安倍首相が3月6日(2013年)朴槿恵(パク・クネ)韓国大統領に電話し、会談した。日本側からの呼びかけで午後6時前から15分間だそうだ。《首相 韓国大統領と電話で会談》(NHK NEWS WEB/2013年3月6日 21時12分)
安倍首相「日韓両国は、自由や民主主義それに法の支配など普遍的な価値を共有し、大きな責任と利益を分かち合う最も重要な隣国どうしだ。
困難な問題もあるが、両国で新政権が成立した機会を生かして大局的な観点から21世紀にふさわしい未来志向の関係を発展させるため、これから緊密に協力したい」
朴槿恵(パク・クネ)大統領「両国は東アジア地域での重要なパートナーであり、未来志向の協力関係を築いていきたい。そのためにも歴史認識が重要だ」
安倍首相は「困難な問題もあるが」と前置きして、いわばそれを乗り越えてという意味なのだろう、「未来志向の関係」を構築・発展させたいと申し入れた。
対して朴槿恵(パク・クネ)大統領は「未来志向の協力関係」を構築するには「歴史認識が重要だ」と、このことを前提条件とした。
要するに安倍首相は歴史認識を前提条件に置かずに未来志向の関係構築に重点を置き、朴槿恵(パク・クネ)大統領は歴史認識を重点に置いた未来志向の姿勢を取った。歴史認識の問題がクリアされなければ、未来志向の関係構築は難しいと言ったのと同じであろう。
安倍首相が電話して相手の言葉を待つまでもなく、朴槿恵(パク・クネ)大統領は2月25日(2013年)朴槿恵(パク・クネ)大統領の就任式に出席した麻生副総理と会談、同じ趣旨の発言をしているから、予想はできたはずだ。
韓国大統領府関係者による発言内容。
朴槿恵(パク・クネ)大統領「隣国として両国が真の友好関係を築くためには、歴史を直視し、過去の傷がこれ以上悪化せず、癒やされるよう努力し、被害者の苦痛に対する心からの理解が必要だ。
両国の指導者らが慎重な言葉と行動を通し、信頼を築いていくことが重要だ。これからの世代が未来に向かって進んでいけるよう、今の世代がより努力しなければならない」――
記事は、〈日本側は、会談でパク新大統領から「歴史認識が重要だ」という発言があったと説明していましたが、韓国側によれば、より厳しい表現が使われていたことになり、双方の微妙な温度差が示されたといえます。〉と解説している。
次の記事が会談後の麻生発言と外務省の会談内容の説明が載っている。《韓国新大統領:麻生副総理と会談 未来志向で緊密協力》(毎日jp/2013年02月25日 23時41分)
麻生副総裁(ソウルで)「(歴史認識などで)互いの立場を理解することが大事だ。未来志向で行かなければならないのははっきりしており、政治家として努力しなければならない」
「未来志向で行かなければならないのははっきりしており」と、さも相手も未来志向に重点を置いていたかのようなニュアンスで双方の意見が一致したと見せる発言を行なっている。
だとすると、朴槿恵(パク・クネ)大統領は歴史認識よりも未来志向をより重視したことになり、麻生の「(歴史認識などで)互いの立場を理解することが大事だ」は単に相手に敬意を評した形式的な言葉に過ぎないことになる。
外務省関係者(日韓が領有権を主張する竹島(韓国名・独島)問題は双方が言及しなかったが)「未来志向の協力のためにも歴史認識が重要だ(と、言った。)」
記事は、〈釘を刺した〉となっている。
外務省の説明は歴史認識に重点を置いているが、麻生太郎が紹介している朴槿恵(パク・クネ)大統領の発言は上記「NHK NEWS WEB」記事が伝えている大統領の発言が意図しているところとは攻守を替えた、歴史認識よりも未来志向により重点を置いていることから解釈できる事実は(あくまでも解釈した事実だが、)麻生太郎は朴槿恵(パク・クネ)大統領の発言の厳しさを隠し、和らげて公表する情報操作を行ったことになる。
歴史認識よりも未来志向により重点を置いていたとした方が日本側には都合がいいことだけは確かである。
さらに朴槿恵(パク・クネ)大統領は就任式の2月25日(2013年)から4日後の3月1日の日本の植民地時代の1919年に発生、朝鮮全土に拡大し、日本に武力鎮圧され、死者7500人、負傷者4万5千人、検挙者4万6千人を出した抗日運動「三・一独立運動」の記念式典で次のように演説している。
朴槿恵(パク・クネ)大統領「日本政府は積極的な変化と責任ある行動をしなければならない。
加害者と被害者という歴史的な立場は千年の歴史が流れても変わらない。両国の未来世代にまで歴史の重い荷物を持たせてはいけない」(日経電子版)
歴史認識問題で日本側に対して一貫した姿勢を見せていることが理解できる。
韓国側が日韓の未来志向の関係構築に歴史認識を前提条件としている以上、安倍首相にしても2月22日「竹島の日」を政府主催の式典開催とすることを公約としたことと、河野談話見直しを策していることなどの歴史認識問題をどういう正当性を持たせて未来志向の関係構築の要件とするのか、その判斷を創造する責任と創造した判斷を国民に説明する責任を負ったことになるはずだ。
そのような責任を果たした上で、その判断に関わる韓国側の納得を得る責任があとからついてくる。
ただ単に「未来志向、未来志向」と囀っただけで韓国側が納得するわけはなく、囀っていればいいというものではないからだ。
頭のいい安倍晋三のことだから、このことは十分に認識していると思う。日本にとって都合のいい、「未来志向、未来志向」と囀ってばかりいればいいというものではないと。
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