萩生田光一が言う如くに空自緊急発進機への中国軍機の攻撃動作からのミサイル発射は事実無根か、情報隠蔽か

2016-06-30 12:13:46 | Weblog

 元航空自衛隊航空支援集団司令官の織田邦男元空将(ネット上では退官後「三菱重工業株式会社顧問」となっているが、事実なら三菱重工業と防衛省を結ぶ顔効きのための天下りか)が6月28日、〈インターネットのニュースサイトで、東シナ海上空で中国軍の戦闘機が空自機に対し「攻撃動作を仕掛け、空自機がミサイル攻撃を回避しつつ戦域から離脱した」とする記事を発表した。〉と、6月29日付「産経ニュース」が伝えている。  

 どのようなインターネット・ニュースサイトなのかネットを調べてみると、6月28日付で、《東シナ海で一触即発の危機、ついに中国が軍事行動》と題して「Japan Business Press」に載せている。 

 記事は6月9日に中国海軍艦艇が尖閣諸島周辺の接続水域に侵入したこと、6日後の6月15日に中国海軍情報収集艦が口永良部周辺の領海を侵犯したこと、そして翌6月16日に同じ中国海軍情報収集艦が沖縄・北大東島の接続水域に侵入したことを伝え、このような海上に於ける挑発的な行動と呼応してなのか、従来は空自のスクランブル機に対して敵対行動を取ったことは一度もなかったが、スクランブル機に対し攻撃動作から入ってミサイル攻撃を仕かけてきたと書いている。

 〈攻撃動作を仕かけられた空自戦闘機は、いったんは防御機動でこれを回避したが、このままではドッグファイト(格闘戦)に巻き込まれ、不測の状態が生起しかねないと判断し、自己防御装置を使用しながら中国軍機によるミサイル攻撃を回避しつつ戦域から離脱したという。〉・・・・・

 「ミサイル攻撃を回避しつつ」と書いているのだから、明らかにミサイル攻撃を仕掛けられたが、中国側が最初から狙いを外していたのかどうか分からないが、いずれにしても空自機は命中を避けてミサイル射程外に逃れたということになる。

 と言うことは、中国軍機はそれ以上追尾してこなかった。

 まさかミサイル発射用のレーダーの照射を受けた(=「攻撃動作」を受けた)だけのことで、その照射回避を照射の次の段階としての「ミサイル攻撃を回避しつつ」と表現しているわけではあるまい。

 そうであるなら、日本の元軍人・現軍人の頭を疑うことになる。

 実際に中国軍機がミサイルを発射したことは記事題名も「ついに中国が軍事行動」となっているし、次の言葉も証明することになる。

 〈筆者は戦闘機操縦者だったので、その深刻さはよく分かる。まさに間一髪だったと言えよう。冷戦期にもなかった対象国戦闘機による攻撃行動であり、空自創設以来初めての、実戦によるドッグファイトであった。〉――

 〈冷戦期にもなかった対象国戦闘機による攻撃行動〉、〈実戦によるドッグファイト〉という言葉は明らかにミサイル発射を示している。

 この記事を引用したマスコミ記事は「攻撃動作」のことをロックオンという言葉で説明している。ロックオンとはミサイルや機銃の照準のためにレーダーなどで捕捉・追尾することを言う。

 アメリカの空中戦を取り入れた映画で確か記憶しているところによると、操縦士が敵機を操縦席のモニター画面で発見すると、位置を確認してレーダーを照射し、機影に赤い点がつくと、「ロックオン」と呟き、同時に操縦席脇の右手で握ったままでいたレバーの先端の赤いボタンを親指で押すと、ミサイルが発射されて敵機をどこまでも追尾し、最後には命中して撃墜に成功するといった場面に出会う。

 ドッグファイト(格闘戦)とは、 犬がケンカする際に互いに相手のしっぽを追いかける様子に似ていることからきた言葉で、相互に敵機の背後に回って相手のミサイルや搭載機銃の攻撃を避けつつ、こちら側のミサイル発射や機銃掃射を有利に運ぶ空中戦法のことらしい。

 中国軍機が空自のスクランブル機に対してミサイルを発射して攻撃を仕掛けてきた。これは重大事態であって、国際問題化しかねない。だが、政府からは如何なる発表もなかった。

