野田首相は最初の2014年消費税増税に関して次期衆院選のマニフェストに明記、民意を問うとしている。7月19日午前の参院社会保障・税一体改革特別委員会で林芳正自民党議員の質問に答えての答弁。
《【消費税増税】消費税増税のマニフェスト明記 首相が重ねて強調》(MSN産経/2012.7.19 11:14)
野田首相「この議論が全く抜け落ちることは基本的にあり得ない。経済再生や低所得者対策など関連する課題も含めて国民に約束するのが筋だ。
(但し)マニフェストの書きぶりは全党的に議論しながら決める」
要するにどういうような表現になるか、今後の議論次第だが、消費税増税に関わる議論自体を抜け落とすことは基本的にはあり得ない、国民に約束するのが筋だと言っている。
次の《野田首相、「非公認」方針撤回せず=増税公約も強調-参院特別委》(時事ドットコム/2012/07/19-11:51)では、消費税増税に関わる公約に関して野田首相の答弁は次のような表現となっている。
野田首相「「私が(民主党)代表のときにマニフェスト(政権公約)を作るなら、2014年の最初の消費税率引き上げや、それまでにやるべき経済再生、低所得者対策なども含めて国民に約束するのが筋だ。
(但し)自分一人で作るわけではない。書きぶりは丁寧に全議員が議論しながらまとめていく」
ところが党内から異論が出た。《「増税公約」発言に不快感=城島氏》(時事ドットコム/2012/07/19-17:57)
城島光力民主党国対委員長「(野田首相の発言は)これからマニフェストの論議をする。真意が分からない」
民主党幹部「(消費増税関連法案が定める)2014年の増税ならマニフェストに書くことではない」
しかし野田首相は増税を決めてから、国民の信を問うと言って、増税を進めてきた。マニフェストに明記、我が政権の消費税増税の政策は正しかったですか、間違いでしたかと国民の審判を仰ぐのが野田首相自らの約束に対する履行であるはずである。
口先番長の前原誠司政調会長は7月12日の記者会見で、2014年の増税以上の消費増税をマニフェストには書かないと発言している。
《消費税10%超は公約せず=民主・前原氏》(時事ドットコム/2012/07/12-21:15)
前原誠司「次の(衆院任期の)4年間でさらに消費税を上げることをマニフェスト(政権公約)に書くつもりはない。
これからは景気対策、経済成長、デフレ脱却、円高対策、行政改革をやり続けないといけない。
(消費増税法案をめぐる自民、公明両党との修正合意で棚上げされた最低保障年金や年金完全一元化に関しては)当然書くことになる」
偉そうに言っているが、自分の言っていることが矛盾していると気づかないのだろうか。最低保障年金に関してはマニフェストに書くが、さらなる消費税増税は書かないと言っていることに何ら齟齬がないと思っているらしい。
民主党は月額7万円の最低保障年金を受け取るために2075年度で最大17.1%の消費税率が必要になると一度は試算している手前、否でも最低保障年金創設に必要な消費税増税を明記せざるを得ないはずだ。
要するに最低保障年金創設には何年後にはこれだけの消費税増税が必要になります、それでも最低保障年金制度創設に賛成ですか反対ですかと国民の判断を仰がなければならない。
まったくトンチンカンな男だが、トンチンカンはこれだけで終わらない。2009年民主党総選挙マニフェストに書いてなかった消費税増税を衆院4年任期内に成立させようと衆院可決、現在参院に持ち込んで成立させようとしているのである。
この前例は次の総選挙のマニフェストにさらなる消費税増税を書かないからといって、書いてないとおりに実行されるとは限らないことを教えている。
いわば何の約束にもならないということである。
一旦約束を破った以上、次の約束が破られない保証を失う。民主党はマニフェストの信用を既に失っていることにも気づかずに、「次の(衆院任期の)4年間でさらに消費税を上げることをマニフェスト(政権公約)に書くつもりはない」などと偉そうに言っている。
口先番長だけのことはある。
次期衆院選のマニフェストに例え2014年の消費税増税を明記せずに国民の信を問うことを巧妙に回避したとしても、前原の思惑に反して、「次の(衆院任期の)4年間でさらに消費税を上げることをマニフェスト(政権公約)に書」かざるを得ない事態が生じている。
《財務相、黒字化に再増税は不可避 参院特別委》(47NEWS/2012/07/20 11:44 【共同通信】)
7月20日午前の参院社会保障と税の一体改革特別委員会。
〈2020年度までに基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化するとの目標達成には、消費税率10%への引き上げ後の再増税が避けられないとの認識を示した。〉
安住淳財務相「(目標達成は)なかなか大変だ。足らないところの税負担をお願いしなければいけない時期がくるだろう。
(一体改革関連法案による増税分に関しては、全額を社会保障関係費に充てると重ねて説明)大型公共事業のために充てることは全くない」
いくら民主党がマニフェストに書いてない政策遂行の常習犯だとしても、財務相自身がこのように発言した以上、書かざるを得まい。
マニフェストに書くべきか書かざるべきか悩んだとしても、次の総選挙では民主党は退潮するのは目に見えているから、最低保障年金は消えてなくなるだろうが、しかしいくら民主党のマニフェストが信用を失っているからといって、一旦は消費税増税を財政健全化の政策手段とし、その政策手段を継続させる以上、マニフェストに書かざるを得なくなるに違いない。
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