5・10柳瀬唯夫参考人招致:名刺交換と「首相案件」に関わる発言を取り上げただけで矛盾とウソを追及可能

2018-05-11 11:49:42 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 昨日2018年5月10日、午前中衆院予算委、午後参院予算委で加計学園獣医学部認可安倍晋三政治関与疑惑を追及する質疑が柳瀬唯夫を参考人招致して行われた。

 柳瀬唯夫が参考人招致されるのは二度目である。その経緯は周知の事実となっているが、改めて記すと、2015年4月2日に愛媛県や今治市の職員、加計学園幹部が首相官邸を訪問、獣医師養成系大学の設置に関して面談したとされていたことに対してそれが獣医学部新設が公式な議論に乗る前の接触であったことから、面会の応対者とされていた当時首相秘書官の柳瀬唯夫が2017年7月24日の加計学園衆院予算委員会閉会中審査と翌2017年7月25日参議院予算委員会閉会中審査に参考人招致され、追及を受けることになったが、いずれも「記憶にない」で面会を否定した。

 ところが、面会したことが記録されている愛媛県作成の文書の存在が明らかになり、柳瀬唯夫は再び参考人招致を受けることになった。

 愛媛県文書には柳瀬唯夫の発言として、〈本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい。〉との面会者に対する文言も記されていた。獣医学部新設が公式な議論に乗る前に「首相案件」としていることの意味は、勿論、安倍晋三の意向を受けて加計学園の獣医学部新設に向けた動きが既に始まっていたことを意味することになる。

 愛媛県文書に記されている事実に対して再び面会を否定するのか、あるいは一転して面会を認めるのか。後者の場合は過去の否定とどう整合性をつけるのか。「首相案件」の発言を実際にしたのかどうか。マスコミは自民党幹部の話として面会のみは認める方向で調整がついているといった趣旨のことを報道していた。

 柳瀬唯夫は今回の参考人招致で加計学園関係者との面会を認め、愛媛県と今治市の職員についてははっきりとは覚えていないと答えている。これは過去の参考人招致で「記憶にない」という理由で面会を否定していたことと整合性をつけるためとあくまでも獣医学部新設が公式な議論に乗る前の政治側を加えた談合、いわば「首相案件」と受け取られることを避けるための“ストーリー”なのだろう。

 柳瀬唯夫の答弁を自民党の後藤茂之との質疑で取り上げられた“名刺交換”と「首相案件」をキーワードに絞って事実を話しているのか、ウソという脚色を混じえているのか、探ってみたいと思う。

 後藤茂之は東京大学法学部卒業、1980年に大蔵省入省の官僚上がり、62歳。遣り取りは【柳瀬氏参考人招致詳報】(1)(産経ニュース/2018.5.10 10:45)を参考にして、要所を抜粋した。

 後藤茂之「(2015年)4月2日に柳瀬元秘書官は愛媛県、今治市、加計学園関係者と会っていないのか。先ず最初にしっかりと説明して下さい」

 柳瀬唯夫「先ず冒頭、私の答弁をきっかけに、国会審議に大変なご迷惑をおかけしましたことを誠に申し訳ございませんでした。その上で、ご質問の点でございますけど、加計学園の事務局の方から面会の申し入れがありまして、4月頃にその後の報道などを拝見すると、恐らくこれが4月2日だったのではないかと思いますが、加計学園の方、その関係者の方と面会を致しました。

 その面会のときには相手方は10人近くのずいぶん大勢でいらっしゃいました。そのうち、加計学園の事務局に同行されました獣医学部の、獣医学の専門家の元東大教授とおっしゃっている方がですね、『世界の獣医学教育の趨勢は感染症対策にシフトしているのに、日本は全く付いていっていない』という獣医学教育に関する話をまあ、情熱的に、滔々とされた覚えがございます。

 併せまして加計学園の事務局の方から『国家戦略特区制度を活用する方向で検討している』と、こういうお話がありました。

 面会では、メーンテーブルの真ん中にいらっしゃいました、その元東大教授の方と殆どお話になっていて、それと加計学園の事務局の方がお話になっておりました。

 そのためにその随行されていた方の中に愛媛県の方や今治市の方がいらしたかどうかという記録は、あー、残っておりません。ただ、その後の一連の報道や関係省庁による調査結果を拝見しますと、私は今でも愛媛県や今治市の職員の方が同席者の中にいたかどうかは分かりませんけども、10人近くの同席者の中でメーンスピーカーでない方に、随行者の中に愛媛県や今治市の方たちがいらっしゃったのかなと、しれないなと、こういういうふうに思います」

