりも土産としたいことは加計学園側が国家戦略特区制度を利用して「国際水準の獣医学教育特区」とすべく提案した場合、実現可能かどうかの言質であろう。

 それが愛媛県文書にある内閣府藤原豊の「要請の内容は総理官邸から聞いており、県・今治市がこれまで構造改革特区申請をされてきたことも承知」云々の言質であり、柳瀬唯夫の〈本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい。〉云々の言質であるはずだ。

 首相官邸面会が加計学園獣医学部新設実現の密談でなければ、新設実現を狙う愛媛県と今治市の職員、さらに加計学園事務局長、対して政府側から取り持ち役の柳瀬唯夫、獣医学部新設の権限をそれぞれに握る文科省・農水省の出向内閣参事官までが参加し、雁首揃えた意味はない。

 首相官邸面会が加計学園獣医学部新設実現の密談でなければ、新設実現を狙う愛媛県と今治市の職員、さらに加計学園事務局長、対して政府側から取り持ち役の柳瀬唯夫、獣医学部新設の権限をそれぞれに握る文科省・農水省の出向内閣参事官までが参加し、雁首揃えた意味はない。

 柳瀬唯夫は参考人招致で首相官邸面会について、「安倍晋三から何の支持も受けていないし、自身から安倍晋三に報告もしていない」と弁しているが、「総理秘書官、妻そして母として(山田真貴子)」なる記事には次のように一文が載っている。文飾は当方。

 〈総理官邸での業務とは、そして「総理秘書官」とは
 私は昨年11月末から安倍総理大臣秘書官として、総理官邸で勤務しています。憲政史上初の「女性」総理大臣秘書官として、任命直後はメディアにも取り上げて頂いていたようですので、ご存知の方もおられるでしょう。

 現在、総理官邸には、政務秘書官か1人、そして事務秘書官が私を含め6名任命されています(出身省庁は財務省、経度省、警察庁、外務省、防衛省。それに私です。)。幅広い国政を秘書官で分担し、相互に調整し、また官邸内の様々な役職の方々とも議論した上で、総理にご判断を仰いでいきます。〉――

 仕事の節目節目に「総理にご判断を仰いでいきます」

 首相秘書官は首相に使われている役職である。当然中の当然であろう。

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新潟市の7歳女児殺害事件は学校その他の不審者情報運用の不備・不足が事件発生の一因と見ることができる

2018-05-13 10:59:48 | Weblog
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 5月7日(2018年)午後10時半頃、新潟市西区のJR越後線の線路内で近くに住む小針小学校2年生の女児(7歳)が普通電車に跳ねられ、死亡した。2018年5月9日付「朝日デジタル」記事によると、司法解剖の結果、首に絞められたような跡があったこと、遺体からの出血が通常の列車事故に比べて多量ではなかったこと、このような遺体の状況などからから、新潟県警は死因は窒息死と断定、何者かが殺害後、数時間経ってから列車事故を装うために線路に遺体を遺棄したと見て、〈新潟西署に捜査本部を設置、殺人・死体遺棄事件として〉捜査を開始した。 (〈〉内は別記事)

 事件の予兆はあったようだ。但しその予兆は情報として子どもたちの間の共有にとどまり、小学校が共有するに至らなかった。小学校が共有する手立てを子どもたちに講じる対策を怠ったようだ。

 「NHK NEWS WEB」2018年5月9日 19時23分) 

 記事は新潟市教育委員会からの情報として伝えている。小学2年生の女児は、〈事件当日の7日朝、小針小学校へと登校していた際、「黒い服を着てサングラスをかけたおじさんに追いかけられた」と、同じクラスの友達に話していたということ〉で、〈こうした情報は、その日の夕方に母親から「娘が帰って来ない」と電話があったことを受けて、学校側が同じクラスの友達から話を聞いた結果、初めてわかった〉ことで、その情報を〈その後、速やかに警察に連絡した。〉

 殺害された女児からの不審者情報は同じクラスの友達(単数か複数か分からないが)にのみ伝えられて、両者間の共有にとどまり、小学校はその情報を把握、共有するに至らず、把握・共有は女児殺害後であった。

 但し不審者情報は新潟市教育委員会が把握し、共有していた。

 記事は同じく新潟市教育委員会からの情報として〈小針小学校がある地域では、去年4月からことし3月末までの1年間に不審者に関する情報が4件あ〉り、〈いずれも去年9月には見知らぬ人に4年生の女の子が声をかけられたほか、2年生の女の子が登校中に腕をつかまれ〉、〈4年生の女の子が体を触られた〉と伝えている。

 新潟市教育委員会に伝えられた不審者情報が不審者を目撃した、あるいは不審者から不審行為を受けた小学生から保護者へ、保護者から小学校へ、小学校から教育委員会へという経路を取って伝達されたとしても、あるいは小学校抜きに保護者から直接、教育委員会という経路を取って伝達されたとしても、新潟市教育委員会から市内の全小学校だけではなく、管轄内・管轄外に関わらず公私立幼稚園、保育園、さらには警察へと伝達され、共有するに至っていたはずだ。

 勿論、小学校やその他は教育委員会と不審者情報を共有後、子どもへの注意喚起で終わりにはせずに情報は常に最新の中身へと変えていかなければ、情報としての意味を一定程度失う場合もあるし、あるいは半減させる場合もあるし、最悪、情報として何の役にも立たなくなる場合もるのだから、子どもたちに対しての最新の情報収集を怠らずに心がけなければならない。

 例えば新潟市教育委員会が把握していた不審者情報の4件が小針小学校学区内の一定の地域に限られていたが、それが別の地域へと移動した場合、あるいは4件が小針小学校学区内の全地域に亘っていたのに対して一定の地域に絞られるようになった場合、最新の中身を把握しない前のままの不審者情報に頼った対策は、その価値を全減か、相当程度減ずることになる。

 当然、警察にしても、不審者情報に対応した実害回避の各種パトロールを実施するだけではなく、教育委員会に対して一定期間を置いて不審者情報の最新中身への必要に応じた差し替えを求めて、実害回避の各種パトロールの重点地域を最新の情報に基づいて行っていかなければならないことになる。

 そして教育委員会にしても、警察からの要精を管轄小学校や幼稚園、その他に対して伝達する役目を果たさなければならない。

 ところが、小針小学校は同じクラスの友達に伝達した被害女児の「黒い服を着てサングラスをかけたおじさんに追いかけられた」という不審者情報を被害の〈夕方に母親から「娘が帰って来ない」と電話があったことを受けて、学校側が同じクラスの友達から話を聞いた結果、初めてわか〉り、その情報を〈その後、速やかに警察に連絡した。〉――

 いわば不審者情報を最新の中身としていなかった。

 学校側が常に子どもたちに対して不審者情報に接したなら、どのように些細な情報でも保護者なり、担任の教師なりに伝えるようにうるさく言っていたのかもしれない。だが、不審者情報の直接の目撃者である被害児童にしても、その情報を伝えられた友達にしても、保護者にも、学校側にも伝達していなかった以上、不審者情報伝達の指示は機能していなかったことになる。

  機能させるところまで持っていくのが学校の責任であるはずである。でなければ、学校ばかりか、教育委員会にしてしても、警察にしても、最新の情報に基づいた対策は不可能になる。

 もし学校が不審者情報に接した場合は保護者か担任の教師に伝えるようにうるさく言っていなかったとしたら、最悪である。不審者情報を常に最新の中身へと差し替える責任と必要性を認識していなかったことになる。

 5月11日付「日経電子版」記事によると、女児が下校したのは7日午後3時頃。事件当日の5月7日は登校時の午前7時半~8時頃と下校時の午後3時~4時頃、数人が学校周辺で見守り活動をしていたが、小学校から踏切までは幹線道路で車や人が多いものの、人通りが少なくなる踏切から被害女児の自宅までの道約300メートルはボランティアが立つ場所ではなく、捜査本部はこの間の歩行中に連れ去られたと見ていると伝えている。

 新潟市教育委員会が収集した小針小学校学区内の不審者情報4件を人通りの多い場所なのか、あるいはそれなりに人通りのある場所なのか、あるいは人通りの少ない場所なのか、それぞれに分析にかけたのだろうか。一般的には女児誘拐目的の不審者は人通りの少ない場所を活動範囲とする。

 分析し、4件の内、人通りの少ない場所が2件か3件占めていたなら、人通りがそれなりにある学校周辺での見守り活動は不審者情報に的確に対応していなかったことになる。

 このことは学校自体が不審者情報に的確に対応していないことの反映でもあるはずである。対応せずに慣習に流されていた。

 上記「日経電子版」は、新潟県警が5月11日に小針小の児童の登下校を見守るための移動交番車を設置したとする情報を付け加えている。当面の間、登下校の時間帯にワゴン車を小学校正門前に駐車し、警察職員ら4~5人が付近に立つという。

 当分の間は犯人は警察の捜査を逃れるためにひっそりとした生活を送るだろうが、女児の被害が人通りの少ない線路沿いの道で起きていると見られている以上、移動交番のワゴン車を小学校正門前に駐車させる利点は何なのだろうか。

 当分の間は再犯の可能性が低くても、人通りの少ない道路をパトロールさせる方が利点は大きいはずだ。パトロールが犯人宅の近くを通らなくても、テレビや新聞の情報で否応もなしに目や耳に入るはずで、犯人に与える心理的影響は大きく、それが態度や表情に現れて、周囲の人間に不審を与えない保証はない。

 犯人宅の近くを偶然通っていたとしたら、心理的影響はそれなりに大きくなる。

 2017年3月24日午前8時頃に終業式のため自宅を出た後の通学途中に行方が分からなくなり、3月26日朝、同県我孫子市の排水路脇で遺体で見つかったベトナム国籍小学3年の女児殺害事件は犯人が女児が通う小学校の保護者会の会長を務めていて、朝の通学時に見守り活動をし、ハイタッチする仲の自宅近くに住む40代の男という特殊性はあったものの、人通りの少ない場所で車の中から声を掛けられ、乗ってしまったようだが、被害女児は同級生の友達に2月に「1か月ほど前の今年1月頃、通学路で不審者にあった。怖かった」という趣旨の話をしている。

