岡田副総理の“議事録事後作成可能の法律の立て方になっている”は「ウソつきは泥棒の始まり」

2012-03-10 12:12:34 | Weblog

 1月28日(2012年)の岡田副総理津市記者会見での議事録未作成についての発言。

 岡田副総理「議事録の事後の作成もありうるという法律の立て方になっているので、ただちに法律違反とは言えない。事後といってもできるだけ速やかに作るべきで、これだけ時間がたっているのはよくないから問題になっている。

 なぜ作成されなかったのかという検証の問題と、今後どうするかという問題の2つがある。法律があるのに、省庁によって扱いが全然違うのはよくないので、今後は、公文書を所管する立場で、どの程度の議事録をどういう形で作るか、一定のガイドラインを作ることも考えなければならない」――

 この発言を捉えて、2012年1月29日当ブログ記事――《岡田副総理、議事録作成どこが「事後の作成もありうるという法律の立て方」となっているのか - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》を書き、「公文書等の管理に関する法律」のどこにも事後の作成についての記述がない、〈原理主義者なら原理主義者らしく原理・原則に則って法律の義務づけを厳格に受け止め、議事録作成の認識がなかったために作成に至らなかった責任不履行を潔く認めるべきだが、時間の経過の問題にすり替える、原理主義者からご都合主義者への変身をものの見事に演じている。〉と批判した。

 そして、〈情報公開、政治の説明責任、政治の透明性を厳格に担保するためには意志決定のプロセスを明確にする必要があり、これらの条件をクリアするためには当然リアルタイムの作成が求められているはずである。

 リアルタイムであることから時間を置いた場合、情報自体が変質しない保証はなく、それが変質しなかったとしても、変質したか否かの証明が困難となる。〉と書き添えた。

 この「リアルタイム」について少し説明したいと思う。「リアルタイム」とは即時、同時という意味である。だが、会議の進行と同時にその場その場で議事録としての体裁を整えた文書を作成していくことは困難であろう。

 例えば会議の議論を録音しておいた場合、議事録作成は会議終了以後となる。

 この点で岡田副総理の発言にあるように「事後の作成もありうる」ということになるが、法律が議事録作成を義務づけていいる以上、あくまでも議事録作成の認識を常に念頭に置いた「事後の作成」でなければならないはずだ。

 政府関係の会議に於いて議事録作成の認識を念頭に置くことによって、議事録作成に添う十分な記録を残しておくことが可能となり、意志決定のプロセスが初めて明らかになって、情報公開、政治の説明責任、政治の透明性等が担保可能となる。

 当然、議事録作成の認識を念頭に置かない「事後の作成」は情報公開、政治の説明責任、政治の透明性等を国民に対して厳格には約束できないことになって法律の趣旨、あるいは法律の義務づけに反することになり、厳密に言うと「法律違反」と言えるはずだ。

 いわば議事録作成の認識がなかった時点で既に法律違反を犯していたことになる。

 そのような場合、「事後の作成もありうるという法律の立て方になって」はいないということである。

 認識の有無から法律違反かそうでないかを判断すべきだったが、そういった判断をするだけの能力はなかった。

 そのような認識は明らかになかったのだから、責任回避を謀る意図的にねじ曲げたウソも同然の、自分たちに都合がいいだけの解釈に過ぎない「法律の立て方」と言うことができる。

 このことは3月9日(2012年)、議事録作成事務局の原子力安全・保安院が公表した「議事概要」が証明している。

 議事録作成の認識がなかったために議事録作成に十分に添うことができる満足なメモ・記録の類がなく、逆立ちしても議事録とは言えない「議事概要」となっていて、明らかに「公文書等の管理に関する法律」が求めている規定に違反している。

 3月11日午後7時3分からの第1回会議。

 発言者不明「バッテリーで冷却装置が動く8時間を超え、炉心の温度が上がるようなことになると、メルトダウンに至る可能性もある」(NHK NEWS WEB

 原子力発電の情報にかなり詳しい人間の発信か、詳しい人間から得た間接情報だとしても、間接情報を得るだけのつながりと間接情報を発信できる立場にある人間の発信に限られるはずだが、発言者の名前すら分からない。

