昨日11月10日(2012年)、民主党は福岡市で政権公約=マニフェストの進捗状況、反省点説明の報告会を開催、野田首相が出席した。出席者から質問が出た場合、自ら答えるというわけである。
余談になるが、福岡市での視察後、昼食時にラーメン店に立ち寄って豚骨ラーメンを食したという。
野田首相「ビールとギョーザがあるといいよね」(時事ドットコム)
ツイッターに次のように投稿した。
〈ニート・非正規雇用の若者は朝昼晩のカップラーメンに、「うまいなあ」と満足し、野田首相は博多豚骨ラーメンに舌鼓を打って満足する。さらに「ビールとギョーザがあるといいよね」と欲張ることができる。〉
最後の「欲張ることができる」は最初「欲張る」と書いたが、この記事で、「欲張ることができる」と書き直した。
「MSN産経」記事によると、出席者数は党関係者の話として、党員・サポーターに動員をかけていて、約160人。うち党員・サポーターは約120人。引き算して、一般市民は約40人に過ぎなかったと伝えている。
野田内閣支持率に相応しい人数ということなのか。約160人のうち一般市民約40人出席は25%の出席率。各新聞社の野田内閣支持率の平均を取ると、25%前後ではないのか。中には20%を切った世論調査もある。
今更マニフェストの進捗状況、反省点の説明を受けたとしても仕方がない、遅過ぎるというわけなのだろう。
亭主の浮気の謝罪・弁解の類いを奥さんが聞くのはまだ期待をかける気持が残っているからだ。奥さんが聞く耳を持たなくなったなら、期待する気持が一切失せて、亭主に対する思いが冷え切ってしまっているからだろう。
野田内閣不支持の70%前後が最早謝罪・弁解の類いを聞いても仕方がないと気持を冷え切らせていると考えることもできるはずだ。
出席者(政権公約にはなかった消費税率の引き上げに取り組んだ理由について)「野田総理大臣はもっと丁寧に説明してほしい」
野田首相「国が作った多くの借金は将来世代のつけになる。選挙のことを考えれば消費税率を上げないほうがよかったかもしれないが、次の世代のことを本気で考えている政党だと理解してほしい」(NHK NEWS WEB)
野田首相「できたもの、できなかったものがあることを率直に認める。
(次期衆院選マニフェストは)反省しながら、より現実感のある、精度の高い、約束が守れる内容のものをつくりあげたい。奇策はない。国民が納得できるマニフェストをもう一回掲げて戦っていく」(時事ドットコム)
「選挙のことを考えれば消費税率を上げないほうがよかったかもしれないが、次の世代のことを本気で考えている政党だと理解してほしい」云々は、党利党略の利己主義に走ることを拒絶、断固国家・国民を考えた政治行動だと、自身の国と国民に対する誠実さを訴えた物言いであろう。
だとしても、野田内閣支持率が示している聞く耳を持たない70%前後の国民には「次の世代のことを本気で考えている政党だ」といった野田首相の誠実さはストレートには届かないことになる。
悲しい事実だとしか言いようがない。
野田首相が8月8日(2012年)、消費税法案を成立させるために自公と「近いうちに国民の信を問う」と取引しながら、取引に反して「近いうちに」が3カ月も実行しない状態が続いていることに対して安倍自民党総裁その他が「ウソつき」呼ばわりの非難で対抗。
この非難に対して――
前原(11月9日記者会見)「首相は極めて誠実で、自分の言ったことは約束を守る方だと確信している」(スポニチ)
安住「野田佳彦首相は誠実な人柄。輿石東幹事長も意外といい人だ。約束は守る」(時事ドットコム)
野田首相を支持しない多くの国民は野田首相のどこをどう突いて、「誠実」などという人格を引き出したのかと疑うだろうが、野田首相自身も自分のことを誠実だと自認しているのと呼応するかのように前原も安住も野田首相を誠実な人間だと最大限評価している。
三人が三人共、野田首相の中に誠実という人格の確固たる存在を信じているのである。
野田首相は2011年8月29日実施の民主党代表選当日立候補演説で、消費税という言葉を直接使っていないが、次のように触れている。
野田代表候補者「白アリ退治、行政刷新会議を通じての戦いを進めてまいりました。気を抜くと、働きアリが収めた、その税金に白アリがたかる構図は、気を抜くとまた出てきます。私は引き続き行政刷新担当大臣を専任大臣として行政改革を推進をするべきだと思います。
先ずは隗より始めよ。議員定数の削減、そして公務員定数、あるいは公務員人件費の削減、それはみなさんにお約束したこと。全力で闘っていこうじゃありませんか。
それでも、どうしてもおカネが足りないときには、国民にご負担をお願いすることがあるかもしれません」――
「議員定数の削減、そして公務員定数、あるいは公務員人件費の削減」はマニフェストで国民に「お約束したこと」だから、先ずは「お約束したこと」を「お約束した」通りに実現させてから、「それでも、どうしてもおカネが足りないときには、国民にご負担をお願いすることがあるかもしれません」と、最後の最後に消費税をお願いしなければならないと「お約束」した。
そして「お約束」したとおりに、「議員定数の削減、そして公務員定数、あるいは公務員人件費の削減」を不退転の覚悟で実現させ、それでもおカネが足りなかったから、「お約束した」通りに次の手段として消費税増税法を成立させる誠実さを貫徹させた。
