生活困窮者と自殺者の増加率も同時に「試算」し、その対処方法も提示すべき
<政府の社会保障国民会議が19日、基礎年金の財源をすべて税で賄った場合、09年度に9.5~18%まで消費税を引き上げる必要があるとの試算を公表したと今日(08年5月20日)の『朝日』朝刊≪税方式導入なら消費税「9.5~18%」 公的年金で試算≫が冒頭箇所で伝えている。
但し、<保険料負担は減るが、増税との差し引きで年金受給者や会社員世帯では負担増となる一方、厚生年金の拠出金がなくなる企業の負担は減る。>ということである。
このことは殊更説明するまでもなく、一般家庭の負担が増え、その分企業の負担を軽減する企業優遇・国民生活虐待の絵柄となっている。
この絵柄に関して『朝日』は同じ日付けの関連記事≪時時刻刻 税方式「重い家計負担」≫で、<はじき出された数字は、税方式が家計に与える負担の大きさを想像以上に明らかにした。政府高官は「政府が(試算で)メッセージを発したということでは全くない。全額方式も決してタブーではない」と火消しに懸命だ。>と紹介している。
つまり、全額方式を避けたい政府の意向が働いた「試算」だから、その正当化に企業優遇・国民生活虐待の「メッセージ」となったというわけではないと「火消し」に躍起となっているというわけである。
しかし政府高官の「火消し」も記事が伝える厚労省の態度が無効化することとなっている。<数字をはじき出す実務を担った厚生労働省は「年金は自助努力の面がある。保険料を充てるのが理解を得やすい。消費税は他の社会保障費に回したい」との立場だ。同省は「中立」を強調するが、今回の試算について、幹部の一人は「やはり『なかなか税方式は難しい』と受け取らざるを得ないのではないか」と歓迎する。>と伝えて、全額方式への回避意向が働いた「試算」だと解釈した記事内容となっている。
使途名目が何であれ、いずれは消費税増税は避けられない事態だと言われている。上記『朝日』記事は全額税方式の場合の企業負担軽減分の「従業員への還元」に言及しているが、年金の全額税方式でっても、他の社会保障費に回す遣り方であっても、消費税増税を行った場合、何パーセント増税につき使途名目に応じて何人程度の生活困窮者が出るか、そのことと従来の生活困窮に加えた新たな消費増税負担によるさらなる生活困窮によってどれ程の自殺者が出るか、併せて「試算」すべきだろう。国民の福祉に直接関わっていく消費税増税だからである。
年間自殺者が3万人を超える。『参考資料:警察庁発表 自殺者数の統計』(H19年6月発表)によると、平成18年度(06年度)の自殺者総数は32155人で、平成18年中の《原因・動機別 自殺者数》の場合は総数10466人、そのうち「経済・生活問題」、いわば生活苦からの自殺が「年度」と「年中」の違いからなのか、29%も占めていて3010人となっているが、単純に平成18年度(06年度)の自殺者総数32155人の29%とすると、9324人となる。
カネで解決する部分もある「健康問題」による自殺者41%のうち何%かを加えると(一例として健康保険料が支払えず、病気を我慢して死に至ってしまったといった人間が相当数いることを挙げることができる)消費税増税を引き金とした生活困窮が自殺への手引きとなる可能性は決して否定できないはずである。
また消費税増税による個人消費の冷え込みが経済の足を引っ張り、そのことがさらなる生活困窮者を生み出す悪循環の規模も「試算」して発表すべきだろう。
消費税増税によって生じるそういった諸々のマイナス要因を予想・「試算」して、その上で全体的な対策を示し、国民にどう対処すべきかの道筋となる全体的な政策・全体像を提示して国民の安心を引き出してこそ、政治が「国民保護の責任」を果たす第一歩ではないだろうか。
いわばどのような「試算」であろうと、「国民の安心」を誘導する「試算」であるべきで、「国民の安心」を置き去りにした国の政策に誘導するための「試算」であってはならない。
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