情報把握と分析能力を欠いた杜撰計画のハイチ支援

2010-01-21 10:47:22 | Weblog

  ――民主党に衆・参両院過半数のチャンスを与えよう――

《民主党に夏の参院選挙で勝利させて、衆・参両院とも過半数のチャンスを与え、民主党政治を存分に発揮できる活躍の場を提供してみてはどうだろうか――

 民主党は民主党政治を存分に発揮できる衆・参両院の過半数を求めて、国民に夏の参院選での勝利を訴えるべきではないだろうか――》


 自民党は1989年の参院選で社会党に大敗、プラス連合の会を向こうにまわして参議員過半数割れ、それ以後、自民党分裂を受けた1993年の第40回総選挙でも過半数割れ、9カ月足らず野党に転落の歴史を抱えているが、2007年7月の参院選で民主党に敗れるまで戦後ほぼ一貫して、衆・参とも過半数を維持、自民党政治を恣(ほしいまま)とするチャンスを独占してきた。

 次は民主党にも衆・参過半数のチャンスを与えて、衆・参過半数下の民主党政治がどう展開されるか、じっくりと眺めてみるのもアリではないだろうか。

 防衛省が地震被害のハイチへ自衛隊医療部隊を派遣することを決定、北澤防衛大臣が20日午後に部隊の派遣命令を出したと「NHK」記事――《ハイチへ 自衛隊部隊派遣命令》が伝えている。

 医官や看護師などおよそ100人規模の編成だそうだ。今日21日の夜に日本を出発し、先に派遣した国際援助隊・医療チームと同様にアメリカのフロリダから自衛隊のC130輸送機で被災地入りするという。派遣場所も国際援助隊・医療チームと同じハイチ首都・ポルトープランスから約40キロのレオガン市。

 但し派遣人数は国際援助隊・医療チームの24名に対して100人規模と桁違いに多くなっている。国際援助隊・医療チームは外務省の職員も含まれているから、医師・看護師は20名前後といったところではないだろうか。自衛隊医療部隊も治療施設周辺の治安の役目を担うとしたら、100名が100名とも医療従事者と限らないかもしれない。

 記事は日本政府は〈さきに派遣したJICA・国際協力機構などの医療チームに加え、新たな支援を検討してき〉たと、政府はさも引き続いての計画であったように思わせているが、「NHK」記事――《日本の緊急援助隊 活動開始》(10年1月19日 6時59分) は、「地震発生から5日たって容体が悪化する負傷者が増えており、医療活動は難航して」いること、「持ち込んだ機材や医薬品では症状の重い患者に十分な治療を施せない」と医師の言葉を通して先遣隊の進捗困難な治療状況を伝えているが、そういった連絡が外務省にも入ったはずで、満足な医療体制が取れていないことに加えて国際援助隊・医療チームの派遣が他国に遅れたことで国としての評価を上げにくい懸念から、緊急に増員の必要に迫られ、それが20名前後から100名前後の桁違いに多い自衛隊医療部隊の派遣の決定となったといったところではないだろうか。

 少なくもと最初から必要としていたはずだが、必要とは考えずに24名で済ませ、100名の自衛隊医療部隊の派遣とはならなかった。

 地震発生は日本時間の13日午前7時前だが、気象庁なり外務省なりにその情報が連絡されるのは地震発生からそれ程時間が経過してからではないだろうし、あるいはアメリカのマスメディアがいち早くキャッチできたはずで、各国の支局に連絡する過程で日本のマスメディアにもその情報が早い時間に入ったはずで、事実「asahi.com」記事が「2010年1月13日12時52分」という地震発生当日の昼の時点で、マグニチュード7.0という地震の規模の大きさと、〈大統領官邸や国会議事堂をはじめとする官公庁やホテル、病院などが軒並み倒壊し、一部が炎上。多数の死傷者が出ている。〉という書き方で被害が首都に集中していること、さらに数千人の生き埋めの可能性を伝えているし、翌昼前の「2010年1月14日11時50分」「asahi.com」記事が、ハイチ首相の〈倒壊した建物の範囲からの推計として死者数が「10万人を優に上回る」とCNNに語った〉こと、米政府の話として、首都ポルトープランスの空港管制塔の機能喪失とそのことによる輸送機が離着陸不明状態、港の桟橋の損壊による支援物資の陸揚げに支障が生じていること、刑務所の倒壊による受刑者の脱走、そして13日の世界銀行の予想として地震の被害額が「少なくともハイチの国内総生産の15%分に達するのではないか」とする発表を伝えていることから、ハイチが中南米最貧国ということなら、その国内総生産の15%分の被害がどれ程に甚大か想像できる情報としなければならなかったはずである。

