14日夜、37歳の男が佐世保のスポーツクラブで猟銃を乱射、呼び出しておいた小中高通じての同級生の男性とクラブインストラクターの26歳の女性を射殺、他6人に負傷を負わせた。犯人は逃亡、信者として通っていた教会で猟銃自殺。
<近所の住民は「昔はきちんとあいさつをする、いい子だった」と話す。しかし5年ほど前に散弾銃や空気銃を保有するようになってからは、自宅の離れにこもりがちになるなど、人を寄せ付けない雰囲気になった。教会にも年に数えるほどしか姿を見せなくなった。
大音量で音楽をかけたり、銃を手に漫然と出歩いたり。迷彩服を着て釣りに出かけたこともあった。奇妙な行動が目撃されるようになり、近所の住民が「あんな人が銃を持っているのは怖い」と警察に相談することもあったという。>(≪所有後に奇行次々 住民「怖い」と相談も≫07.12.15/15:21/東京新聞)
昨夜のNHK夜7時のニュース。
容疑者が弾を買っていた銃砲店主「あまり人が選ばなかった銃をお持ちになった。狩猟家つーか、普通の人のではなく、何かマニアっぽいと思いますけどね」
容疑者が会員となっていた地元の猟友会の理事「日頃ですね、非常に落着いていてですね、そんなふうなことを起こすような、人間じゃあ、全然見受けられなかったんですね」
アナウンサー「しかし近所では容疑者が銃を持っていることが噂になって、危なくて怖いと心配する人もいた」
近所の中年主婦「何でいるんですか、猟銃なんか。いらないと思いますよ、猟銃なんかは。猟もしないのに」
近所の中高年男性「銃を持っているから、ね、何であんな人に銃を持たせるかって言ってやかましく言ったんですよ。そしたら、そんなこといちいち言う筋合いはないってことを言って警察が逆に私に食ってかかったんです」
そう、警察が「厳正な審査のもと適切に(長崎県警察本部の記者会見での発言をアナウンサーが要約した言葉「手続きは厳正な審査のもと適切にやった。法を満たしていれば、許すしかない」と述べました。)処理し許可した案件を部外者がいちいち言う筋合いはない。黙れ、黙れ、引き下がらっしゃい」というわけである。
警察のこの対応には上は下を従わせ下は上に従う権威主義的意識構造に於ける上に立つ者の下の者に対する権威のひけらかしがある。
いわば警察は民間人に対して自分を上に置いていた。上に置いているからこそ可能とした問答無用なのである。対等の位置か下の位置に置いていたなら、耳を傾けたはずである。今夏の安倍自民党の参院選大敗北が自分たちを国民の上に置いて国民の目線に立たなかったからで、目線に立たない親切さの喪失が国民の要望無視につながったのであり、そのしっぺ返しが選挙結果となって現れた。
今回の警察の対応も同じ構造をなす。「そんなこといちいち言う筋合いはないってことを言って警察が逆に私に食ってかかったんです」は親切さの喪失そのものの現れであろう。そしてそれは警察を上に置いていたからこそできた住民の要望無視の態度なのは断るまでもない。そのしっぺ返しが警察(公安委員会)が許可した散弾銃での犯罪ということなのだろう。
警察が管轄住民に上に立つ態度を取るのは自身が権威主義的行動性に絡め取られているからである。自らを上に立たせて下を従わせようとする態度は自らが下の位置に立つ場合は権威主義的行動性に従って上の立場にある者に言いなりに従う態度を取る。
その顕著な一例が1995(平成7)3月30日に当時の国松警察庁長官狙撃事件を挙げることができる。警視庁が山梨県・上九一色村のオウム真理教施設を強制捜査した直後の狙撃事件だったことからオウム信徒の犯行を疑い、翌96年5月オウム信徒の警視庁巡査長を容疑者として取調べ犯行供述を受けたが矛盾点が多くて立件し切れず、迷宮入りに至っている。
警察長官の銃撃、一時危篤状態となる世間騒然の事態を受けて警察庁は都道府県警察本部長会議を開いて短銃の摘発を指示した。都道府県警察本部長は各自治体に戻り各都市の警察署長を集めて警察署長会議を開き、上から指示された徹底的な銃の摘発を命じた。署長は勤務署に戻り、短銃摘発に特化した指示を下の者に伝える。
それ以降集中した同じ1995年の群馬県警前橋署(7月)・愛媛県警・長崎県警の短銃押収工作事件、さらに翌1996年の警視庁蔵前暑・警視庁城東暑の短銃押収工作事件は各都道府県本部長が警察庁の、各都市の警察署長が各都道府県本部長の、各署員が各署長の上の者の拳銃摘発指示を各段階段階で下の者であるそれぞれが権威主義的従属性から絶対と受け止める場所に自分を追い込んだために起きた、最も下の者に強くかかることになる圧力性の最終成果であろう。