 この不審者情報を保護者にも学校にも話していなかったようだが、学校側が子どもに対する不審者情報の収集に徹底していなかったことの現れでもあって、学校に責任が全然ないとは言えない。

 そして1年2カ月前のこの事件に於ける学校側の十分とは決して言えない不審者情報運用の不備・不足は今回の新潟市の女児殺害事件を見る限り、学校側が満足に学習しないままに繰返されたことになる。

 何も学習せずに繰返すことになった不審者情報の運用の不備・不足が犯罪発生の一因とすることになったと言えないことはない。

 将来に向かって喜怒哀楽を持って生きていくことを予定調和とした子供の尊い生命を人生の初期の段階で無残に奪い、冷酷に将来を断ち切って、その喜怒哀楽を踏みにじった。凶悪犯罪を不可抗力とせずに不審者情報を如何に運用するかに心血を注いで、子供の生命を一人でも犯罪に遭遇する前に救うことが学校や警察、教育委員会がチームワークを組んで行なわなければならない務めであろう。

 勿論、保護者も重要なメンバーとしてチームワークの一員に加わらなければならない。

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5・10柳瀬唯夫参考人招致:名刺交換と「首相案件」に関わる発言を取り上げただけで矛盾とウソを追及可能

2018-05-11 11:49:42 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 昨日2018年5月10日、午前中衆院予算委、午後参院予算委で加計学園獣医学部認可安倍晋三政治関与疑惑を追及する質疑が柳瀬唯夫を参考人招致して行われた。

 柳瀬唯夫が参考人招致されるのは二度目である。その経緯は周知の事実となっているが、改めて記すと、2015年4月2日に愛媛県や今治市の職員、加計学園幹部が首相官邸を訪問、獣医師養成系大学の設置に関して面談したとされていたことに対してそれが獣医学部新設が公式な議論に乗る前の接触であったことから、面会の応対者とされていた当時首相秘書官の柳瀬唯夫が2017年7月24日の加計学園衆院予算委員会閉会中審査と翌2017年7月25日参議院予算委員会閉会中審査に参考人招致され、追及を受けることになったが、いずれも「記憶にない」で面会を否定した。

 ところが、面会したことが記録されている愛媛県作成の文書の存在が明らかになり、柳瀬唯夫は再び参考人招致を受けることになった。

 愛媛県文書には柳瀬唯夫の発言として、〈本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい。〉との面会者に対する文言も記されていた。獣医学部新設が公式な議論に乗る前に「首相案件」としていることの意味は、勿論、安倍晋三の意向を受けて加計学園の獣医学部新設に向けた動きが既に始まっていたことを意味することになる。

 愛媛県文書に記されている事実に対して再び面会を否定するのか、あるいは一転して面会を認めるのか。後者の場合は過去の否定とどう整合性をつけるのか。「首相案件」の発言を実際にしたのかどうか。マスコミは自民党幹部の話として面会のみは認める方向で調整がついているといった趣旨のことを報道していた。

 柳瀬唯夫は今回の参考人招致で加計学園関係者との面会を認め、愛媛県と今治市の職員についてははっきりとは覚えていないと答えている。これは過去の参考人招致で「記憶にない」という理由で面会を否定していたことと整合性をつけるためとあくまでも獣医学部新設が公式な議論に乗る前の政治側を加えた談合、いわば「首相案件」と受け取られることを避けるための“ストーリー”なのだろう。

 柳瀬唯夫の答弁を自民党の後藤茂之との質疑で取り上げられた“名刺交換”と「首相案件」をキーワードに絞って事実を話しているのか、ウソという脚色を混じえているのか、探ってみたいと思う。

 後藤茂之は東京大学法学部卒業、1980年に大蔵省入省の官僚上がり、62歳。遣り取りは【柳瀬氏参考人招致詳報】(1)(産経ニュース/2018.5.10 10:45)を参考にして、要所を抜粋した。

 後藤茂之「(2015年)4月2日に柳瀬元秘書官は愛媛県、今治市、加計学園関係者と会っていないのか。先ず最初にしっかりと説明して下さい」

 柳瀬唯夫「先ず冒頭、私の答弁をきっかけに、国会審議に大変なご迷惑をおかけしましたことを誠に申し訳ございませんでした。その上で、ご質問の点でございますけど、加計学園の事務局の方から面会の申し入れがありまして、4月頃にその後の報道などを拝見すると、恐らくこれが4月2日だったのではないかと思いますが、加計学園の方、その関係者の方と面会を致しました。

 その面会のときには相手方は10人近くのずいぶん大勢でいらっしゃいました。そのうち、加計学園の事務局に同行されました獣医学部の、獣医学の専門家の元東大教授とおっしゃっている方がですね、『世界の獣医学教育の趨勢は感染症対策にシフトしているのに、日本は全く付いていっていない』という獣医学教育に関する話をまあ、情熱的に、滔々とされた覚えがございます。

 併せまして加計学園の事務局の方から『国家戦略特区制度を活用する方向で検討している』と、こういうお話がありました。

 面会では、メーンテーブルの真ん中にいらっしゃいました、その元東大教授の方と殆どお話になっていて、それと加計学園の事務局の方がお話になっておりました。

 そのためにその随行されていた方の中に愛媛県の方や今治市の方がいらしたかどうかという記録は、あー、残っておりません。ただ、その後の一連の報道や関係省庁による調査結果を拝見しますと、私は今でも愛媛県や今治市の職員の方が同席者の中にいたかどうかは分かりませんけども、10人近くの同席者の中でメーンスピーカーでない方に、随行者の中に愛媛県や今治市の方たちがいらっしゃったのかなと、しれないなと、こういういうふうに思います」

 後藤茂之「4月2日に関する面会がどのようなものであったかということは分かりましたが、愛媛県や今治市の方がいらっしゃらなかったのかどうか、本当に確認されなかったのでしょうか。名刺を交換をされなかったのでしょうか」

 柳瀬唯夫「先程申し上げましたけども、殆どお話になっていたのはこのメーンテーブルの真ん中におられた元東大教授の方と加計学園の事務局の方でございまして、随行者の中に愛媛県の方、今治市の方がいらっしゃったかどうかは私には分かりません。

 そのため昨年の国会では『今治市の職員に会ったか』というご質問に対しまして私からは『お会いした記憶がございません』、あるいは『私の記憶を辿る限りお会いしていません』、あるいは『覚えていないので会っていたとも、会っていないとも申し上げようがございません』というふうなお答えを致しした。

 私としましては今治市や愛媛県の方とお会いしたかお会いしていないかの定かな記憶がないのに、『必ずお会いしました』とか、『絶対にお会いしてません』とか申し上げるのは、いずれの場合もウソになる可能性があると思いましたので、このように申し上げましたた。

 なお、随行者の方々全員と名刺交換をしたかどうかは分かりません。私は普段から失礼にならないように自分から名を名乗って、名刺交換をするように心がけておりますが、多くの方とお会いするために交換した名刺の中で保存するのはごく一部でございます。今回の件で私が保存している名刺の中に今治市や愛媛県の方の名刺はございませんでした」

 面会は加計学園の事務局の方から申し入れがあって行ったもので、加計学園の関係者との面会を認める一方、面会者が総勢10人近くもいて、「随行者の中に愛媛県の方、今治市の方がいらっしゃったかどうかは私には分かりません」と明確に肯定も否定もしない曖昧な記憶として扱っている。

 このように愛媛県と今治市の職員を記憶にはっきりと残っていない不確かな存在とする狙いは既に触れたように加計学園に加えて両自治体の職員と加計学園の獣医学部新設を話し合った面会ではないことの印象づけと、それゆえに「首相案件」であることの伝達を目的とするはずはないことを印象づけるための情報操作――“ストーリー”の疑いをかけなければならない。

 これらの記憶の曖昧さは「恐らくこれが4月2日だったのではないかと思います」としている面会日についての記憶の曖昧さによって補強されている。
  
 獣医学部新設の公式な議論が始まる前の2015年4月2日の首相官邸で加計学園関係者と共に愛媛県と今治市の職員、この3者に当時の首相秘書官柳瀬唯夫を加えた4者会合の図とした場合、政治側を加えた談合、いわば「首相案件」の疑惑を誘う恐れから、愛媛県と今治市の職員を加計学園関係者の背景に退ける必要性が生じたのだろう。

 愛媛県と今治市の職員を加計学園関係者の背景に置くということは前2者を柳瀬唯夫の背景から遠ざけることにもなって、4者談合の図が崩れる好都合を生む。

 総勢10人近くの面会者はメーンテーブルに陣取ることになったが、「殆どお話になっていたのはこのメーンテーブルの真ん中におられた元東大教授の方と加計学園の事務局の方」のみで、いわば愛媛県と今治市の職員は殆ど口を利かなかった。このことは「随行者の方々全員と名刺交換をしたかどうかは分かりません」との発言で示している「元東大教授の方と加計学園の事務局の方」以外に対する随行者の位置づけによって証明していることになる。随行者らしく殆ど喋らずに控えていたということであり、名刺交換の記憶も定かでないということなのだろう。

 「加計学園の事務局の方から『国家戦略特区制度を活用する方向で検討している』と、こういうお話がありました」にも関わらず愛媛県と今治市の職員は殆ど口を利かなかったという図は国家戦略特区が自治体の提案を端緒とする建前からしても、前身の構造改革特区の時代から14年間、今治市と加計学園が組んで獣医学部新設を提案、国家戦略特区で獣医学部新設が認可された場合は今治市が36億円以上の市の土地を学校用地として無償提供、校舎建設費補助金を今後8年間で計64億円を支払うとされている、加計学園に対する上位者的位置関係からしても、あるいは今治市への獣医学部誘致の両者間の密接な利害関係からしても、余りにも不自然な寡黙状態であり、余りにも不自然な自己主張の希薄性と言わなければならない。

