民主党新人横粂議員の執行部刷新要求の正論に見る反党行為的逆説性

2010-05-13 06:31:04 | Weblog

   

 清新・爽快な印象は与えるが、どことなく逞しさに欠け、ひ弱な感じがある東大卒横粂民主党1年生議員28歳が執行部刷新を求める動きに出た。《横粂氏、党執行部に鳩山、小沢氏の辞任を要求へ》スポーツ報知/2010年5月8日06時02分)

 5日付のブログ――

 「民主党に対するご期待、政権交代に託された想いにお応えできないような現状であれば、私は声を上げる覚悟です」

 翌6日の地元・横須賀での街頭演説――

 「幹事長は国民のため、国家のために幹事長の職を辞しても、違った形で政治手腕を発揮できると思っている」

 翌7日、スポーツ報知の取材――

 記事が〈新人による異例の造反の反響は大きかった。〉と解説したことの本人の説明。

 「携帯は鳴りっぱなしの状態。『そんなことを言って大丈夫か』とか『頑張れ』という声です。青すぎるかもしれないですが、声を上げなくては行動はできない。切り込んでいかなくてはいけない問題です」――

 「声を上げなくては」、「切り込んでいかなくては」と勇ましい言葉を連ねている。

 「民主党の中からなかなか声が上げられない。自分が最初でも声を上げないといけないと思いました」

 〈昨夏の衆院選では神奈川11区で小泉進次郎氏との一騎打ちで惜敗し、比例で復活当選。そこで感じたのは、敗れたにもかかわらず民主党への期待感だった。〉と本人の気持を代弁してから、

 「それが今は失望に変わってしまっている。仮に小沢幹事長の目指す改革が数年後に国民に分かったとしても遅すぎる」

 「発言して終わりでは意味がない。トップ2人に届いていない声を、党内で議論していきたい」

 政治家生命を賭ける覚悟で、週明けの本会議前の民主党議員らが集まり打ち合わせする代議士会の場で議員に訴えかける予定を立てていたというから、東大卒の頭で相当に考えた末の覚悟の行動だったに違いない。

 マスコミのインタビューの中で小沢幹事長の辞任を求めた生方民主党議員がテレビに出て、「1年生議員なら、おとなしくしていろって言うんですか?私は勇気ある行動だと思います」とどれ程役に立ったのか、心強いエールを送っていた。

 同じ「スポーツ報知」が9日付の記事――《“横粂バッシング”が過熱…小沢氏辞任要求に「新人議員が何を言う」》(2010年5月9日06時02分)で1年生議員の政治家生命を懸けた反旗の次なる場面を、題名どおりの内容で以て伝えている。

 6日に行った地元・横須賀での街頭演説の翌日からの2日間で事務所へ届いた500件以上の電話やメールのうち、80%以上が「執行部ありきの民主党だ。新人議員が何を言うんだ」「おまえが議員を辞めろ」と厳しい声だったとしている。

 しかし8日も街頭演説に立った。そのことについて――

 「小沢幹事長を怖いと思ったことは一度もない。ほかの人がやらないなら自分がやる、という使命感が強い」

 賛同議員はまだ2人だが、「同調してくれる議員を1人でも多く集めたい」――

 ひ弱な印象とは裏腹に批判には頑として耳を貸さない、なかなかの意志強固な様子で、頼もしささえ与える。賛同議員の1人は生方議員なのだろうか。

 ところが、一昨日の5月11日開催の大波乱が予想された民主党代議士会では期待した大波乱はなく、音無しの構えを貫いたそうだ。政治家生命を賭けるということはこういうことなのだろう。鳩山首相にしても、4月21日の鳩山・谷垣党首討論で、谷垣に普天間問題を追及されると、「すべての政策の実現に向けて、職を賭して頑張ることはいうまでもありません」と断言したとおりに、今以て「国外、最低でも県外」に職を賭して頑張っている。「5月末決着」を些かも変えない強固な意志を貫いている。

