アベノミクスの失敗を改めて証明する月末金曜日午後3時退社「プレミアムフライデー」の消費促進

2016-12-13 11:04:24 | Weblog

 昨夜2016年12月12日夜7時からのNHKニュースが政府と経済界が個人消費停滞の打破検討の協議会を12月12日開催、来年2月から月末の金曜日に買い物や旅行を促す全国規模のキャンペーンを実施、企業に対して従業員が午後3時を目処に退社できるよう対応を呼びかけて消費に繋げる方針を決めたと伝えいて、経済効果がどのくらいだといったことを流していた。

 このニュースを聞いただけで、このような方針の決定はアベノミクス失敗の最たる証明に他ならないと思った。

 先ずどのような内容の仕組みなのか、同日付「NHK NEWS WEB」から見てみる。    

 協議会は東京都内で経団連や小売りなどの業界団体の代表が出席して行われた。決定した名称は「プレミアムフライデー」

 プレミアムフライデーのロゴマークまで既に決めている。黒色の円形縁取りで中は土色に近いくすんだ黄色で、両目を表現させたのだろう、目の位置に両端を眉を吊り上げる形の半円形で盛り上げた「PremiuM」の黒文字を当て、同じく鼻を表現したのだろう、鼻の位置に横一線で「FPIDAY」の黒字を当てている。

 口は目や鼻の文字と同じ幅の黒色の線で笑みを表現する両方の口の端を上げた半円形で表現している。口の端を表現する短い線がないだけで、自然保護や反戦等の活動のシンボルマークとなった「ラブ・ピース」に似ていないことはないが、「ラブ・ピース」のような可愛らしさは全然ない。

 くすんだ黄色で目と鼻を英字で表現している分、得体の知れない表情となっている。小学生が描くような赤いスカートと青色のスカート(他の色でもいいが)を穿いて買い物籠を下げて元気よく大きく手を振って歩く向かい合わせになった小さな女子を横向きに描いて円の中央に配置するような絵の方が買い物の気分を表現するように思える。

 「PremiuM FPIDAY」の文字は下端の円の線に沿ってその内側に配置すれば十分である。

 まあ、どうでもいいことだが、記事は人手不足の傾向にある上に月末は商品の納期や仕事の締切りが集中して仕事量が普段より多くなる中小企業の対応がどうなるかといった趣意で一応示している。

 そして経済効果。永濱利廣第一生命経済研究所首席エコノミストが、国内の大手企業や中小企業の従業員が一斉に午後3時に仕事を終えて買い物や旅行、娯楽などの消費をすることを前提にした場合、1日当たり約1230億円に上ると試算しているという。

 この1日当たり約1230億円の経済効果は推計で1300億円を超える「ハロウィーン」の市場規模に匹敵すると記事は解説している。

 捕らぬ狸の皮算用となるのか、捕って皮何枚と数えた上でソロバンを弾くことになるのかやってみてのお楽しみだが、安倍晋三は首相就任後、アベノミクスの経済政策で賃金上昇と企業収益向上の好循環を景気良く謳った。

 この循環の順番は企業収益向上が先である。先ずアベノミクスの経済政策で企業が利益を上げ、その利益の一部を従業員の賃金に還元させて、還元された賃金の一部が消費に回って、その消費が再び企業の利益に回り、その利益の一部をさらに従業員の賃金に回していき、その賃金の一部が・・・・・・という繰返しがアベノミクスに担わせた“好循環”であった。

 だが、企業は日銀の異次元の金融緩和を受けた円安と株高で大きな利益を上げたが、アベノミクス本体の経済政策ではさしたる利益を上げることができなかった。円安と株高が主たる元手の利益は円高と株安に振れた場合、自動的に吐き出さなければならなくなる。企業は賃上げに慎重になった。

 これでは好循環が始まらないと見た安倍晋三は企業の尻を叩いて賃上げを要請し、いわゆる官製賃上げによって企業は僅かながらに賃上げに応じたものの、金額が僅かであっても、大企業とその正社員には厚く、中小企業とその正社員には薄く、非正規社員にはなお薄い配分のため、下に行く程人数が多い賃金構成が邪魔をして個人消費額は上がらなかった。