 こういった矛盾が炙り出されることになっても、4者談合の図を避けるために総勢10人近くが陣取った中で、「殆どお話になっていたのはこのメーンテーブルの真ん中におられた元東大教授の方と加計学園の事務局の方でございました」という図をデッチ上げて、愛媛県と今治市の職員を蔑ろにしなければならなかったということなのだろう。

 名刺交換については次のように答弁している。

 柳瀬唯夫「なお、随行者の方々全員と名刺交換をしたかどうかは分かりません。私は普段から失礼にならないように自分から名を名乗って、名刺交換をするように心がけておりますが、多くの方とお会いするために交換した名刺の中で保存するのはごく一部でございます。今回の件で私が保存している名刺の中に今治市や愛媛県の方の名刺はございませんでした」

 対して後藤茂之は柳瀬唯夫のこの答弁をそのまま受け入れて、名刺についての質問は切り上げている。

 「今回の件で私が保存している名刺の中に今治市や愛媛県の方の名刺はございませんでした」の発言は自身の名刺ホルダーを確認したが、「今治市や愛媛県の方の名刺」はなかったという意味を取る。

 と言うことは、「獣医学の専門家の元東大教授」と「加計学園の事務局の方」とは名刺交換し、「今治市や愛媛県の方の名刺」と共に確認したところ、後者は存在しなかったが、前者の名刺は存在したことになる。

 名刺交換と名刺の確認は両者共に名前の確認行為を伴う。にも関わらず、名前を口にするのではなく、「獣医学の専門家の元東大教授」と呼び、「加計学園の事務局の方」と呼んでいる。

 この矛盾も親しい関係ではないと見せることで何かを企む話をしたわけではない、4者談合の図ではないことの印象づけの情報操作ということもあり得る。

 もし「獣医学の専門家の元東大教授」、さらに「加計学園の事務局の方」とも名刺交換していなかったとしたら、「私は普段から失礼にならないように自分から名を名乗って、名刺交換をするように心がけております」の発言は自らウソにすることになる。

 午後の参院予算委の参考人招致で立憲民主党の蓮舫から「元東大教授」について質問されている。

 蓮舫「4月2日の面会、出席していたのは吉川泰弘さんですか」

 柳瀬唯夫「これは当時のことなので、ちょっと、あの、必ずしも定かではございませんが、一つは元東大教授の方という方から、お話を聞いたのはよく覚えています。

 それから、それが4月2日だったのか、その前の2月から3月に一回来られたときだったのか、そこは、あの、必ずしもクリアではございませんが、いずれにしても2月から3月に会ったときと、その、4月頃に会ったときにどちらかは元東大教授の方がおられたという記憶はございます」

 蓮舫「その人は吉川さんですか」

 柳瀬唯夫「私はあの、吉川さんというお名前は、あの、記憶してございませんでしたけど、朝、あの、半年前ぐらいだと思いますが、朝起きて、テレビのニュースを付けたときに加計学園のニュースが流れていて、そのとき、あの、加計学園の獣医学部長になる予定の者として吉川さんという方のお写真が出ていました。

 あ、この人がお会いしたことがある、お話を聞いた人だなと。それは4月2日7日、その前なのか、それはちょっと定かではありません」

 面会した日も名前もあくまでも記憶を曖昧にする。愛媛県と今治市の職員に対する記憶の曖昧さと釣り合いを取るためと、既に触れているように記憶が明確でないことで獣医学部新設の公式な議論が始まる前の新設に向けた談合ではないことを印象づけるためであろう。

 但し加計学園関係者の記憶だけが明確で、両自治体職員に対する記憶が曖昧では釣り合いが取れない事態を招くことになって、その不自然さは疑惑を後まで残す要注意点となる。こういったことを避けるためにも、あちこちに記憶の曖昧さを散りばめることになったのだろう。

 狙い通りの効果を生み出すことができたかどうかは別問題となる。

 柳瀬唯夫は半年程前にテレビのニュースで吉川泰弘の名前を知った。名刺交換もしなかったし、当然、今治市や愛媛県職員の名刺を確認するとき、名刺交換をしていなかったために同じく確認できなかったことになる。

 あるいは名刺交換をせず、当然、相手の名前を知らないままにメーンテーブルに総勢10人近くが陣取った中で、その中央に位置した元東大教授と加計学園の事務局の者が中心になって話すを聞いていたことになる。

 名刺交換をすれば、相手の名前と職業、あるいは職場の地位といった相手の後天的収得物を承知しながら話を聞き、話をすることになる。あるいは親しい関係になるに連れ、先天的、後天的どちらであっても、相手の性格を弁えながら話を聞いたり、話をしたりすることになる。

 名刺交換はそういった意味も含まれる。但し「随行者の方々全員と名刺交換をしたかどうかは分かりません」と発言している以上、「随行者」以外の「獣医学の専門家の元東大教授」と「加計学園の事務局の方」とは名刺交換していることになる矛盾が新たに発生することになる。

 もし「名刺交換をしたが、名前を忘れてしまっていて、半年前にテレビのニュースで思い出した」なら、「加計学園の事務局の方」は別にして、「獣医学の専門家の元東大教授」に対しては元の肩書で呼ばずに、肩書の後に名前を入れていたはずだ。

 だが、そうは言ってない。まるで名刺交換しなかった相手のように最初から「獣医学の専門家の元東大教授」と「加計学園の事務局の方」というふうに名前を知らない相手として扱っている。

 記憶の曖昧さを演出するための方便だったとしても、逆にこの上なく失礼な応対を示すことになるこの矛盾をどう説明する気なのだろうか。

 もし「獣医学の専門家の元東大教授」とも、「加計学園の事務局の方」とも、名刺交換しなかったとしたら、「私は普段から失礼にならないように自分から名を名乗って、名刺交換をするように心がけております」の事実に反して非常に奇妙な矛盾を見せることになる。

 テレビのニュースで思い出したが事実であるなら、朝の衆院予算委の参考人招致で名刺交換を聞かれたときに明かさなければならなかったエピソードでありながら、午後の参院予算委の参考人招致で初めて明かしていることも、数々の証言・説明がウソ混じりであることの証明としかならない。

 後藤茂之が「本件は首相案件」という発言をしたのかどうかの質問に対する柳瀬唯夫の答弁を簡単に見てみる。


 柳瀬唯夫「そもそも言葉といたしまして私は普段から首相という言葉は使わないので、私の発言としてはややちょっと違和感がございます。そういう意味で報道されております愛媛県の職員の方のメモですけども、ちょっと趣旨として私が伝えた形とは違う形で伝わっているのかなという気がいたします」

 対して後藤茂之は加計学園と面会したことや遣り取りについて安倍晋三に報告したり、何らかの指示を受けたことはあるかといった質問に変えている。これが与党の追及の限界なのだろう。

 「首相という言葉は使わないので、私の発言としてはややちょっと違和感がある」

 「総理」という言葉は直接的呼称、呼びかけの名詞であって、「首相」は一般的呼称という関係にあるはずだ。役人や身内の国会議員、あるいは親しい関係にある財界人等が安倍晋三に対して「首相」とは呼びかけない。呼びかけた場合、安倍晋三を下に置いた上から目線のニュアンスを帯びることになる。

 対して「総理」と呼びかけた場合、上から目線であることを排して敬意のニュアンスを持たせることになる。直接の呼びかけではないから、一般的呼称を用いて、「首相案件」と言い換えたとしてもさしたる不都合はない。

 柳瀬唯夫が「ちょっと趣旨として私が伝えた形とは違う形で伝わっているのかな」と言っている「私が伝えた」「趣旨」とはこの発言の前段で、「面談の中でも獣医学部新設の解禁は、総理は早急に検討していくと述べている案件であるという趣旨はご紹介したように思います」と述べていることを指す。
 
 愛媛県文書には、〈本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい。〉と記されていて、安倍晋三個人が関わっている意味合いを持たせて、それを「公式のヒアリング」で体裁を整えることを約束しているのである。

 「獣医学部新設の解禁」を指して愛媛県職員が「総理案件」と表現したり、あるいは「首相案件」と表現したりすることは到底不可能なはずだ。愛媛県と今治市の職員、さらに「獣医学の専門家の元東大教授」や「加計学園の事務局の方」が雁首を揃えてわざわざ首相官邸を訪問、「獣医学部新設の解禁は、総理は早急に検討していく」の言質ともならない言質を得るために首相秘書官と面談する必要もない。

 大体が柳瀬唯夫が獣医学部新設の解禁についての安倍晋三の考えを伝えたのが事実なら、愛媛県職員は素直に「首相は獣医学部新設解禁を喫緊の課題としている」とだけ記したはずだ。


 このように記したなら、〈内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい。〉という後の言葉は必要なくなるだけではなく、意味のない言葉と化す。〈本件は、首相案件〉であることによって、後の言葉が意味を持つ。

 柳瀬唯夫の名刺交換に関わる発言と「首相案件」に関わる発言を取り上げただけで、如何に矛盾に満ちているか、矛盾が事実に基づいていないウソの答弁によって生じているか、いくらでも追及できるはずだ。

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安倍晋三も柳瀬唯夫も諮問会議民間有識者議員八田達夫も加計学園を影の存在扱いしてきた その整合性とは?

