素人考/韓国・北朝鮮砲撃戦が全面戦争に発展した場合の推移

2010-11-24 08:50:47 | Weblog

全面戦争へと発展する可能性は殆んどないと思うが発展した場合の推移を、誰もが考えることかもしれないが、自分なりに考えてみた。

 外務省幹部1「今のところこれ以上事態が拡大する状況にはないようだ」
 
 外務省幹部2「明らかな示威行動だ」(以上下出asahi.com

 要するに何らかのデモンストレーションで終わると見ている。尤も外務省はメドベージェフロシア大統領の国後島訪問を読み切れていなかったから、その情報収集能力と情報解読能力はあまり期待できない。

 23日(2010年11月)午後2時半過ぎ、北朝鮮が北朝鮮領土から十数キロの距離にある黄海上の2000人近い住民が住む韓国領大延坪(ヨンピョン)島に向けて2度に亘って砲撃。韓国軍が応戦、韓国軍兵士2名死亡 住民3人が負傷したという。

 北朝鮮が住民が住む場所に砲撃したのは初めてだというが、最初にして最後という保証はない。その根拠の一つとして北朝鮮側発表の韓国軍が最初に攻撃したという発表を挙げることができる。自らの悪事を捏造して正義だとすることができる国家権力は正義だと捏造し得るゆえにどのような悪事を行うことにも抵抗を感じなくなるからだ。ウソつきがウソをつくことに抵抗を感じないように。

 このような権力意志のもと、日本人拉致、韓国人拉致、その他の拉致が行われたはずである。

 あくまでも仮定の話だが、全面戦争に発展した場合、在韓米軍が韓国軍と共に戦闘状態に入るのは勿論、在日米軍基地はかつての朝鮮戦争当時のように出撃基地・兵站基地の役目を担うはずである。短日月に北朝鮮軍を壊滅させるためにである。短日月の北朝鮮軍壊滅は韓国国土保全と韓国民生命保全及びその生活保全に関係していく。

 1950年6月から1953年7月休戦までの朝鮮戦争では在日米軍基地は出撃基地・兵站基地・補修基地の役目を担った。この3年間の朝鮮戦争で、米軍から発注を受けることとなった大量の物資・生産・サービス等の朝鮮特需によって日本の鉱工業生産は一気に戦前の水準にまで回復、高度経済成長のスタートを切るキッカケとなった。

 現在“世界の”と形容詞が冠せられてるトヨタは当時労働争議――いわゆるストばかり起していて、経営悪化状態にあったが、以後世界のトヨタに向けて発進していくスタートラインを築くことができた。

 HP《朝鮮戦争とトヨタ (H15年8月3週号)》に次のような一文が載っている。

 朝鮮戦争の〈この消耗戦で、日本の戦後経済は一挙に拡大した。倒産しかけて、創業社長が退陣したトヨタは、石田社長の時代になるが、トヨタも朝鮮戦争の恩恵を受けた例にもれない。

「文芸春秋」に「ザ・ハウス・オブ・トヨタ」が連載されているが、今月9月号に、丁度、朝鮮戦争の時期のトヨタのことが書いてある。当時の石田社長の言ったこととして、次のような談話が載っている。

「この数ヶ月、ワシは夢を見ているようだ。トラックも四輪駆動車もろくに塗装もせずとも、羽が生えている鳥みたいに(韓国の米軍基地を目指して)飛んでいく。中国の義勇兵がプサンまで攻め込んできたときは、値段もへったくれもなかったで。よこせ、よこせの矢のような催促じゃった。ワシも長いこと商売をやってきたが、あの時ほどボロ儲けしたことはなかったわ。戦争直後のときも(豊田自動)織機は信じられないくらい儲けたが、今度はケタが違う。」

トヨタはこの儲けを最新生産設備購入にかけた。後のトヨタ生産方式成功の裏に、この多大の生産設備投資があったこと忘れてはならない。

歴史は偉大である。〉

 トヨタは朝鮮特需で得た利益を最新生産設備購入に振り向けただけではない。当時の各種米国自動車の最新技術とそのノウハウを手に入れた。
 
 「Wikipedia/朝鮮特需」にも日本の各産業が米国技術とノウハウを手に入れたことが書いてある。

 朝鮮戦争によって〈再び産業立国になる上で重要な技術とノウハウを手に入れただけでなく、多くの雇用と外貨を確保することが出来たと言われている。これは、それまでの日本の工場生産において品質管理的手法が取り入れられておらず、とにかく数を生産すれば良いという風潮があったため不良品がそのまま出荷されるということは珍しいことではなかった。

