安倍晋三の良き伴侶、安倍昭恵が自身のFacebookで、「女は誰と結婚するかで人生が大きく変わる」と書き込んだことを新聞報道で知って、彼女 のFacebookを覗いてみた。
「安倍昭恵 5月9日
私はたまたま縁あって安倍晋三という男と結婚した。
結婚した当初は、政治家になるだろうとは思っていたものの、総理大臣になるなど思ってもいなかった。
女は誰と結婚するかで人生が大きく変わる。
私は自分の努力ではなく、夫の立場によって今の自分の立場があることを胸に刻み、今私ができる限りのことをしたいと思う・・・」――
第一番に奇異に感じたのは、「女は誰と結婚するかで人生が大きく変わる」と、「女性」という言葉を当てずに、「女」という言葉を使っていることである。
最近では何か事件が起きたとき、事件関係者の立場にある場合は「女性」という名称で扱われるが、容疑者や犯人へと立場を変えると、「女」という名称に変化するが、そういった扱いの違いを言っているのではない。
「女」と言う場合、社会性を剥いだ剥き出しの生きものの印象を与える。そういった生きものとして扱うとき、「女」と言う言葉を用いるのではないだろうか。
「女性」という言い方は、逆に社会性を持たせた表現となるはずである。社会的生きものとしての観点から把えた名称であろう。
例えば「女性の社会参加」とは言うが、「女の社会参加」とは言わない。「社会参加」とは「社会人として社会の一翼を担う」社会性に関わる行動なのだから、社会性を持たせた言葉である「女性」の 表現を用いることによって前後の脈略に矛盾のない一貫性を与えることができる。
いわば「女の社会参加」は社会性を持たない存在による社会参加という不可能を言うことになって、前後矛盾する脈略となることになる。
もう一つ例を言うと、よく小説などで使われる表現だが、「女は男に対して大きく身体(からだ)を開いた」と書くことはあっても、「女性は男性に大きく身体を開いた」と書いた表現にお目にかかったことがあるだろうか。
ベッドの中ではお互いに社会性を剥いだ剥き出しの存在――動物的になるということであろう。ベッドの中でも男が自身の社会性を纏ったままの男性であったなら、つまらない男と軽蔑されるだろうし、逆に女にしても、自身の社会性から逃れることができずに女性として相手を務めたとしたら、行儀優先となって、面白くもない女ということになるだろう。
安倍昭恵は「女は誰と結婚するかで人生が大きく変わる」と、自身及び自身の同性者を社会性を持たせない存在として表現しただけではなく、社会性を持たせていない存在を「結婚」という極めて社会性に関わる行為――社会的行為の主語とする矛盾した言葉の使い方をしたことになる。
このような矛盾は一般女性なら許されもするだろうが、首相夫人という極めて社会的地位の高い女性が曝したのである。
この言葉の使い方の矛盾は 彼女自身の判断能力が深く関わっているはずだ。もし社会性を意識して言葉を判断していたなら、「女性」という言葉になっただろう。
余分なことを言うと、ベッドの中ではお互いがお互いを悦ばせるためには お互いに如何に社会性を殴り捨てるかにかかっていることになる。
もう一つ、奇異に感じたというより、違和感を感じたことがある。
「人生が大きく変わる」 の「人生」とは、思想的な、あるいは哲学的な生き方ではなく、社会的境遇を指しているはずで、社会的境遇を意味していると前提として論を進めることにする。
「女は誰と結婚するかで人生が大きく変わる」と言っていることは、例えそれがある程度大勢のことであっても、その大勢は例外的なケースだと把えて言っているのではなく、自身を含めた自身の同性者に一般な出来事として把えた一般論として言っている言葉であるはずだ。
いわば「女は誰と結婚するかで人生が大きく変わる」ということを女性の一般的な境遇として把えた言葉ということになる。
果たして「女は誰と結婚するかで人生が大きく変わる」ということは女性の一般的な境遇なのだろうか。
いくつかの例を挙げる。