 それとも東電が1号機が地震発生から約5時間後に、3号機は3月13日の午前9時頃に、2号機は3月14日の午後8時頃にそれぞれメルトダウン(炉心溶融)を開始した可能性を5月14日になって後付けで公表した手前、辻褄を合わせる都合から、あるいは責任回避の都合から発言者不明としたと疑えないことはない。

 3月11日午後4時過ぎからの2回目の会合で、〈海江田経済産業大臣が「原発はすべて停止した。冷却電源の供給が心配だ」と発言し、初めて原子力発電所について言及しています。〉(「NHK NEWS WEB」)という記述があり、菅以下が東電から情報が上がってこない、上がってこないと騒いでいたから、海江田発言から情報収集の障害の程度を知りたいと思って、第2回会合の「概要」にアクセスしてみた。

 しかし記事の間違いなのか、この海江田発言は3月11日(金)19:03~19:22第1回「議事概要」に記されている。 

○海江田万里経済産業大臣からこれまでの経過を含めて原子炉の状況について報告。
・最初は非常用電源が立ち上がったが、その後停止し全電源が喪失した。
・炉は当初制御棒が挿入され停止したが、現在、冷却できなくなっている。


 続いて次の記述となっている。
 

○北澤俊美防衛大臣から米軍からの支援の申し出について報告。
・ルース大使からもオファーあり。
・発電機は何機あればいいのか。
・照明も必要。
○菅直人内閣総理大臣から防衛大臣に対して原子力災害派遣を要請。
○中野寛成国家公安委員長から、東京電力福島第一原子力発電所の停止に伴い、東京電力が
 東京等から派遣する電源車の関係警察のパトカーによる先導について発言。
○菅直人内閣総理大臣から、経済産業大臣の下、避難対応を進めるよう指示。
○海江田万里経済産業大臣から、道路状態が悪いとの発言。
○片山善博総務大臣から、道路状態をよく確認するようにとの発言。
○松本龍防災担当大臣から、官邸に情報が入っていないとの発言。
○枝野幸男内閣官房長官から各大臣が先頭に立って指揮するよう要請。
○枝野幸男内閣官房長官から閉会を宣言。


 各人の発言を纏めてしまっているから、議論がどう推移していったのか、起承転結のプロセスを見えてこないだけではなく、
各発言を最小限に留めてしまっているから、各状況の程度について窺うこともできないし、それぞれの発言に対して誰がどう反応し、どのような決定がなされたのか、あるいはどのような指示を約束したのか、一切を窺うことができない。

 当然、意思決定の過程は判断しようがないし、検証の用に堪え得るとは思えない。

 「NHK NEWS WEB」記事が触れていた3月12日(土) 9:15~(9:34までには終了)第2回目「概要」の海江田発言を見てみる。

 「本部長:菅直人内閣総理大臣(欠席)」となっている。

3月12日午前6時14分――菅仮免、官邸からヘリで視察に出発
3月12日午前7時11分――菅仮免、福島第一原発に到着
3月12日午前8時04分――菅仮免、福島原発視察を切り上げ、三陸機上視察に出発
3月12日午前10時47分――菅仮免、首相官邸に戻る