 後藤茂之「4月2日に関する面会がどのようなものであったかということは分かりましたが、愛媛県や今治市の方がいらっしゃらなかったのかどうか、本当に確認されなかったのでしょうか。名刺を交換をされなかったのでしょうか」

 柳瀬唯夫「先程申し上げましたけども、殆どお話になっていたのはこのメーンテーブルの真ん中におられた元東大教授の方と加計学園の事務局の方でございまして、随行者の中に愛媛県の方、今治市の方がいらっしゃったかどうかは私には分かりません。

 そのため昨年の国会では『今治市の職員に会ったか』というご質問に対しまして私からは『お会いした記憶がございません』、あるいは『私の記憶を辿る限りお会いしていません』、あるいは『覚えていないので会っていたとも、会っていないとも申し上げようがございません』というふうなお答えを致しした。

 私としましては今治市や愛媛県の方とお会いしたかお会いしていないかの定かな記憶がないのに、『必ずお会いしました』とか、『絶対にお会いしてません』とか申し上げるのは、いずれの場合もウソになる可能性があると思いましたので、このように申し上げましたた。

 なお、随行者の方々全員と名刺交換をしたかどうかは分かりません。私は普段から失礼にならないように自分から名を名乗って、名刺交換をするように心がけておりますが、多くの方とお会いするために交換した名刺の中で保存するのはごく一部でございます。今回の件で私が保存している名刺の中に今治市や愛媛県の方の名刺はございませんでした」

 面会は加計学園の事務局の方から申し入れがあって行ったもので、加計学園の関係者との面会を認める一方、面会者が総勢10人近くもいて、「随行者の中に愛媛県の方、今治市の方がいらっしゃったかどうかは私には分かりません」と明確に肯定も否定もしない曖昧な記憶として扱っている。

 このように愛媛県と今治市の職員を記憶にはっきりと残っていない不確かな存在とする狙いは既に触れたように加計学園に加えて両自治体の職員と加計学園の獣医学部新設を話し合った面会ではないことの印象づけと、それゆえに「首相案件」であることの伝達を目的とするはずはないことを印象づけるための情報操作――“ストーリー”の疑いをかけなければならない。

 これらの記憶の曖昧さは「恐らくこれが4月2日だったのではないかと思います」としている面会日についての記憶の曖昧さによって補強されている。
  
 獣医学部新設の公式な議論が始まる前の2015年4月2日の首相官邸で加計学園関係者と共に愛媛県と今治市の職員、この3者に当時の首相秘書官柳瀬唯夫を加えた4者会合の図とした場合、政治側を加えた談合、いわば「首相案件」の疑惑を誘う恐れから、愛媛県と今治市の職員を加計学園関係者の背景に退ける必要性が生じたのだろう。

 愛媛県と今治市の職員を加計学園関係者の背景に置くということは前2者を柳瀬唯夫の背景から遠ざけることにもなって、4者談合の図が崩れる好都合を生む。

 総勢10人近くの面会者はメーンテーブルに陣取ることになったが、「殆どお話になっていたのはこのメーンテーブルの真ん中におられた元東大教授の方と加計学園の事務局の方」のみで、いわば愛媛県と今治市の職員は殆ど口を利かなかった。このことは「随行者の方々全員と名刺交換をしたかどうかは分かりません」との発言で示している「元東大教授の方と加計学園の事務局の方」以外に対する随行者の位置づけによって証明していることになる。随行者らしく殆ど喋らずに控えていたということであり、名刺交換の記憶も定かでないということなのだろう。

 「加計学園の事務局の方から『国家戦略特区制度を活用する方向で検討している』と、こういうお話がありました」にも関わらず愛媛県と今治市の職員は殆ど口を利かなかったという図は国家戦略特区が自治体の提案を端緒とする建前からしても、前身の構造改革特区の時代から14年間、今治市と加計学園が組んで獣医学部新設を提案、国家戦略特区で獣医学部新設が認可された場合は今治市が36億円以上の市の土地を学校用地として無償提供、校舎建設費補助金を今後8年間で計64億円を支払うとされている、加計学園に対する上位者的位置関係からしても、あるいは今治市への獣医学部誘致の両者間の密接な利害関係からしても、余りにも不自然な寡黙状態であり、余りにも不自然な自己主張の希薄性と言わなければならない。