結婚前からバリバリのキャリアウーマンとして社会に活躍し、社会的自律を十分に果たしている女性が結婚後も家庭に入らずにキャリアウーマンとしての地位を守っていた場合、家庭内での自己よりも社会的存在としての自己を優先させた結果だから、あるいは結婚は結婚、社会的存在としての自己は自己と区別した結果だから、「女は誰と結婚するかで人生が大きく変わる」という境遇の大きな変化は起こらない。
少なくとも社会的な境遇の変化は殆ど変わらないはずだ。
もう一つ逆の場合、例えば結婚後、夫が海外で仕事をすることになり、夫についていくために女性が長年かかって築いた日本でのキャリアを捨てたといったケースは結婚した相手に応じて人生が大きく変わるという例に当てはまるものの、特殊な例であって、多くの女性に当てはまる一般的な人生の大転換――境遇の大きな変化というわけではない。
つまり安倍昭恵の場合は政治家と結婚して家庭に入り、主婦となったことからの、自身を例に挙げた「女は誰と結婚するかで人生が大きく変わる」ということであって、政治家の妻に当てはまっても、女性に一般的な境遇として当てはめることができる一般論ではないと言うことである。
一般論ではないことを一般論として言う合理的判断能力のないところを曝した。
政治家の妻であっても、安倍昭恵の文言に当てはまらない場合もある。
例えば結婚前から国会議員になっていた女性が同じ国会議員の男性と結婚したものの、家庭に入らずに国会議員を続けた場合、結婚した相手に応じて人生が大きく変わるという境遇の変化は先ず起こらないだろう。
もしその女性国会議員が首相になった場合、外国訪問に夫の国会議員がついていくことになったら、結婚した相手によって人生が大きく変わるという境遇の大きな変化は男性側に起こることになる。
ただの平社員だった男が運よく社長令嬢を射止めて、俗に言う逆玉に乗って社長の跡を継ぐことになり、結婚した相手によって人生が大きく変わるという境遇の大きな変化を受けることになったとしても、あくまでも特殊な例であっ て、一般的に起こり得る事例ではない。
要するにケースバイケースでありながら、そのことを無視で きたのは安倍昭恵が政治家の妻となって家庭に入り、ついにはファーストレディの境遇となった、そのような境遇に限定される特殊な例でありながら、既に触れたように合理的判断能力を欠いて一般論として言う過ちを犯したからに他ならない。
安倍昭恵がなぜ「女は誰と結婚するかで人生が大きく変わる」と言うことができたのか、その経歴から探ってみようとして、「Wikipedia」 で調べてみた。
1962年6月10日生まれ。 1987年6月に安倍晋三と25歳で結婚。
最終学歴は立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科修士課程修了。修了後、電通に入社。
一般的には修士課程修了は24歳で、25歳結婚ということは 1年そこそこしか勤めていないことになり、電通社員としてそれ相応のキャリアを築いていたわけではなく、社会的自律をそれ相応に獲得していたというわ けでもない。
つまり結婚によって捨てるべき自身のキャリアもなかったし、捨てるべき社会的自律性もなく、一般的な社会的経験に未熟なまま家庭に入り、主婦となった。
勿論、ただの主婦ではない。地元に戻れない安倍晋三のために政治家の妻として地元を預かり、選挙のときは演説することもあったというが、そういったことによって学ぶ社会的経験や社会的自律性は政治の世界という特殊な環境に限られたもの、あるいは政治の世界から見た特殊な経験に限定され、当然、社会的自律性もそういった特殊な環境に制約を受けることになって、そのような事情が自身か、自身に似た境遇に置かれた女性限定の一般的ではない経験を一般論として言う過ちを犯してしまったのではないだろうか。
安倍昭恵の合理的判断能力の欠如は安倍晋三も同じ欠如の持ち主だから、その点、似た者夫婦の良き伴侶同士だと言うことができる。
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