麻生が入場してきて、着席する。
司会「先生方、お集まり頂きまして誠に有難うございます。これより、両院議員による懇談会を開催させて頂きたいと思います。ご承知のとおり、総理は本日衆議院を解散し、8月18日公示、8月30日投票で、衆議員選挙を履行されます。つきましては、麻生総理、より、今後の国政の運営に臨む基本方針をお聞きし、率直な意見交換を通じて、自由民主党の結束と総選挙必勝への態勢を強固にしたいと考えておりますので、よろしくお願いを申し上げます。(拍手)
それでは先ず細田幹事長より、ご挨拶をお願い申し上げます」
細田(なぜかいつもカマキリを思い出してしまう。声を大きくして喋る)「皆様、お早うございます。先程お話がございましたように、えー、麻生内閣は本日、解散を閣議で決定致しました。そして、午後1時の本会議に於きまして、えー、正式に衆議院は解散されるわけであります。そうして、午後の閣議によりまして、日程が確定するわけでありますが、8月30日の投票日に向けて、あと40日間の戦いとなることが内定しているわけでございます。
思えば4年前、今まで我々の任期1千4百十日を、を――、かけて、色々な法案、成立に努力して参りました。郵政民営化の実際の、おー、手続きを進め、勿論法律も通した上で、民営化が着々と進んでいるほか、教育基本法も改正し、そうして憲法改正手続法を制定し、あるいは健康保険法も、おー、改正し、その他各議員の各位のご努力・まご研鑽によりまして、様々な法案・法令が、条例が、成立いたしているわけでございます。
えー、海外に於ける日本の海賊対策でありますとか、あるいはアフガンの、給油活動にしましても、おー、そうでございますし、このほか、北朝鮮のミサイル、核開発等、非常に日本の安全保障を脅かす、問題等々、山積しているわけでございます。そして、このような大変なときに、えー、解散、解散が行われるわけでございますから、あー、残念ながら、国民世論がですね、えー、我が自由民主党の実績を、評価するのみでなく、これに対する、ま、批判も高めているわけでございます。内容的に今、それぞれに申し上げることは、控えますが、(控えずに具体的に申し上げたら、滅入ってしまうだろう。)やっぱり、もうちょっと、行政改革が足りないんじゃないか、政治改革が足ら、たりないんじゃないのか、あー、政策的な面で、ええ、医療・年金等、社会保障改革、もっとやってくれ。そういう、この経済危機の中で、大きな要請が出ているわけであります。(国民目線だ、安心・安全を守る、安心実現社会などと言いながら、国民生活の面で不足があったと自己暴露している。いわば政権政党としての体を成していなかった。)それが大きく国民世論としても、おー、動いているわけでございます。
しかし、我々は政権政党として、自公連立政権を確立し、そうして、先程申し上げたような、各種の法案をつくり上げ、そして政権を運営し、景気回復のため、全力を上げている。その姿は、私は、みなさま方のお陰であると、思いますし、そして麻生総理を先頭にですね、これからも頑張っていかなければならないものと、考えております。何卒よろしくお願い申し上げ、冒頭のご挨拶とさせていただきます。(より一段と声を張り上げ)本日は誠に有難うございます。よろしくお願い申し上げます」
(国民生活にどのようなメリットを与えたのか、利益となったのかの中味を問わずに、したという行為の表面的事実だけを並べ立て、事実の中味となる実際を言わない。為したことの表面だけをいう態度はハコモノ主義だからだろう。法律や政策の形だけを評価するハコモノ主義からきている。
私が言う「ハコモノ主義」とは、つくった法律や建築物等の見栄え、豪華な外観、カネのかけ具合等のみを評価の対象とし、国民の精神面をも含めた生活向上、文化の向上等に貢献する中味・精神は評価の対象としない、名前や表面の形だけで価値づけることを言う。)
司会「細田幹事長、有難うございました。それでは次に私共自由民主党総裁、麻生太郎総裁、お願いいたします」
麻生太郎「本日、衆議院をー、解散しー、総選挙にィー、臨むに当たりましてー、私のー、決意とー、覚悟をー、申し述べさせていただきたいと存じます。
(言葉に中味がないから、表面的な言葉遣いに気取りを入れる。言ったことは実行する、実行できないことは言わないという誠実な姿勢、それが信頼感を生むのであって、麻生にはそれがゼロに等しいから、勢い言葉遣いを飾り立てる。ことさら低音にして重々しさを演出、ことさら語尾を伸ばして、さも説得力があるかのように装う。中味のない外観のみの飾り立てだから、結果、重々しさは相手に伝わりようがない。)