 こういった矛盾が炙り出されることになっても、4者談合の図を避けるために総勢10人近くが陣取った中で、「殆どお話になっていたのはこのメーンテーブルの真ん中におられた元東大教授の方と加計学園の事務局の方でございました」という図をデッチ上げて、愛媛県と今治市の職員を蔑ろにしなければならなかったということなのだろう。

 名刺交換については次のように答弁している。

 柳瀬唯夫「なお、随行者の方々全員と名刺交換をしたかどうかは分かりません。私は普段から失礼にならないように自分から名を名乗って、名刺交換をするように心がけておりますが、多くの方とお会いするために交換した名刺の中で保存するのはごく一部でございます。今回の件で私が保存している名刺の中に今治市や愛媛県の方の名刺はございませんでした」

 対して後藤茂之は柳瀬唯夫のこの答弁をそのまま受け入れて、名刺についての質問は切り上げている。

 「今回の件で私が保存している名刺の中に今治市や愛媛県の方の名刺はございませんでした」の発言は自身の名刺ホルダーを確認したが、「今治市や愛媛県の方の名刺」はなかったという意味を取る。

 と言うことは、「獣医学の専門家の元東大教授」と「加計学園の事務局の方」とは名刺交換し、「今治市や愛媛県の方の名刺」と共に確認したところ、後者は存在しなかったが、前者の名刺は存在したことになる。

 名刺交換と名刺の確認は両者共に名前の確認行為を伴う。にも関わらず、名前を口にするのではなく、「獣医学の専門家の元東大教授」と呼び、「加計学園の事務局の方」と呼んでいる。

 この矛盾も親しい関係ではないと見せることで何かを企む話をしたわけではない、4者談合の図ではないことの印象づけの情報操作ということもあり得る。

 もし「獣医学の専門家の元東大教授」、さらに「加計学園の事務局の方」とも名刺交換していなかったとしたら、「私は普段から失礼にならないように自分から名を名乗って、名刺交換をするように心がけております」の発言は自らウソにすることになる。

 午後の参院予算委の参考人招致で立憲民主党の蓮舫から「元東大教授」について質問されている。

 蓮舫「4月2日の面会、出席していたのは吉川泰弘さんですか」

 柳瀬唯夫「これは当時のことなので、ちょっと、あの、必ずしも定かではございませんが、一つは元東大教授の方という方から、お話を聞いたのはよく覚えています。

 それから、それが4月2日だったのか、その前の2月から3月に一回来られたときだったのか、そこは、あの、必ずしもクリアではございませんが、いずれにしても2月から3月に会ったときと、その、4月頃に会ったときにどちらかは元東大教授の方がおられたという記憶はございます」

 蓮舫「その人は吉川さんですか」

 柳瀬唯夫「私はあの、吉川さんというお名前は、あの、記憶してございませんでしたけど、朝、あの、半年前ぐらいだと思いますが、朝起きて、テレビのニュースを付けたときに加計学園のニュースが流れていて、そのとき、あの、加計学園の獣医学部長になる予定の者として吉川さんという方のお写真が出ていました。

 あ、この人がお会いしたことがある、お話を聞いた人だなと。それは4月2日7日、その前なのか、それはちょっと定かではありません」

 面会した日も名前もあくまでも記憶を曖昧にする。愛媛県と今治市の職員に対する記憶の曖昧さと釣り合いを取るためと、既に触れているように記憶が明確でないことで獣医学部新設の公式な議論が始まる前の新設に向けた談合ではないことを印象づけるためであろう。

 但し加計学園関係者の記憶だけが明確で、両自治体職員に対する記憶が曖昧では釣り合いが取れない事態を招くことになって、その不自然さは疑惑を後まで残す要注意点となる。こういったことを避けるためにも、あちこちに記憶の曖昧さを散りばめることになったのだろう。

 狙い通りの効果を生み出すことができたかどうかは別問題となる。

 柳瀬唯夫は半年程前にテレビのニュースで吉川泰弘の名前を知った。名刺交換もしなかったし、当然、今治市や愛媛県職員の名刺を確認するとき、名刺交換をしていなかったために同じく確認できなかったことになる。

 あるいは名刺交換をせず、当然、相手の名前を知らないままにメーンテーブルに総勢10人近くが陣取った中で、その中央に位置した元東大教授と加計学園の事務局の者が中心になって話すを聞いていたことになる。

 名刺交換をすれば、相手の名前と職業、あるいは職場の地位といった相手の後天的収得物を承知しながら話を聞き、話をすることになる。あるいは親しい関係になるに連れ、先天的、後天的どちらであっても、相手の性格を弁えながら話を聞いたり、話をしたりすることになる。