 さらに同記事は世銀が1億ドルの緊急支援を行うと発表、国連も1千万ドルを拠出すると表明したことを伝えているし、日本政府も翌14日に500万ドル(約4億5900万円)を上限とする無償資金の緊急支援を発表しているが、世銀の1億ドルと国連の1千万ドルから割り出した500万ドルといったところだと思うが、それぞれの金額が建物や道路といった物的被害のみならず、物的被害に対応した人的被害の程度を表しているはずだから、金額からも地震被害の規模を情報として解読しなければならなかったはずである。

 さらに同じ「2010年1月14日」午後「14時5分」「asahi.com」記事は国際救援隊27チームがハイチ入りしたことと中国の救援チームが13日夜、現地に向け出発したことを伝えている。

 合わせて28チームの国際救援隊が迅速な行動に出たということはその時点までのハイチ首相の死者数が「10万人を優に上回る」やその他の情報と合わせて、そのまま人的被害の甚大さを物語っていたはずである。地震発生日本時間の13日午前7時前から左程遅くない時間から岡田外務大臣が国際援助隊・医療チーム派遣の発表を行った1月15日までの約2日間にマグニチュード7.0という地震規模の大きさの情報と外務省なりに直接入ってくる情報、マスコミが伝える各種情報等々から、日本政府は被害の全体像をかなり大幅に把握できていたはずであるし、把握していなければならなかったはずである。

 各自が把握した情報を詳細に議論・検討した成果が国際援助隊・医療チーム24名、実質20名前後の派遣決定となって現れたということなのだろう。

 国際援助隊・医療チーム24名派遣の発表は地震発生日本時間の13日午前7時前から約2日経過した1月15日。情報分析に費やすには飽きる程に十分な2日間だったに違いない。医療チームは16日夜に成田空港を出発、マイアミ経由で17日午後1時(日本時間18日午前3時)過ぎ、航空自衛隊のC130輸送機でハイチの首都ポルトープランスの空港に到着、治療地レオガンは首都から40キロのところだと言うから、道路事情や準備時間を考慮すると、18日からの治療開始ではなかっただろうか。

 そして治療開始後たった2日後の1月20日午後、北澤防衛大臣が自衛隊医療部隊の派遣命令。最初の24名、実質20名前後の編成から桁違いに多い自衛隊医療部隊の100名前後の編成から探ることができる情報は最初の実質20名前後の人数不足を補って挽回するためと同時に諸々の地震情報・被害情報を駆使、詳細に議論・検討して最初の優れた決定を下した先見の明を補って帳消しとするために100名前後という桁違いの大人数を必要としたということではないだろうかということである。

 いわば現状不適合の中途半端な計画・決定の欠陥を隠し、補って体裁をそれとなく整えるための後付の場当たり的・応急的な追加措置が100名という人数に表れたということではないだろうかということである。

 その証拠として挙げることができるのは最初に派遣された医療チームの「国際緊急援助隊が持ち込んだ機材や医薬品では症状の重い患者に十分な治療を施せない」という言葉である。医師・看護師の人数もさることながら、より高度な医療器材とより重症用の医薬品を必要としていることが窺えるが、そうであるにも関わらず、24名前後を補う100名前後にウエイトを置いた派遣となっているところに場当たり的・応急的な追加措置の気配を否応もなしに感じ取ってしまう。