 横粂議員のこの間の事情を《党内圧力?意気地なし? 民主「横粂の乱」一転終息》J-castニュース/2010/5/12 19:47)が穿った見方で伝えている。

 2010年5月6日に地元、神奈川県横須賀市などで行った街頭演説――

 「民主党執行部の刷新を。総理、幹事長、現状の執行部の刷新を求めていきたいと思っています」

 「民主党を想う」と題した自らのブログで――

 「民主党に対するご期待、政権交代に託された想いにお応えできないような現状であれば、私は声をあげる覚悟です」

 そして事務所に賛否両論の声。代議士会での沈黙。

 「代議士会で真っ先に発言することが国民の声を届ける最もベストな方法だと。そのお約束と違えてしまったことは真摯に反省するところ。要求を伝えるため、しかるべき方法をとる」

 「(鳩山首相と小沢幹事長の)お二人に対して厳しい批判があり、そこを抜きにして党の再生はできない」――

 「要求を伝えるため、しかるべき方法をとる」も、「お二人に対して厳しい批判があり、そこを抜きにして党の再生はできない」にしても、代議士会で音無しの構えを貫いた言行不一致のバツの悪さ、失点、あるいは第三者から見た失望をカバーし、自らのプライドを維持する一種の強がりでなくてはならない。こういったことから政治家の姿を学んでいく。

 記事は〈周囲が発言を翻意するよう説得したとも伝えられ〉ているとしつつ、当然誰もが予想する圧力があったかどうかに焦点を当てる。そのことを先ずブログから探っている。

 代議士会前日10日のブログから、執行部刷新要求に積極意志を表明している箇所を最初に取り上げている。

 「私の言動に対して賛否両論あるのは覚悟の上、民主党執行部に対する恩義を忘れたのかというお叱りも覚悟の上、それでも民主党に期待して頂いた国民の皆様に対する恩義の方をより大切にしたい、そう愚直に想うのです」 

 次に積極意志の揺らぎも嗅ぎ取っている。

 「私の想いに何ら恥じるものはなくとも、言動のあり方に未熟さがあった事実は素直に反省しなければなりません。国民の皆様から頂いている想いを如何に届けるのか、しかし同時に政治家として社会人として不誠実なところはないのか、皆様からいただいたご意見に基づき考慮中です」

 記事はこの箇所を〈すでにトーンダウンとも受けとれる発言もしていた。〉と解説しているが、何らかの働きかけ――注意、説得といったものがあったことが窺える。

代議士会の終了後の記者からの質問。

 ――代議士会で発言しないよう、圧力があったのか。

 「諸先輩方からさまざまなアドバイスはありましたが圧力というものはまったくなく、私の考え、意思、そのお伝えの仕方として、党人として社会人としてもっとあるべき姿があるはずだと考えます」

 圧力の否定以下は記事がトーンダウンだとしているブログの発言と同じ趣旨の内容となっている。方法論が間違っていたと。どう間違っていたのだろうか。少なくとも方法論の間違いを指摘する他からの声があり、それに従ったということになる。

 記事は最後に、〈地元の横須賀では「いろいろとしがらみがあるのでしょう」と同情的な声もあれば、「だらしない!」「やっぱり、ダメか。残念だねぇ」と憤りやあきらめの声が入り混じっている。〉と横粂議員の一連の言動に対する有権者の反応を伝えている。

 民主党岐阜県連が4月12日に党や内閣の支持率下落を踏まえて夏の参院選に大きな影響が避けられないからと「新体制」構築を党本部に申し入れたことに関して、《民主岐阜県連の党体制刷新申入れは成算あっての要求なのか》のブログ記事を書いた。

 この「新体制」構築要求は岐阜県連代表の平田健二参院国対委員長によると、「内閣や党の支持率低下で党員が危機感を持っている。参院選に必勝できる体制をつくろうという趣旨」から出た行動だというが、参院選を控えた当事者からしたら、支持率の動向は死活問題であり、その当落情勢が最重要課題だろうから、「支持率低下」の原因を作っている鳩山首相と小沢幹事長のうち、最低でも小沢辞任を引き出して支持率を上げたい気持は理解できないこともない。だが、小沢辞任が成算あっての要求でなければ、逆に党内抗争、党内混乱、あるいは内紛、ゴタゴタをマスコミを通して国民の目に露出させることとなって、却って支持率を下げることに手を貸し、参院選を今以上に不利な状況に曝すことになるといったことを書いた。