 ヘリコプターで途中立ち寄るところはあっても空中散歩をしていた時間帯と重なったことからの欠席である。

○海江田万里経済産業大臣から原子力発電所の状況について下記のとおり報告。
・昨日発生した平成23年東北地方太平洋沖地震を受け、各地の原子力発電所の安全を確保
 するため、電力事業者と経済産業省原子力安全・保安院をはじめとし、政府一丸となっ
 て取り組んできたところ。
・これまで、東通、女川、柏崎刈羽、六カ所の各原子力施設では安全が確認されているが、
 もっとも大きな被害を受けた東京電力福島第一及び第二原子力発電所では、安全確保に
 向け引き続き関係者による取組が続けられており、まだ「進行中」との認識をもってや
 っていきたいのでよろしく願いたい。
・福島第一原子力発電所では、原子炉格納容器の圧力が高まっているおそれがあることか
 ら、本日未明、原子炉格納容器の健全性を確保するため、内部の圧力を放出する措置を
 東京電力が講じる予定との報告を受けている。仮に放出が行われたとしても、現在とら
 れている10km以内からの避難により、住民の安全は十分確保されている。
・圧力放出の措置としては、安全弁をあけることで蒸気が外に出る。人力でバルブを開け
 る作業中である。
・福島第二原子力発電所については、原子炉の圧力を抑制する機能を喪失したことから、
 原子力災害対策特別措置法第15条第1項の特定事象が発生したが、現在のところ、発
 電所の排気筒モニタ及び敷地周辺のモニタリングポストの指示値に異常はなく、放射性
 物質による外部への影響は確認されていない。
・したがって、緊急事態応急対策を実施すべき区域内の居住者、滞在者その他公私の団体
 等は、現時点では、直ちに特別な行動を起こす必要はない状況。
・引き続き、安全確保に向け、万全を尽くして参りたいのでご協力よろしくお願いしたい
 。
○枝野幸男内閣官房長官から閉会を宣言。



 一つの発言に反応した発言の経緯が意思決定のプロセスを明かすことになるはずだが、やはり海江田発言に対する他の閣僚の反応、その反応に対する海江田の再反応は一切窺い知れない。

 海江田発言を纏めて、あとは枝野の閉会宣言である。

 また、〈したがって、緊急事態応急対策を実施すべき区域内の居住者、滞在者その他公私の団体等は、現時点では、直ちに特別な行動を起こす必要はない状況。〉という記述からは、この海江田情報がどこの誰からの発信情報に基づいているのか、情報共有という点での判断ができない。

 「公文書等の管理に関する法律」は「意思決定に至る過程」と「事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証」が可能な文書作成を義務づけている。

 この意思決定のプロセスと検証という要求を何ら満たしていない。

 このように「議事概要」の一部を見ただけでも、岡田副総理が言っていた「議事録の事後の作成もありうるという法律の立て方になっている」は虚偽(=ウソ)そのものであって、明らかに「法律違反」に当たる。

 他の数々のウソと合わせると、まさしく「ウソつきは泥棒の始まり」である。

 《議事概要公表も政府対応は検証困難》NHK NEWS WEB/2012年3月9日 18時50分)が紹介している、情報公開制度に詳しい名古屋大学大学院春名幹男特任教授の発言を、既にご存知かもしれないが、参考までに記載しておきたいと思う。

 春名幹男特任教授「リアルタイムで記録されたものではなく、官僚や関係者が残したメモや記憶を基に再構成した文書だ。閣僚の発言を名前を記して記載している点は評価できるが、その後どう議論され、どうなったのか、詳しいことが記されておらず、非常に分かりにくい。

 アメリカの場合(アメリカ原子力規制委員会議事録)は3000ページもあり、どう対応したかがよく分かる内容だったが、日本の場合は70数ページで、発言がどう行動に反映したかも分からない。国民の知る権利に応えるものになっていない」

 政府の人間は大震災を教訓としてとか、福島原発事故を教訓としてと盛んに言うが、どのような意思決定のもと政策が決定されていったのか検証が不可能であったなら、不可能とまで行かなくても、検証困難であったなら、万が一の次のときの教訓にならないばかりか、政府、あるいは自治体の災害に備えるための危機管理対策の参考にもならないことになる。

 この罪は重い。「議事録の事後の作成もありうるという法律の立て方になっている」では済ますことのできない罪の重さであろう。

 特に菅仮免の危機管理は反面教師としての価値は計り知れないものがあったはずで、後世の危機管理対策のバイブルとも言える宝となったはずである。

 責任を認める意識がないと、強弁を働いたり、虚偽に走ったりのウソを働くことになる。結果、「ウソつきは泥棒の始まり」となって、国民を裏切る罪の重ねへとはまり込んでいく。

 参考までに。

 原子力災害対策本部会議の議事概要


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