 このことは最初に派遣された医療チーム自体にも言えることではないだろうか。「地震発生から5日たって容体が悪化する負傷者が増えており、医療活動は難航」していると言っているが、マグニチュード7.0の巨大地震発生の情報に接した時点で救助や治療は時間との戦いとなるであろうという予想を派遣の前提としていなければならないはずで、前提としていたなら、現地入りが遅れた分、ごく当然の予定事項としなければならない事態であって、最初から覚悟しなければならなかった状況であるにも関わらず、覚悟していなかった発言となっているところを見ると、最初の計画・決定からして場当たり的・応急的であったままを引きずって現地入りしたからではないだろうか。

 被害の状況を迅速且つより正確に把握した計画・決定であったなら、それ相応の迅速さとそれ相応の人数とそれ相応の機材と医薬品とそれ相応の覚悟を備えた派遣と、そういった内容に応じた迅速な現地入りとなっただろうから、「地震発生から5日たって」云々の言葉は生じなかったはずである。

 その逆の場当たり的・応急的計画・決定であったからこそ、「地震発生から5日たって」となった。

 また医者なのだから、「持ち込んだ機材や医薬品」がどの程度までの症状に役立つか、前以て既定事実としていなければならない知識であろう。地震発生の場合の既定事実としなければならない何を必要とするかのパターン(ニーズパターン)に従った的確な判断からも、「持ち込んだ機材や医薬品」で十分治療が可能と考えたから、「持ち込んだ」のであって、それが役に立たないということなら、現地入りした医者も含めて派遣を計画・決定した者たちの情報把握能力のお粗末さを嘆くしかない。

 ハイキング目的で軽装で標高の高い山に出かけた結果、予期しない天候悪化で遭難状況に陥ったといったところではないのか。想定可能としなければならないパターンとしてある事態を想定できなかった杜撰なスケジュールで派遣決定をしたとしか思えない。

 このほかにも場当たり的・応急的計画・決定であったことの証明を挙げることができる。

 ハイチに対して国際機関を通じて500万ドル(約4億5900万円)を上限とする無償資金を緊急支援することとテントや浄水器など3000万円相当の緊急援助物資を提供することを日本政府は決定したが、外務省幹部はこの決定を、「他国にひけをとらないぐらいの額はかき集めた」asahi.com)ものだと言っている。

 また民主党政府が海上自衛隊による8年間のインド洋での給油支援活動に代えてアフガニスタンへの民生支援として拠出を閣議決定した5年で50億ドルという金額に関しても、外務省幹部は「補給支援をやめることを理解してもらうには、この程度の額が必要」(別asahi.com)だとして算出したものだとしている。

 いわばハイチにしてもアフガンにしても、何が必要なのか、様々な情報を可能な限り集めて、そこから具体的必要性を勘案して弾き出した具体的な金額ではなく、ハイチの場合は、先に世銀の1億ドルと国連の1千万ドルから割り出した日本政府の500万ドルといったところだと書いたが、多分基準としたのだろう、ほかの拠出支援金との辻褄合わせで、アフガンの場合は補給支援停止との辻褄合わせで捻り出した、やはり場当たり的・応急的な金額算出だと分かる。そして政治家側がそれを了とした。

 このような場当たり的・応急的な予算編成しかできない官僚と政治家がハイチ地震を受けて迅速な援助活動をできなかったとしても不思議はない。

 上記場当たり的・応急的例からすると、最初の医療チーム24名派遣も各種情報を迅速に収集、的確に把握・分析して具体的必要性を勘案、計画立て決定したものではなく、この程度で他国の派遣と較べて遜色ないだろうと他国の派遣と辻褄を合わせる形で決定した派遣ではなかったろうか。

 情報把握能力と分析能力にすべてがかかっているが、迅速な行動がなかったことからすると、これらを欠いていた見られても、仕方はあるまい。


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