夕張の平和運動公園維持・管理費の疑問

2007-01-26 12:45:23 | Weblog

 こんな記事が1月22日(07年)の『朝日』朝刊に載っていた。

『夕張激励 スポーツの輪』

 「財政破綻したため、4月から財政再建となる北海道夕張市を元気づけようと、スポーツ界も動き出した」というもので、大相撲が巡業開催の計画を立て、プロ野球の日本ハムは夏に2軍戦を主催するという。

 「(前略)夕張市でのプロ野球は74年以来で市内の平和運動公園野球場で開催される予定だ。
 内外野共に天然芝が張られ、今年度までは年間2300万円で民間業者に芝刈りなどの整備を委託してきた。しかし、新年度から、芝刈りは打ち切られ、公園を管理する同市教育体育振興課の職員6人も大幅に削減される見通しだ。
同課の竹原伸課長は『芝の整備はどうするかは決まっていない。職員が刈ってでも試合に間に合わせたい』と話している」

「年間2300万円」の整備維持費とは相当な額だと思ったから、夕張市のHPで「平和運動公園野球場」なるものがどの程度の規模のものか調べてみた。

 「夕張市平和運動公園」とは次のような説明が載っている。

 ――Jリーグの「横浜マリノス」や「ガンバ大阪」の合宿、「横浜マリノス」と「ジェフ市原」の練習試合、また日体大ラグビー部夕張合宿などに利用された専用球技場をはじめ、多彩な施設を集約した夕張市自慢の屋外スポーツ施設です。サッカー、ラグビーに利用される全面芝の第1球技場・第2球技場、多目的運動広場、フィールド内も活用できる陸上競技に加えて、内野も天然芝でおおわれた野球場もオープン。ますます充実しています。――

 全部で5施設である。

 別の「平和運動公園野球場」のHPでは、

 ――平和運動公園に自慢のスポーツ施設が誕生。

 *道内初のアメリカンスタイルの本格的野球場。
 *あなたも一度、メジャーリーガーになったつもりでプレ
  イしてみませんか。
 *両翼98cm、中堅122cm、観客収容人員5,300人
 *使用料は、午前6時から日没まで1日利用しても、一般
  で10,000円、高校生以下で5.000円と低料金で幅広くご
  利用いただけます。
 *詳しくは、ゆうばり文化スポーツセンターまで。
  ――と出ている。 

 写真で見ると、芝生も見事なまでに青々とした素晴しい各施設となっている。野球場を写した写真に5階建ほどの鉄筋コンクリートの市営アパートと思しき建物郡も写っていて、背後に小高い山が迫っているから、市郊外の山裾の広大な平地に造成したものだろう。

 野球場外野席外に公園なのか、下草の生えた通路らしき左右に一部樹木群が写っているが、公園だとしたら、その維持・管理費も「23000万円」に含まれているに違いない。

 「23000万円」の維持・管理費が正当・妥当な金額だとしても、夕張市は赤字経営を続けていて、銀行からの融資で表面を取り繕う遣り繰りをしていたのである。パンクへの道はここ数年で始まったことではないだろう。それを何ら手を打たず、「今年度までは年間2300万円で民間業者に芝刈りなどの整備を委託し」続けてきたのはなぜかという疑問は残る。日本ハムの2軍戦開催が決定して、「職員が刈ってでも試合に間に合わせたい」と言うなら、市の台所がにっちもさっちも行かなくなってきた時点で、何らか策を施すべきを施さなかった怠慢・無策は問われても仕方がないのではないだろうか。

 どのくらいの頻度で「Jリーグの『横浜マリノス』や『ガンバ大阪』の合宿、『横浜マリノス』と『ジェフ市原』の練習試合、また日体大ラグビー部夕張合宿などに利用され」ているのか、HPにあった「ゆうばり文化スポーツセンター(TEL 0123-56-6046)」に電話で問い合わせてみた。昨年に限ってだが、Jリーグの合宿も練習試合もなく、学生や社会人のサッカー試合が24ゲームあったのみで、ラクビーやゲートボール大会を含めて、全部で29ゲーム。野球場の使用に関しては「集計は入っていなくて」と言いながら、社会人野球等が練習試合を行ったと言っていたが、たいした使用状況にはなかったということでなないか。

 但し、18年度は(残る2月3月の期間でのことか、それとも19年度の間違いか)亜細亜大学野球部が合宿の予約を取っていると言っていた。これまでの使用状況が芳しくないことの埋め合わせの言い訳にも聞こえた。

 野球場以外の4施設で昨年1年に29ゲームとすると、平均を加えても、36ゲーム。多く見積もって40ゲームとして、施設の維持・管理にどのくらいかかるか、無責任となるかもしれない素人計算を試みてみた。

 施設自体の収入は野球場を例に取ると、「プロ野球は74年以来」だから、年に10ゲームの利用として、「一般で10,000円、高校生以下で5.000円」)のみでは、「年間2300万円」÷5施設=460万円に遥かに追いつかなかいに違いない。高校・社会人野球で入場料を取ったとしても、たいした金額は取れないし、春夏の高校野球地方大会で使っていたとは言っていなかったから、微々たる金額と見る。春夏の高校野球地方大会ならともかく、練習試合などでは関係者以外の入場者は殆ど望めないからだ。

