安倍晋三の拉致問題は「安倍内閣で必ず解決する決意」の「決意」と自負のニセモノ性を総裁選討論会に見る

2018-09-16 12:31:58 | Weblog
 
 
 自民党総裁選立候補者討論会が2018年9月14日に日本記者クラブで行われ、拉致問題についての議論もマスコミが記事にしていた。2013年4月5日の当ブログ記事《安倍晋三の「拉致はこの内閣で解決」は拉致解決の実態に反映しない踊る言葉と化している - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》で取り上げた安倍晋三の発言を質問者が問題にしていて、それに対する安倍晋三の発言を伝えていたから、興味を惹かれてその発言の妥当性を以下の記事から確かめてみることにした。

 《自民党総裁選討論会・第2部》NHK NEWS WEB/2018年9月14日)

 質問者「(森友・加計問題や北方四島問題に於ける政治家の責任を問題にしてから)私の責任という意味ではね。今、石破さんにもお伺いしますけども、この拉致問題をどうするかという、安倍政権は一貫して拉致問題解決できるのは、安倍政権だけだと、そう言われてたわけですよね。

 一体どうなってるのか。もうこれはご家族の方も相当高齢になってるというところでその一体、現状はどうなってるのか、見通しはあるのか。ということをまず安倍さんにお伺いしたい」

 安倍晋三「拉致問題を解決できるのは、安倍政権だけだと私が言ったことはございません。これは、ご家族の皆さんがですね、そういう発言をされた方がおられることは承知をしておりますが。ですから私も大変大きな責任を感じております。

 あの2002年ですね、羽田に5人の被害者の方々が帰国をされて、家族の方と抱き合っていた。横田滋さん、早紀江さん滋さん会長を務めておられましたが、そこにおられた。しかし残念ながらそこにはめぐみさんの姿なかった、涙を流しておられた。なんとかですね、ご両親の手で子供たちを抱きしめる日を迎えたいと思ってずっとやってまいりました。そこで先般、米朝首脳会談が行われましたし。そして、そこで拉致問題について私の考え方、日本の考え方を金正恩委員長に伝えました。次は、私自身が金正恩委員長と向き合い、この問題を解決しなければならないと決意しています。もちろん相手があることでありますが、そう簡単ではありませんが、あらゆるチャンスを逃さずに…」

 質問者「進んでるんですか?」

 安倍晋三「これは、あらゆるチャンスを逃さずにそのチャンスをつかみたいと。こう思ってます。あの今、どういう交渉しているかということはもちろん申し上げれませんし、どういう接触をしてるかということも申し上げることはできませんが、あらゆるチャンスを逃さないという考え方のもとにですね、今申し上げた、決意のもとに進めていきたいと思ってます」

 質問者「石破さんならどうします?」

 石破茂「それは平壌に、日本の、東京に北朝鮮の、連絡事務所を置くところから始めなければいけないと思っています。つまりストックホルム合意で、北朝鮮がいろんなことを言ってきた。だけど、これは信用ならないということで無視することになっちゃったわけですね。それから足がかりは何もなくなっちゃった。

 で北朝鮮とアメリカが何で話をするに至ったかってのは、それは圧力が加わったからということもあるでしょうけど。中国の後ろ盾というのがはっきりした。アメリカまで届くミサイルの技術に自信を持ってる。核の小型化にも。

 拉致問題は日本の話なので、外国にお願いしてどうのこうのという話ではありません。そして外交交渉ですから、一つ一つ確認をしていかなければ前進はないのであって、向こうがいろんな情報を出す、じゃあそれは本当なのかということを日本として確認をしていかなきゃいかんでしょ。一つ一つ積み上げていって、お互いが連絡員事務所を持って、向こうも出す情報をきちんと日本国として確認をしていく、その末に、この解決はあるのだと思っています。

 着実にやっていかなければならないし、北朝鮮は北朝鮮として、体制の生き残りをかけて、ものすごく大きな絵を書いてるんです。我々として、それも念頭に置きながら、一つ一つ着実に少しずつ進んだね。その先に拉致問題の解決があるということは絶対に忘れてはならないことです。