2018-05-10 08:51:47 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 広く知られることになったが、安倍晋三は国家戦略特区に指定された愛媛県松山市が愛媛県と共に第2次安倍政権が進めたアベノミクスの成長戦略の柱「国家戦略特区」に「国際水準の獣医学教育特区」を提案したのが2015年6月4日であるにも関わらず、新設の獣医学部事業主体が加計学園であることを知ったのは2017年1月20日の第27回国家戦略特別区域諮問会議で加計学園が獣医学部の事業主体として認定された際だと何度も国会答弁している。

 その理由について国会答弁している例を二つ程挙げてみる。

 2017年7月25日の加計学園閉会中審査参議院予算委員会

 安倍晋三「今まさに私が申し上げたように、国家戦略特区においては今治市がこれは提案をしている、国家戦略特区については今治市が提案をしておるわけでございますので、これは国家戦略特区制度が誕生して、2年前の11月から私が議長を務める国家戦略特区諮問会議において今治市の特区指定を受けた議論が進む中で、私は今治市が獣医学部を提案していることは知ったわけでありまして、これはもう答弁をしたとおりでございますが、しかし、その時点においてもまだ、またその後のプロセスにおいても、事業主体が誰かという点について、提案者である今治市からはこれは説明がなく・・・・・(ヤジで途切れる)」

 安倍晋三「まず、大前提として獣医学部新設の提案者は構造改革特区でもですね、その後の国家戦略特区においても自治体である今治市であり、加計学園ではありません。今治市からの提案は平成19年の福田政権のとき以来、構造改革特区としての申請が行われてきました。第2次安倍政権になってからも4度に渡って申請がございました。その対応方針は私が本部長を務める構造改革特区本部で決定しており、今治市からの提案については私は知りうる立場にありました。しかし、数十件ある案件の一つにすぎないわけでありまして、結果もですね、第2次安倍政権においては4度とも提案を事実上認めないものでありましたので、実際には今治市の提案については全く認識していなかったわけであります。
 その後、国家戦略特区制度が誕生し、2年前の11月から私が議長を務める国家戦略特区諮問会議において、今治市の特区指定に向けた議論が進む中、私は今治市が獣医学部新設を提案していることを知りました。その時点においても、またその後のプロセスにおいても、事業自体は誰かという点について、提案者である今治市から説明はなく、加計学園の計画は承知しておりませんでした。

 最終的には本年1月に事業者の公募を行い、加計学位園から応募があったわけであります。その後の分科会でのオープンの議論を経て、1月20日に諮問会議で認定することになりますが、その際私は初めて加計学園の計画について承知をしたところであります」

 要するに国家戦略特区今治市への獣医学部新設提案は今治市が行ったもので、「事業自体は誰かという点について、提案者である今治市から説明は一切なかった」、その後加計学園が今治市新設提案の獣医学部の内閣府による事業主体公募に加計学園1校のみが応募、内閣府の審査に通って、2017年1月20日の国家戦略特区諮問会議で認定されて初めて知ったというわけである。

 2017年11月30日参院予算委員会

 日本共産党の小池晃が2015年6月5日の国家戦略特区ワーキンググループに加計学園関係者3名が出席し、発言していたが、その事実も発言内容も議事録には記載されていない点を追及すると、地方創生・規制改革担当の梶山弘志は「加計学園関係者は、提案者である今治市の独自の判断で同席をさせた説明補助者に過ぎず、会議の一般則に従い、正式な出席者とは扱っておりません。したがって、加計学園関係者の発言が、そもそも正式な出席者や公式な発言を記録する議事録、議事要旨の掲載対象とならないのは当然のことであります」と答弁している。

 この件について安倍晋三は次のように答弁している。

 安倍晋三「特区のワーキンググループは、原則は公開との方針に基づいて、そしてこれはこの案件に限りません、ほかの案件も全てそうなっております。八田座長を始め民間有識者の皆さんが決めたルールに基づき運営されているものと承知をしております。

 そして、先程小池委員の方から、なぜこの加計学園は補助(説明補助者)であり、京産大はそれはそのままで補助者ではないのかというのは、もうこれは先程(梶山)大臣が答弁したとおり、提案者に入っている、京産大はですね。

 加計学園の場合はこれは提案者に入っていないわけでありますから……(発言する者あり)提案者に入っていない。提案側が、これはまさに、これは今治市が提案をしたわけでありまして、当然これはルールに基づいてやるわけでありますから、当然ルールに基づいてこれ運営をされているものと承知をしておりまして、こうした運営どおりにのっとって全てがオープンにされているものと承知をしております」――

 京都産業大学は国家戦略特区指定の京都府が獣医学部新設を提案した際の共同提案者になっていたがゆえに2016年10月17日の国家戦略特区諮問会議ワーキンググループヒアリングに京都府と共に京都産業大学も出席、発言し、その事実は議事録に記載されることになったが、今治市の場合は単独提案者となっていて、加計学園は共同提案者にはなっていなかったがゆえに説明補助者とされ、議事録には記載されなかったという“ストーリー”になる。

 どうも安倍政権はストーリー好きのようだ。

 しかしこのストーリー、奇妙な論理となっている。今治市が獣医学部新設を提案した。国家戦略特区諮問会議は常に今治市への獣医学部新設の是非を議論してきた。事業者体がどこか、一言も議論していない。その理由を安倍晋三は加計学園が共同提案者となっていなかったからだとしている。

 ところが、今治市が戦略特区として獣医学部新設を提案した2015年6月4日翌日の2015年6月5日の八田達夫座長の国家戦略特区ワーキンググループには加計学園関係者3名を招き、発言させている。

 例え3名を説明補助者と位置づけようと位置づけなかろうと、安倍晋三が言う原則からすると、提案者はあくまでも今治市でありながら、共同提案者でもない加計学園関係者を3名も出席させたのは首尾一貫しないことになる。国家戦略特区諮問会議が常に今治市への獣医学部新設の是非を議論してきたこととも首尾一貫しない。加計学園が事業主体としてふさわしい獣医学教育を担うことができる学校法人か否かの議論もしていない。

 朝日新聞がこの出席をスクープしなかったなら、3名の出席は永遠に闇の出来事とされたろう。あるいは朝日新聞のスクープ以降、加計学園は事業主体として名乗るなり何なり表に出てきていいはずだが、その後も事業主体として提案者の列に加わらずにあくまでも提案者は今治市に限定、そこへの獣医学部新設のみが議論されてきた。

 いわば安倍晋三も国家戦略特区諮問会議民間有識者議員の八田達夫も加計学園を影の存在扱いしてきた。

 このように影の存在扱いしてきたことは 2015年4月2日に首相官邸に愛媛県と今治市職員、それに加計学園関係者が面会に来て、応対したのが当時首相秘書官の柳瀬唯夫だとされていながら、「記憶にない」を理由に否定してきたことにも現れている。

 2018年4月10日付の朝日新聞が面会の事実を記した文書の存在を報道、その日の午後に愛媛県中村知事が記者会見して、その文書の存在を認め、その文書には愛媛県地域政策課長・今治市企画課長・加計学園事務局長らが内閣府藤原豊次長及び柳瀬唯夫首相秘書官らとそれぞれ面談した事実とその際の両者の発言を記しているが、今日2018年5月10日の衆参それぞれの予算委で加計疑惑で八田達夫と共に参考人招致された柳瀬唯夫は三者との面会を認める方向だという。

 今回の参考人招致でも同じく面会を否定したとしても、愛媛県文書だけではなく、その文書と同趣旨の文書が文科省と農水省に存在する以上、面会と発言は、いくら記憶になくても、存在した事実として認めなければならない。

 つまり面会の事実を認めたとしても否定したとしても、いずれの対応にしても、加計学園を影の存在としてきたことの何よりの証明以外の何ものでもない。影の存在とするということは隠す行為を意味する。

 2015年4月2日に首相官邸で愛媛県と今治市の職員と共に加計学園関係者と面会し、約2カ月後の2015年6月4日に今治市が指定された国家戦略特区を使って獣医学部新設を提案、加計学園がその事業主体として名乗り出て認められる2017年1月20日の第27回国家戦略特別区域諮問会議までの約1年8カ月の間、一貫して加計学園は影の存在として今治市の陰に隠されてきた。

 加計学園が「提案者に入っていなかった」という理由は成り立たない。繰返すことになるが、提案者でもないのに2015年4月2日に加計学園関係者と首相官邸で首相秘書官である柳瀬唯夫が愛媛県及び今治市の職員と共に面会し、提案者でもないのに約2カ月後の2015年6月5日の国家戦略特区ワーキンググループに加計学園関係者3名を参加させ、発言を許しているのである。

 安倍晋三側はこの矛盾に整合性を与えなければならない。2015年4月2日に加計学園関係者が愛媛県と今治市の職員と共に首相官邸に面会に訪れず、当然、柳瀬唯夫は加計学園関係者と面会もせず、2015年6月5日の国家戦略特区ワーキンググループにどのような名目であろうと、説明補助者であろうとなかろうと、出席させていなかったという事実があって初めて、加計学園を影の存在としなかったことになり、安倍晋三が2017年1月20日の第27回国家戦略特別区域諮問会議で初めて加計学園の名前を知ったとすることの整合性を成立させることができる。

 そうでない以上、加計学園獣医学部新設認可が“首相案件”だったからこそ、加計学園を影の存在としなければならなかったということであり、この点についての整合性は十二分過ぎる程に成り立つ。

 加計学園獣医学部新設認可が「安倍案件」だったのかどうかの真相究明は参考人招致の柳瀬唯夫や八田達夫の言葉尻を捕らえて、整合性を如何に問い詰めることができるか、その追及にかかっていると言える。/TD>

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柳瀬唯夫5月10日参考人招致 安倍晋三をどう守り、その守りを野党はどう突破するのか、その攻防を予測

2018-05-08 09:59:19 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 5月7日深夜時間帯のマスコミネット記事が自民党と立憲民主両党の7日の国対委員長協議で加計学園問題に関する柳瀬唯夫元首相秘書官(経済産業審議官)の参考人招致を5月10日の衆院予算委員会で行うことで合意したと伝えていた。

 野党は証人喚問を求めていたが、数の力で敵わず、参考人招致で押し切られたのだろう。加計学園獣医学部新設認可に関して安倍晋三の私的な政治関与が疑われている点については「獣医学部の新設については、プロセスにおいて、関わった民間人からは『一点の曇りもない』との明確な発言がある。また、文部科学省の前川前事務次官も含めて、私から指示を受けたという方は1人もいない」を自身の身の潔白を主張する常套句としているが、全くの潔白であるなら、事実と異なる発言は偽証罪に問われることになる証人喚問であっても、後ろ暗い事実は出したくても出てこないはずだが、証人喚問で堂々と受けて立つ姿勢は一向に見せず、あくまでも虚偽証言が許される参考人招致で押し通す。

