外交・安全保障政策の司令塔となる国家安全保障会議(日本版NSC)創設の法案が11月6日の衆議院特別委員会で採決され、自民・公明両党、民主党、日本維新の会、みんなの党の賛成多数で可決された。
反対は共産党と生活の党。
では、衆議院特別委員会での右翼の軍国主義者安倍晋三の発言を次の記事から見てみる。《NSC法案 衆院特別委で賛成多数で可決》(NHK NEWS WEB/2013年11月6日 18時53分)
安倍晋三「安全保障環境が大きく変わるなか、常に国際状況を分析しながら、さまざまな脅威に外交的、軍事的にどのように対応し、対応のしかたによって、どのような反応があるかを含めてシミュレーションし、政策的な選択肢を用意しておく必要がある。総理大臣や外務大臣、防衛大臣、官房長官が日頃からよく理解し、協議していく状況を作ることが極めて重要だ。
(会議録の公開について)特定の国・政府の分析や情報の議論も行うので、公表することがふさわしいかどうかを十分に検討する必要がある。公表の在り方や関連文書の作成と取り扱いは、会議の性質を勘案し、国の安全保障を損ねない形でしっかりと検討していきたい。
(議事録作成について)政府がどういう議論をして判断したのか、政策決定や情報分析が間違っていたかどうかも含めて検証できることも必要だ。機微な議論もあり、保全されることを前提に、どういう形が考えられるかを検討したい」――
問題は的確な組織運営の実効性とその検証であろう。組織はつくることはできる。だが、つくることと運営は別問題なのは断るまでもない。組織は初期的には単なるハコモノに過ぎないからだ。中長期的に中身(=運営)が伴って、あるいは伴わせて、初めてハコモノであることから脱することができる。
実際問題として政策に応じて満足に機能させることができる場合もあるだろうし、満足に機能させることができない場合もあるだろうし、明らかに失敗する場合もあるはずだ。
満足に機能した場合でも、それがどのような合理的な方法によって機能させることができたのか、以後の学習材料として検証して広く公開する必要があるし、満足に機能しなかった場合、あるいは明らかな失敗は反面教師のための学習材料とするために特に徹底的な検証と公開が必要となるはずだ。
検証と公開は政策決定及び意思決定のプロセスを明々白々とすることができる作成された議事録の存在を欠かすことができない。菅官房長官は当初は議事録作成に否定的であったが、右翼の軍国主義者安倍晋三は議事録作成について、「政府がどういう議論をして判断したのか、政策決定や情報分析が間違っていたかどうかも含めて検証できることも必要だ。機微な議論もあり、保全されることを前提に、どういう形が考えられるかを検討したい」と前向きな発言をしている。
11月1日午前の衆院国家安全保障特別委員会。
菅官房長官(国家安全保障会議の議論の公表について)「国家安全保障を損なわない程度に検討したい。(但し)議事録は作成しない。
首相や外務、防衛、国交などの閣僚が参加する現在の安全保障会議でも、自由闊達(かったつ)な議論を確保する必要性、機微にわたる問題のため議事録を作成してこなかった。そこは民主党政権でも同じだった。だから議事録は作らない」(asahi.com)(下線部分は解説文を会話体に直す)
ところが同じ日の午後の記者会見では、「作成しない」が「検討していきたい」に変わった。
菅官房長官「作成するということではない。検討していく段階だ。
審議内容には機微な情報も含まれる。そういう中で、公表の在り方や関連文書の作成、取り扱いについて十分に勘案しながら、国の安全保障を損ねない形でしっかりと検討していきたい」(時事ドットコム)
公表に関しては「国の安全保障を損ねない形」は必要であろう。だが、議事録作成は後の検証に役立てる唯一重大な手がかりであると同時に検証によって以後の「国の安全保障を損ねない形」を反省・学習して確保する重要な手段でもある。
当然、「検討していく段階」であってはならないし、右翼の軍国主義者安倍晋三のように「検討したい」と前向きな姿勢を示すだけでは不十分であるはずだ。
ところが上記「NHK NEWS WEB」記事は、法案に〈国の安全保障を損ねない形で、会議記録の作成を検討するとした付帯決議〉を加え、この付帯決議も賛成多数で採択されたと解説している。
要するに「検討」で押し切ったことになる。しかも、「国の安全保障を損ねない形」での検討だから、「国の安全保障を損ね」るという口実のもと、未作成も可能となる。抜け道を拵えたようなものである。
にも関わらず、賛成多数で可決された。
議事録は政策決定及び意思決定プロセスの唯一の検証材料であるばかりか、責任の所在を示しておく記録でもあるはずだ。責任の所在を明確化できる状況下での政策決定及び意思決定こそが、政策決定者たちに責任意識をより強く自覚させることになる。
逆説するなら、議事録を作成しない如何なる会議も責任意識を希薄化させる危険性を抱えかねない。当然避けなければならない事態であるはずだ。
だとすると、「検討」段階での賛成多数可決は不完全な形としないわけにはいかない。
