安倍晋三の解散記者会見からは700億円かけて総選挙を行う必然性・解散の大義は見えてこない

2014-11-22 09:43:52 | Weblog


 〈衆院選にかかる費用は約700億円。民意を問うコストは高いのか、安いのか。〉と、「安倍政権打倒を社是としている」と安倍晋三自身が憎悪対象としている朝日新聞のインターネット記事「asahi.com」が伝えていた。

 安倍晋三は11月21日午後衆院解散後、午後6時から解散記者会見を開いた。会見からは700億円かけて総選挙を行う必然性・解散の大義は一向に見えてこなかった。

 発言は《安倍晋三解散記者会見》(首相官邸/2014年11月21日)に依った。文飾は当方。

 安倍晋三は解散を「アベノミクス解散」と名づけた。「アベノミクス」という経済政策を解散するという意味に受け取れないこともない。だとしたら、国民にとって正解となる。

 安倍晋三「アベノミクスを前に進めるのか、それとも止めてしまうのか。それを問う選挙であります。

   ・・・・・・・

 私たちの経済政策が間違っているのか、正しいのか、本当に他に選択肢はあるのか、国民の皆様に伺いたいと思います」

 しかし後の方で、「この道しかないのです」と言っている。

 11月18日の解散表明記者会見でも同じことを言っている。

 安倍晋三「デフレから脱却し、経済を成長させ、国民生活を豊かにするためには、たとえ困難な道であろうとも、この道しかありません。景気回復、この道しかないのです。国民の皆様の御理解をいただき、私はしっかりとこの道を前に進んでいく決意であります」

 「ロイター」が伝えている経済再生担当相の甘利明の発言。

 甘利明「(アベノミクスが)頓挫したとか、色々なこと言われているが、経済再生にはこの道しかないのです。内閣として退路を断ってこの道を選んでいることを理解してほしい。

 この道しかない解散だ」 

 かくこのように安倍晋三を筆頭に雁首揃えてアベノミクスに対して「この道しかない」と絶対的信頼を置いているのだから、失敗だ、何だの雑音に煩わされずに我が道を行けばいいのに、「民主主義の原点は税制であります。税制に重大な変更を行った以上、選挙をしなければならないと考えています」と解散の正当性を説明しているが、「変更」を行う前に「変更」の是非を問うのならまだしも理解できるものの、「変更」を既に決めた後に問うのは厳密には民主主義と言うことはできないのだから、「原点」云々の言葉を以って解散の正当性を与えることはできない。

 若い男女が自分たちのみで結婚式の日取りを決めた後に親に結婚の許しを問うようなものである。

 またこの解散・総選挙は国民の70%以上が再増税に反対していることに対する増税先送りという受け狙いと、先送りによるアベノミクスの立て直しの狙い、さらに例え議席数をかなり減らしたとしても、過半数は維持できることを安全牌とした(勝敗の予想がつかなければ、わざわざ解散などしないだろう)、このような狙いを持たせている以上、「国民に信を問う」と言っても、真に純粋な動機からではなく、不純な動機を含んでいると見做さざるを得ず、この点からも解散の正当性を見い出すことはできない。

 もし安倍晋三が経済的に疲弊し、沈滞し切っている地方に対して一時的に年末だけでも活気づけようと経済効果を狙った700億円の解散・総選挙だとしたら、アベノミクスで勝負すべき地方活性化を解散・総選挙の力を借りることになって、邪道そのものとなる。

 安倍晋三の自身の経済政策「アベノミクス」に対する「この道しかない」の絶対的信頼性は次の発言にも現れている。

 安倍晋三「2年前を思い出していただきたいと思います。リーマン・ショックから4年も経ち、世界経済は立ち直ろうとしていたにもかかわらず、日本だけはデフレに苦しみ、3四半期連続のマイナス成長となっていました。

 行き過ぎた円高は、多くの企業を海外へと追いやり、空洞化が進みました。私の地元山口県でも、若者たちを500人以上雇用していた大きな工場が行き過ぎた円高のために工場を閉めざるを得なくなりました。どんなに頑張っても、どんなに汗を流しても、どんなに良いアイデアを出しても、行き過ぎた円高のために競争に勝てない。そして、多くの雇用が失われていたのです。失業者が増え、下請企業は仕事がなくなり、連鎖倒産という言葉が日本中を覆っていました。当時、私は、野党の党首でありましたが、どこへ行っても、『安倍さん、この景気を何とかしてくれよ。』と言われたことを今でも忘れません。

 その日本全体を覆っていた強い危機感が、私たちの政権交代へとつながりました。強い経済を取り戻せ。これこそが総選挙で示された国民の皆様の声であると信じ、三本の矢の政策を打ち続け、経済最優先で政権運営に当たってまいりました。

 その結果、雇用は100万人以上増え、高校生の就職内定率は10%アップしました。9月末の時点で既に半分以上の学生が内定を貰っている。15年ぶりの出来事です。今年の春は、過去15年間で最高の賃上げが実現しました。企業がしっかりと収益を上げれば、雇用を増やし、賃金を上げることができる。その好循環を回していく。これがアベノミクスなのです」――