 いわば自民党は堂々と受けて立つ姿勢を見せるどころか、安倍晋三の「一点の曇りもない」発言に反して逃げの姿勢を見せていることになる。この違いは安倍晋三が常々主張している「一点の曇りもない」はあくまでも第三者の証言を借りた身の潔白であって、自身の誓いという形を取った身の潔白とすることのできない違いに対応しているのかもしれない。

 柳瀬唯夫は10日の衆院予算委員会で自身の参考人招致が決まったことについて5月7日夜、記者の問いに「誠実にしっかりと国会で話したい」と述べたという。

 但し愛媛県文書に「柳瀬首相秘書官の主な発言(総理官邸)15:00」の一つとして、〈本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい。〉と記されている発言を記者が認めるのかと質問したのに対して柳瀬唯夫は何も答えなかったという。

 要するに「本件は、首相案件」なる発言をしたかどうかについては「誠実にしっかりと国会で話したい」とは言わなかった。

 柳瀬唯夫は自身の参考人招致2017年7月24日の衆院予算委、翌日2017年7月25日の参院予算委では「記憶にない」を理由に首相官邸での今治市職員との面会は否定していた。

 対して今度の参考人招致では従来の答弁が虚偽にならないよう整合性を持たせるために面会の際に愛媛県や今治市の担当者は学園事務局長の後ろにいて記憶に残らなかったと説明する方向で面会を認める対応で臨むことを5月2日の段階で自民党が決めたことをマスコミは伝えている。

 「本件は、首相案件」と発言したとされていることに関してはどういった対応で臨むかはマスコミは何も触れていなかった。

 柳瀬唯夫が参考人招致は決まったものの、「本件は、首相案件」なる発言については何も答えなかったことと自民党が5月2日の段階で参考人招致にどのような対応で臨むかを決めていたことと考え併せると、柳瀬唯夫が5月10日の参考人招致でどう対応するのか、おおよその予想がつく。

 「本件は、首相案件」に関しては愛媛県文書が公表された4月10日、柳瀬唯夫は「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはない。私が外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ない」といったコメントを出している。

 前者の件については加計学園事務局長と面会しことは記憶しているが、愛媛県や今治市の担当者と面会した記憶がなかったのは加計学園事務局長の後ろにいて気づかなかったからだと答え、後者の「首相案件」なる発言に関しては「私が外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をしたことは一度もない」と明確に記憶していることとして否定して、獣医学部認可に何の問題もない、「一点の曇りもない」で一件落着させる予定なのだろう。

 対して野党がどう追及するかである。

 2018年5月4日の当「ブログ」に面会の際に愛媛県や今治市の担当者は学園事務局長の後ろにいて記憶に残らなかったとするのは愛媛県職員と今治市職員とは名刺交換も自己紹介もしない「名乗らない存在・発言もしなかった存在」と扱うことになると、その矛盾点を衝いた。

 記憶に残らなかったを結構毛だらけ猫灰だらけ扱いにしたとしても、愛媛県と今治市の担当者が加計学園事務局長の背後にいたという三者の位置関係(=三者の立ち位置)をいつ、どのようなキッカケで知ることになったのかという疑問が生じる。前回の参考人招致のときはその位置関係が記憶になかったことは国会答弁から明らかである。

 4月10日に愛媛県文書が公表された際、同じ日に「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはない」とコメントしている以上、愛媛県文書公表の4月10日時点で三者の位置関係について知ったわけではないことも明確である。

 愛媛県文書とほぼ同内容の、内閣府から文科省に当てたメールが文科省で見つかり、さらに農水省でも見つかったことがキッカケとなって記憶を蘇らせ、知ることになったのだろうか。

 何しろ加計学園事務局長の背後に隠れるように突っ立っていて、「名乗らない存在・発言もしなかった存在」であった。何らかのキッカケがない限り、三者の位置関係を認識することは不可能である。

 そのキッカケにしても、自分一人の力でつくり出したのか、誰かの助けを借りた結果なのか、そういったことも明らかにしなければ、柳瀬唯夫の参考人招致を受けた国会答弁が作り話なのかどうかも判断できないことになる。

 例えばキッカケが後者である場合、加計学園事務局長と面会したのは記憶していたことになるから、予想されるのは事務局長への問い合わせである。問い合わせたところ、「記憶していなかったようですが、私の後ろに愛媛県と今治市の担当者が控えていました」といった返事を得て三者の位置関係を知るに至った。だから、愛媛県と今治市の職員と面会したことは記憶になかったのだと納得させなければならない。

 但しどのようなキッカケで三者の位置関係を知るに至ったとしても、あるいは記憶に蘇らせることになったとしても、愛媛県今治市が国家戦略特区に指定されて、その特区活用で愛媛県と今治市が今治市での獣医学部新設を国に提案、その提案を受けて国家戦略特区諮問会議が愛媛県今治市での獣医学部新設の是非を議論したのである。加計学園を事業主体とする獣医学部新設を議論したわけではない。一度も議論していない。

 このような三者の位置関係からすると、柳瀬唯夫との首相官邸面会時の三者の位置関係(=三者の立ち位置)と微妙にズレが生じることになる。

 上記当ブログには、〈愛媛県も今治市も加計学園に対して獣医学部新設に関して多額の補助金を出す身であり、今治市が無償譲渡した評価額36億円以上もする土地に獣医学部の建物を建てることになっていた関係から、加計学園事務局長が両自治体の顔立てなければならない立場にある以上、加計学園事務局長だけが名刺交換と自己紹介を行ったとすると余りにも不自然となる。〉と書いたが、いわば首相官邸面会時に
実際の三者関係とは異なって三者をこのような位置関係・立ち位置にさせていること自体の矛盾を追及しなければならない。

 いずれにしても、安倍晋三側は参考人招致の衆院予算委で柳瀬唯夫に愛媛県と今治市の担当者と首相官邸で面会したことは認めさせるだろうが、愛媛県文書に面会と同じく事実あったこととして記載されている「本件は、首相案件」なる発言を認めることは譲ることのできない一線とするだろう。

 柳瀬唯夫の参考人招致で予想されるこのような安倍晋三側の守りに対してその守りのどこをどう突いて、以上見てきた矛盾や疑問が政治関与の犯罪事実によって出来していることを証明できるかであり、その一点にかかっていることになる。

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麻生太郎の「セクハラ罪という罪はない、殺人とは違う」と宣(のたま)う頭の程度 セクハラは精神的痴漢行為

2018-05-07 11:13:00 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
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“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 財務省前事務次官の福田淳一のセクハラ問題を「自制心」という点から見てみる。この手の自制心に関しては偉そうなことを言える立場にないが、福田淳一の立場は彼一人にとどまらない、麻生太郎にも関係してくる、比較にならない重要性を抱えているゆえに取り上げてみることにした。

 麻生太郎が5月4日に訪問先のフィリピンでの記者会見で財務省前事務次官の福田淳一のセクハラ問題の調査を打ち切る考えを改めて示したと2018年5月4日付「朝日デジタル」記事が伝えていた。

 麻生太郎の発言を纏めてみる。

 麻生太郎「1対1の会食のやりとりについて、財務省だけで詳細を把握していくことは不可能だ。セクハラ罪っていう罪はない。殺人とか強わい(強制ワイセツ)とは違う。

 (福田淳一)本人が否定している以上は裁判になったり、話し合いになったりということになる。ここから先はご本人の話だ。いくら(調査結果が)正確であったとしても、偏った調査じゃないかと言われるわけですから。被害者保護の観点から(調査に)時間をかけるのは、かなり問題がある。

 役所に対しての迷惑とか、品位を傷つけたとか、そういった意味で処分をさせて頂いた」

 記事は女性社員が被害にあったというテレビ朝日が調査の継続を求めていることに対しての麻生太郎の調査打ち切りであり、財務省が4月27日にセクハラ行為があったことを正式に認定したことは挙げていなかったと解説している。

 麻生太郎の頭の程度が知れるのは強制わいせつはまだしも、殺人と比較していることである。比較できない危険極まる重大な犯罪を持ってきて、セクハラは罪は軽い、たいしたことではないとの位置づけを行い、寛大なる情状酌量を謀っている。

 一見すると、このような意味づけは部下思いから出ていることのように見えるが、部下思いにかこつけて防衛省に対する評価の毀損を回避したい組織防衛からから出ている場合もあるし、あるいは財務省に於ける麻生太郎の責任者としての立場・監督能力を守ることから、いわば自身の地位・進退を守ることから出ている場合もあるだろう。

 部下を庇う思いがこれらの事情のいずれかでも絡んでいるとしたら、自身の監督責任を守るために部下を庇う構図、あるいは部下だけの責任にして辞任させるといったトカゲの尻尾切りの構図も見えてくる。

 麻生太郎は福田淳一のセクハラ行為を「強わい(強制わいせつ)とは違う」と罪一等か二等軽くしているが、言葉によるセクハラの範囲を踏み外して抱きついたり、胸を触ったり、手を握ったりの身体的行為を伴わせた場合は強制わいせつに問われることになる両者紙一重の、いつ一線を超えないとも限らない危うい行為であるのに対して現実問題としてそこまではいっていなかったのだからと、そこに事務次官としての自制心を考慮して差引いたとしても、そのことによって麻生太郎のように「強制わいせつとは違う」とすることはできない。

 なぜなら、このような場合の自制心はセクハラ行為自体に自己の行動を統制すべく発揮させなければならない精神性だからである。

 いわばセクハラ行為自体に自制心を働かせることができずに「セクハラ罪っていう罪はない。殺人とか強わい(強制ワイセツ)とは違う」と擁護しても始まらないとうことである。

 麻生太郎は何よりも福田淳一の財務省事務次官としての自制心を問題にしなければならなかった。麻生太郎はそのような自制心を抜きに刑法上の罪と比較して、たいした問題ではないとする趣旨の発言をしている。頭の程度が知れるではないか。

 福田淳一は2017年7月5日に財務事務次官に就任していて、麻生太郎が任命責任者となる。女性に接する態度に自制心を欠いているかどうかは気づかなかったとしても、麻生太郎は管理責任を負わなければならない。