 さらに不利なことに現在、東京地検特捜部が一旦は不起訴とした政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑に対して検察審査会が「起訴相当」としたことから再捜査することになり、小沢幹事長に対して任意の事情聴取を再び求める方針だと言うことだが、例え地検が起訴に踏み切ったとしても、一旦は不起訴としたことから、有罪に持ち込むことができない可能性は残される。有罪とならなければ、小沢幹事長は自らの政治生命がかかっている手前、自分から辞任する確率はかなり小さいと見なければならない。最後の最後まで自らの政治生命を賭けるに違いない。

 有罪となった場合は辞任、最悪の場合議員辞職の条件となるが、例え一審で有罪となったとしても、自分は正しい、間違っていないという姿勢を伝えるために控訴する可能性が高く、控訴した場合、裁判の決着がつく前に参院選を迎えなければならない。あるいは一審の途中で参院選に突入ということもあるかもしれない。

 どちらであっても、素直に幹事長辞任には応じないだろう。

 小沢辞任のもう一つの条件は自身が指揮を取ったがゆえに一番に責任を取らなければならない参院選の民主党敗北であるのは誰の目にも明らかである。だが、このケースでは参議院選挙を踏み絵としなければ実現できない小沢辞任となって、一周遅れのランナーのゴール同然となる。

 どう転んだとしても、小沢幹事長が幹事長の職に就いたままの参院選を戦うことになる。共々転ばない唯一の条件は参院選の勝利しかないが、現時点の内閣支持率と民主党支持率の低下状況、それと連動している小沢幹事長が置かれている「政治とカネの問題」からどう判断しても、過半数獲得の勝利は覚束ない。覚束ないところへきて、執行部を批判してその刷新を求めることは舛添が前例を示しているように、求める本人の人気・支持率は上がるが、逆に批判を受ける側の執行部をなお一層の悪者とすることとなって、内閣自体、党自体の人気、支持率を下げる代償を支払わなければならず、このことに連動して参院選をなお一層不利な状況に追いやることになる。

 尤も参院選が不利な状況に立たされたとしても、参院当事者にとっては死活問題ではあっても、どことなく逞しさに欠け、ひ弱な感じがある東大卒横粂民主党1年生議員28歳にとっては籍は衆議院議員だから、自身は現在のところ選挙とは無関係の安全地帯にいる。

 自身は安全地帯にいて、鳩山首相と小沢幹事長に対する成算のない辞任という執行部刷新を求めて、それが成算がないゆえに党内抗争や党内混乱の印象を逆に露出させることとなって支持率低下に手を貸し、結果として選挙当事者の参院選に不利となる状況を一層強めるという悪循環を招く。

 勿論、鳩山退陣となって民意を問う関係から、衆参同日選挙の可能性も否定できないが、参議院選挙の勝利が予想できなければ、いわば敗北が濃厚な状況に立たされたなら、衆議院の300余の議席を虎の子の蓄えとして維持を図る方向に動くに違いないだろうから、鳩山退陣となっても民意を問うといった選択は言を左右にして避ける可能性は高い。

 とすると、唯一残された道はヤケ糞でもいいから、共倒れを覚悟で一致団結して参院選に突入することではないだろうか。

 要するに横粂議員の執行部刷新要求は例え正論であっても、それが成算のない要求である間は自身に利得とはなっても、内閣にとっても党にとっても、特に参院選当事者にとっても、利得とはならない、却って反党行為になるという逆説を招く要求だということではないだろうか。


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1 コメント

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果たしたといえる (朱鷺)
2010-06-02 20:11:41
結果的に彼の気持ちが伝わったのか実現しましたね。大物じゃない。
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