野田首相の実行力欠如理由と菅前首相同様の“コロコロ交代”が現実味を帯びつつある内閣支持率

2011-12-13 10:48:04 | Weblog

 昨日今日発表の各マスコミ世論調査の野田内閣支持率が軒並み下がり、ついには支持と不支持が逆転のターニングポイントを目出度く(?)迎えた。

 12月6日(2011年)当ブログ記事――《野田首相就任3ヶ月目にして早くも飛び出した首相擁護の前原“コロコロ交代忌避発言” - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》でも野田首相の“コロコロ交代”の可能性について触れたが、内閣支持率を見る限り、菅前首相が「首相がコロコロ交代するのは良くない」という消極的支持で首をつなげてきたにも関わらず、コロコロ交代の餌食となったのと同様に世論調査評価が野田首相本人の政治姿勢が反映していることを加味すると、“コロコロ交代”がなお一層現実味を帯びてきたのではないかと思えてならない。 

 いわば菅前首相のときのように多くの閣僚や多くのマスコミ、多くの世論が“コロコロ交代”に反対しようとも、その反対をドブに捨ててしまって生かし切れなかったように野田首相にしても同じ運命を辿るのではないかという予感である。

 先ず今回のNHK世論調査を内閣支持率・不支持率に限って見てみる。《内閣支持率37% 不支持が逆転》NHK NEWS WEB/2011年12月12日 19時22分)

 12月9日から3日間、全国の20歳以上男女1645人対象、61%1005人回答だそうだ。

 野田内閣

 「支持する」 ――37%(前回調査-8ポイント)
 「支持しない」――42%(前回調査+12ポイント)

 支持する理由

 「他の内閣より良さそうだから」――45%
 「人柄が信頼できるから」   ――31%

 支持しない理由では、

 「政策に期待が持てないから」――39%
 「実行力がないから」    ――34%

 次に9月2日(2011年)首相就任以来の内閣支持率・不支持率を見てみる。

 9月9日から3日間の調査。

 野田内閣

 「支持する」 ――60%
 「支持しない」――18%

 支持する理由

 「他の内閣より良さそうだから」――36%
 「人柄が信頼できるから」   ――33%

 支持しない理由では、

 「政策に期待が持てないから」   ――36%
 「支持する政党の内閣ではないから」――24%

 10月8日から3日間行った世論調査。

 野田内閣

 「支持する」 ――53%(前回調査-7ポイント)
 「支持しない」――27%(前回調査+9ポイント)

 支持する理由

 「他の内閣より良さそうだから」――38%
 「人柄が信頼できるから」   ――30%
 「支持政党の内閣」      ――11%
 
 支持しない理由

 「政策に期待が持てないから」  ――36%
 「実行力がないから」      ――20%
 「支持する政党の内閣でないから」――24%

 11月11日から3日間行った世論調査。

野田内閣

 「支持する」 ――45%(前回調査-8ポイント)
 「支持しない」――307%(前回調査+3ポイント)

 支持する理由

 「他の内閣より良さそうだから」――39%
 「人柄が信頼できるから」   ――34%
  
 支持しない理由

 「政策に期待が持てないから」――40%
 「実行力がないから」    ――24%

 そして今回12月の世論調査。支持と不支持が逆転を見た。

 問題は菅前首相の世論調査との共通点である。退陣前の8月5~7日NHK世論調査を見てみる。

 菅内閣

 「支持する」 ――18%(前回調査-2ポイント)
 「支持しない」――65%(前回調査+3ポイント)

 支持する理由

 「他の内閣より良さそうだから」――44%

 支持しない理由

 「実行力がないから」――40%(以上)

 この世論調査では「支持する理由」と「支持しない理由」が一項目ずつしか記載されていない。退陣が決まっていて、今更人柄を尋ねても仕方がないと考えたのか、尋ねるまでもない人柄だと世間に知れていると考えて調査項目に加えなかったの、どちらなのだろうか。

 支持する理由の上位は野田首相の場合は「他の内閣より良さそうだから」、「人柄が信頼できるから」であり、菅首相の場合は「他の内閣より良さそうだから」が占めていて、肝心要の政治的才能とは無関係の漠然とした雰囲気が評価対象となっている。

 「他の内閣より良さそうだから」、「人柄が信頼できるから」のみでは政治は動かないにも関わらずである。

 支持する理由の中に一国のリーダーとして必須の政治的才能もしくは政治的能力を示す「実行力」、「政策への期待」が上位を占めずに支持しない理由の中で上位を占める逆説を両者共共有の成果としている。

 野田内閣の場合、就任直後の世論調査から、60%の内閣支持率を獲得していながら、支持する理由が「他の内閣より良さそうだから」、「人柄が信頼できるから」が上位を占め、「実行力」及び「政策」への期待が記事に顔を出していなかった。