 自身の管理責任には触れずに福田淳一のセクハラ行為のみを云々するのは無責任で、やはり頭の程度が知れることになる。

 身体的行為を伴った過度の痴漢は強制わいせつ罪に問われる。但しセクハラ行為が言葉にとどまっているとの理由で強制わいせつ罪に相当しなくても、精神的痴漢行為=精神的わいせつ行為に譬えることができる。

 福田淳一の声でテープに残された「キスしたいんですけど。すごく好きになっちゃったんだけど・・・おっぱい触らせて」云々はまさしく精神的痴漢行為=精神的わいせつ行為そのものであろう。

 「セクハラ罪っていう罪はない。殺人とか強わい(強制ワイセツ)とは違う」との表現で以って福田淳一のセクハラ行為を自制心を問題としないままに、あるいは自身の責任を蚊帳の外に置いて刑法上の罪とそのような罪に伴う責任とのみ比較して罪と責任の軽さを判断する。

 どこからどう見ても、こういった頭の程度では財務大臣としての資格を有すると言うことができるのだろうか。

 麻生太郎は「いくら(調査結果が)正確であったとしても、偏った調査じゃないかと言われるわけですから」と言っているが、自身自体が頭の程度が知れる「偏った」判断しか示し得ないのだから、他者の批判を云々する資格もない。

 「偏った調査」との批判は財務省が委託した弁護士を「中立の第三者」だと位置づけて調査の依頼をしていながら、福田淳一に対する実際の聴取は麻生太郎の指示のもと、中立の第三者でも何でもない身内である財務省大臣官房長の矢野康治の主導で行なわれていたことに端を発しているはずだ。

 こういった経緯をも無視して、「偏った調査じゃないかと言われるわけですから」とすることができる頭の程度も素晴らしいの一言である。

 何度言っても言い足りないが、頭の程度が既に財務大臣の資格喪失を伝えて余りある。

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柳瀬唯夫の従来の国会答弁も今回の面会を認める軌道修正も官邸の意向を反映して決めたと読み取れる新聞記事

2018-05-04 10:53:36 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 5月2日(2018年)付けで各マスコミが元首相秘書官柳瀬唯夫が今まで国会で「記憶にない」を理由に否定してきた2015年4月2日の首相官邸での加計学園関係者や今治市職員などとの面会を認める方向で調整に入ったことを自民党幹部の話として伝え始めた。

 この否定から肯定への軌道修正は2018年4月10日付の朝日新聞が面会の事実を記した文書の存在を報道、その日の午後に愛媛県中村知事が記者会見して、愛媛県職員の備忘録という形で面会記録が残されていることを認めたことに端を発している。

 そこには面会の事実を次のように記してあった。(「福山“龍馬”雅治のブログ」から一部引用)

 〈1 4/2(木)、獣医師養成系大学の設置について、県地域政策課長・今治市企画課長・加計学園事務局長らが内閣府藤原次長及び柳瀬首相秘書官らとそれぞれ面談した結果は、次のとおり。〉――

 この愛媛県文書と内閣府が文科省に当てた同趣旨のメールが文科省で見つかり、さらに農水省でも見つかって、全ての文書に柳瀬唯夫の発言、「この件は首相案件」の文字が記載されていた。
  
 では、軌道修正の経緯を二つの記事から見てみる。文飾は当方。

 「柳瀬氏、面会肯定へ=来週にも国会で証言-野党、審議復帰探る」時事ドットコム/2018/05/02-19:05)    
 国家戦略特区での学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、元首相秘書官の柳瀬唯夫経済産業審議官が首相官邸で学園関係者と会ったことを来週にも国会で認める方向となった。与党関係者が2日、明らかにした。面会の事実を示す文書が相次いで見つかったことを踏まえ、従来の説明を軌道修正する。これを受け、立憲民主党などは審議復帰のタイミングを探る考えだ。

 柳瀬氏が面会を認めれば、特区活用が政府にとって「加計ありき」だった疑いがより強まる。昨年1月20日に新設計画を知ったとする安倍晋三首相の答弁も整合性が厳しく問われそうだ。

 柳瀬氏の修正に関し、自民党幹部は2日、「いろいろな文書が出てきて、面会の事実は認めないと始まらない」と指摘した。別の幹部は、面会の際に愛媛県や今治市の担当者は学園事務局長の後ろにいて記憶に残らなかったと説明する方向だとし、「学園関係者との面会を認めても、従来の答弁は虚偽にはならない」との見解を示した。

 与党側は来週、衆参両院の予算委員会に柳瀬氏を参考人招致することを検討。野党側に非公式に打診しており、実現すれば柳瀬氏は面会について説明する見通しだ。

 立憲民主党の辻元清美国対委員長は2日、記者団に「首相の関与も含め、疑惑はますます深まった」と強調。審議復帰については「早期に真実を話してもらう必要が強まった。他の野党と相談したい」と述べた。

 自民党幹部「いろいろな文書が出てきて、面会の事実は認めないと始まらない」と指摘、別の幹部〈面会の際に愛媛県や今治市の担当者は学園事務局長の後ろにいて記憶に残らなかったと説明する方向〉だとして、「学園関係者との面会を認めても、従来の答弁は虚偽にはならない」との見解を示した。

 この記事を読む限り、自民党幹部主導の軌道修正となっている。勿論、柳瀬唯夫も加わってだろう、複数の自民党幹部と協議し、その主導に従って、柳瀬唯夫の参考人招致を受けた過去の国会答弁と可能な限り整合性を持たせる方向で再び柳瀬唯夫を国会で参考人招致に立たせることにしたという構図になっている。

 このような経緯は柳瀬唯夫を参考人招致した2017年7月24日の衆院予算委、翌2017年7月25日の参院予算委での柳瀬唯夫の国会答弁にしても、複数の自民党幹部と協議し、その主導に従って決めたチームワークだったことを示すことになる。

 このチームワークに官邸の誰かが参加していたか、あるいは最低限、官邸の意向が反映されていなければならない。何しろ、柳瀬唯夫が面会を認めた場合、直接影響を受け、時と場合に応じて進退問題に発展しかねない張本人は安倍晋三を措いて他にいないからだ。

 いわば安倍晋三の進退に悪影響を与えかねない都合の悪い文言は回避させる方向で、その内容を決定し、柳瀬唯夫に答弁させた。それが、「記憶をたどる限り」、あるいは「記憶する限り」は会っていないという答弁だった。

 と言うことは、このような文言を用いた答弁は安倍晋三を守るためという目的を当初から持っていて作られたことになる。このことは安倍晋三の政治関与が疑われた加計学園獣医学部新設疑惑だから、当然と言えば当然の作り事と言うことができる

 別の幹部が、〈面会の際に愛媛県や今治市の担当者は学園事務局長の後ろにいて記憶に残らなかった〉と、面会時の配置をこのようにすることで、「学園関係者との面会を認めても、従来の答弁は虚偽にはならない」〉としていることは、柳瀬唯夫参考人招致の国会では野党は首相官邸面会者を今治市の職員に限って、「会ったのか、会わなかったのか」と質問していて、そのような質問に対して柳瀬唯夫は記憶していないことを理由に今治市の職員とは会っていないとしていたことへの整合性付与であろう。

 但し愛媛県と今治市の職員に関しては〈学園事務局長の後ろにいて記憶に残らなかった〉とすることに正当性を持たせるために愛媛県や今治市の担当者、さらに加計学園事務局長、その3人いずれとも、名刺交換も自己紹介もしなかったとしなければならない。

 愛媛県も今治市も加計学園に対して獣医学部新設に関して多額の補助金を出す身であり、今治市が無償譲渡した評価額36億円以上もする土地に獣医学部の建物を建てることになっていた関係から、加計学園事務局長は両自治体の顔を立てなければならない立場にあり、そうである以上、加計学園事務局長だけが名刺交換と自己紹介を行ったとすると余りにも不自然となる。
 
 さらに柳瀬唯夫に対して発言したのは愛媛県と今治市の職員、加計学園事務局長三者の内、加計学園事務局長のみだったことになる。もし前二者がそれぞれ発言していたなら、県と市、それぞれの立場からの発言となっただろうから、最低限、加計学園関係者ではないことは自ずと明らかになるからだ。ただ単に〈「愛媛県や今治市の職員は加計学園関係者の後ろにいたから、記憶に残っていない」 とすることはできなくなる。

 当然、前二者を名乗らない存在・発言もしない存在だったとすることになる。このような点をクリアするためにどのような作り事を用意しているのだろうか。最初の作り事を次の作り事でカバーする。次の作り事を通用させるためにはさらに新たな作り事を用意しなければならない。

 柳瀬唯夫からしたら、愛媛県と今治市の職員は加計学園事務局長の背後にただ単に控え目に立っていた加計学園関係者にしか見えなかった。作り事もなかなか大変である。

 いずれにしても、官邸の意向を反映したチームワークで柳瀬唯夫が面会を認める軌道修正を図ることを決めたとしても、愛媛県文書に柳瀬唯夫の発言として記載されている「本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」をも含めて切り抜けることができると計算しているはずだ。切り抜けるためのあの手この手の作り事を既に準備していなければ、軌道修正を図ることはできない。

 その切り抜けの秘策に対して当てにならない野党だが、どう阻止できるか、腕の見せ所となる。

 次の記事を見てみる。

 「加計問題 柳瀬氏、面会認める意向 国会答弁へ」毎日新聞 2018年5月2日 02時00分)
 
 学校法人「加計学園」による国家戦略特区を利用した獣医学部新設を巡り、柳瀬唯夫元首相秘書官(現経済産業審議官)は、2015年4月2日に同学園関係者と首相官邸で会ったことを認める意向を固めた。面会をうかがわせる文書が愛媛県や農林水産省などで見つかり、否定し続けるのは難しいと判断した。与野党が国会招致で合意すれば、答弁で説明する。自民党幹部が明らかにした。

 愛媛県と同県今治市職員、加計学園事務局長らが柳瀬氏と面会したという県職員作成の文書が報じられた4月10日、柳瀬氏は「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」とのコメントを出した。文書では柳瀬氏が「本件は、首相案件」と述べたとされるが、柳瀬氏は「私が外部の方に対して、首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ません」と否定した。