 安倍晋三の腰巾着副官房長官の萩生田光一に言わせると、事実無根だからである。事実無根の出来事を公表できるわけはない。

 6月29日付の「NHK NEWS WEB」記事。
  
 萩生田光一は6月29日午前の記者会見で今月6月17日に中国軍用機に対して空自機がスクランブル(緊急発進)をかけた事実は認めたという。

 萩生田光一「攻撃動作をかけられたとか、ミサイル攻撃を受けたという事実はない。上空で、中国機との、ある意味では近距離でのやり取りは、当然あったと思う。政府としては、わが国の領土、領海、領空を、断固として守る観点から、引き続き、わが国周辺海空域での警戒監視活動に万全を期すとともに、国際法、自衛隊法に従い、厳正な対領空侵犯措置を実施していきたい。

 (織田邦男元空将の記事について)国際社会に与える影響も極めて大きく、個人的には遺憾だと思っている。今回のことは特別な行動ではないと判断している」・・・・・

 スクランブルが領空侵犯機に対するものだとばかり思っていたら、領空を越えた公海上空に設定する防空識別圏に侵入した国籍不明機に対しても領空侵犯を未然に防ぐ目的から行われるという。今回のスクランブルがどちらに対して行こなわれたか記事からでは分からないが、どちらであっても、「今回のことは特別な行動ではないと判断している」と言っている。

 織田元空将の記事にも書いてあるが、約3週間前の6月9日午後9時50分頃にロシア海軍の駆逐艦等3隻が尖閣諸島周辺の日本領海外側の接続水域を航行し、続いて3時間後の午前0時50分頃、中国海軍のフリゲート艦が同じ接続水域の別の場所に入り、2時間20分に亘って航行、午前3時10分頃、接続水域から出るという行動を取ったばかりである。

 この行動に対して6月9日夜開催した国家安全保障会議(NSC)の関係閣僚会合で自衛隊制服組トップが次のように発言している。

 河野克俊統合幕僚長(中国艦船が今後、領海に入った場合の対応について)「そういう事態にならないようにしたい。万が一そうなった場合は、それ相応の対応はする」(日経電子版

 誰もが接続水域航行から領海内航行という領海侵入を次の事態として想定したから、記者が質問し、幕僚長自身も同じ事態を想定していたから、「万が一そうなった場合は、それ相応の対応はする」と答えたはずである。

 ところが1週間後の6月15日未明、中国海軍の情報収集艦1隻が鹿児島県口永良部島の沖合で日本の領海を侵入した。この侵入に対してマスコミは軍事的な選択肢として自衛隊への「海上警備行動」の発令も想定される事態だったが、各国の軍艦は一般の船舶と同じように沿岸国の安全を害さなければ、領海を通過できる「無害通航権」が国際法で認められていることから、特に危険性はないと見て見送ったということで、海上自衛隊P3C哨戒機が上空から確認し、領海を出るまでの約1時間半、単に上空から監視しただけで領海内の航行を許した。

 だが、このことは中国が自国領海内を他国の軍艦が無害通航する際には事前許可を求めているということと矛盾するし、中国公船が尖閣沖周辺の日本領海を繰返し侵入していることと重ね合わせると、主役を公船から軍艦へ段階的にバトンタッチする手始めと考えられないことはないことから、単に無害通航で片付けるのは単純過ぎるように思える。

 バトンタッチは中国が領有権を主張する尖閣諸島の周辺領海内航行を既成事実化させた公船の事例を一歩進めて、「無害通航権」を口実とした中国軍艦の航行の既成事実化の事例を目的とし、そのことを以って中国領有の証明とする意図を持たせていないはずはない。

 どうも中国は自分たちがどう出たら、日本はどう反応するか、小出しにじわじわと探る神経戦を仕掛けているようだ。公船の領海侵入に対して日本政府は警告を発する以外、これといった手段は何も取らない。次に中国海軍艦艇の接続水域航行。海上自衛隊護衛艦が確認し、警戒監視しただけで、日本政府はそれ以外の手段を何も取らない。

 そして中国海軍の情報収集艦の日本領海侵入に対しても「無害通航権」を考慮して、海上自衛隊P3C哨戒機が上空から監視したのみ。

 こういった東シナ海に於ける中国の出方の全体を考えると、空自がスクランブルかけた中国軍機が「攻撃動作」を仕掛けた上、ミサイルを発射して攻撃したと言っていることが例え事実無根であったとしても、あるいは中国軍機の侵入が日本の領空内であっても、防衛識別圏内であっても、その一つ一つの目的を細心の注意で探らなければならないはずだが、萩生田光一は「今回のことは特別な行動ではないと判断している」とさも大したことのない一般的事例であるかのように言っていること自体が矛盾することになる。

