民主党2009年マニフェスト達成率31%から見る民主党政治の実質的評価

2012-11-02 11:55:03 | Weblog

 民主党の2009年マニフェスト達成率は31%だそうだ。

 一見少ないと見えるが、いわゆる目玉政策として掲げた重要政策を多く達成し、国民の利益に寄与していたなら、差引き、その少なさは大目に見ることもできる。

 果たしてどういった状況の達成率なのだろうか。

 次の記事が取り上げている。《民主党:09年衆院選マニフェスト検証 「実現」は31%》毎日jp/2012年10月31日 21時06分)

 細野豪志会長の民主党政策調査会による166項目の政策達成状況の検証である。

 166項目を以下の項目に分類、進捗度の高い順に「実現」「一部実施」「着手」「未着手」と判定。

(1)ムダづかい
(2)子育て・教育
(3)年金・医療
(4)地域主権
(5)雇用・経済
(6)消費者・人権
(7)外交

 「実現」――高校無償化、農業者戸別所得補償等51項目(全体の31%)

 「一部実施」――子ども手当、高速道路無料化等63項目

 同党は検証結果を次期衆院選のマニフェストに盛り込むことも検討しているという。 

 記事解説――

 予算措置することで達成しやすい政策は「実現」が多い。

 「子育て・教育」分野に於ける実現――22項目中10項目。
 「雇用・経済」分野に於ける実現――43項目中18項目

 対して既得権への切り込みが必要な、実現がより困難な政策。

 「ムダづかい」分野に於ける実現――25項目中3項目
 「消費者・人権」分野に於ける実現――8項目中0項目

 「着手」判定26項目

 衆院比例代表の定数80削減や月7万円の最低保障年金等。

 記事は、〈達成は事実上困難だ。〉と書いている。

 「未着手」――9項目(主なものとして政権交代直後に断念したガソリン税などの暫定税率廃止)

 「外交・安全保障」分野の17項目は「数量化になじまない」(党幹部)として評価の対象から除外。

 民主党幹部「次の衆院選はおわびから始めなければいけない。厳しい自己評価が必要だ」

 〈同党は今後、全国で党員や支持者らと集会を開き、検証結果について意見を聞くことにしている。【鈴木美穂】〉と記事を結んでいる。

 詳しく知りたいと思って民主党のHPにアクセスして検索したが、探すのが下手なのか見つからなかった。

 で、「実現」したとしている、目玉政策である「高校無償化」と「農業者戸別所得補償」、さらに「数量化になじまない」として評価対象から除外した「外交・安全保障」分野のうち、沖縄の米海兵隊の問題を取り上げて、私なりに批評を加えてみることにした。

 記事が書いているように「高校無償化」にしても、「農業者戸別所得補償」にしても、予算措置を講じることによって達成容易な政策である。

 高校無償化の成果について、兵庫7区選出の民主党衆議員石井登志郎氏が自身のブログ記事――《改めて高校無償化政策の意義を確認する》めざす未来へ、情熱政治/2012年10月17日 16:48)が書いている。  

 記事から、主なところを書いてあるとおりに抜粋してみる。

 「約330万人の生徒に、公立では年間12万円程度、私立では同等もしくはそれ以上の補助」 

 「総予算が4000億円に及ぶ大事業」 

 「一部の懸案が残されていますが、ほぼ満額で実現をしています。よって民主党としては、高校無償化は『マニフェスト通り実現』と成果をアピールしています」

 「高校無償化前は年間に約2,000人いた中退者数が1,000人にまで減少した」

 「高校無償化の意義は、今や進学率96%を超える高校での教育を、義務教育と同等の社会インフラと捉え、それ相応の公費負担を国が行う、ということが第一です」

 「既に96%にも及ぶ進学率となっている中で、わざわざ4000億円もかけて無償化にする意義は何か」

 「答えは、この4000億円そのものが、ある意味での公共事業であり、これまで家計費から捻出されていた部分が、他の消費に回っていくことを期待している」

 「事実、教育産業への従事者数や産業規模はここ数年で相当な上昇がみられます」

 「無駄な道路を建設するくらいなら、教育にお金がかかる世帯に支援をすることで、経済にも好影響を及ぼしたいとするのが、私たちの考えでこれまた価値観です」(以上)

 教育は経済のみで語ることはできないはずだが、経済的効果に偏った評価となっている。

 経済的観点からの評価であっても、記述に矛盾がないではない。「これまで家計費から捻出されていた部分が、他の消費に回っていくことを期待している」と書いているが、入学させてもどうにか授業料を払い続けることができるだろうと計算して入学させたものの、払い切れなくなったという金銭的理由から中退した生徒の家の場合、授業料そのものに回すカネが払底していたのだから、国から授業料が出ても、学校に払えばプラスマイナスゼロとなって、他の消費に回すといった消費活動は期待できないということになる。

 但し、どうにか払い続けて高校にぎりぎりのところで在学していた生徒の家の場合、国から授業料が出ることによって、それまで苦労しながら払い続けていた分は他の消費に回すことは可能となる。

 要するに高校授業料無償化によって「高校無償化前は年間に約2,000人いた中退者数が1,000人にまで減少した」としても、1000人の中退者は、全部が全部そうではないだろうが、その多くは授業料という金銭的理由からの中退ではないと見ることもできる。