 実際に太平洋戦争末期には工程管理という思想は一部では取り入れられつつあったが、それも不十分なものであり、工員個人の技術力により製品の品質が左右される状態は戦後もそのままであった。しかし不良品を受け取る米軍としてはたまったものではないため直接的に日本の各工場へアメリカの技術者が出向いて品質管理や工程管理の指導を行ったことにより効率的な量産が行われるようになったのである。そういう意味では日本の産業界の工場生産においては大転換期であり、戦後の高度経済成長の礎となったことは間違いない。〉――

 現在、海外に生産基地を移転した日本の企業が現地に日本人技術者を派遣、現地従業員に技術指導を行う光景が朝鮮戦争当時の日本でアメリカ人技術者相手に逆の立場で行われていた。

 日本の保守派の立場の人間が戦後日本の発展は靖国神社に祀られている戦争で命を落とした英霊たちの国を思う気持が礎となったといったことを言っているが、具体性のない丸きりの精神論に過ぎない。

 だが、今後韓国と北朝鮮が全面戦争に発展した場合、かつての朝鮮特需のような経済的僥倖を手に入れる可能性は低い。もし日本の米軍基地が出撃基地・兵站基地となった場合、出撃基地・兵站基地を叩くのが戦争勝利の鉄則である以上、現在日本を直接攻撃可能なミサイルを保持することとなっている北朝鮮は在日米軍基地を直接的な攻撃目標としない保証は限りなく小さいからだ。

 いわば韓国と北朝鮮が全面戦争に発展した場合、日本も無傷では済まないのではないだろうか。

 そのとき自衛隊はどうするかである。憲法上は専守防衛を鉄則として、ミサイル撃墜に務め、攻撃は米軍の役割としなければならない。
 
 平成22年(2010年)版 防衛白書の冒頭、現防衛相の北沢俊美が「平成22年版防衛白書の刊行に寄せて」の一文を載せている。

 〈昨年9月、政権交代という大きな歴史的転換がありました。これに伴い、防衛に関わる事項についてもいくつかの見直しを行いました。一方、今後とも、日本国憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならないとの基本理念に従い、日米安保体制を堅持するとともに、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、節度ある防衛力を自主的に整備するという、防衛政策の基本については、維持していきます。〉――

 この「今後とも」以下が日本の防衛の原則である以上、韓国と北朝鮮の万が一の全面戦争にも適用させれることになる。

 一方で攻撃されたなら、攻撃国の敵基地攻撃も専守防衛の範囲に入るとする主張もある。平成16年版「防衛白書」を引用した、いささか古いHP専守防衛下の敵地攻撃能力をめぐって ――弾道ミサイル脅威への1つの対応――》に敵基地攻撃について書いてある。

 〈はじめに

日本の防衛政策の基本をなす考え方は、専守防衛である。防衛白書の説明を引用すれば、専守防衛とは、「相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する自衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど憲法の精神に則った受動的な防衛戦略の姿勢」ということになる。

「受動的」である以上、敵を自国に迎え撃つことが前提となるわけだが、実際には、専守防衛に基づく日本の防衛政策の中にも、敵地を攻撃する発想が皆無なわけではない。「日米防衛協力のための指針(いわゆるガイドライン)」では、必要な場合には米軍がそうした任務を遂行すると定められてきた。また、現時点で自衛隊はそのための能力を有していないが、「他に適当な手段のない場合」においては、「座して死を待つ」のではなく、一定の制限の下で攻撃的行動を行うことは、法理論上は認められていると解釈されてきた。〉――

 防衛省は北朝鮮が日本に対してミサイル攻撃をしてきた場合の防衛について既にシュミレーションしているはずだが、官僚に任せるのではなく、政治家が国民の目に見える形で議論し、最終的な防衛方法は国民の判断に委ねるべきだろう。勿論その結果に対する責任は政治家と国民が共に負うことになる。

 全面戦争の結果、北朝鮮の金正日独裁政権が崩壊し、南北統一へと進まざるを得なくなったとき、多分戦争中から北朝鮮国民が難民となって中国や日本、韓国に殺到することになることが既に予想されている。