こうすることによってこそ、自分の国民に対する「お約束」を「お約束した」通りに守ったことになる誠実さの絶対発露ということになる。
こういった経緯を踏んでいたからこそ、前原も安住も野田首相のことを誠実な人と最大限に評価したのだろう。
野田首相はマニフェストに書いてない消費税増税を常々マニフェスト違反ではないと公言してきた。
野田首相「衆院議員の任期中に消費税を引き上げるのではなく、現在の衆院任期終了後だから、公約違反ではない」
だが、消費税増税を決めたのは衆院議員任期中である。
公約違反でないと信念していたからだろう、消費税増税法案が8月10日、参院で成立したことを受けた後の記者会見で次のように発言している。
野田首相「消費税を引き上げるということ、国民の皆様に御負担をお願いするということは、2009年の総選挙で私ども民主党は勝利をさせていただきましたけれども、そのときのマニフェストには明記してございません。記載しておりませんでした。このことについては、深く国民の皆様にこの機会を利用してお詫びをさせていただきたいと思います」――
公約違反だったという趣旨の発言である。
一貫した態度を取ることによって誠実さは維持される。公約違反ではないと散々に強弁、信念していたことに反して公約違反だったと謝罪することが野田首相的には徹底的に一貫した態度だということである。
かくして野田首相の誠実さは維持された。その誠実さは確固不動の人格となっているからに違いない。
そして冒頭触れた11月10日の福岡市で開催したマニフェスト進捗状況、反省点説明報告会。
野田首相「国が作った多くの借金は将来世代のつけになる。選挙のことを考えれば消費税率を上げないほうがよかったかもしれないが、次の世代のことを本気で考えている政党だと理解してほしい」(NHK NEWS WEB)
「次の世代のことを本気で考え」た誠実さがなさしめた消費税増税だと理解を求めている。
8月10日、消費税増税法成立、2014年4月1日8%、2015年10月1日10%増税の決定は野田首相の誠実さの大産物だと言うこともできる。
あるいは野田首相の誠実さの塊だとも表現可能であろう。2014年4月1日8%、2015年10月1日10%の消費税増税には野田首相の誠実さがギュウギュウに詰まっている。
だが、消費税増税法2012年8月10日成立から最初の増税2014年4月1日8%施行まで、1年7ヶ月半も期間がある。
一度ブログに取り上げたが、日本で最初に消費税を導入した竹下内閣の場合、1988年(昭和63年)12月24日、消費税導入を柱とする税制改革法案を成立させ、翌年の1989年(平成元年)4月1日から消費税を導入している。
いわば消費税法成立から導入まで要した日数は3ヶ月と7日のみである。
法律成立から3ヶ月やそこらで導入できるとしたら、2009年マニフェストで衆院任期4年間は消費税は増税しないと国民と契約したとおりの約束を守り、2013年8月29日任期満了を待ってからの解散であったとしても、自民党は2010年参院選のマニフェストに消費税増税「当面10%」を謳っていたし、公明党にしても、必ずしも反対ではなかっただろうから、同じように消費税増税を掲げて選挙を戦わざるを得なかっただろうし、政権が決まってから消費税増税成立でも、3ヶ月やそこら日数がかかったとしても、2014年4月1日8%導入まで、竹下導入時とほぼ同じとなる3カ月の準備期間を取ることができる。
こういった選択肢を取ることも野田首相のこれまでの誠実さとは異なる、もう一つの誠実さの提示となったはずである。
あるいは最低、2009年マニフェストには書いてなかったからと、2011年9月2日野田内閣発足からそう遠くないうちに解散、マニフェストに堂々と消費税増税を謳ってから、それを争点に選挙を戦っても、どの政党が政権を取ろうと、消費税増税は既定事実として成立したはずだから、そうすることももう一つの誠実さの表現となったはずだ。
だが、野田首相は2009年マニフェストに書いてない消費税増税法を成立させる誠実さを選択した。
代表選挙では、「議員定数の削減、そして公務員定数、あるいは公務員人件費の削減、それはみなさんにお約束したこと。全力で闘っていこうじゃありませんか。
それでも、どうしてもおカネが足りないときには、国民にご負担をお願いすることがあるかもしれません」と、消費税増税は最後の最後です、先ずは政治が身を切ります、痛み伴う改革が最初ですと優先順位付けを行う誠実さを示し、「お約束した」通りに早速消費税増税にとりかかる次なる誠実さの発揮、消費税増税法が成立するまで、「衆院議員の任期中に消費税を引き上げるのではなく、現在の衆院任期終了後だから、公約違反ではない」とする信念ある誠実さを貫き、成立すると、成立したその日に「マニフェストには明記してございません。記載しておりませんでした。このことについては、深く国民の皆様にこの機会を利用してお詫びをさせていただきたいと思います」と、態度豹変の誠実さを見せ、11月10日のマニフェストの進捗状況、反省点説明報告会では、消費税増税は「次の世代のことを本気で考え」た誠実さの提示だと、誠実さという美徳に関して常に一貫性ある態度を維持した。
豚骨ラーメンも野田首相の誠実さが求めた食欲だったのだろう。
世の中と同様に政治の世界でも誠実さの表現は色々とある。
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