 この発言のどこに国民に信を問わなければならない政策の不備を見つけることができると言うのだろうか。「アベノミクスを前に進めるのか、それとも止めてしまうのか」と問う必要もない、アベノミクスの完璧さの証明にしか聞こえない。

 実際には「雇用は100万人以上」は正規社員の減少・非正規社員の増大という年々の傾向を隠した統計であり、当然、「高校生の就職内定率10%アップ」に対してもこの年々の傾向は反映されることになって、何ら問題も矛盾も含んでいない統計値ではない。

 だが、安倍晋三は何ら問題も矛盾も感じることなく統計を挙げてアベノミクスを誇り、絶対的信頼を置いている。安倍晋三自身にとっても解散・総選挙の必要性はなく、当然、大義もないことになる。

 安倍晋三は「行き過ぎた円高は、多くの企業を海外へと追いやり、空洞化が進みました」と言い、暗に円高を是正できなかった民主党政権を批判しているが、円高による産業の空洞化は悪一方ではない。

 先進国の企業が開発途上国や後開発途上国に移転することによって、それらの国の経済が発展し、発展に応じてそれらの国民の賃金が上がってが豊かになっていけば、国家間の経済格差が縮小していく。

 これらの経緯は中国、タイ、インドネシア等に見てきたとおりである。

 もし先進国の企業が海外移転をせず、全てが国内に留まって生産活動し、海外に対しては輸出のみで経営を維持していたなら、後進国が先進国企業の海外移転をキッカケとした経済振興は期待不可能となって、先進国以外は後進国の地位をいつまでも引きずることになり、それらの国では両者間の経済格差に怨嗟の声が起こり、輸入品ボイコット運動も起こりかねない。

 先進国企業の海外移転によって豊かになっていく開発途上国の特に豊かになった国民が先進国からの輸入品を求めるようにもなる。

 国家間の経済的バランスを取るためにも先進国企業の海外移転(自国にとっての産業空洞化)は悪一方とは決して言うことはできない。悪一方だとする考え方は一国平和主義の偏った思想に囚われているからだろう。

 安倍晋三の次の発言は野党政策への批判と、野党政策とは比較にならないアベノミクスへの信頼を示めす内容となっている。
 
 安倍晋三「都市と地方の格差が拡大し、大企業ばかり恩恵をこうむっている、そうした声があることも私は十分承知しています。それでは、日本の企業がしっかりと収益を上げるよりも前に、皆さんの懐から温まるような、手品のような経済政策が果たしてあるのでしょうか。また、バラ撒きを復活させるのでしょうか。その給付を行うにも、その原資は税金です。企業が収益を増やさず、そして、給料も上がらなければ、どうやって税収を確保していくのでしょうか。それこそが2年前までの風景ではありませんか。

 私たちは違います。私たちは景気を回復させて、企業が収益を上げる状況をつくり、そして、それが皆さんの懐へと回っていく、この経済の好循環を力強く回し続けることで、全国津々浦々に至るまで景気回復を実感できる、この道しかないのです

 景気回復、この道しかありません」――

 既に触れたことを再度繰返すことになるが、「この道しかない」の発言は誰が何度聞いても、条件反射的に、だったら、我が道を行けよ、解散・選挙せずにと言いたくなるような物言いとなっている。

 解散・総選挙の必然性・大義を見つけることはできない。

 大体がアベノミクスの正当性の根拠として「それでは、日本の企業がしっかりと収益を上げるよりも前に、皆さんの懐から温まるような、手品のような経済政策が果たしてあるのでしょうか」と言っていること自体が合理的な認識能力を欠いた矛盾そのものとなっている。

 確かに個人よりも企業の収益が優先される。と同時に個人(=国民)の収益も公平に優先されなければならない。

 一部の企業が収益を上げて、その収益を従業員に再分配して、再分配された従業員が他の企業の製品を買うことによって、その企業も収益を上げ、その収益を自社の従業員に再分配して、その従業員が他の企業の製品を買っていく循環が広範囲に広がっていけば、全体的な経済が回復していく。

 だが、日本の大企業が「しっかりと収益を上げ」ていながら、内部留保に回すだけで、その収益を雇用者及び大企業以下の中小企業に再分配しないから、いわば企業の収益優先一方のみで、個人の収益を蔑ろにしているから、日本の経済及び個人消費が全体的に機能しない原因となっているのであって、安倍晋三がこの点に留意するだけの合理的な認識能力を欠いたままま、「手品のような経済政策が果たしてあるのでしょうか」と言っていること自体、アベノミクスの欠陥を物語って余りある。

 企業が自らの収益優先一方のみであるのは、PDF記事《大企業内部留保 1年で5兆円増》から参考引用した画像が何よりの根拠となる。

 いずれにしても安倍晋三はアベノミクスに「この道しかありません」と絶対的な信頼をおいている以上、700億円も賭けて解散・総選挙する必然性も大義も見い出すことはできない。


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