大体が自民党は民主党政権下の野党時代、菅内閣が組織した東日本大震災に関する15組織のうち、「原子力災害対策本部」、「政府・東京電力統合対策室」、「原発事故経済被害対応チーム」、「緊急災害対策本部」、「被災者生活支援チーム」、「官邸緊急参集チーム」、「各府省連絡会議」、「経済情勢に関する検討会合」、「電力需要に関する検討会合」、「電力改革及び東京電力に関する閣僚会合」の10組織が公文書管理法が主旨とする議事録を作成していなかったとして、国会で厳しく追及している。
三例程挙げてみる。
2012年2月7日の参議院予算委員会。
三原じゅん子「議事録未作成問題について伺いたいと思います。
既に報道されていることと思いますけれども、震災関連の政府の対策本部、それから原発事故収束のための政府の対策本部の議事録が作成されておらず、政府自ら公文書管理法の趣旨に反することを行ってきたということが問題になっております。枝野大臣も記者会見で大変遺憾なことだと陳謝し、事務局を務める経産原子力安全・保安院に過去の議事録作成と公開を指示したと報道されております。
この原発事故への政府の対応が適切だったかどうかは、将来に教訓を残す、正しく残すという意味で、これ歴史的にも非常に重要なことだと思います。また、世界各国の関心も高まっていることだと思います」――
「将来に教訓を残す、正しく残す」ためには議事録は必要不可欠で、「歴史的にも)という言葉を使って、「非常に重要なことだ」と訴えている。
この訴えに対して当時内閣府特命担当大臣(原子力損害賠償支援機構担当)だった枝野幸男が原子力災害対策本部や危機管理センターに上がってきて、公文書として記録されている書類等や会議に同席していた官僚たちのメモを使って詳細に議事概要を復元していると答弁。その答弁に三原じゅん子は最後のトドメを刺している。
三原じゅん子「一言。
政策決定の正しい記録、これを残せないのであれば、民主党は与党どころか責任政党の名に値しない。政府の猛省と真相究明の真摯な対応を求めて、私の質問を終わります」――
「政策決定の正しい記録、これを残せないのであれば、民主党は与党どころか責任政党の名に値しない」とまで強く非難している。「政策決定の正しい記録」こそが、政策決定者たちが責任を果たしていたかどうか、あるいは組織や体制を正しく運営できていたかどうか、運営に応じた成果であったかどうかが検証可能となるという問題意識からの発言であったはずだ。
当然、安倍政権もこの問題意識を忠実に継がなければ、三原じゅん子の発言は口先だけの追及、口先だけの問題意識だったということになる。
2012年1月31日の衆議院予算委員会。町村信孝自民党議員が民主党がマニフェストに掲げた7万円の最低保障年金の資料を出さないのは隠蔽体質だと批判したあと、議事録未作成に引っ掛けている。
町村信孝「隠蔽体質のもう一つの例が、原子力発電事故の関連の会議の、まさに消えた議事録の問題です。これまた隠蔽体質そのものでしょう。きょうの新聞を見ると、福島県の双葉町長が、これは政府の背任行為とまで言っている。被災をされた方々はそういう思いだと思いますよ、真剣な会議をやっていると思いきや、どんな議論をしていたかわからないんですから」――
町村信孝「要するに、これについては誰も責任をとらない、無責任体質そのもの、これが今の野田内閣、民主党内閣の性格、隠蔽体質そのものだということを国民の皆さんは多分十二分に御理解されたであろうと思います」――
議事録を作成しないことは「隠蔽」そのものだと断じている。その隠蔽とは政策決定及び意思決定のプロセスの隠蔽であり、責任の所在の隠蔽であるはずだ。そして結果的に隠蔽によって不可能となる検証までをも含めた隠蔽ということを意味することになる。
そして安倍政権となり、今年に入って2013年5月20日の参議院決算委員会。
金子原二郎委員長(自民党所属)「政府の重要な意思決定に係る会議については、決定過程の透明化を図るとともに、事後の検証作業に資するため、その議事録等の作成、保存、公開等が不可欠であるにもかかわらず、東日本大震災への対応に当たった緊急災害対策本部、原子力災害対策本部等の十五組織中、十組織において議事録が作成されなかったこと、このうち三組織では議事概要等も作成されず議事内容の記録が残されなかったこと、また、北陸電力株式会社志賀原子力発電所等の設置許可に際し、原子力安全委員会が開いた審査会等の議事録が現存しておらず、審査過程を検証できない状態となっていることは、看過できない。
政府は、重要な意思決定に係る会議について議事録等の作成、保存及び公開に係る明確な基準を早期に策定及び公表するとともに、議事録等が未作成の会議等については早急に記録を整備すべきである」――
政権交代後も民主党政権の議事録未作成を例に挙げて、それを教訓とした議事録作成の重要性を訴えている。
かくまでも民主党政権下の議事録未作成と、そのことによる政策決定及び意思決定のプロセスの検証不可能、責任の所在の検証不可能を強く批判してきた。
自らが組織運営の主体者となったとき、そうでなかったときの組織運営に対する批判は実行の形に持っていかなければ、無責任な批判と化す。
だが、国家の存立に関わる国家安全保障会議の議事録作成は検討するとした付帯決議の可決だけでは実行の形とまでいかず、言行不一致に当たる。
政策の中身とその実効性以上に後の検証を可能とする議事録作成は重要であるはずだが、右翼の軍国主義者安倍晋三はそこまで頭が回らないようだ。
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