――国家や国土、国民に対する危機管理意識を欠いた人物を我々は指導者としている―― 石破茂自民幹事長「解散は総理の専権事項だから、私たちは何時何分何秒に解散しろとか、そんなことを言っているのではない。総理は近いうちに信を問うと言ったことはどれだけ重いかということです。そこはね。
最初の国土保全危機管理無能力の例。
日米両政府は当初無人島を使った離島奪還実動演習をプログラムとした日米共同統合演習を予定していたが、沖縄県周辺海域を離島に見立てた離島奪還模擬訓練に変更し、11月5日から実施している。
実動演習から模擬訓練に格下げしたこの変更は岡田副総理の判断による当初予定の撤回だと、次の記事が伝えている。
《岡田氏、中国に配慮「決定は駄目だ」 離島奪還訓練断念の舞台裏 首相も追認、米は強い不快感》(MSN産経/2012.11.3 09:00)
但し、外務・防衛両省の説明を聞いた岡田副総理は一旦は了承し、岡田副総理から説明を聞いた首相も異を唱えなかっという。
〈防衛省は「ゴーサインが出た」と米国防総省に連絡した。〉
〈同じ頃、両省内には岡田氏の了承をいぶかる情報が駆け巡った。〉
政府高官「岡田氏は本音では奪還訓練をやらせたくないようだ。まだ安心はできない」
10月16日、中国外務省が10月16日、訓練計画を批判。
〈10月中旬になり、この高官の危惧は的中する。奪還訓練の正式決定に向け両省が再び説明に出向く〉――
岡田副総理「決定は駄目だ」
〈岡田氏が重視したのは「中国への刺激を避けることだった」という。〉
別の政府高官「最終的に岡田氏が決め、首相もそれを受け入れた」
10月25日、キャンベル米国務次官補来日。
キャンベル米国務次官補(外務省幹部に対して)「一度決めた訓練をひっくり返すのはおかしい。
政府最高首脳の決定であれば仕方ない」
《日米共同統合演習始まる 16日まで、離党奪還の模擬訓練など実施》(NHK NEWS WEB/2012年2012.11.5 22:17)
〈陸海空自衛隊約3万7千人と、米軍約1万人が参加する平成24年度の日米共同統合演習(実動演習)が5日、日本各地の基地と周辺空海域で始まった。16日までの期間中、沖縄周辺海域を島に見立てた離島奪還の模擬訓練などを実施。日米の共同対処能力を高め、尖閣諸島をめぐり圧力を強める中国を牽制(けんせい)する。
離島奪還訓練は当初、那覇市の西北約60キロにある無人島・入砂島で実施する予定だったが、中国や地元感情などに配慮した野田佳彦政権の意向で、模擬訓練にとどめることになった。〉――
米側の不快感を解消する使節として長島昭久防衛副大臣が米に派遣されることになった。《長島防衛副大臣が訪米へ=離島訓練中止を説明》(時事ドットコム/2012/11/08-10:57)
11月9~11日の日程で米国を訪問、カーター国防副長官と会談予定。
11月〈5日に始まった自衛隊と米軍による日米共同統合演習で、沖縄県の無人島を使った離島奪還訓練が日本政府の判断で中止されたことに、米側が不満を示しているとの指摘が出ている。会談では長島氏から経緯を説明する見通しだ。
奪還訓練には地元自治体が反対したことに加え、首相官邸内で「中国を刺激すべきではない」との慎重論が強まったため、政府は中止を決めた。〉――
11月6日のASEM=アジア・ヨーロッパ首脳会議での発言。
楊中国外相「中国の立場は一貫している。日本の主張は戦後の秩序を否定するものだ
600年前の明の時代から中国が支配している」(NHK NEWS WEB)
野田首相も岡田副総理も、尖閣諸島は中国固有の領土だと主張して譲らない中国が尖閣諸島を侵略・占領しないという絶対的保証を国民に対して約束できるのだろうか。結果として起こらなかったとしても、最悪の事態を想定して備えておくのが、この場合で言うと、国土保全の危機管理であろう。
また備えておくことが相手に対する抑止力として働くはずだ。
備えなかった場合、緊急的・機動的な行動はなかなか望むことはできない。定期的に備えることによって、緊急的・機動的な行動が身についていき、より的確な国土保全の危機管理へと高めていくことができるはずだ。