 このように領空・領海内侵入という一般化できないことを一般化し、侵入という重大事態を重大事態ではないと思い込ませようとしているところに胡散臭さ――情報隠蔽を嗅ぎ取らざるを得ない。

 織田元空将は中国軍機にスクランブルを掛けた空自機が逆に攻撃動作を仕掛けられてミサイル攻撃を受けたという情報は自衛隊に在籍していた当時のツテで防衛省内か航空自衛隊内から得ていなければならない。

 と言うことは、確たる情報源があっての二次情報の提供と言うことができる。

 それが証拠に6月29日付早朝の「産経ニュース」は、〈防衛省幹部は産経新聞の取材に対し、大筋で事実関係を認めたが、「実際にどこまで中国機が空自機に迫ったかが問題だ」と指摘した。〉と書いているし、6月28日付深夜の「47NEWS」記事は、〈防衛省幹部は、共同通信の取材に大筋で事実関係を認めた。〉と書いている。    

 だが、萩生田は事実無根だとしている。「国際社会に与える影響も極めて大きい」と批判までしている。

 ここで思い出すのは2013年1月19日に海上自衛隊護衛艦搭載飛行中のヘリコプターが敵艦から発射したミサイルや大砲等を標的に誘導する、一般的には攻撃目的の射撃管制レーダーの照射を中国海軍艦艇から今回と同じように受けていた事実である。

 いわば「攻撃動作」(ロックオン)を受けた。それをヘリコプター搭載の電波探知装置(ESM)が感知した。

 ヘリは回避行動を取って、レーダーから逃れた。

 ヘリがスクランブル機に変わっただけで、「攻撃動作」という点では何も変わっていない。

 そしてヘリが「攻撃動作」を受けてから11日経過した2013年1月30日、今度は自衛隊の護衛艦が中国艦艇から再びレーダーの照射を用いた「攻撃動作」を受けた。

 このことを小野寺防衛相が安倍晋三の了解を得て公表したのは1月30日から6日経過した2013年2月5日夜である。

 最初の「攻撃動作」からすると、2週間経過している。

 公表までの日数の経過から見て、安倍晋三は1度のことであったなら、公表せず、情報隠蔽を図ったに違いない。

 だが、2度まで同じ「攻撃動作」を受けた。これが3度4度と重なると、防衛省内や、特に現場を担う自衛隊内から政府対応の生ぬるさを批判する声が漏れないとも限らない。

 それで仕方なく公表した。公表したことが幸いして、世界の世論を対中国批判に向けることができたが、中国はレーダーの照射自体を否定した。

 だが、今回は日本側がレーダーの照射=「攻撃動作」自体を事実無根だとしている。

 織田元空将は記事で、《外交手段を取らない日本政府》という小見出しで次のように日本政府を批判している。

 〈今回の事例は極めて深刻な状況である。当然、政府にも報告されている。

 だが、地上ではその深刻さが理解しづらいせいか、特段の外交的対応もなされていないようだ。だからニュースにもなっていない。問題は、こういった危険な挑発行動が単発的、偶発的に起こったわけでなく、現在も続いていることだ。

 これら上空での状況は、海上での中国海軍艦艇の動きとは比較にならないくらい大変危険な状況である。政府は深刻に受け止め、政治、外交、軍事を含めあらゆる観点からの中国サイドに行動の自制を求めるべきである。

 しかしながら、参議院選挙も影響してか、その動きは極めて鈍い。〉・・・・・・・

 織田元空将は記事を書くことで政府対応の生ぬるさを告発すべく二次情報を用いて情報漏洩、あるいは内部告発の役目を担ったように見える。

 織田元空将の記事と記事に対する萩生田の発言からは萩生田光一自身が事実を隠蔽しているとしか見えない。事実が表に現れると、安倍晋三の口先ばかりで毅然とした対応を取ることのできない手ぬるい対中姿勢が批判の矢面に立たされることからの企みに見える。

 安倍晋三は何を恐れているのだろう。事態を公表して、万が一自衛隊と中国軍との間に不測の事態が発生して衝突し、それがエスカレートした場合に国民に与える不安を頭に入れていたのだろうか。せめて参院選前のゴタゴタは回避したいと。

 このことは安全保障関連法が3月29日に施行されていながら、南スーダンに派遣する自衛隊PKO部隊の安全保障関連法に基づく「駆け付け警護」等の新任務を万が一の事態発生を恐れて、参院選後の、それも12月以降に回したところにもゴタゴタを回避したい思いの一端を窺うことができる。

 こういったことのために事を穏便に済まそうとして、情報隠蔽を謀った?


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