一方の自民党は改選前の48議席から38議席に10議席減らし、1議席積み増した連立与党の公明党23議席と併せても麻生首相が勝敗ラインとしていた過半数64議席を維持できない大敗を喫した。
民主党が今回新人候補24人を擁立、そのうち22人が当選、告示3日前に立候補を決めた女性候補までが当選したといった出来事は前回小泉郵政選挙のときとほぼ似たことが今度は都議選で民主党に起きたということであろう。
麻生首相が劣勢が伝えられる中、事前に都議選自民党候補の全事務所に駆けつけ、後押ししたシーンを多くのマスコミが国民に伝えたが、何の役にも立たなかったこと、立候補者応援時、街頭でマイクを握って「政権交代は手段であって、目的ではありません。政権交代が景気後退につながる」といった文脈で民主党を激しく批判していたことが都議選の結果を前にすると、今となっては虚しい麻生の姿に見える。
自民党敗因・民主党勝因は何だったのか。私自身が解説するまでもなく、麻生首相の政治的無能、人間的軽さ、自民党政治の限界露呈、いわば政権担当能力の喪失が国民をして自民党ノーの拒絶反応を醸し出し、それが都議選に影響した、大方の見方としてある今回の結果であろう。
この大方の見方と麻生首相がラクイラサミット閉幕後の日本時間10日夜の内外記者会見で都議選に関して「あくまでも地方の選挙。争点は都政の諸課題で都民が判断する。国政に直接関連しない。首相として日本政治に責任がある。国民、日本を守るため、責任を果たすことに変わりない」(中日新聞)と言っていることは異なる状況を示すことになるが、多くはそうは見ていない。
いわば麻生首相の言うとおりに「国政に直接関連しない」、「あくまでも地方の選挙」で片付けることができる一地方の問題ではないと見ている。麻生の主張は合理的な判断を欠いているというわけである。
自民党の石原伸晃も大方の見方に反して都議選開票中にテレビで次のように言っていた。
「自民党が混乱しているといったイメージを有権者に与えてしまった」(NHK)
「東国原さんの話が自民党には人がいないのかと、批判を受け、都議選が国政レベルの批判の対象とされてしまった。自民党が一体となっていなかったことが影響した」(フジテレビ)
次は政治評論家の三宅久之。
「都議選は国の形に関係ない。それをごちゃごちゃにしている」(同フジテレビ)
二人とも国政と都議選は違うと麻生と同様のことを言っている。いわば東京都の有権者は国政と都議選を混同する過ちを犯したと。
果たしてそうだろうか。
国政に関する内閣支持率・政党支持率、次の首相に誰がふさわしいかの各マスメディアの世論調査に表された有権者の意識は
これ以上の麻生政権の継続、いわばこれ以上の自公による政権担当はご免だという意思表示であり、その拒絶反応が民主党に自民党政治の反面教師を求めるプロセスを踏ましめた民主党優勢の数値結果であろう。民主党の政策自体も、その多くが自民党政策を反面教師として成り立たせている。反面材料としている。反面政策としていると言ってもいい。
現在国民全体がそのような政治意識を全国規模としている。全国規模としている以上、例え東京が日本の首都であり、日本という国に対して最上位の下位社会に重要な立場で位置していると言っても、日本の国の一部であることに変わりはなく、全国規模としている国民全体の総体的政治意識に直近の都議選が飲み込まれる影響を受けるのは当然の流れであろう。
影響を何ら受けないとするには東京都が出資している新銀行東京の都民にツケがまわる経営欠陥、築地市場移転を巡る移転先用地からの国の環境基準を大きく上回る有害物質の検出問題、オリンピック誘致に関わる財政問題、それが今都民が最も必要としている政策なのかという問題、石原知事が都政に親族や友人を重用する過去の公私混同疑惑、常識を超えた高額な海外視察費用、その他都政全体にこういった瑕疵が殆どなく、都民が国政からの恩恵とは異なって、全体的に都政の恩恵をよりよく受けている場合に限る。
だが、実際は国政と同様に数々の問題・瑕疵を抱えていて、国政と同列視されていた。同じように共有していた都有権者の意識が都議選にそのまま反映したということであろう。
逆説するなら、それ程までにも国政に対する東京都民を含めた有権者全体の拒絶反応が強く、都有権者が全体有権者を代表する形で都議選に自民ノー・民主党イエスの意思表示を示したということであろう。
ということなら、都議選が衆議院選挙の前哨戦との位置づけは間違いで、衆議院選挙に向けて既に世論調査の形で示していた国民の政治意識・審判が都議選にそのままスライドして示されたのであって、いや、既に千葉市長選や静岡県知事選にスライドしていて、都議選は何番目かの波及かもしれないが、前哨戦ではなく、あくまでも中間結末と把えるべきではないだろうか。
都議選はいわば総選挙に向けた千葉線や静岡県知事選とは桁の違う最大の中間投票であった。
勿論、世論調査で示した国民の政治意識・審判の最終結末は総選挙で見せることになる民意でなければならない。これが逆転しない保証はない。
麻生首相では総選挙は戦えないとする自民党内の麻生降しの動きに対して、麻生を総理・総裁に選んだ責任があるはずだ、その責任はどうするのかという議論が自公内部で行われているが、総理・総裁の資質の問題は党という組織だけの問題ではなく、国民にも影響する国全体に関係する問題である以上、麻生を総理大臣に投票した自民党及び公明党全議員の任命責任は麻生政権共々潔く国民の審判を受けるべき対象としてあるものであり、受ける姿勢を持つことが公平な責任論というものであろう。
その姿勢・視点を欠いたジタバタした麻生降しの動きとそれに反対する麻生総理・総裁任命責任論は政治の党組織による私物化に当り、無責任と言わざるを得ない。麻生政権のみならず、自民党及び公明党という政党自体が自らの統治能力を失い、混乱に陥っている証拠であろう。
昨12日の都議選は民主党が改選前の34議席から54議席を獲得、第一党の座を自民党から奪う大躍進で圧勝し、42選挙区のうち38選挙区でトップ当選、得票率4割超獲得は小選挙区比例代表並立制を採っている総選挙での小選挙区投票でも比例区投票でも、それを占う好材料となる。
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