先ずー、冒頭ー、反省とー、お詫びをー、申し上げなければならないと存じます。一つはー、私のー、個人についてであります。(最初、「故人」と言ったように聞こえた。総選挙の結果、総理・総裁でなくなるから、自分のことを「故人」と言ったのだと。)私のー、発言やー、またー、ぶれた、と、言われる言葉がー、国民のー、方々にー、政治に対する不安、不信を与えー、結果としてー、自由民主党のー、支持率の低下にー、つながった。深く反省を致しております。(頭を下げる)
(麻生は狡猾にも「ぶれた発言」とは言っていない。「ぶれた、と、言われる言葉」と言っている。他人が(多分マスコミが)そう言っている「言葉」として位置づけている。自分は記者会見のたびに「ぶれてはいません、言っていることはいつでも同じです」とぶれを否定しているのと同様に、ここでも「ぶれ」を否定しているのである。)
もう一つは、地方選挙についてであります。東京ー、都議選始めー、一連のー、地方選挙に於きまして、我々はー、多くの党員・党友始め、支援者の方々にー、多大なお力添えをー、頂きながらー、残念ながらー、所期の目的を果たせませんでした。残念ながらー、多くの方々にー、多大のー、ご迷惑をー、かけることになった。ここに改めて、お詫びを申し上げる次第であります。
(この会場に集まっている議員は麻生に迷惑をかけられた実際の犠牲者とはまだなっていないから、後付の謝罪であっても、痛もみも痒みも実感としてさして感じないかもしれないが、都議選で落選の憂き目を味わわされた、特に古手の自民都議は後付の謝罪などは役には立たない、「多大のご迷惑をかけることになった」の一言で謝られても失った地位は戻りはしないと、腹の腸(わた)が煮えくり返る思いであろうが、自民党に籍を置く利害から言うと、自民党に総選挙を勝ってもらわなければ、次の都議選も危ないことになる。麻生の無責任を言い立てるばかりでいるわけにはいかず、痛し痒しといったところだろう。
麻生から言うと、こういった落選都議たちの複雑な心情を理解できるだけの理解力は持ち合わせていなかった。例え地方選挙であっても、麻生の人気・不人気が影響することを心得なければならないにも関わらず、「国政と地方選挙とは異なる」と逃げることができたのも、当事者たちへの影響を心底考えることができなかったからだろう。国政のみならず、地方選挙にも影響する程にも責任が重いのだという自覚がないから、当事者たちへの影響も地方選挙は国政とは異なると逃げることもできた。麻生にあったのは、地方選挙敗北によって蒙らざるを得ない自己に向けられる責任論のみで、それを避けるために国政と地方選挙を別物に仕立てたのだろう。しかも語尾をことさらに伸ばして言葉遣いをカッコーよく見せる気取りを忘れない方向に意識を重点的に用いた中での謝罪なのだから、どの程度の謝罪か、分かろうと言うものである。)
私にー、対する評価や、またー、自由ー民主党内のー、結束の乱れが、よくないー、影響を与えたことは否めないと存じます。党内をー、纏め、切れなかったー、私のー、力不足について、申し上げなく(ママ)思っているところであります。
(「思っているところであります」は行為の現在進行形を示す言葉であろう。ちょうど今「思っている」という意味になるはずである。いわばかねてから「思っていた」わけではないことになる。かねてから「力不足について、申し上げたいと思ってい」たなら、「思っているところであります」などと言うはずはない。「力不足について、申し上げ」なければなりませんと直截に反省の気持を前面に出すに違いない。気持ちが籠もっていないから、「申し上げたく思っているところであります」と言うところを「申し上げなく思っているところであります」と間違える。多分、「申し上げなければなりません」と言うべく予定していたのが、そう言ってしまうと「力不足」を認めることになる、心底「力不足」だなどとは思っていないから、急遽変えて、「申し上げなく思っているところであります」と、現在のところは思っているという現在進行家の形にしてしまったのではないのか。
悪いのは麻生という政治家の能力を理解できない国民であり、自民党内の反麻生勢力の面々ということなのだろう。)
これらのー、選挙でもー、示されましたー、国民のー、気持、民意、批判、我々はそれを紳士に受け止めー、謙虚に反省しー、出直さなければならないと、決意を新たに致しております。(そうだの声と拍手)
私はー、本日ー、衆議院を解散してー、有権者のー、みなさま方にー、その信をー、問いたいと存じます。問われるべきはー、日本を守る。そしてー、国民のー、生活を守る。その責任を果たす。それにふさわしいー、政党はー、どの党か。そのー、政治のー、責任をー、明らかにするために、で、あります。
