1月22日の安倍晋三の施政方針に対する1月26日の民主・維新・無所属クラブ岡田克也の代表質問でのアベノミクスの成果についての問いに対して代表質問への答弁という、真剣勝負でなければならない大事な場で安倍晋三は事もあろうか内閣府の統計を自分に都合よく解釈、騙し絵の手口で塗り固めたバラ色の成果としていた。
岡田克也「アベノミクス3年の成果として、安倍総理は、雇用が増え、給料が上がったなどと誇らしげに語っています。確かに、数字の中には評価できるものもあるでしょう。しかし、大多数の国民の実感は異なります。多くの調査結果で裏付けられているように、生活は厳しくなっているというのが現実です。安倍総理、謙虚に国民の声に耳を傾けるべきです。答弁を求めます」(民主党HP)
安倍晋三「アベノミクスの評価についてお尋ねがありました。
アベノミクス3本の矢の政策により、もはやデフレではないという状況をつくり出す中で就業者が110万人以上増加し、賃上げ率は2年連続で大きな伸びとなり、パートで働く方々の時給は22年間で最高の水準となるなど、雇用・所得環境は着実に改善しております。
確かに例えば厚生労働省が実施した『平成26年国民生活基礎調査』に於いて生活意識の状況が苦しいと感じる世帯の割合が上昇傾向となっていることは承知しています。
他方昨年8月に公表された内閣府の「国民生活に関する世論調査」に基づけば、安倍政権発足後の生活意識と民主党政権時代の意識と比較して現在の生活について『満足』と回答した割合は70.5%へと民主党政権時代よりも5ポイント上がり、『不安』と回答した割合が28.5%へと民主党政権時代よりも下がっております。(拍手が起きる)
いずれにせよ、景気回復を実感して頂けるよう、キメ細かく、目配りをしながら、経済の好循環をしっかりと回して参ります」――
騙し絵は視覚的な錯覚を利用して目に見える人物や風景の中に別の存在を隠していたり、現実には存在しない物を存在するかのように見せる一種のトリックだが、安倍晋三のアベノミクス成果の誇示には騙し絵のような錯覚の利用によって貫かれている。
岡田克也は多くの調査が大多数の国民の生活実感は厳しくなっていると出ているとアベノミクスの成果に疑問を呈した。
対して安倍晋三はで就業者が110万人以上増加したとか、賃上げ率が2年連続で大きな伸びたとか、パートの時給が22年間で最高の水準になったとか、これらの統計をアベノミクス成果の根拠としているが、いくら統計であったとしても、成果と見えるのは錯覚に過ぎない。
なぜなら、安倍晋三が掲げるこれらの統計を以てしても大多数の国民の生活実感は厳しくなっていると感じていることに変わりはないからだ。
もし厚生労働省調査で国民の多くが生活実感が良くなっていると回答したなら、安倍晋三のアベノミクス効果は錯覚でも何でもなくなって、正真正銘の事実とすることができる。
統計がそうなっていない以上、安倍晋三は騙し絵のような錯覚を用いて、成果でもない統計をさも成果を示す統計であるかのように誇示したに過ぎないことになる。
このことは個人消費が依然として低迷状態にあることが証明している。
例えばパートの時給が「22年間で最高の水準」になったことをアベノミクス成果の大きな一つとしているが、元々の時給が他の賃金と比べて極端に低かった場合、「最高の水準」は数字の上だけのことで、パート従業者にとっては「最高の水準」という言葉は響いてこないはずだ。雀の涙程度といったところが正直な気持ということもあるだろう。
だが、安倍晋三の手にかかると、騙し絵のような錯覚を醸し出して、現実には存在しない成果が現実に存在するかのように見せることになる。
就業者110万人以上の雇用増にしても、全てが正社員なら、給与を安心して消費に振り向けることができるが、3人に1人が非正規であり、正規と非正規間、男女間共に300万円以上もある賃金格差は決して全体の消費を押し上げる要因とはならないのだから、これらを乱暴にも一緒くたにして110万人以上の雇用増とすること自体がそこに見なければならない実際の姿を隠す騙し絵そのものである。
賃上げ率2年連続大きな伸びにしても、ピーク時の1997年より平均年収で52万円以上少ない2年連続増に過ぎない。平均以下となると、殆増えていない、あるいは全然増えていない被雇用者も多く存在することになる。
だが、全てを一緒くたにして2年連続の伸びだと全ての被雇用者の給与が増えたことのようにアベノミクス成果を言うのは見せなければならない実態を見せないで成果を誇る騙し絵の類いに堕する。
当然、与党席からだろう、大きな拍手が起きたが、内閣府の「国民生活に関する世論調査」を持ち出して、民主党政権時代よりも安倍政権発足以後の国民の生活意識の満足度が増えている、不安感が減っているからといって、大多数の国民が現在実感している生活の厳しさを払拭するわけではないから、それを以てアベノミクスの成果とするのはお門違いというもので、騙し絵でそうだと見せている成果であることに変わりはない。
しかも内閣府の調査をよくよく見ると、正規男性の「満足」小計71.6ポイントの内「まあ満足している」が62ポイント、非正規男性の「満足」小計67.8ポイントの内「まあ満足している」が62.1ポイントで、ここにも正規と非正規の格差があるが、双方共に“程々の満足”に過ぎない。
この傾向は正規女子と非正規女子についてもほぼ同じ傾向となっている。
単に満足度の小計を正々堂々と真正面に掲げて、それが“程々の満足”によって殆ど占められていることを隠して、手品師のようにアベノミクスの成果と見せるのも騙し絵の手口そのものである。
厚労省の調査(画像にリンク)を見ても、生活が「大変苦しい」、「やや苦しい」が年々増えていて、逆に生活の良好な状態が年々減っている。
こうして見てくると、岡田克也の代表質問に対する安倍晋三の答弁は“程々の満足”を全て“正真正銘の満足”であるかのように統計を自分に都合のいい形に見せる騙し絵の手口で塗り固めてアベノミクスの成果を誇示した答弁に過ぎないと言うことができる。
騙し絵のトリックに長けたこのような政治家がどのような政策を掲げようとも、それが「1億総活躍社会」だとしても、同じく騙し絵で見せる、決して信用できない成果しか期待できないはずだ。