中国の北朝鮮の権力世襲反対に対して日本が為すべきこと

2010-02-24 07:42:42 | Weblog

   

《世襲反対・核放棄…核実験後、中国が北朝鮮に圧力》asahi.com/2010年2月23日3時1分)

 記事が伝えていることは第一に、北朝鮮は昨2009年5月上旬、ジョンウン氏後継指名説明のため、金総書記の義弟張成沢(チャン・ソンテク)・国防委員を中国に派遣。5月25日になって北朝鮮は2006年10月に続いて2回目の地下核実験を実施、世界から批判が集まる中、核実験直後の5月末、その事情説明のため張成沢国防委員が再度訪中したということ。

 対して中国は政府首脳ではなく、共産党対外連絡部の王家瑞部長が対応、「改革開放の推進、世襲反対、核放棄」の3項目を要請。

 記事はこのことを、〈友好関係にある北朝鮮に対し、内政干渉につながる要求をするのは異例で、北朝鮮の核保有や、悪化する経済への中国側の強い危機感を示したものとみられる。〉と解説している。

 と同時に中国は3項目の要請が口先だけではないことを示すためだろう、政府高官や代表団の北朝鮮派遣を中止、企業や大学が受け入れていた北朝鮮の研究者や職員の一部を退去させる措置に出たという。

 さらに中国メディアに「これ以上危険な火遊びをするな」(人民日報系の環球時報)などといった北朝鮮批判の記事が現れた。中国メディアは政府の意思の代弁機関となっている。北京の北朝鮮関係者は「これまでにない中国側の強い反発だった」と明かしたという。

 第二に、中国のこのような動きに6月10日、北朝鮮は金正日総書記の三男ジョンウン氏を張氏を中心とした軍訪問団に同行させた。動向の目的を、「ジョンウン氏自身が訪中することで、世襲に反対する中国側に後継者として認知してもらい、核実験にも理解を求めたかったのだろう」とみる中国共産党関係者の声を記事は伝えている。

 軍訪問団は北朝鮮の核問題をめぐる6者協議への復帰を示唆、外資誘致に積極姿勢をみせるなどの態度軟化の姿勢を見せたということで、記事はこの態度軟化を、〈最大の貿易相手国、援助国である中国の圧力だった可能性がある。〉と解説しているが、「ジョンウン氏自身が訪中することで、世襲に反対する中国側に後継者として認知してもらい、核実験にも理解を求めたかったのだろう」と見る共産党関係者の声を伝えている。

 いわば世襲は北朝鮮にとっては譲れない項目なのは誰の目にも明らかで、世襲を認めさせる交換条件としての態度軟化、6者協議復帰の示唆、外資誘致積極姿勢だと見ているというわけである。

 最後に記事は中国の圧力の効果とその効果の今後の推移に言及している。

 〈その後、高官の往来が復活する。中国側は戴秉国(タイ・ピンクオ)・国務委員や温家宝(ウェン・チアパオ)首相らが相次いで訪朝して金総書記と会談。戴氏の訪朝の際は、中国から北朝鮮への石油パイプラインを止めて圧力をかけた結果、「6者協議を含む多国間協議を行う用意がある」との言葉を引き出した。

 改革開放政策に対する北朝鮮の姿勢にも、否定的だった従来と比べ変化がみられるようになった。昨年12月、経済特区がある中ロ国境に近い羅先市を視察した金総書記が対外貿易の積極拡大を指示。今年1月20日には外資誘致のため国家開発銀行の設立を発表した。

 中国が要請している金総書記の訪中が実現した場合、核放棄や改革開放政策にどう言及するかが注目される。〉――

 但し中国が最終的に「世襲」に関してどのようなイエス・ノーの態度を示したかは記事からは窺うことはできない。権力の世襲が北朝鮮にとっては絶対的に譲れない項目だと百も承知の上で6者協議への復帰を認めさせる交換条件とした「世襲反対」だった可能性も疑うことができる。

 また、中国は「世襲反対」を一度は示すことで、中国としては反対だという姿勢を世界に向けてアピールすることができる。何しろ北朝鮮に関しては権力の世襲継承が体制の考え得る最も安定した移行措置となるだろうから。そこに破綻が生じた場合の混乱は予想を超えた障害とならない保証はない。

 いわば「世襲反対」は取引材料としての表向きの態度でしかなかった疑いである。

 では、日本としてはどういう態度を取るべきだろうか。

 中国が北朝鮮に対して「改革開放の推進、世襲反対、核放棄」の3項目を要請したことは新聞が報道する前に日本の外務省は既に把握していたろうし、把握していなければならないから、把握した時点で公表して、中国がこれまで「内政干渉」の口実を武器に自国やミャンマー等の内政や人権問題への介入に反対してきたタテマエからすると記事が指摘していたように北朝鮮に対する「世襲反対」はそのタテマエに反する内政干渉に相当する介入となるから、逆にそれを正当化して国民を飢餓や餓死に陥れる、あるいは国民の人権や自由を抑圧する如何なる国の“内政”に対しても国際社会はその是正を求める干渉をし得ることのルール化に利用すべきではないだろうか。

 またHPやブログに何度でも書いてきたことだが、北朝鮮の権力の父子世襲継承は日本にとって拉致問題をより解決困難とさせる。世襲継承の正統性を失わないために継承者は権力を与えた者を常に絶対的存在、英雄と扱うことを絶対義務としなければならないため、拉致解決は絶対的存在、英雄としていた者の化けの皮を剥ぐ危険性を孕み、それが自己権力の正統性を失わせる危険性につながる恐れから、永遠の国家機密とするだろうからである。

 日本は中国の北朝鮮に対する「世襲反対」に同調及び便乗して、「中国と供に世襲に反対」と北朝鮮に圧力をかけると同時に、それを取引材料として、前のブログで書いたように真相を問わない、首謀者を誰か問わないを条件に拉致被害者の全員帰国を求めることが日本の為すべきことではないだろうか。

 権力の世襲が北朝鮮にとって絶対的に譲れないは誰の目にも明らかだと書いたが、それが軍部のクーデターといった内部からの波乱による世襲の消滅といった事態は予想できたとしても、少なくとも外部からは防ぐことができない問題であるなら、世襲を単に傍観するのでは余りにも策がなさ過ぎる。


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