 その負担を国際的責任として日本は引き受けなければならないことも予定表に入れておかなければならない。当然、財政の負担を伴うが、財政負担はこれだけで終わらない。

 南北統一のコストに韓国一国では負担仕切れない場合の日本やその他の先進国の負担である。コストがどのくらいかかるか、それを伝える最近の記事がある。《朝鮮半島の統一、実現に必要なコストは250兆円》ロイター/2010年 09月 14日 15:47)

 9月14日(2010年)公表の全国経済人連合会(全経連)がエコノミスト20人に実施した調査を纏めたリポート。

 南北統一コスト――約3500兆ウォン(約250兆円)
 
 最大のコスト要因は南北間の経済格差を埋めるための取り組みになるとの見方が約半数を占めたという。

 全経連「南北間格差を長期的に最小にするためのコストが、統一の初期コストより大きくなるとみられる」

 これは〈2008年の平均年収の比較で、韓国が約1万9230ドル(約161万円)であるのに対して北朝鮮は約1065ドル(約8万9000円)〉という約18倍の差を埋めるコストだとしている。

 統一時期は、〈向こう5年以内に朝鮮半島の統一が実現すると考える回答者は1人もいなかったが、約半数は10─20年以内には統一があり得ると考えていることも分かった。〉としている。

 韓国政府も統一を予想してだろう、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領が先月(8月)、将来の南北統一に向けた資金を確保するため「統一税」の導入を提案したという。

 全経連「韓国経済に与えるショックは短期的には大きいが、長期的には統一はポジティブだ」――

 だが、この「10─20年以内」の統一は万が一の不測の事態を予定に入れた予測ではあるまい。不測の事態を考慮した場合、好むと好まざるとに関係なしに否応もない統一を迫られる事態が生じない保証はない。1年以内ということもあるし、2年以内ということもある。

 この南北統一コスト約3500兆ウォン(約250兆円)は韓国の2010年予測の実質国内総生産(GDP)1000兆ウォン(約76兆円)の3倍強に当たる。

 日本の平成22年度一般会計予算が約92兆円、同特別会計予算の純計額が約176.4兆円と比較しても、統一コストの約3500兆ウォン(約250兆円)がどのくらいの膨大な金額か理解できる。

 とても韓国一国で担うことができる金額ではない。南北統一によって韓国自体が不安定化した場合、北東アジアの不安定化に発展しない保証はない。統一コストにしても国際平和のために日本を含めた先進各国が分担し合うことになるにちがいない。その財政負担を国民は覚悟しなければならない。

 かつての朝鮮戦争のときのようにいいことだけで終わらないということである。但し金正日独裁政権が崩壊した場合、拉致問題解決は進展する可能性が生じる。日本にとってのメリットは北朝鮮の脅威が取り除かれることと拉致解決進展への期待ぐらいかもしれない。 

 政府は砲撃戦を受けて直ちに対策を講じた。《政府が情報連絡室を設置 収集と分析急ぐ》asahi.com/2010年11月23日21時10分)

 昨23日夜、菅首相が首相官邸で仙谷由人官房長官や北沢俊美防衛相らによる関係閣僚会合を開き、北朝鮮と韓国の砲撃戦への対応を協議。次の指示を行う。


(1)北朝鮮の今後の動向について情報収集に努める
(2)韓国、米国などと緊密に連携する
(3)不測の事態に備えて国民の安心安全の確保に万全を期し、陸海空自衛隊の情報収集態勢を強化
   する

 前原外相「今回の事態は極めて遺憾だ。北朝鮮による挑発的行動はこの地域の平和と安定を損なうものであり、速やかに中止することを求める」

 記事は書いている。〈今回の局地的衝突が拡大して在韓、在日米軍が出動するような事態になれば、日本の自衛隊になんらかの協力が要請される可能性もある。〉――

 対して北沢防衛相。

 北沢防衛相「万全の態勢をとる」

 この「万全の態勢」が北朝鮮の日本攻撃を想定した「万全の態勢」なのかどうか分からないが、想定した「万全の態勢」だったとしても、専守防衛の範囲内の「万全の態勢」であろう。

 菅首相の指示にある「不測の事態に備えて」にしても、どの範囲までの「不測の事態」なのか、具体的な詳細を明らかにしていない。不測の事態が起きてからでは遅い。国の防衛、国の安全保障について国民と共に議論する時期にきているのではないだろうか。日本の政治と外交が自立するためにも必要なはずだ。

 但し、この自立が軍事大国になることであってはならない。軍事大国にならなければ、政治と外交を国際的に機能させることができないと言うのは政治的想像力(創造力)を欠いた政治家が言うことであろう。



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