私はー、昨年9月のー、にじゅー2日、第23代自由民主党ー、総裁にー、選任をしていただきました。そのときに前後してー、アメリカ発世界同時不況がー、起きております。日本もー、そのー、枠外ではー、ありませんでした。私はー、政局より、政策、解散・総選挙よりはー、経済対策・景気対策。そう確信してー、このー、半年あまりの間にー、4度のー、予算編成をー、行いました。
お陰様でー、その成果がー、少しずつではありますけどもー、見えつつあります。しかし、まだ道半ばであります。小企業ー、小規模企業ー、またー、雇用の問題、我々には、まだまだ解決しなければならない問題がー、残っております。
経済対策、一本でー、これまでー、やってきたー、私としましてはー、経済ー、回復、景気ー、回復が、確かなものになるまで、総理・総裁の職務をー、投げ出すことはできません。全治3年とー、申し上げました。私はー、景気ー、最優先、必ずー、日本の景気をー、回復させます。
(かねがね言っている、「日本の景気は底を打った」とする評価とは違う。要するに自己の景気政策を誇るときは「景気は底を打った」とし、職務の継続性を訴えるときは、成果は少しで、景気政策は「まだ道半ば」とする、ご都合主義からの使い分けではないだろうか。)
もう一つ。重要なー、政治の責任はー、安心社会の実現であります。私たちのー、生活は、私たちの周りはー、雇用、またー、老後、医療、年金、子育て、多くのー、不安、いうものにー、我々は囲まれております。私が目指すー、安心社会は、子どもにー、夢を、若者に希望をー、そしてー、高齢者には安心を、であります。雇用に不安のない社会。老後にー、安心が持てるー、社会。子どもと、幸運に育てることが安心してできる社会。それを実現するための政策をー、獲得します。
(「多くの不安いうものに我々は囲まれて」いるから、「雇用に不安のない社会。老後にー、安心が持てるー、社会。子どもと、幸運に育てることが安心してできる社会」を目指すと言っているが、麻生が言っている“安心社会”はすべて現実社会を裏返した「社会」に過ぎない。いわば自民党政治が実現できなかった「社会」の実現を自民党政治が訴えているという倒錯した構図を取っている。
いわば一見、不安のない“安心社会”を目指すんだ、それが国政を担う者の責任だと言っているふうに聞こえるが、国民の多くが各種不安に囲まれることとなったのは自民党政治の成果としてある現在ある不安状況のはずなのだから、実際は「安心社会の実現」という「政治の責任」を自民党政治は果たしてこなかった。そして麻生はそのような自民党政治の重要な一翼を担ってきた共犯者でありながら、どこが間違っていたのか総括も謝罪もせずに隠して、「安心社会の実現」を言っているに過ぎない。戦前、戦争遂行の積極的な協力者でありながら、戦後自己総括もせずに戦争のない日本を訴えるのと同じく、選挙のためという自己利害からの狡猾な“安心社会”追求にしか見えない。)
行過ぎた、市場原理主義からは、決別します。社会保障予算のー、無理な削減はやめます。さらにー、徹底したー、行政改革であります。国会議員の削減、公務員の削減、天下り・渡りの廃止。行政のー、ムダをー、根絶しなければなりません。官僚のー、特権はー、許しません。同時にー、自由民主党の、改革もー、疎かにすることはできないと存じます。
国民からー、厳しい目をー、向けられておりますー、いわゆる国会議員の、世襲ー、候補者につきましても、特別扱いはしません。総裁としてー、党改革実行本部のー、方針を踏まえ、党とー、国会のー、改革をー、進めて参ります。
(ここで麻生が言っていることのすべての横行を自民党は許し、野放しにしてきた。昨日今日始まったことではなく、自民党が結党以来少ずつ育んできて、にっちもさっちもいかなくなった弊害であろう。許し、野放しにしてきた弊害だから、現在も横行している。見逃してきた責任を言わないのは、国民の目が厳しくなって弊害の是正に動かないと選挙に不利な条件となるから、是正が単に選挙必要上の便宜的性格のものだからだろう。
また「行過ぎた、市場原理主義から」の「決別」は、すべての悪を「行過ぎた市場原理主義」に置き換えて、自民党政治の悪に免罪を与えることで、加担してきた麻生自身の悪をも免罪しようとする意図からの「決別」に過ぎないだろう。)
民主党はー、政権交代をー、主張しておられます。しかし、景気対策、福祉の財源、安全保障対策、政策。いずれも取ってもー、自民党に反対するだけで、具体的な政策が見えません。(「そうだ」の声)
財源を伴わない空理空論。こういった者に日本の経済は任せることはできません。まて、また、安全保障政策のー、まとまっていない政党に、日本の安全保障を委ねるなどと言うことは、断固できません。