警察組織が上から下まで権威主義性に絡め取られている姿となっていることを物語る一例である。上が成果を求め、下がその指示に応えて成果を上げようとしたとき権威主義的力学が生じる。権威主義性を行動様式としている組織では最も下の者に最も強い権威主義の圧力がかかる。
下の者のそのような圧力は外部の下の者に向かうことでカタルシスを得る。それが「そんなこといちいち言う筋合いはないってことを言って警察が逆に私に食ってかかった」態度となって現れた。
警察は社会の治安と市民の生命の安全を守る危機管理の役目を担う。しかし乱射事件を受けた警察の記者会見は「手続きは厳正な審査のもと適切にやった。法を満たしていれば、許すしかない」のみで自らの役目を完結させている。許可した銃が適正に使用されているかどうか審査することも社会の治安と市民の生命の安全を守る危機管理の役目に添わせなければならない必要不可欠事項であろう。3年ごとに銃所持の更新手続きを必要とするだけでは済むまい。
警察が権威主義的に市民の上に立つ姿勢を維持する間は社会の治安と市民の生命の安全を守るという適正な危機管理は期待できない。そのことは各地での警察の不適切対応によって市民の生命が失われたり、脅かされたりしている事件が証拠立てている。
昨日の朝日新聞夕刊にも出ていたが、宇都宮での散弾銃で主婦が二人殺害された事件もその一つである。参考までにasahi.com記事から。
≪県警の銃許可は違法、銃撃予見できた 宇都宮地裁≫(07年05月24日12時51分)
<宇都宮市で02年7月、主婦2人を猟銃で殺傷し自殺した男(当時62)に銃所持を許可したのは違法だとして、遺族らが当時の栃木県公安委員長と宇都宮南署員2人、県を相手に総額7700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が24日、宇都宮地裁であった。福島節男裁判長は、「銃所持の許可審査で事実誤認があり、許可がなければ主婦が死に至ることはなかった」として県警の責任を全面的に認め、県に4700万円の賠償を命じた。公安委員長と署員2人への請求は退けた。
銃刀法は「他人の生命や公共の安全などを害するおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者」に対して銃所持の許可を出すことを禁じている。訴訟では、男に所持を認めた場合の危険性についての「予見可能性」が争点になった。
判決によると、殺害された田中公子さん(当時60)と男は隣家同士で、事件の約20年前からトラブル関係にあった。02年4月に男が銃許可を申請したのを受け、
身辺調査に当たった当時の宇都宮南署地域課員は「許可には熟慮を要する」と報告。
この報告や田中さんの同署などへの度重なる申し立てから、銃許可担当の同署生活安全課はトラブルを認識していたが、近隣の家や田中さん方の聞き取りすらしないなど調査が不十分なまま同年6月、銃所持を認めた。
判決は、男が銃を田中さんへの加害目的に使うために申請をしたと認定。これに対して、県警は男に加害意思はなく、温和な性格だと誤認。「身元調査した警察官が熟慮を要するとの意見をつけたにもかかわらず、特段の調査をせず、通常行うべき身元調査も不十分だった」として、銃所持を許可する要件は満たされていなかったと断じた。
その上で、県警は「主婦や近隣住民に対して猟銃による攻撃が行われる恐れがあることは予見し得た」と指摘し、銃が許可されなければ2人が殺傷されることはなかったと認定。「殺傷目的に作られた凶器の銃の所持許可に際して、警察に幅広い裁量が認められている。今回の許可は社会通念に照らして著しく妥当性を欠き、違法と過失の程度は相当大きい」とし、銃所持許可と、死亡や負傷との間に因果関係を認めた。
原告側は、予見可能性について「判断は慎重であってもありすぎることはない」と指摘。その上で、10年余の担当歴があった同課の当時の実務担当者にとってすら「熟慮を要する」といった慎重な意見は初めてだったにもかかわらず、組織として詳しい調査をしなかったことを批判していた。
これに対し被告側は「近所の住民らは2人のトラブルに巻き込まれるのを嫌っていた。聞き込みをしても、把握していなかった重要な情報がもたらされなかったのは明らか」と反論。トラブルは「いささか度の過ぎた隣同士のいさかいだった」と主張した。>
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