 このことだけでもアベノミクスの失敗を証明しているのだが、その失敗を「有効求人倍率は47全ての都道府県で1倍を超えた」とか、「実質賃金もプラスに転じ、6カ月連続でアップしている」、「安倍政権は100万人の雇用をつくった」等々の指標を持ち出して、「経済の好循環は生まれている」とゴマカシていたが、賃上げが消費に結びつかない状況に痺れでも切らしたのか、消費そのものを直接上げるために政府が経済界の尻を叩く官製の消費促進に打って出たのだろう。

 この官製消費促進に打って出ざるを得ない現状こそが官製賃上げによって露わとなったアベノミクス失敗に追い打ちをかける、その失敗の最たる証明に他ならない。

 このことは上記記事が拾った街の声が裏付けている。

 広告会社勤務20代男性「自分の会社では午後3時に仕事を終えるのはかなり難しいと思う。所得を増やすような施策がない中で消費につながるかは疑問だ」

 「所得を増やすような施策がない」という表現でアベノミクスの失敗を言い当てている。

 映像制作会社勤務20代女性「早く退社できれば有意義に時間を使いたいが、将来の不安があるので給料が増えないならお金はあまり使わず貯金にまわしたいと思う」

 個人消費が増えないのは将来の不安が原因だとよく言われているが、この女性は職場に於ける不安定な地位をも含めた不安定な将来ということかもしれないが、そういった諸々の不安を払拭してくれる政治が行われていないことの言い回しであって、やはりアベノミクスの失敗に言及した街の声であるはずだ。

 化学メーカー勤務50代男性は「フレックス制度なども定着してきているし曜日を決めて取り組むのはとてもよいことだと思う。映画や旅行に行きたい」

 従業員数が多くなる程フレックスタイム制を導入している企業の割合が増えているということだから、それなりの規模以上の会社に勤めて、それなりの賃金を得ているからできる消費行動の予定なのだろう。

 人材派遣会社勤務30代の男性「金曜に早く帰れるならとてもうれしいし、休日の充実につながる。経済にもよい効果があるのではないか」

 「プレミアムフライデー」の消費に意欲を燃やしている。

 これらの街の声から透けてくる光景はアベノミクスの失敗ばかりではなく、巷間よく言われているアベノミクスは格差ミクスという光景でもあるはずである。

 街の声による後二者は積極的な消費意欲を見せているが、それが少数派であって、官製消費促進に過ぎない「プレミアムフライデー」が官製賃上げ同様にアベノミクス失敗の証明でしかないことを消費者庁のサイトからも窺うことができる。

 「平成26年版消費者白書」 

 〈社会経済活動の中で、消費活動は非常に大きなウエイトを占めています。消費者が支出する消費額の総額は、2013年現在約286兆円で、経済全体(国内総生産(GDP)=約478兆円)の約6割を占めています。〉

 「平成27年版 消費者白書」  

 〈家計が支出する消費額の総額は、2014年に約288兆円で、経済全体(国内総生産(GDP)=約488兆円)の約6割を占めている。〉
 
 「平成28年版消費者白書」  

 〈家計が支出する消費額の総額は、2015年に約285兆円で、経済全体(国内総生産(GDP)=約499兆円)の約6割を占めている。〉
 
 2013年の消費総額は約286兆円、
 2014年の消費総額は約288兆円
 2015年の消費総額は約285兆円

 2014年4月1日から消費税が5%から8%へと増税している。2013年末から2014年4月にかけて買い溜め目的の駆け込み需要によって消費が増えた。それが2013年約286兆円に対する2014年の2兆円増の約288兆円となって現れたのだろう。

 だが、2015年は駆け込み需要の反動もあるが、約285兆円と、2014年と比較して3兆円、2013年と比較して1兆円減らし、2013年から2014年に掛けての駆け込み需要での2兆円増を1兆円上回る2015年消費総額の下振れとなっている。

 各年とも賃金が上がっているにも関わらず、それが大企業偏向の官製の賃上げで、アベノミクスが押し上げた自律性を構造とした賃上げでないことからの消費の低迷であり、自律性を一度も吹き込まれていないことが経済の好循環のエンジンとはなり得なかった原因であろう。
 
 アベノミクスのその失敗を拭うために次の一手として「プレミアムフライデー」なる官製の消費促進に出た。

 要するにアベノミクスの失敗を改めて証明するためのアイテムに過ぎない。


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