(巨額の赤字国債で財源を補い、先進国の中でも最悪の財政赤字とした自民党政治に財源云々する資格はない。いわば自民党政治は「財源を伴」った実理実論だと言いたいだろうが、その財源の多くが赤字国債等の借金で賄っているなら、空理空論と五十歩百歩で、健全な国家経営とは決して言えない。)
日本の未来っ、というものに責任を持ってー、取り組める政党ー、それは私が信じる自由民主党だけであります。今回のー、総選挙はー、どの党が、責任を持って、日本のー、未来、というものを、判断し、そして運営していけるか、それにふさわしい政党なのか、それを国民に選んで頂く、大切な機会であります。
(少なくとも現時点での世論調査を通じた国民の判断は「日本の未来っ、というものに責任を持ってー、取り組める政党ー、それは」麻生太郎が「信じる自由民主党」ではなく、「信じ」ないと言っている民主党となっている。麻生太郎のこの評価の隔たりを日本を総理大臣として統治し、国民の安心安全を言うなら、自ら説明すべきだが、説明する責任さえ果たさない。そんな総理大臣にこそ、日本を任せるわけにはいかない。「日本の未来」にしても任せられない。)
自由民主党はー、真の、保守党です。私たちはー、理念のもとに、集まった同志であります。(背後の壁を左右振返る。)ここに国旗が掲げてありますが、当然のこととしてー、国旗を掲げている政党がどこにありますか。
(「真の保守党」の象徴として「国旗」を持ち出したのだろうか。「保守党」なのは国民の多くが知っていることなのだから、唐突に「保守党」を持ち出した印象が強く、何のためなのか、真意を測りかねる。「国旗を掲げている」から、立派な政党だとは限らない。
大体が保守の人間、特に国家主義者たちは日の丸に日本民族優越性を象徴させている。麻生にしても「「一文化、一文明、一民族、一言語の国は日本のほかにはない」と日本民族を優越的に把えている自民族優越主義者だから、日の丸をただの国の国旗ではない、優れた民族である日本という国の国旗――民族優越の象徴をそこに置いているに違いない。
と言うことなら、自由民主党が唯一の「国旗を掲げている政党」だとしても、それを以て立派とは言えないどころか、逆に愚かしい自慢に過ぎなくなる。
日の丸が世界の中の日本という狭い範囲に限った象徴ではなく、自由とか人権、民主主義といった世界的に普遍的な価値観・理想を象徴し、それらを以って日本という国を代弁させる意匠としてあるなら、どの政党も「当然のこととして」掲げるだろう。
だが、如何せん、そうなってはいない。日本人の多くが日本民族の優越性を日の丸に置いている。少なくとも意識の底では日の丸に日本民族の優越性を見ている。そこから抜け出れないと、日の丸は当り前の国旗とはならないだろう。)
昭和30年11月ー、自由民主党がー、結党して以来、半年、半世紀あまりがー、経っております。この間ー、多くのー、危機、困難にー、我々はー、直面をしました。しかし、そのつど、総裁の下、一致団結してー、戦ってきたー、長い、歴史がー、自由民主党にはあります。(「そうだ」)
そしてー、自由民主党にはー、党内のー、自由、闊達な論議を大切にしております。しかし、一旦ー、結論が出た後は、一致団結してー、外と戦ってきたのが、我々の長い伝統ではなかったでしょうか。今こそ、今こそ、そのー、歴史とー、伝統にー、培った力強さ、我々は実践してみようじゃありませんか。
(総理・総裁が自ら「一致団結」を何度も言わなければならない状況は党組織に一致団結がなく、不一致混乱していることを物語っていて、その裏返しとしてある要請なのは間違いないが、最初に「党内を纏め切れなかった力不足」に自ら言及しているものの、実際には「力不足」だと認識していないことからすると矛盾する「一致団結」の要請となる。その矛盾にも気づいていない麻生太郎といったところなのだろう。)
途轍もない自由民主党の底力を、目立つと共に発揮して、このー、国難、このー、難しい局面を、みなさま方のー、先頭に立って、立ち向かう。必ずー、これをー、戦い抜いてみせるー、決意を申し上げ、みなさま方のご理解をご協力を、お願い申し上げます」
司会「麻生総裁、力強い決意のご開陳、本当に有難うございました。それでは意見交換に移らせて頂きたいと思います。発現のある方は挙手をして頂きたいと思います。ええー、順次、こちらから、指名をさせて頂きます」
両院議員懇談会議論の欺瞞を暴く(2)に続く
両院議員懇談会の動画を「日テレNEWS24」からダウンロードして文字に起こしてみた。テレビ各局のニュースで所々見ていて、みんないい加減なことを言っているなと思ったから、その発言の一部始終を点検したくなった。感想は( )青文字で途中途中に入れてみた。
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