 名刺交換はそういった意味も含まれる。但し「随行者の方々全員と名刺交換をしたかどうかは分かりません」と発言している以上、「随行者」以外の「獣医学の専門家の元東大教授」と「加計学園の事務局の方」とは名刺交換していることになる矛盾が新たに発生することになる。

 もし「名刺交換をしたが、名前を忘れてしまっていて、半年前にテレビのニュースで思い出した」なら、「加計学園の事務局の方」は別にして、「獣医学の専門家の元東大教授」に対しては元の肩書で呼ばずに、肩書の後に名前を入れていたはずだ。

 だが、そうは言ってない。まるで名刺交換しなかった相手のように最初から「獣医学の専門家の元東大教授」と「加計学園の事務局の方」というふうに名前を知らない相手として扱っている。

 記憶の曖昧さを演出するための方便だったとしても、逆にこの上なく失礼な応対を示すことになるこの矛盾をどう説明する気なのだろうか。

 もし「獣医学の専門家の元東大教授」とも、「加計学園の事務局の方」とも、名刺交換しなかったとしたら、「私は普段から失礼にならないように自分から名を名乗って、名刺交換をするように心がけております」の事実に反して非常に奇妙な矛盾を見せることになる。

 テレビのニュースで思い出したが事実であるなら、朝の衆院予算委の参考人招致で名刺交換を聞かれたときに明かさなければならなかったエピソードでありながら、午後の参院予算委の参考人招致で初めて明かしていることも、数々の証言・説明がウソ混じりであることの証明としかならない。

 後藤茂之が「本件は首相案件」という発言をしたのかどうかの質問に対する柳瀬唯夫の答弁を簡単に見てみる。


 柳瀬唯夫「そもそも言葉といたしまして私は普段から首相という言葉は使わないので、私の発言としてはややちょっと違和感がございます。そういう意味で報道されております愛媛県の職員の方のメモですけども、ちょっと趣旨として私が伝えた形とは違う形で伝わっているのかなという気がいたします」

 対して後藤茂之は加計学園と面会したことや遣り取りについて安倍晋三に報告したり、何らかの指示を受けたことはあるかといった質問に変えている。これが与党の追及の限界なのだろう。

 「首相という言葉は使わないので、私の発言としてはややちょっと違和感がある」

 「総理」という言葉は直接的呼称、呼びかけの名詞であって、「首相」は一般的呼称という関係にあるはずだ。役人や身内の国会議員、あるいは親しい関係にある財界人等が安倍晋三に対して「首相」とは呼びかけない。呼びかけた場合、安倍晋三を下に置いた上から目線のニュアンスを帯びることになる。

 対して「総理」と呼びかけた場合、上から目線であることを排して敬意のニュアンスを持たせることになる。直接の呼びかけではないから、一般的呼称を用いて、「首相案件」と言い換えたとしてもさしたる不都合はない。

 柳瀬唯夫が「ちょっと趣旨として私が伝えた形とは違う形で伝わっているのかな」と言っている「私が伝えた」「趣旨」とはこの発言の前段で、「面談の中でも獣医学部新設の解禁は、総理は早急に検討していくと述べている案件であるという趣旨はご紹介したように思います」と述べていることを指す。
 
 愛媛県文書には、〈本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい。〉と記されていて、安倍晋三個人が関わっている意味合いを持たせて、それを「公式のヒアリング」で体裁を整えることを約束しているのである。

 「獣医学部新設の解禁」を指して愛媛県職員が「総理案件」と表現したり、あるいは「首相案件」と表現したりすることは到底不可能なはずだ。愛媛県と今治市の職員、さらに「獣医学の専門家の元東大教授」や「加計学園の事務局の方」が雁首を揃えてわざわざ首相官邸を訪問、「獣医学部新設の解禁は、総理は早急に検討していく」の言質ともならない言質を得るために首相秘書官と面談する必要もない。

 大体が柳瀬唯夫が獣医学部新設の解禁についての安倍晋三の考えを伝えたのが事実なら、愛媛県職員は素直に「首相は獣医学部新設解禁を喫緊の課題としている」とだけ記したはずだ。


 このように記したなら、〈内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい。〉という後の言葉は必要なくなるだけではなく、意味のない言葉と化す。〈本件は、首相案件〉であることによって、後の言葉が意味を持つ。

 柳瀬唯夫の名刺交換に関わる発言と「首相案件」に関わる発言を取り上げただけで、如何に矛盾に満ちているか、矛盾が事実に基づいていないウソの答弁によって生じているか、いくらでも追及できるはずだ。

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