 その後、愛媛県の文書とほぼ同じ内容の文書が農水省で見つかり、文部科学省が内閣府から受け取ったメールには、15年4月2日に柳瀬氏と愛媛県や今治市職員、加計学園幹部らが面会する予定と記されていた。

 立憲民主党など野党6党は柳瀬氏の証人喚問を要求し、参考人招致にとどめたい与党と駆け引きが続いている。いずれの方法にせよ国会招致は避けられない状況になり、安倍晋三首相は4月26日、衆院予算委員会で「柳瀬氏は国会に呼ばれれば、しっかりと誠実にお答えする。知っていることをすべて明らかにしてもらいたい」と答弁した。

 柳瀬氏は、面会の有無が国会で問題になった昨年7月、職員らと会った可能性を周辺に認めていたことが明らかになっている。名刺交換しなかったため、記憶がないという。

 自民党幹部は1日、柳瀬氏の4月10日のコメントを踏まえ「愛媛県や今治市の職員は加計学園関係者の後ろにいたから、記憶に残っていないのだろう。学園関係者との面会を認めても、うそをついたことにはならない」と述べ、従来の説明との整合性はとれるという見方を示した。

 しかし、柳瀬氏が加計学園側との面会を認めれば、特区での認定が「加計ありき」だったという疑いはより深まる。野党が会談内容を追及するのは確実で、政府はさらに追い込まれる可能性がある。【村尾哲】

 前の「時事ドットコム」とほぼ同じ内容となっている。軌道修正を〈自民党幹部が明らかにした。〉

 この文言からも、柳瀬唯夫を加えた自民党幹部とのチームワークで軌道修正を図ったことを窺うことができる。勿論、官邸の意向を反映させていない軌道修正などありようはずはないから、官邸の意向に基づいた軌道修正ということになる。

 違う点は、〈柳瀬氏は、面会の有無が国会で問題になった昨年7月、職員らと会った可能性を周辺に認めていたことが明らかになっている。名刺交換しなかったため、記憶がないという。〉

 周辺に会った可能性を認めていながら、〈名刺交換しなかったため、記憶がない〉とする。どういうことなのだろうか。参考人招致の国会答弁では「記憶にない」理由を名刺交換しなかったことに置いてはいなかった。

 但し加計学園事務局長の背後に愛媛県と今治市の職員が控えていたが、名刺交換しなかったために職員だと気づかなかったとすることで次回予定の参考人招致での国会答弁はクリアできることになる。

 自己紹介までしなかったとすることについてはどのような作り事でクリアするのだろうか、見物となる。

 この記事からも、当然と言えば当然だが、柳瀬唯夫を加えた自民党幹部たちのチームは愛媛県職員と今治市職員を名乗らない存在・発言もしなかった存在と扱うことで国会を乗り切る腹づもりでいることを窺うことができる。

 勿論、この腹づもりは官邸の意向を踏まえていなければならない。

 名乗った存在・発言した存在とした場合、話し合って決めた軌道修正は意味を失い、国会を乗り切るための作り事はたちまち破綻してしまう。

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麻生太郎の女性記者福田事務次官セクハラ告発は「ハメられた」に見る大臣としての認識力、安倍晋三の任命責任

2018-05-03 11:23:39 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 UAE、ヨルダン、パレスチナ自治政府、イスラエルを歴訪中の安倍晋三が2018年5月1日午後(日本時間同日夜)、ヨルダンで記者会見して、森友学園問題の決裁文書改竄や辞任した財務省事務次官福田淳一のセクハラ問題での対応で野党から辞任要求が出ていた財務大臣麻生太郎について続投させる意向を表明したとマスコミが伝えていた。

 麻生太郎は安倍晋三にとって長年の盟友であり、自民党内の実力者である。その辺のペイペイとは違って下手にクビを切ったら、逆恨んで反旗でも翻されたら、9月に自民党総裁選を控えている時期でもあり、実力相応の反旗となって厄介事とならない保証はない。

 あるいは麻生太郎を辞任させた場合に勢いづくことが予想される野党が次のクビを任命責任を理由に安倍晋三に狙いを定めたなら、ドミノ倒しとならない保証もなく、自身に嵐が及ばない防波堤の意味でただただ麻生太郎のクビを守らなければならない切羽詰まった状況に立ち至っていることからの麻生太郎のクビを守るということなのだろう。

 こういった構図であるとしたら、この麻生太郎のクビを繋ぐの図は安倍晋三自身のクビを繋ぐの図、自己保身の図から出た私利的作為と言うことになるが、この私利的作為を取り除いた場合、果たして麻生太郎は続投の資格はあるだろうか。

 野党が辞任を迫った理由の一つである当時財務相事務次官だった福田淳一のセクハラ問題を例に取って続投の資格如何を見てみる。

 週刊新潮が報道した福田淳一の女性記者に対する「キスしたいんですけど。すごく好きになっちゃったんだけど・・・おっぱい触らせて」等々の女性記者に録音されたセクハラ発言、当の本人は「言葉遊び」、「悪ふざけ」だとしてセクハラを否定、但し「報道が出ること自体、不徳の致すところ、職務を遂行する上で問題になっている」からと辞任、その一方で名誉毀損訴訟でセクハラ否定を証明するとまで言っているが、財務省は4月27日、セクハラ行為を認定し懲戒処分相当とした。

 しかしこの認定4月27日3日前の4月24日の財務大臣の閣議後記者会見では麻生太郎は「ハメられて(女性記者から)訴えられているんじゃないかとか、色々なご意見が世の中にはいっぱいありますので、本人の人権を考え、双方の話を伺った上でないと決められない」(「東京新聞」(2018年4月25日)と女性記者からも聴取する意向を示していたが、聴取しないままの処分となったのは森友問題も抱えていたことからの早期の幕引きを図ったのだろうとはマスコミの意見である。

 より問題なのは麻生太郎が福田淳一は女性記者から「ハメられた」と、謀略説を“認定”していることである。当たり前のことであるが、麻生太郎の「ハメられた」は女性記者側が「ハメた」の意味を取ることになり、「ハメる女、性悪な女、あるいは質の悪い女」と見ていることになる。セクハラの被害者であることから一転、加害者、それも単なる加害者ではなく、女性記者を記事のためには手段を選ばない悪巧みを持った反社会的な人格の持ち主だと印象づけたこと示す。

 いくら財務大臣だからと言って、いや、財務大臣だからこそ、このような印象づけを根拠を示さずに他人の一つの意見として公にすることは許されない。

 麻生太郎は4月27日になって、「そういう話もあるという話をしただけだ」と釈明した。これも名誉毀損の訴訟対象になってもいい財務大臣にあるまじき無責任な発言となる。「そういう話もある」からだけを根拠とし、記事のためには手段を選ばない悪巧みを持った反社会的な人格の持ち主だとの印象操作を行ったことになるからだ。

 確たる根拠(=証拠)を示さないままに罪を匂わせるのは冤罪付与に相当する。

 この見事なまでの軽薄な認識力、認識の質の程度は財務大臣としての資格という点で考えた場合、果たして合格点を与えることができるだろうか。財務大臣に就いているだけではない、自民党副総裁まで務めている。一般人以上に優れた認識力を備えていなければならない立場の人間が一般人以下だとしたら、合格点どころか、財務大臣としても自民党副総裁としても最悪である。

 続投の資格どころか、財務大臣や自民党副総裁に任命された資格まで問わなければならない。軽薄な認識力、認識の質の程度が低い自民党国会議員を財務大臣に任命し、党副総裁にまで任命したのだから、当然、安倍晋三の任命責任の是非まで問わなければならないことになる。

 麻生太郎の「ハメられた」発言の発信元が元文科大臣下村博文の4月22日の都内での講演発言であることは4月23日付「しんぶん赤旗」がその発言を伝え、「動画」を公表したことによって明らかである。

 動画から。

 下村博文「日本のメディアっていうのは日本国家を潰すために存在しているのかと最近つくづく思う。それから、まあ、兎に角テレビは見ませんけども、ムシャクシャするから。見るとですね、そんなことばっかでしょ、つまんないことに。

  確かにね、福田事務次官がそういうことはね、飛んでもない発言をしているかもしれないけども、そんなの隠しテープで録っていてね、テレビ局の人が週刊誌に売ることはハメられていますよね。ある意味犯罪だと思うけど」――

 下村博文は女性記者が福田淳一を「ハメ」、福田淳一が女性記者に「ハメられた」「ある意味犯罪」を構成していると断罪している。この下村博文の犯罪構成がそのまま麻生太郎が発言で示した犯罪構成となって現れることになった。

 要するに麻生太郎が「色々なご意見が世の中にはいっぱいあります」と言っていた「色々なご意見」のうちの福田事務次官が女性記者に「ハメらた」とする発言個所は下村博文が発信元であった。

 但し既に指摘しているように麻生太郎は確たる根拠(=証拠)を示さないままに女性記者の人格を貶め、冤罪相当に陥れた。対して下村博文は女性記者が隠しテープで録って週刊誌に売った行為は「ある意味犯罪」だと自ら断定し、それを根拠に福田淳一は女性記者にハメられたのだとする自説を講演で披露するに及んだ。

 この下村博文発言の趣旨を要約すると、女性記者はスクープ狙いの功名心に駆られて犯罪にも等しい隠し録音をして、それを週刊誌に売るために福田淳一と一対一の食事をし、「キスしたいんですけど。すごく好きになっちゃったんだけど・・・おっぱい触らせて」等の発言を引き出すためにある種の色仕掛けでハメたということになる。

 教育行政を与っていた元文科大臣のことである。ご説ご尤もではあるが、女性記者が実際にスクープ狙いの功名心に駆られて福田淳一をハメたのか、そのことについての確たる根拠(=証拠)を示さないままに“ハメた”とする、あるいは「ある意味犯罪だ」と断罪するプロセスは麻生太郎と同じで、下村博文は自分の考えだけで言っているに等しく、麻生太郎は下村博文の謀略説を自分の考えで咀嚼することなく同意したことになって、両者の認識力の軽薄さ、認識の質の低さはどっこいどっこいとなる。

