菅首相はメドベージェフ大統領の「私が自らロシア領土への訪問を決定した」にどう反論したのだろうか

2010-11-14 09:16:39 | Weblog

 朝7時(2010年11月14日)のNHKニュースを見ていたなら、日ロ首脳会談を取り上げていた。国会で野党から中国、ロシアとの首脳会談が実現した場合、中国に対しては尖閣諸島が、ロシアに対しては北方四島がそれぞれに日本固有の領土だと主張するのかと問い詰められて、最初は主張するとははっきりと明言しなかったが、しつこく追及されると、最後には主張するのは当然のことだと如くのことを言っていたから、どう持ち出すのか興味を持っていた。

 主張するのかどうかの野党からの追及は菅首相の特に領土問題に関わる外交姿勢が信用されていないことの証明でもある。信用されない姿を自らつくってしまった。

 ニュースは菅首相がロシアのメドベージェフ大統領に「国民感情からも受け入れられない」といったことを主張したことに対して、「私が自らロシア領土への訪問を決定した」とするメドベージェフ大統領の発言を伝えていた。

 このメドベージェフ大統領の主張に対して菅首相はどう反論したのか、ニュースは何も伝えなかった。反論したが、ニュースが伝えなかったのか、反論しなかったから、伝えようがなかったのかは分からない。

 NHKのWEBサイトにアクセスして記事を探した。《中ロと平行線 菅外交試練続く》NHK/10年11月14日 5時14分)

 記事は最初にたった20分か何がしかの日中首脳会談を取り上げて、両首脳が両国の利益を拡大する「戦略的互恵関係」は重要だという認識で一致したということを書き、その上で菅総首相が、〈中国漁船による衝突事件が起きた尖閣諸島について「日本固有の領土であり、東シナ海に領土問題は存在しない」という日本の立場を伝えた〉のに対して、〈胡錦涛国家主席からも、尖閣諸島をめぐる中国側の立場が表明され、議論は平行線に終わ〉ったと会談の内情を明かしている。

 次の日ロ首脳会談でも菅首相は北方領土は日本固有の領土であると取り上げたとしている。

 菅首相「大統領の北方領土訪問は、国民感情からも受け入れられない」

 メドベージェフ大統領「私が自らロシア領土への訪問を決定した」

 メドベージェフ大統領は菅首相の、北方領土は日本固有の領土とする主張と「大統領の北方領土訪問は、国民感情からも受け入れられない」に対して、「私が自らロシア領土への訪問を決定した」と反論した。当然その反論に対して菅首相の反論はあって然るべきだが、ニュースも記事も何ら触れていない。

 記事は平行線で終わったこととしているが、メドベージェフ大統領は菅首相の主張を受けて、「私が自らロシア領土への訪問を決定した」と発言することで、北方四島はロシア領土だと断言した。ここで何ら反論しなかった場合、メドベージェフ大統領の「私が自らロシア領土への訪問を決定した」とする主張が最終結論と看做され、菅首相の最初の北方領土は日本固有の領土の主張も、「大統領の北方領土訪問は、国民感情からも受け入れられない」の主張も無力化することになる。

 なぜなら、メドベージェフ大統領の「私が自らロシア領土への訪問を決定した」とする主張に対して菅首相は黙したことになるからだ。相手の主張に対して黙した場合、相手の主張を認めたと看做されるはずだ。

 ここは譲って記事どおりに平行線を辿ったことにしたとしても、何ら反論しないままの平行線ということなら、双方の主張を並立させることになるから、くどいようだが、日本は北方領土は日本固有の領土であるを、ロシアはロシア領土であるを譲らないことになって、現状維持の容認となる。

 だが、返還されないままの状況が続くという現状維持なる姿は日本にとっては決して認めることはできないはずだ。

 つまり、菅首相は平行線に終わることは許されない立場で会談に臨まなければならなかったし、臨むべきであった。だが、何ら反論しなかったということなら、現在ある現状維持をなおのこと現状維持に任せたことになる。

 尖閣諸島の場合も同じであろう。菅首相が「日本固有の領土であり、東シナ海に領土問題は存在しない」としたのに対して、胡錦涛主席は中国側の立場を表明した、いわば「釣魚諸島は中国固有の領土である」を表明して、記事は平行線に終わることになったとしているが、このことはそのままこれまでと同様に現状維持を容認したと言うことであろう。

 尖閣諸島の場合は日本が実効支配しているからいいものの、中国との間で尖閣諸島を挟んだ外交問題を引きずることになる。

 問題はやはり胡錦涛主席が菅首相の主張を受けて中国側の立場を表明したとき、菅首相がどう反論したかである。菅首相が最初に言い出して、相手の言い分に何ら反論できずに黙ってしまったなら、菅首相自身は自分ではそうではないと思っていたとしても、相手の言い分を認めたことになる。少なくとも心理的にはそういった構図を取る。

 日ロ外相会談でも同じことが言える。《日ロ外相会談 日本の立場主張》NHK/2010年11月13日 19時43分)

 記事冒頭。〈さきにメドベージェフ大統領が訪問した北方領土は日本固有の領土だという日本の立場を重ねて主張したうえで、外相同士の信頼関係を深めながら、双方が受け入れ可能な解決策を探っていくことで一致〉したと書いている。

 平行線を辿る現状容認を続ける限り、「双方が受け入れ可能な解決策」は幻想と化す。

 先ずは信頼関係を確認し合った上で、〈前原外務大臣は、さきにロシアのメドベージェフ大統領が国後島を訪れたことについて、日本の国民感情を傷つけたなどとしたうえで、北方領土は日本固有の領土であるという日本側の基本的な立場を強調しました。〉

 〈ラブロフ外相は、大統領の訪問は国内問題だなどとして、ロシア側の原則的な立場を示し、北方領土をめぐる双方の意見はかみ合いませんでした。〉――

 ラブロフ外相は「国内問題」、いわば北方四島はロシア領土だと位置づけた。あるいはロシアの主権の及ぶ範囲だとした。これは単に〈双方の意見はかみ合いませんでした。〉とすることができる問題ではないはずである。

 そうすることが日ロ首脳会談同様にそのまま平行線――即ち現状維持とすることになるからだ。

 前原外相はラブロフ外相が大統領の訪問は国内問題だとしたとき、何か反論したのだろうか。双方が原則を述べ合ったところで終わりにしたのだろうか。

 菅首相と前原外相がロシア側の主張にどう反論したのか、野党は追及すべきだろう。反論したかしなかったで、領土問題に対する姿勢、決意を推し量ることができるはずである。


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