国の原子力安全委員会が原子力発電所の全電源喪失を想定外として備えていなかったことが福島原発事故拡大の大きな原因となった。あるいは平安時代前期869年の貞観(じょうがん)津波の痕跡から東電に対して大津波の危険性を指摘、防波堤をより高くする警告を受けていながら、東電は「十分な情報がない」と無視、津波に襲われて原子炉が浸水することになり、全電源喪失に至った。
つい1年8カ月前の「想定外」と片付けたこの危機管理の失態を学習し、国土保全に準用すべきを、中国による尖閣侵略を同じく想定外として(想定外としたから、中国に配慮することとなった)野田内閣は結果として学習しなかった。
危機管理が最悪の事態を想定することから入る学習・反復であるとするなら、決して正解とは言えまい。
訓練とは実際に備えることを言う。実際に備えるにはより実地に近い形の訓練を必要とするはずだ。実動演習と模擬訓練とでは緊急性や機動性に少なくない差が出るはずだ。泳ぎの訓練を畳の上で行うよりはマシな程度の、沖縄周辺海域を島に見立てた離島奪還の模擬訓練としか言い様がない。
もう一つの例。
11月12日の衆院予算委員会、石破自民党幹事長が解散とマニフェストについて野田首相を追及した。
ですから、今時、近いうちに解散というのは流行語大賞にノミネートされています。今、世の中で、近いうちにって言うと、失笑が洩れるのはね、『近いうちにここでやる、ゴメン、ゴメン』と言うと信じて貰えないから、近いうちにっていう言葉は言い替えることになっていますから、世の中で近いうちと言うのは禁句になりつつある。
ウソつきと一緒になりつつある。総理の言葉はそれだけ重いものだということです。
私達はなぜこの法案に協力したのか。それは我々がこれをやらなければならないということで参院選挙で国民の投票を仰ぎ、そして一定の支持を得ている。そうであらばこそ、賛成をしたのであって、そうでなければ、そこで賛成しないで、総理が議員辞職しょうが何しようが勝手ですが、新しい政権をつくって、我々の元でやったはずです。
しかももう、(既に)一回、国民の信を仰ぐという形でやったので(「近いうちに国民の信を問う」と発言したこと。)、そのことの重み、責任、それは感じて頂かなければ困ります。相手は国民なんです。我々自民党、公明党だけではない。国民に対して今の言葉、総理、(「近いうちに」について)ずうっとおっしゃいましたね、色んなこと、それが国民に通ると思いますか」
野田首相「あの、自分の言ったことは重たい、このように強く自覚をしております。強く責任を感じております。ただ、申し上げさせて頂くならば、本来はもっと財政や経済が良かったときに決断すべきだったんですよ。
小泉さんや安倍さんの時だったんじゃないでしょうか。これ以上先送りできないという責任のもとで、私どもは痛い思いをしながら、判断をしました。
だけど、合わせて『近いうちに信を問う』と言ったことは間違いありません。重く受け止めております」
石破茂自民幹事長「総理、最期までそういう言い方をなさるのはやめた方がいいですよ。それはそういうことを百も万も分かった上で、政権をお取りになったはずです。あの時の状況がどのようなものであるか、政権を取ってから分かったなんて言わせませんよ。
我々は、私は福田内閣にもいた。麻生内閣にもいた。経済の状況は詳(つまび)らかに明らかにしたはずであって、政権の中に入ったから分かったなんぞと言うのは、当選1回や2回ならいざ知らず、ベテランの総理がそこまでご存じないはずはない。
私は総理がどれだけ政策に真摯にやってきたかは、ある尊敬の念を持ってやってきたつもりです。今の日本の財政状況も、リーマンショック後の状況も、全て分かった上で政権を担われたはずです。
だとするならば、経済状況が良かったときにやるべきだったみたいなことを言うのはやめてください。どうですか」
野田首相「勿論、日本の財政が厳しい状況にあることは私も、野党のときに次の内閣の財務大臣をやっておりましたので、承知をしておりました。