 質問者「拉致問題ですね、一つ懸念していることがあるんですね。安倍さんは拉致被害者をですね、生きて全員奪還ということをずっとおっしゃっていたと思うんですね。ところが北朝鮮の言い分は、政府認定の拉致被害17人のうち、5人は蓮池さんたちで返したと。それから4人は未入国、8人は亡くなっているという、彼らは情報を出してます。で、それは多分一貫して変わっていないのかと思いますね。その事実認識の差がですね、埋めることをしなかった、埋める努力をしなかったのがですね、拉致問題がここまで長引かせてきた一つの要因だと思うんですが、そこで質問です。拉致問題のゴールがですね、安倍さんの頭の中の一体どこにあるのか。何が解決すれば、拉致問題の解決になるのか。安倍さんがずっと全員奪還、生きて奪還とおっしゃった中にですね、安倍さんとして本当に確証があったのかどうか。もしそれが不都合な真実が出てきたらですね、どういう責任をお取りになるのか教えてください。

 安倍晋三「埋める努力をしなかったとおっしゃいましたが、埋める努力というのは北朝鮮の言い分を私達が飲めと言うことなんですか」

 質問者「いや、違います。向こうの言い分も聞き、検証することです。相互に納得のいくような形で」

 安倍晋三「これは今検証するとこうおっしゃいましたね。つまり日本人を拉致したのは彼らです。一体どうやって何人拉致をしているかということは、全貌は私達は分からない。はっきりと認定できているのは、今言われた17人であります。そこで死亡したというですね、確証が、我々、彼らが出していないわけです。彼らが送ってきた遺骨は実は違った。であるならば政府としては、生きてるということを前提に交渉するのは当たり前じゃありませんか。私達がそうではないということを疑っていますということになればですね、彼らは自分たちが言ってる通りでしょうということになるわけであります。

 拉致問題を解決をするというのは、彼らがまさに実際に実行しているわけでありますから、それを正直に私たちを納得させるということに他ならないわけでありまして、これはまさに実行したのは彼らであって、拉致をされたのは日本側であります。その観点をですね、忘れては、まさに北朝鮮の思うつぼなんですよ。この思うつぼにはまってはならないわけでありまして、我々が死亡ということを確認できない以上は政府としてですね、生きているということを前提にですね、交渉しなければならない、これ当然のことなんだろうと思います。そういう観点に立って今交渉しているということであります」

 読みやすいように段落を適宜変えた。

 質問者が「安倍政権は一貫して拉致問題解決できるのは、安倍政権だけだと、そう言われてたわけですよね」と問うと、安倍晋三は「拉致問題を解決できるのは、安倍政権だけだと私が言ったことはございません」と否定している。

 安倍晋三は拉致の解決を言うとき、「安倍内閣で必ず解決する決意で拉致問題に取り組む」と、「決意」という単語を常に付け加えている。いわば「安倍内閣で必ず解決する」と断言することは避けて、決意表明にとどめている。「決意」にしておけば、断言して解決できなかった場合の責任回避の担保となり得るからだろう

 だが、「安倍内閣で必ず解決する決意で拉致問題に取り組む」を「安倍内閣で」と断った上で、「必ず」という言葉をつけて言う以上、単なる決意では終わらない、解決の"自負"を示したことになる。この"自負"は拉致を解決するのは安倍内閣を措いて他にないだろうとの自信の程度を示しているはずで、示していなければ、「必ず」という言葉は単に取ってつけた言葉と化すか、取り組む姿勢、あるいは取り組む自らの能力を宣伝するための言葉と化す。

  大体が自分ならできるという自負がなければ、如何なる決意も示すことはできない。このことを言い換えると、ホンモノの「決意」であるなら、ホンモノの自負という関係を取ることになるし、ニセモノの自負であるなら、ニセモノの「決意」という関係を取る。

