安保理改革のあるべき姿は

2006-07-14 05:50:51 | Weblog

 常任理事国の資格を民主主義国家とすべき

 今回の北朝鮮の7発のミサイル発射に対する国連安保理を舞台とした各国の対応策は制裁か、制裁には反対、単なる議長声明で済ませるか、それよりも言葉を強めた非難決議で双方の妥協を図るべきか、そのような駆引き・思惑が交錯する中、一方で6カ国協議への復帰・新たなミサイル発射の凍結約束を条件とした中国の北朝鮮説得の行方を見守るといった経緯で推移していたが、説得困難な事態を受けてか、中国・ロシアが制裁阻止を狙った独自決議案を非公式に提示したという状況へと進んでいるのは見ての通りとなっている。

 各国共国益(=自国利害)で動く。国益こそ正義の体裁を成している。人間が利害の生きものである個人性の延長線上にある国家を基準とした利害が国益である。一方の国に於いてそれが不正義そのものの行為に当たる場合であっても、当事国に於いては正義以外の何ものでもないといった食い違いが当然のように生じる。

 中国・ロシアは北朝鮮と友好関係を結んでいる。日本の制裁決議案反対は北朝鮮の友好国である中国・ロシアとしては〝友好〟を維持する当然の国益(=自国正義)に相当する意思表示であろう。

 いわば国連の安全保障理事会が世界の平和と安全の維持を任務とすると高邁な理想を掲げながら、その高邁さとは裏腹に拒否権を持つ常任理事国である5大国のそれぞれの関係国・友好国の国益をも絡めた賛成・拒否・棄権によって意思表示させた国益(自国正義)の趨勢が具体的に目に見える形で現れることになる世界の平和と安全を構成する核心部分を形成しているのである。

 当然、世界の平和と安全の行方は最終的には大国の国益が制約することになる。イスラエルとパレスチナの紛争がその好例であろう。またイランの新体制アフマディネジャド大統領はアメリカを牽制する狙いで中ロが主体の上海協力機構との結びつきを強めようとしているのに対して、中ロがイランに持つ自国権益擁護の立場から、それを利用しようとしていることも、国益の制約によって成り立つ世界情勢を証明して余りある。

 独裁国家でも、国連安保理常任理事国に友好国を抱えていたなら、独裁体制が正義とする国益は有利な扱いを受け、そのことが独裁体制下の国民の正義と一致しない場合、当然のこととして国民の正義を犠牲とした不公平・不平等な国益が擁護され、世界に罷り通ることとなる。

 大国の国益(=自国正義)が往々にして利害関係を持たない小国やその国民の利益を無視する形で成り立たすことができるのは、こういった関係からだろう。国連の機能不全がよく言われるが、世界の平和と安全が民主主義の原則を正義として実現が図られるのではなく、それぞれの国益を正義とする国々を構成員として、その連合で成り立っている国連自体が抱える国益優先(=自国正義優先)の構造に左右される矛盾が国連の機能を限界づけていることから起きている不全性だろう。

正義は国連にあるのではなく、構成国それぞれの国益に基盤を置いている。

 中国・ロシアが北朝鮮のミサイル発射を擁護して制裁に拒否権を発動したとしても、誰も非難はできない。かつて国益のためにアメリカはイランのバーレビ国王独裁体制に、さらにイスラム革命後のイランホメイニ体制に対する敵対からイラクのフセイン独裁体制に軍事・経済支援を行っていたし、日本はスハルトインドネシア独裁体制の最大の経済支援国だった前科を抱えている。そして現在でも日本はミャンマーの独裁体制には目をつぶり、最大の援助国の地位を維持し、アメリカは対ロシア・イラン牽制と石油・天然ガス確保の立場から、その世襲独裁体制を無視して、ロシアとイランに挟まれているアゼルバイジャンとの関係を深めている。

 国連が自らの機能を回復させるために安保理構成国を現行の15から24とか25に増やし、そのうちの数カ国を実質的な経済的国力を基準に常任理事国とすべきとしたとしても、あるいは安易な拒否権行使に制限を加える規定を設ける方向へ持っていったとしても、国益が世界の情勢を決定、あるいは制約を加える力学は変化しない。

 改革は否定しないが、常任理事国が新たに増えることで、現常任理事国が自らの権限を制限する恐れのある国の常任理事国入りには反対という既得権擁護の国益(自国正義)を背景とした改革姿勢からして、世界情勢と国益の関係を露骨に証明している。

 世界の国々が国益(=自国正義)から離れることが不可能なら、例え常任理事国が現行の5カ国で推移したとしても、その資格を基本的人権の保障を憲法で規定した民主主義国家とすることを改革のあるべき姿とすることではないだろうか。民主主義国家でない国はその資格なしとする。あるいは民主主義国家でなくなった国はその資格を失うとする。

 そうすることによって、例え国益で行動したとしても、民主主義の趣旨に反する行動に意識的にでも制約を与えることが可能だろうからである。

 常任理事国を民主主義国とするとした場合、中国がその資格を失って、常任理事国からの除外標的となるが、5年~10年の民主化の猶予期間を与えて、民主化を促す方法も考えられる。相手国の政治体制を不問とし、結果としてその政治体制の擁護につながる中国のアフリカ・中東向けの資源外交に関しても、ある種の制約を加えることになるのではないだろうか。

 常任理事国が民主主義国家であることを規定する以上、その国際的行動に於いても、民主主義国家にふさわしい自由と民主主義に則った行動を求められるだろうからである。

この点については、アメリカにしてもロシアにしても当てはめられるべき行動基準となる。勿論、常任理事国入りを目指す日本に於いても。


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