 いわば高校無償化を中退者数の増減のみで評価はできないということである。

 高校入学が平均化していく過程で、「せめて高校ぐらいは出なければ」といった横並び意識で皆と同じ高校の学歴を獲得する、そのためだけに入学していく若者が増えた。

 そういった若者が途中から勉強についていけなくなって退学していく、授業料に関係のない中退者も多くいるはずだ。

 当然、経済的側面からのみの評価ではなく、教育的側面からの評価も必要としなければならない。

 真に教育格差解消に貢献しているのか、学力向上や社会化形成に役立つ高校授業料無償化となっているのか。

 【社会化】「個人が所属する集団の成員として必要な規範・価値意識・行動様式を身につけること」(『大辞林』三省堂)

 小遣いは上げたが、無駄に使ってしまったのでは意味は出てこない。

 勿論、高校授業料無償化はそこまで目的としていないと言うだろう。だが、他の教育政策と相互に有機的関係を持ち合って何らかの教育的成果を上げなければ、いくら経済的効果を上げても、役に立っていると評価はできないはずだ。

 マニフェスト評価はそこまで踏み込んで行うべきだろう。

 「農業者戸別所得補償」にしても同じことが言える。日本の農業活性化にどの程度、どのような形で役立ったのか。農業人口減少に歯止めがかかったのか。あるいは若者参入によって農業人口の高齢化をどの程度食い止めたのか。対外国農業競争力をどの程度獲得したのか。自給率を上げるのにどの程度貢献したのか。

 逆に単に農業者の所得補償で終わっているのか。

 「Wikipedia」に次のような記述がある。

 〈直接支払いによる農業保護政策は、すでにEU諸国やアメリカで広く実施されている。フランスでは農家収入の8割、スイスの山岳部では100%、アメリカの穀物農家の収入は5割前後が政府からの補助金だという。〉

 だからと言って、日本での農業に対する政府援助を全面的に正当化することはできない。

 アメリカの農家が米政府から多額の補助金を得ていたとしても、アメリカは農産物輸出大国である。フランスにしても、農産物生産額世界6位であり、農産物輸出額では世界第2位を占めると「Wikipedia」に書いてある。

 翻って食糧自給率で先進国中、どの位置にいるのか。世界に誇る農産物輸出額を弾き出しているのか。

 農業全体に対する相乗効果まで評価の対象としなければ、野党からバラマキと批判されても反論はできまい。

 最後に「数量化になじまない」として評価の対象から除外した「外交・安全保障」分野について沖縄の基地問題を取り上げる。

 民主党は2008年7月8日、 「民主党・沖縄ビジョン2008」を発表。沖縄の基地について次のように記述している。

 〈在沖縄米軍基地の大幅な縮小を目指して日本復帰後36 年たった今なお、在日駐留米軍専用施設面積の約75%が沖縄に集中し、過重な負担を県民に強いている事態を私たちは重く受け止め、一刻も早くその負担の軽減を図らなくてはならない。

 民主党は、日米安保条約を日本の安全保障政策の基軸としつつ、日米の役割分担の見地から米軍再編の中で在沖海兵隊基地の県外への機能分散をまず模索し、戦略環境の変化を踏まえて、国外への移転を目指す。〉――

 2009年マニフェストに海兵隊の県外・国外移設を明記しなかったが、政権交代を果たす選挙中、鳩山代表は普天間基地の県外・国外移設を訴え続けた。

 そしてその訴え通りに政権交代後の鳩山政権は普天間基地の「国外、最低でも県外」を掲げて努力したが、早々に放棄、自民党政権がアメリカと取り交わした辺野古移設へと回帰する日米合意を締結。

 鳩山政権を引き継いだ菅無能政権は野党時代の「沖縄米海兵隊不要論」の舌の根をカラカラに乾かせて、朝鮮半島情勢や中国に関わる安全保障環境の変化を口実に、「海兵隊を含む在日米軍の抑止力は安全保障上の観点から極めて重要だ」として鳩山政権の日米合意を踏襲。現在に至っている。

 「外交・安全保障」関連の政策の成果・不成果が「数量化になじまない」としても、各政策をどう進めたのか、どの程度進めることができたのか、当初の方針が実現できなかったために違う方針を掲げることになったといった経緯自体を説明することが自らのマニフェストに対する自己評価となるはずであるし、国民に対する説明ともなるはずである。

 2009年マニフェストには、「自立した外交で、世界に貢献」と大々的に銘打ち、〈北朝鮮による核兵器やミサイルの開発を止めさせ、拉致問題の解決に全力をあげます。〉と謳っている。

 どの程度開発を押しとどめることができたのか、できなかったのか、拉致問題を解決に向けてどの程度進めることができたのか、できなかったのかの説明があって、初めてマニフェストに掲げた政策に対する国民の側からの評価が可能となる。

 こういった説明を抜いた場合、詳しい説明があって初めて知ることになる立場の一般国民に対して政治の側からの情報の隠蔽に当たり、国民に対する説明責任を欠くことになる。

 要するに細野豪志会長の民主党政策調査会による166項目政策達成状況は実質的評価足り得ていないのではないかということである。


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