自民幹事長谷垣と選対委員長茂木の野党候補1人区一本化批判は安倍晋三の右翼国家主義を念頭に置いていない

2015-12-23 08:36:00 | Weblog


 自民党選対委員長の茂木敏充が2015年12月21日行われた都内での講演で来夏参院選挙での野党候補一本化の動きを批判したと、同日付「NHK NEWS WEB」記事が取り上げていた。  

 記事には書いてないが、毎日新聞社が各界に呼びかけてアジア諸国の調査研究等を目的に設立した一般社団法人アジア調査会主催の講演会の講演だそうで、アジア調査会のサイトにアクセスしてみると、講演内容は2016年3月号の「アジア時報」に掲載されるなどと、スピードが重視されるこの情報化時代に悠長なことをしている。

 ご存知のように民主党や他の野党は定員1人の「1人区」などで野党候補の一本化を検討している。

 茂木敏充「平和安全法制の廃止という一点では共通していると思うが、外交・安全保障や経済などで共通の公約を掲げない限り、国民に対して選挙の時点からウソを言っていることになる。

 『もしかしたら勝てるかもしれない』と、各党の候補者を下ろして1人にするのは、究極の談合選挙ではないか。国民不在の究極の談合には負けない」――

 次に翌12月20日に自民党幹事長谷垣禎一が自民党本部での記者会見で野党候補一本化を批判したとマスコミは伝えている。この記者会見のテキスト版は「自民党オフィシャルサイト」に載っている。 

 マスコミ記事を利用した方が簡潔で理解しやすいが、具体的にどう言ったかを知るために自民党のHPを利用することにする。読みやすいように適当に行を変えた。

 天野読売新聞記者「読売新聞の天野です。安倍総裁からのご挨拶にもありましたが、年が明けて、参議院選挙を党としてどういう位置づけで臨まれるお考えですか」

 谷垣禎一「当然のことながら、今まで参議院ではしばしばねじれというものを体験してまいりました。やはり安定した政治を作っていくということが我々の使命だと思うのですね。ですから、今、自民党だけで過半数というわけにはいっていないのも実情でございますから、やはり安定した政治を作るという観点からしますと、参議院選挙を勝っていくというのは必要不可欠なことだと思います。

 加えて、これは私が度々申し上げていることですが、今、野党の間でもどのように選挙協力をするかという議論が進んでおります。ただ、私の見るところ、そういう選挙協力の議論は進んでおりますが、どうしてこの党とこの党が組めるのだろうかというような疑問を感じさせる、つまり政治の進む方向を共にしない方々が、アンチ自民党というだけで協力をするといういびつな姿も見えないわけではないわけですね。

 そういう勢力が強くなるとまた政治も安定しない。ちょうど今の政治のありようを見ますと、やはりこの参議院選挙にきちんと勝利をしていくということが我々の目指す安定した政治には必要なのではないか、基本的に言うとそういう位置づけだと思います」――

 他の新聞社の何人かの質問後に再び天野記者が同じ趣旨の質問をしている。

 天野記者「読売新聞の天野です。参議院選挙について、先ほど野党の連携についてお話がありましたが、例えば民主党と共産党、それに今、平和安全法制に反対する団体が連携して統一候補を模索するような動きがありますが、こういう動きは自民党にとって参議院選挙を戦ううえで戦いやすいのか、逆に戦いにくいのか、幹事長のお考えはいかがでしょうか」

 谷垣禎一「 短期的に見ますと、統一候補を作るというのはやはり我々は警戒していかなければいけない。統一候補が力を合わせてくることに対して、我々もそれを上回るパワーで圧倒しなければならない課題だと思います。

 しかし長期的に見ると、そういう表現は公党に対して必ずしも適切かどうか分かりませんが、ちょっと言葉を選んで申し上げますが、雷が鳴ったといってみんな抱き合うような、そういうのを『雷同』というのだと思いますが、ちょっと用語が適切かどうか分かりませんが、そういうものが野党の再結集に果たして適切なのかどうか、これは私が論評すべきものではありませんが、日本の政党政治のためにはやはり『ああ、こういう党はこっちを目指しておられるのだな』ということが受け止められるような形が望ましいだろうと私は思っていますが、他党のことですからこれ以上触れることは差し控えます」

 茂木敏充は野党候補一本化は外交・安全保障・経済等々で共通の公約を掲げない限り、国民にウソをつく行動であり、勝つことだけを目的とした選挙は国民不在の究極の談合選挙だと手厳しく批判している。

 谷垣禎一は政治の方向性が異なる勢力がアンチ自民党ということだけで協力をするのはいびつな姿であり、長期的に見ると付和雷同の集団に過ぎないとミソもクソもなく批判している。