 更に言うと、一国の首相が安倍内閣ならできるというそれ相応の自負に基づいて「決意」を掲げる以上は、当たり前のことだし、安倍晋三もそのように鋭意努力していると言うだろうが、それだけで終わらせるのではなく、その「決意」を拉致解決という具体的成果で応える責任履行を自負どおりに常に進行形で進めているはずだ。

 「決意」であって、約束ではなかったのだから、安倍内閣では解決できなかったという結末を迎えることになっても、万止むを得ないで済ましたなら、自らが自らの自負を裏切り、「決意」共々意味がなかったことにしてしまうことになる。

 また、進行形で進めたものの、自負どおりには具体的成果で応えることができなかった責任履行であるなら、責任履行そのものが空回りしたことになって、思った程の自負でもなく、立派に見えた「決意」は見かけ倒しと受け取られ、そういった点での能力の至らなさを国民に謝罪し、如何なる批判も甘んじる姿勢を前以って覚悟した上で「決意」を示さなければならないことになる。

 そしてこのような前以っての覚悟が自負を確かなものにしていく。

 但しそういった覚悟は責任履行が空回りし、「決意」が見掛け倒しで終わる危険性を常に孕んでいる関係性を前以って認識していることによって強い自負とすることができる。いわば具体的成果を簡単に上げることができない難しい問題であるなら、非常に謙虚な気持ちで「決意」を掲げなければならないし、自分ならできるという自負は心して用意することになる。

 いずれにしても安倍晋三はかねがね「安倍内閣で必ず解決する決意で拉致問題に取り組む」と、「安倍内閣で」と断りつつ、「解決する決意」を強い自負に基づいて国民の前に示した。となると、安倍晋三の拉致問題に関するこの言葉と質問者の「安倍政権は一貫して拉致問題解決できるのは、安倍政権だけだと、そう言われてたわけですよね」の発言は使っている言葉は違っても、自負の点で見ると、さして変わらない。

 だが、安倍晋三は言葉が示す自負の類似性には目を向けずに、「拉致問題を解決できるのは、安倍政権だけだと私が言ったことはございません」と言葉だけの解釈で否定した。

 もし安倍晋三が普段から口にしている「安倍内閣で必ず解決する決意で拉致問題に取り組む」の「決意」と自負がホンモノなら、「言葉は違っても、決意と自負という点では大きな違いはありません」と答えて、「決意」と自負に変わりはないことを示したはずだ。

 だが、そうしなかったのは「決意」と自負がホンモノではなく、ニセモノの疑いが出てくる。

 質問者が日朝間の拉致交渉で示された事実関係の検証を求めると、安倍晋三は「日本人を拉致したのは北朝鮮で、全貌は私達は分からない。実行者の北朝鮮が全貌を日本側に納得させるべきで、日本側には検証しなければならない義務はない」といった趣旨で質問に答えているが、安倍晋三が言っていることは拉致犯罪を取り調べる警察官の役目を拉致犯罪を犯した張本人である北朝鮮側に負わせ、日本政府は取り調べの責任を負ってはいないとする宣言となる。

 北朝鮮の一般人が犯した拉致犯罪なら、北朝鮮当局に事実関係の追及を任せる手も仕方がないが、北朝鮮当局、それも金正日が犯した拉致犯罪である。日本政府が警察の役目を負わずに北朝鮮に負わせた場合、事実解明はできないことは勿論、交渉に活かす材料さえ見い出すことは不可能となる。

 にも関わらず、北朝鮮任せとなっている。

 勿論、日本政府が警察の役目を負ったとしても、厳密な事実解明は不可能であっても、交渉に活かす材料の見い出し可能性は否定できない。

 安倍晋三の拉致問題に向き合う姿勢は最終的には日本の問題だと解決に於ける日本の主体性を口にしているものの、口先だけのことで、トランプに対して米朝首脳会談の機会を利用して金正恩に拉致問題の提起を頼んだことからも、警察の役目を北朝鮮に負わせていることからも、他人任せの部分が大きい。

 この他人任せからも、拉致問題の解決に向けた「決意」と自負はホンモノではなく、ニセモノの疑いが濃厚となる。


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