 さて、「全面芝の第1球技場・第2球技場・多目的運動広場・フィールド内も活用できる陸上競技・内野も天然芝でおおわれた野球場」の5施設の維持・管理である。芝生の刈込・水撒き。、そして傷んだ芝の修復等の整備が主たる作業となるだろう。芝刈りは人間が大勢して手動の芝刈り機を手にして刈るわけではない。各施設とも幅広の芝刈り用器械を後部に連結したオート式の芝刈り機1台で2時間もかからずに刈り終えることができるのではないか。効率よくやれば、5施設1日で終わらせることができるだろう。

 野球場の場合は、内野はピッチャーマウンドを中心にしてぐるぐる回れば、自動的に芝が刈れて、刈った芝は掃除機よろしく自動的に吸引して回収していってくれる。外野はフェンスのカーブに沿って円弧状にか、ラインに沿って縦にか、いずれかの方法で走らせるだけだろう。乗用車をゆっくりと全面に亘って隈なく走らせるのと同じで、グラウンドを満遍なく一通り撫でていくだけで、何時間もかかるものではない。芝以外の土部分は後部の芝刈り機を外して、トンボ(土均し)式の土を平らにしていく機械を取り付けて走らせるだけで済む。

 素人でも、プロ野球で使っていないのであれば、野球場で何日か練習すれば、すぐに熟練できる。後部に連結した芝刈り機をバウンドさせると、芝に食い込みをつくってしまうから、それが跳ねないように芝の表面を撫でていくようい注意して運転するだけのことである。

 このことは表面が平坦である「全面芝の第1球技場・第2球技場・多目的運動広場・陸上競技」に於いても、条件は同じだろう。全部で5施設。各施設とも、カネがあり余っていないとなったなら、使用スケジュールに合わせて、主としてその前後に整備すればいいはずだから、年間40ゲームの前後で80回の整備となる。実際には赤字経営だろうから、逆に回数を減らす工夫をしなければならないはずだが、素人計算上、大きくかけ離れないためにさらに多く見積もって、年間100回の整備とする。約4日に一度の整備である。

 試合後の芝が剥がれた部分や傷んだ芝の修復は人手がかかるが、芝刈り・水撒き等含めて5~6人で1日もあれば十分ではないだろうか。100回の作業×6人として=600人×15,000円(作業員の実質手取りは10,000円以下だろう)=900万円

 芝刈り自体は草が最も伸びやすい夏場の4ヶ月間は1ヶ月に2度刈り込む必要があったとしても、あとの月は1ヶ月に1度として、年に16回。これも多く見積もって20回としてみる。オート式芝刈り機の燃料や機械自体の消耗費を含めた損料はちょっと見当がつかないが、1回5万円としたとしても、5万×16回の作業=80万円。
 
 その他植栽樹木の剪定などの維持は赤字経営である以上、単価の張る専門の植木職人の手を煩わすのではなく、トリマーとかバリカンとか呼ばれている、髪の毛をバリカンで刈るように樹木の表面を一気に刈り取っていく、素人でも操作できる機械で剪定したなら、1年で20日間かかるとして、20日×15000円の単価=30万円。全部合計すると、900万円+80万円+30万円=1千10万円 。トリマー(あるいはバリカン)の損料も加えてさらに多く見積もって、その他諸々を加えて1500万円としたとしても、2300万円からお釣りがくる。

 この計算は少なすぎるだろうか。決して少なくない証拠の一つとして、日本経済が失われた10年の不景気のどん底に入ってから続出した倒産ゴルフ場を外資が買収し、その維持・管理に欧米式の徹底した合理化策を取り入れた結果、従来を遥かに下回る維持・管理費で納めることに成功したと言う事実を挙げることができる。そのことの経費節減と1回のプレー代を下げ、ステータススポーツであったゴルフを大衆化して客数を増やして収入を伸ばし、多くの外資買収ゴルフ場が黒字経営に持っていっていることは既に広く知られている事実であろう。

 夕張の「2300万円」の維持・管理費が随意契約のものか、あるいは高値で取引されたものか、調べる必要があるのではないだろうか。そういった種類のものであったなら、キックバックとか、接待とかの存在も疑わなければならなくなる。

 少なくとも、既に指摘したことだが、「財政破綻したため、4月から財政再建となる」という苦しい台所状況にありながら、「今年度までは年間2300万円で民間業者に芝刈りなどの整備を委託してきた」正常な感覚とはいえない怠慢・無策の責任は問う必要があるだろう。

 もし「芝の整備はどうするかは決まっていない。職員が刈ってでも試合に間に合わせたい」ということだが、「株式会社共立」というところで、「フライングモア」というハンドル操作で左右に動かして芝を刈っていく手動の機械がある。何も「共立」の宣伝をしようというわけではないが、この機械は宙に浮く形で、芝の刈り込み長さをセットすることができるから、同じ長さで刈ることができ、少し練習すれば誰も操作可能となる機械で、長柄式の芝刈り機のように長さが不揃いになる心配はない。メーカー希望小売価格(税込)は164,850円。4~5台買い入れれば、職員でも芝刈りができる。あるいはリースで借り入れることができれば、作業単価をより下げることもできる。

 他にも安い金額で、上手に芝刈りができる機械があるかもしれない。多くの人の知恵を借りれば、職員であっても、プロ野球の2軍の試合に間に合わせるだけの用を足すのではないだろうか。


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