 谷垣は最初の発言で、「この参議院選挙にきちんと勝利をしていくということが我々の目指す安定した政治には必要なのではないか」と言っているが、これは自民党の人間が自民党の都合のみに立った発言に過ぎない。

 今年12月のNHK世論調査は「安倍内閣を支持する」46%に対して「支持しない」が36%を占めていて、支持一辺倒というわけではないし、確かに政党支持率は民主党の8.5%に対して自民党は37.5%と圧倒的な確率で支持者を集めているが、時には大きな勢力となって選挙を左右することもある支持政党なしが自民党の政党支持率に迫る34.3%もあるということは国民が自民党の勝利だけを願っているわけではない状況を示している。

 同じ12月の朝日新聞の世論調査は「安倍内閣を支持する」38%に対して「支持しない」40%と「支持しない」が2%上回っていて、政党支持率自民党33%に対して民主党8%に過ぎないが、支持政党なしは42%と自民党33%よりも9ポイントも優勢なのは同じく自民党の勝利だけを願っているわけではない状況を示している。

 共産党が1人区の候補を立てないことを提案して野党一本化を図ろうとしていることも、野党第1党の民主党や第2党の維新の党が何らかの方法で野党候補一本化を図ろうとしていることも、単に選挙に勝つことだけを目的としているわけではない。

 安倍晋三の天皇を頂点に置いた戦前の国家主義体制の日本国家を理想の国家像と見て、そこへの回帰を内心に疼かせている右翼国家主義が日本の将来にとってこの上なく危険だと見て、その野放しを一刻も早く阻止したい必要性を目的の一つとしている野党の一本化でもある。

 世界の多くの人間がヒトラーの出現や戦前日本軍部の出現の危険性を学習した。同じ臭いを持つ者の出現の阻止の必要性は政治の方向性よりも優先させなければならない価値を見なければならない。

 国家主義とは国民の存在性・在り様よりも国家の存在性・在り様を優先させる思想を言う。それゆえに国家の存在性・在り様を偉大ならしめる組織やそのような組織に所属した国民に優先価値を置き、それ以外の国民は優先的価値から除外される。

 価値があるとされるのは国家を偉大ならしめるための奉仕を求め、その奉仕に応じたときである。一般国民の勤労も個人の幸せのためであることよりもこの線上で価値を計られる。

 安倍晋三の女性の活躍も同じ線上の発想から出ている。正規雇用者の約7割を男性、約3割を女性が占め、非正規雇用者の約3割を男性、約7割を女性が占めているそうだが、正規雇用でも男女賃金格差が存在し、正規雇用と非正規雇用間にも生涯賃金に直すと1億円にもなる大きな賃金格差があり、非正規雇用に於ける男女間にも賃金格差が存在していて、人件費の抑制のための女性の雇用が大勢を占めていることに目を向けずに「女性の活躍」を言うことができるのも、国家の存在性・在り様を優先させる国家主義に根付いた「女性の活躍」となっているからである。

 憲法を改正せずに砂川事件最高裁判決を集団的自衛権の合憲説とする根拠もない牽強付会を駆使して新しい安保法制を成立させたのも日本を経済大国のみではなく、軍事大国をも目指して戦前の日本の偉大さに少しでも近づけようとしている国家主義に基づいている。

 「積極的平和主義外交」のスローガンも「国民の命と暮らしを守る」のスローガンも、軍事大国化の願望や戦前日本国家回帰願望を生み出している国家主義を見えなくする隠れ蓑に過ぎない。

 ブログに何度か書いてきたが、2012年4月27日の自民党憲法改正草案の前文の冒頭は、〈本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴(いただ)く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。〉となっているが、日本国は天皇を国民を統合する存在として頭に戴く国家だと価値づけて、国家の一番上に置いていることも国家主義の表れであり、国民主権は立法、行政及び司法の三権分立への関与に限定して、天皇を特別な存在として分けているところにも戦前と同様の国家主義が現れている。

 安倍晋三の経済政策アベノミクスが安倍晋三の国家優先の国家主義を反映して国家の上層部に位置する国民には大いなる恩恵を与え、下層部に位置する国民にはさしたる恩恵は与えない格差拡大を生じさせているにも関わらず安倍内閣はそこそこの支持率を獲得し、自民党は政党支持率で30%以上を獲得している。

 いわば国家主義を巧妙に見えなくする隠れ蓑が功を奏している現状にあって、その国家主義を阻止するのは至難の業である。だが、政治の方向性や政策の一致を犠牲にしてまでも、阻止しなければならない。

 その唯一の方法と見ている野党候補の一本化でもある。安倍晋三の危険極まりない右翼国家主義を念頭に置かない批判は、その国家主義を野放しにしかねない逆の危険性を抱えることになって、有益な意味は何もない。


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