従って、そのための財政改革プランも試案としてつくったこともあります。但し、それ以上に想像を超える事態になったのは、リーマンショック後の税収の落ち込み、それは政権交代以降期に起こりました。
9兆円の落ち込み。これは想像をしておりませんでした。間違いなく、それは我々野党時代の税収を聞いても、そういう正確なお答えを政権から頂いておりません。そこは想像しておりませんでした。
もう一つは、あの金融不安です。欧州の債務危機。これも想像はしておりません。想像をしていないことも任期の担当時には起こります。
そういうことも相まって、財政に対する危機感をもっておりましたけども、より危機感が高まった。だから、政権をお預かりしている中で感じたこと、そういう表現をさせて頂いております」
石破茂自民幹事長「それはムダを省けば、財政的にいくらでも出てくるんですといったことをそれぞれの方がみんなおっしゃったのですから、国民の審判を受けたら良かろうと、言うことです。
総理は今おっしゃったようなことを、どうぞ街頭でおっしゃってください。判断をするのは国民であります。どう見てもそこには論理の飛躍がある。論理のマヤカシがある。私はそのようにしか思われないのであります」
なお解散時期についての追及が続く。
「リーマンショック後の税収の落ち込み」と、「欧州の債務危機」は想像していなかったと答弁している。
だが、1929年10月24日にニューヨーク証券取引所の株価大暴落を発端とした世界的な金融恐慌、「暗黒の木曜日」を人類は経験し、日本にも波及して、「昭和恐慌」として経験することになった。
果たして事後の危機管理をときの政府は「想像をしておりませんでした」で済ますことができるだろうか。
1987年10月19日に起こったニューヨーク証券取引場ニューヨークダウの大暴落は1929年10月29日の暗黒の木曜日を上回る暴落だそうで、「リーマンショック」ならぬ、「ブラックマンデーショック」と言われている。
日本にしても1986年(昭和61年)12月から1991年(平成3年)2月までの51か月間バブル景気の時代を迎え、それが弾けて以後、「失われた10年」とか、「失われた20年」とか言われる経済低迷期に入った。
バブル時代、誰もが日本の経済は右肩上がりに成長し続けると信じていたから、バブル景気が弾けるとは想像すらしていなかったはずだ。
だが、のちの政府が財政運営にあたって、「バブル崩壊は想像をしておりませんでした」と言うことができるだろうか。
崩壊を避け得ぬ事実と受け止めて、取り得る最善の方法を尽くすのが国家を守る危機管理であるはずである。
大日本大震災にしても、福島第1原発事故にしても、誰もが想像していなかった大災害であったろう。
為政者は例え想像していない最悪の事態に襲われようとも、歴史上のあらゆる最悪事態を教材として学習し、少なくとも何らかの方法で凌いで国家と国民を守る心構えはしていなければならない臨機応変の危機管理責任を負っているはずだ。
だが、野田首相は「想像をしておりませんでした」と言って、自らの危機管理責任を避けようとしている。
この無責任さは何と表現していいのだろうか。
本題には関係ないが、野田首相が消費税増税は「本来はもっと財政や経済が良かったときに決断すべきだった」と言っている。
民主党が衆院選投開票日に大勝利して政権交代を確実にした2009年8月30日を半月遡る2009年8月15日の街頭演説で、野田首相は例の有名な「シロアリ演説」を行い、消費税増税に反対している。
また、民主党は消費税を4年間上げない政策をマニフェストに掲げて選挙を戦い、政権交代の大きな恩恵を受けたはずであある。
にも関わらず、今になって、「本来はもっと財政や経済が良かったときに決断すべきだったんですよ」と、さも自民党の責任であるかのように言う。
薄汚い言い逃れの開き直り以外の何ものでもない。
国家や国土、国民に対する危機管理意識を欠いた人物を我々は指導者としている。