 そしてこのようなどっこいどっこいの一方を安倍晋三はかつて文科大臣に任命した。

 下村博文が女性記者謀略説を唱えたのは4月22日の都内での講演である。女性記者はテレビ朝日所属だそうで、テレビ朝日は4月19日未明に記者会見を開いている。

 「NHK NEWS WEB」(2018年4月19日 0時42分)

 篠塚報道局長「1年半ほど前から、取材目的で福田氏と数回、会食をした。そのたびにセクハラ発言があり、みずからの身を守るために録音を始めた。

 今月4日に呼び出しを受け、1対1での飲食の機会があったが、その際にもセクハラ発言があり、途中から録音をした。後日、上司にセクハラの事実を報じるべきではないかと相談したが上司は『本人が特定され、2次被害が心配される』ことを理由に『報道は難しい』と伝えた。

 この社員は、財務事務次官という社会的に責任の重い立場にある人物の不適切な行為が表に出なければセクハラ被害が黙認されてしまう、という強い思いから週刊新潮に連絡し、取材を受けた」
 
 上司が言ったとする「本人が特定され、2次被害が心配される」とは取材規制を受ける恐れを指すのだろうか。財務相記者会見室への出入り禁止、あるいは禁止しなくても、質問を無視して別の質問者を指す。

 だが、「2次被害」を恐れて、結果的に事務次官という立場にある者のセクハラ発言を野放しにすることになった場合、戦うことはせずにセクハラ発言を許容する権力への屈服を意味することなる。

 もし女性記者が「週刊新潮に連絡し、取材を受け」なければ、テレビ朝日は権力への屈服を隠して自分たちの取材の円滑な遂行を優先させたことになり、問題となるが、下村博文はテレビ朝日が4月19日未明に既にこのように説明している以上、4日後の4月22日の都内での講演ではテレビ朝日の説明を何らかの根拠を以って覆し、その上で同じく何らかの根拠に基づかせて、「いや、女性記者はハメたんだ」との謀略説を唱えなければならなかったのだが、このような確たる手続きは踏む努力さえしなかった。

 下村博文は「兎に角テレビは見ませんけども、ムシャクシャするから」と講演で述べているが、謀略説を打ち立てる以上、セクハラ発言に関する全ての報道に目を通すなり、報道される側としての自分自身の経験なりから謀略説を打ち立てていい確実性のある根拠を拾い出して、その根拠に基に発言しなければならない責任を負っているはずだが、発言の重さに対する責任感すら、窺わせることはしなかった。

 下村博文はまた、「日本のメディアっていうのは日本国家を潰すために存在しているのかと最近つくづく思う」と発言しているが、自分たちが思い描いている国家のみを基準にしていると、こういう発言が出てくる。国家の内容に関して色々な意見があり、色々な把え方があると考える人間はこのような発言は逆立ちしてもできない。

 自分たちが思い描いている国家のみを基準にするということはそのような国家を絶対としているということであり、絶対が行き過ぎると、自分たちが思い描いているのとは異なる国家を否定、自分たちの国家のみを横行させる独裁に行き着くことになる。

 麻生太郎が小泉内閣時代の総務大臣在任中の2005年10月15日に福岡県太宰府市の九州国立博物館開館記念式典の来賓祝辞で日本という国が中国系、朝鮮系、南方系、あるいは北方のアイヌ系の混血国家を成り立ちとしていることを無視して、「一文化、一文明、一民族、一言語の国は日本のほかにはない」と発言していることも日本国家を絶対としているからで、例え現在眠っている状態であっても、独裁意志を根付かせているからこその日本単一民族思想であろう。

 麻生太郎も下村博文も、認識力の軽薄さ、認識の質の低さはどっこいどっこいであるばかりが、内心に自分たちが思い描いている日本国家のみを絶対とする独裁意志を抱えているという点でも、どっこいどっこいであるようだ。

 麻生太郎を大臣に任命する価値はなく、当然、続投の価値はない。この程度の政治家を大臣に据えた安倍晋三自体の任命責任も問わなければならない。

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安倍晋三の米大使館エルサレム移転阻止ができない対米追従で言う「中東和平貢献」は滑稽な大言壮語

2018-05-01 09:00:24 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 安倍晋三が4月29日(2018年)午後、中東のアラブ首長国連邦(UAE)、ヨルダン、イスラエル、パレスチナ自治区の4カ国・地域歴訪に向けて羽田空港を政府専用機で出発した。

 「平成30年4月29日中東訪問についての会見」

 安倍晋三「今日から中東訪問に出発いたします。

 中東は日本にとってはエネルギーの安定供給の点からも極めて重要な地域であります。しかし、関係においてはエネルギーだけに限らず、経済、安全保障、あるいは先端技術等、様々な分野で重層的な関係を強化していかなければならないと考えています。

 日本はこれまで中東の地域、例えばシリアの問題についても、難民問題についても、難民人道支援、あるいは経済開発支援等、日本ならではの支援を行い良好な関係をそれぞれ築いてきています。そうした信頼関係の上に、中東の平和と安定にも、また中東和平にも貢献をしていきたいと思っています。

 今回はイスラエル、そしてパレスチナ双方を訪問します。この中東和平に向かって、双方に建設的な関与を働きかけていきたいと思います。

 そして今日本が進めている、平和と繁栄の回廊構想を進めていくことによって、当事者間の信頼関係を醸成していく。そうしたことによって中東和平に日本も貢献していきたいと、こう考えています」

 (地図著作者:現代企画室『占領ノート』編集班/遠山なぎ/パレスチナ情報センター)
 
 イスラエルとパレスチナ訪問の際は「中東和平に向かって、双方に建設的な関与を働きかけていく」、「日本が進めている、平和と繁栄の回廊構想を進めていくことによって、当事者間の信頼関係を醸成していく」、このようなアプローチで「中東和平に日本も貢献していく」

 立派な御託を並べているが、中東和平を阻害している大本はアメリカの中東政策であり、そして日本とアメリカは後者を主導的位置に置いた軍事同盟国であり、このような軍事的関係によって日本の中東に関わる和平関連の政治はアメリカの中東政治の大枠内での行動に限定されている。

 いわばアメリカと中東諸国それぞれの関係を抜きに中東和平に関して主導権を握ることのできる立場に立っていない。このことはアメリカに対して中東政治に関わる意見を言うことのできる関係ではないことを意味する。

 例えば歴代最単細胞トランプが2017年12月6日にホワイトハウスで演説し、「エルサレムをイスラエルの首都と公式に認める時だと判断した」と述べ、商都テルアビブにある米大使館をエルサレムに移転させることを正式に発表、2018年2月23日に今年5月(2018年)に暫定的に大使館を移すと発表している。

 パレスチナ自治政府はエルサレムを将来の独立国家の首都と位置づけていて、トランプの発表に反発、パレスチナの住民が各地で抗議デモを展開。自治政府を支援するイランやシリアはアメリカやイスラエルと対立関係にあることから、トランプの米国大使館移転政策が両勢力間の対立関係をより険悪化させることになり、エルサレムをイスラエルの首都と認める、国際社会が同調していない米国トランプ発のこの中東政策が却って中東和平の実現を複雑化させ、複雑化によってその実現を遠のかせる予感を一部悲観論を伴って広がらせることになった。

 そしてこのような両勢力間の対立関係の現実的生起の一つの例としてイランがシリア国内にイスラエル攻撃の軍事施設やミサイル生産施設を構築しているとして、イスラエルが大規模な越境攻撃を繰返していることを挙げることができる。

 米新国務長官ポンペイオが4月29日(2018年)にイスラエルを訪問、「アメリカはイランの脅威が中東で拡大していることに懸念を深めており、イスラエルによる自衛権の行使を強く支持する」(NHK NEWS WEB)との理由でイスラエルの越境攻撃を支持、米国は中東和平実現とは逆行したコースを辿っている。

 確かに中東の対立と混乱は歴史的、地政学的、宗派的等々の様々な要因によって成り立っているが、エルサレムのイスラエル首都容認のトランプの政策が対立と混乱をより撹乱する方向へ駒を進めたのは確かである。

 こういったことが予見できたからだろう、アメリカと対立するイランだけではなく、米国と友好関係にあるサウジアラビアやエジプト、ヨルダン、さらにはフランスやイタリア、ドイツまでがトランプの決定を批判、あるいはパレスチナとイスラエルの両当事者間で決める問題だと警告を発した。

 対して日本は反対も異議申し立てもしなかった。中東和平の実現が複雑化し、対立と混乱がより先鋭化する予感を多くの国が抱いている中で日本はトランプの決定によって生じる、あるいは既に生じている状況に身を任せたことになる。

 と言うことは、中東の政治問題はアメリカの主導に預けたことを意味する

 そういった態度を取りながら、「中東の平和と安定にも、また中東和平にも貢献をしていきたい」と言う。「中東和平に向かって、双方に建設的な関与を働きかけていきたい」と言う。「日本が進めている、平和と繁栄の回廊構想を進めていくことによって、当事者間の信頼関係を醸成していく」と言っている。

 日本が精々できることはカネを使った難民人道支援や経済開発支援等のみであろう。相手はカネが欲しいから、安倍晋三の訪問を歓迎する。だが、和平実現に向けた政治力は無力と見て、単なる言葉だけの相槌で遣り過ごすことになるはずだ。

 このように中東和平にアメリカの主導権に少しでも割って入って自らの主導権を僅かでも提示できる政治的・外交的力も立場もあるわけではないにも関わらず、あるかのように「中東平和」を口にすること自体、滑稽な大言壮語そのものである。

 大体が安倍晋三は大言壮語が多い。消費税増税ができる経済環境を構築すると言って、その舌の根も乾かぬうちに消費税増税を延期する。アベノミクスの好循環を言って、好循環と言える経済状況を生み出すことができずにいる。

 どれもこれも滑稽な大言壮語で終わっている。

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