日韓の軍事情報共有が全く進んでいないと、3日前の記事――《足踏み続く情報共有=「覚書」具体論に入れず-日米韓》(時事ドットコム/2014/05/04-14:56)が伝えている。
記事はその理由を、〈背景には、衰える気配のない反日世論と、日米韓の防衛協力強化に神経をとがらせる中国を気にせざるを得ない韓国の事情がある。〉と書いているが、韓国内の反日世論にしても、韓国の中国への気兼ねにしてもも、元々の原因は言わずと知れた安倍晋三の靖国参拝と従軍慰安婦や日本の戦前の戦争が侵略戦争か否かに関わる歴史認識である。
安倍晋三の靖国参拝と歴史認識が韓国の朴政権をして中国に接近させしめ、韓中が歴史認識で連携、対日共同戦線を構築させることとなった。その象徴が日本植民地下の初代韓国統監伊藤博文を中国黒竜江省ハルビン駅で1909年に暗殺した朝鮮独立運動家・安重根の、パク・クネ韓国大統領による暗殺現場への2013年6月の石碑建設要請に対して中国側が石碑ではなく、暗殺現場ハルビン駅への2014年1月の大々的な安重根記念館の開設と入口付近への安重根の胸像設置で応えた中国側の対応であろう。
安倍政権が安重根は犯罪者・テロリストとしていることに対する韓中のこの連携である。
この韓中歴史認識での対日共同戦線は韓国の中国への経済的接近という形も取ることになっている。
そしてその結果、日韓の軍事情報共有にも悪影響を与えているというわけである。
日韓の軍事情報共有は主として北朝鮮の軍事的動向を把握することを目的としている。それが思うように進ままない足踏み状態にある。
先ず、韓日軍事情報共有の取り決めを目的とした「韓日軍事情報包括保護協定」が韓国側の与野党の反発で署名が見送られて、韓国政府は国会の関与を必要としない日米韓による覚書(MOU)の締結を模索することにした。
4月17日(2014年)夜、米バージニア州の韓国軍関係者の自宅で行われた米韓日3カ国の防衛当局高官協議の初日。韓国側は「覚書(MOU)」を正式な議題とせず、非公式な席での意見交換にとどめることに拘ったという。
いわば韓日の軍事情報共有に消極的な態度を示したことになる。
北朝鮮の軍事動向に対する中心的な把握対象は日米韓に直接的な脅威を与える危険性のあるミサイル発射であり、記事は、〈情報共有の最大の目的は、北朝鮮の弾道ミサイルへの対応で連携を深めることだ。〉と書いている。
記事によると、先ず北朝鮮がミサイルを発射すると、米国の早期警戒衛星(SEW)が直ちにキャッチして、その情報を即座に日本に送信。自衛隊のイージス艦がミサイルを追尾し、迎撃ミサイルで破壊する手順を踏む。
但し発射直後の加速段階では、自衛隊のレーダーでミサイルの動向を把握するのは困難とされていて、ある程度の飛距離を経ないとレーダーで補足することはできない。いわば米国の早期警戒衛星(SEW)が自衛隊に発射情報を送信しても、自衛隊のレーダーが北朝鮮のミサイルを直ちに補足することが不可能で、そのミサイルを追尾する段階に至るまでに空白の時間が生じ、それが時間のズレとなって現れる。
当然、迎撃ミサイル破壊のボタンを押す最終段階に至るまでのコンピューター計算に時間のズレが順次先送りされる危険性が生じない保証はないことになる。
日本射程内の中距離ミサイル発射の場合、追尾可能な時間は発射から数十秒と記事は書いている。数十秒が20秒後なのか、30秒後なのか正確には分からないが、〈着弾まで10分もなく、この程度の「空白」でも対応の遅れを招きかねない。〉と警告している。
この時間的な「空白」は日本の防衛能力自体の無視できない“空白”となって現れているはずだ。
空白を埋める最善の方法は北朝鮮に近い位置に配したレーダーによって加速段階のミサイル捕捉可能な韓国の追尾能力を日米のミサイル防衛 (MD) 網に取り込むことだと記事は解説しているが、だからこその日韓軍事情報共有への日米による要請なのだが、在日米軍基地への攻撃を懸念する米国が情報共有のための具体策を講じるよう韓国に強く求めているものの、記事が最初に触れていたように韓国内の反日世論と中国への気兼ねから、韓国政府の動きが鈍いままになっている。
別の「時事ドットコム」記事が、〈米韓は既に情報協定を結んでいるが、米国は韓国の情報を第三国である日本には原則として提供できない〉制約があって、その関係から韓国側が日米韓の間で融通し合う軍事情報の取り扱いについて定める「軍事情報保護の覚書」(MOU))を検討中と伝えているが、検討主体の韓国自体の覚書締結に積極的ではない原因が安倍晋三の靖国神社参拝や歴史認識にあるということである。
東海地震や東南海地震等が、例え30年間に80何%とかの発生確率となっていたとしても、いつ発生するか分からないとする、あるいは明日発生してもおかしくはないとする危機管理で地震対策を講じていなければならないように、国民の生命・財産を守るためにも北朝鮮がいつミサイルを日本に向けて発射するか分からないとする、あるいは明日発射してもおかしくはないとする危機管理で防衛体制を築いていなければならない状況下にあるのに対して、安倍晋三の靖国参拝や歴史認識が日本の防衛の“空白”を演出、成果としている。
安倍晋三は自身の倒錯的な成果に気づいているのだろうか。外国を訪問してアベノミスクを誇っていれば済む問題ではない。
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