 逆に不支持の上位を占める理由となっていた。

 そして同じ傾向のまま、いわば国民が評価できる「実行力」及び「政策」はないと見做されたまま、ズルズルと内閣支持率を下げていった。

 一国のリーダーに必要とされ、最大限期待される政治的資質は「実行力」であり、政策能力、そして政策遂行能力であるはずだが、期待とは裏腹の経緯を辿った。

 何を以て国民は野田首相を「政策に期待が持てない」とし、「実行力がない」と評価しているのだろうか。

 例え中低所得の国民であっても、確信を持って消費税増税があっても生活していけるんだと将来に安心が持てる消費税増税の設計図を描いて見せないうちに国内でならまだしも、11月のカンヌG20サミットで、「法案を通して、税率の引き上げの実施前に国民に信を問いたい」と国際公約したばかりか、消費税増税の話ばかりが先行して、一向に消費税増税の設計図が完成しない。

 期限を区切って早急に完成させて、どのような疑問をぶっつけられようとも国民が広く納得し得る説明を行うとする意思さえ示さない。

 このことは消費税増税の設計図を描く実行力を欠いていることの証明以外の何ものでもあるまい。国民はこのような経緯を嗅ぎ取って、「実行力」評価に辛い点をつけているはずだ。

 消費税増税の設計図を描く実行力を欠いたまま、財政再建や年々増え続けていく社会保障給付費を賄うには増税は避けて通れないと必要性だけを言う。

 また、2009年度税制改正法の付則104条は税制抜本改革の前提として「経済状況の好転」を明記していることに関して、野田首相は11月21日の参院予算委員会で消費税増税は「経済の好転は前提ではない。消費税率を10%に段階的に引き上げていく時の経済状況を重点的に書いてある。今の景気判断とは別」(毎日jp)と答弁、いわば消費税増税のときに景気回復していれば付則104条の障害とならないとしたが、だったら、消費税増税までにどのような経済政策を以てどの程度に景気回復を図るのか、経済成長を何%に上げることを目的としているのか、政策の中身と景気回復のプロセスを描き、説明すべきを、そのことに対する実行力を示しもせずに、12月9日の臨時国会閉幕に際しての記者会見では、「実際に国民の皆さまにご負担をお願いする際には、経済の状況を慎重に見極める必要があります」と、自らの政策力、実行力、指導力で以って消費税増税までに景気回復を果たして付則104条の障害を取り除きますと一旦口にしたことを果たすのではなく、そこから一歩も二歩も後退する実行力のなさを逆にさらけ出す始末である。

 誰が「実行力」、「政策」に評価を与えることができるだろうか。

 このことはTPP参加問題でも同じ構図を描いている。

 TPPに参加しても、日本の農業は大丈夫だ、医療制度も大丈夫だ、様々なコストが下がり、国民生活はゆくゆくは豊かになる、日本全体の経済活動ばかりか、国民の社会活動も活発になると各産業分野の発展予想図を具体的に描いて、国民に将来を約束する納得できる説明を先ず先に持って来るべきを、TPP参加のテーブルに着いて、交渉してみなければ分からないといったことを言っている。

 また、野田首相は消費税増税前に政治の側が先ず身を削る、その矛先を公務員給与削減や国会議員の定数削減等と定めていながら、その公約を果たしもしないちに消費税増税を先行させていることも、公務員給与削減や国会議員の定数削減等の公約実現に向けた実行力のなさの証明となっているはずである。

 野田首相がかくも実行力を欠いている原因は自らがモットーとしている「安全運転」志向が阻害している能力に違いない。

 一国の首相が自らの政治信念を貫くためには危険運転も辞さない強い姿勢、強い覚悟を必要とする。安全運転からはそういった姿勢は生まれない。何日か前のブログに、〈安全運転は自己保身意識に重きを置く姿勢である。自己保身にウエイトを置いた政治家は国民という他者を相手に冒険はできまい。自己保身は他者保身と相対立するからである。〉と書いたが、危険運転は自己保身を無縁とし、そこから実行力が生まれていくる。

 当然、危険運転は他者保身をあくまでも目的とすることになる。目的が叶わなかった場合、職を辞する責任を取る以外にあるまい。職を辞する責任も視野に入れていなければ、他者保身の危険運転はできない。

 安全運転一方の野田首相にそれがない。

 9月14日(2011年)の《野田総理官邸ブログ【官邸かわら版】 「初めての所信表明を終えて」》に、〈演説で申し上げたとおり、野田政権が取り組むべき課題は、明らかです。東日本大震災と世界的経済危機という「二つの危機の克服」。そして、「誇りと希望ある日本の再生」。一言で言えば、「国家の信用」の回復です。あとは「実行」により、全力で「結果」につなげます。 

 「正心誠意」という言葉が誤字ではないか、との指摘を多くいただきました。私の今の思いをよく表しているのは、勝海舟が使った「正」という字を使う方です。「意を誠にして、心を正す」という姿勢で、すべての国民が力を合わせ、「国力の結集」を図っていく。それが私の心からの願いであり、覚悟です。〉と書いているが、唯一絶対必要とする実行力を欠いて、どのような美しい言葉を掲げたとしても、自身を尤もらしげにに飾る言葉で終わる。

 「お断りと謝罪」

 野田首相のいう「正心誠意」を「誠心誠意」と間違えて表記していました。謝罪します。この謝罪をするために、上の一文を書き込みました。


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