菅前首相の「政権は4年単位で評価」を鳩山元首相辞任のときになぜ言わなかったのか

2011-11-22 09:52:54 | Weblog

 《菅前首相、政権は4年単位で評価を》(MSN産経/2011.11.21 22:44)

 記事はこのことを菅前首相の直接の発言としては伝えていない。〈民主党の菅直人前首相は21日夜、都内で開かれた民主党国会議員のパーティーであいさつし、政権の成果を衆院の任期で評価してほしいと述べた。〉と解説で紹介している。

 直接の発言は――

 菅前首相「私を含む最初の2年は問題提起をして方向性は出せた。それが一つひとつ動いている」

 そして結びの解説。〈菅政権は、最後は与党内からも「居座り」という批判を浴びて短命に終わった。野田佳彦首相が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)や社会保障と税の一体改革の課題に取り組んでいるのは菅政権の成果だと暗に訴えることで、汚名を返上したいとの思いがあったとみられる。〉云々となっている。

 「政権は4年単位で評価」は菅前首相の元々の持論である。2011年8月26日の首相記者会見でも、イギリスの内閣制を例に取って、次のように自らの持論を述べている。

 菅首相「私は日本もやはり、せめて衆議院の任期の4年は、政権交代があったときには同じ首相で続けていくことが、ある意味国民的な、あるいは政治社会における慣習となっていくことが望ましい、このように考えております」

 国会答弁でも同じ訴えを行なっている。2010年11月8日の衆院予算委員会。

 菅首相「わたし自身どこまで頑張りきれるか分からないが、物事が進んでいる限りは石にかじりついても頑張りたい。

 政権を担当したら4年間の衆院の任期を一つのめどとして一方の政党が頑張ってみる。4年後に(衆院)解散・総選挙で継続するかしないか国民の信を問うという考え方がこれから政治的な慣例になっていくことが望ましい」・・・・

 4年間政権を担当しなければ、本当の実力は発揮できないと言いたかったのだろう。

 菅前首相は「MSN産経」記事で「私を含む最初の2年は問題提起をして方向性は出せた。それが一つひとつ動いている」と、9ヶ月弱の鳩山政権を含めた菅政権の成果だと誇っている。

 だが、社会保障と税の改革にしても、先進国で最悪の財政の再建問題にしても、景気回復問題にしても、その解決策の一方法としての消費税増税問題にしても、すべてが早急に解決が迫られている国の緊急課題であるのだから、どの党が政権を担当しようとも、「問題提起をして方向性」を出さなければならない諸問題であった。

 また、問題提起とその方向性提示を初期段階の成果としたなら、当然、「一つひとつ動いてい」くことになる。

 TPP参加問題にしても、民主党同様に自民党にも賛成派と反対派がせめぎ合っている。自民党が政権を奪回したなら、国が進むべき方向として民意を図りつつ参加か否かを決めるだろう。

 ということは、例え「一つひとつ動いている」ことになったとしても、「問題提起をして方向性」を出すことは成果とは言えないことになる。

 勿論、最終的な結果として獲得した成果ではないからだ。挫折や骨抜き、変質ということもある。最終的な結果を以てして、成果かどうかが評価される。「問題提起をして方向性」を出し、「それが一つひとつ動いている」としても、あくまでも中途過程に於ける初期的成果であって、最終的な成果とは言えない。

 菅前首相が成果だとしている問題提起とその方向性提示はどの党が政権を担当しようとも取り組まなければならない事柄であり、成果と見做していることにしても中途過程に於ける初期的成果に過ぎず、最終結果ではないことからすると、民主党であろうと自民党であろうと、何よりも要求される肝心な場面は提起した問題を提示した方向性そのままに的確・有効に決着づけること(=結論・結果を出すこと)であり、求められる能力は決着づける実行能力ということになる。

 勿論、政策を的確・有効に実現させ、役立つ結果を得るには強力なリーダーシップ(=指導力)をも必要とする。

 いわば政治家の評価はリーダーシップ(=指導力)や政策実行能力によって計られるべきで、衆院任期の4年間で計られるべきではないことになる。衆院任期の4年間はリーダーシップ(=指導力)や政策実行能力についてまわる結果としなければならないはずだ。

 首相としての政権担当の前提はあくまでもリーダーシップ(=指導力)や政策実行能力であり、衆院任期4年間は前提ではないということである。

 当然、衆院任期4年間を首相任期とする前提を持ち出してはならないことになる。この前提を許したなら、首相が無能であっても、国のカジを4年間も任せなければならないことになる。

 大体が菅前首相の衆院4年間の任期を同時に首相の任期とするという“衆院4年間首相任期説”は無能と批判されたことに対抗して自己正当化のために持ち出した、後付けの都合主義からのこじつけに過ぎないはずだ。

 そうではなく、最初から真に“衆院4年間首相任期説”に立っていたなら、鳩山元首相が母親からの多額の資金提供と個人献金虚偽記載問題、さらに普天間移設問題で日米関係を悪化させ、国内に混乱を生じせしめて辞任を表明したとき、「政権は4年単位で評価されるべき」だと、なぜ辞任を思いとどまらせなかったのか。

 なぜ、「政権交代があったときには同じ首相で続けていくことが望ましい」と慰留しなかったのだろうか。

 母親からの資金提供のカネは素性が怪しいとわけではなかったし、個人献金虚偽記載問題にしても公設秘書が独断でやったとしている以上、“衆院4年間首相任期説”に立って擁護して然るべきだった。

 だが、“衆院4年間首相任期説”を一度も打ち出さなかった。打ち出していたなら、情報となって公に知られたはずである。

 自分のときだけ機会あるごとに持ち出した。

 鳩山元首相が何よりも問題とされた点は普天間移設問題で象徴的に現れた、普天間移設問題だけで済ますわけにはいかない指導力のなさ、政策実行能力の欠如であったろう。

 このような欠点が衆院任期4年間を第一番にフイにさせた理由であるはずだ。

 菅前首相の場合は何よりも東日本大震災と福島原発事故に対して復旧・復興の諸政策の遅れをもたらすこととなった指導力のなさ、政策実行能力の欠如が問題となる。

 このことが致命的となって、持論に反して衆院任期4年間を待たずに放り投げることとなった。そもそもからして問題の置きどころが間違っている。基本の資質とすべき合理的判断能力を最初から欠いているからだろう。

 菅首相のリーダーシップ(=指導力)と政策実行能力の欠如は今もって大震災と原発事故対応、その他に災いをもたらしている。《全国知事会議、政権に対する批判や注文続出》MSN産経/2011.11.21 19:46)

 野田政権になって初の全国知事会議だそうだが、11月21日(2011年)に首相官邸で開催された。記事は、〈東日本大震災からの復興対策の遅れなどをめぐり、全国の知事から政権に対する注文が相次いだ。〉と書いている。

 知事1「国を挙げて放射能対策をしているといえるのか」

 知事2(社会保障と税の一体改革や来年度から導入される拡充児童手当について)「国と地方の協議が遅すぎるし、拡充児童手当については協議すら行われていない」

 延期されていたが、今月行われた福島・宮城被災2県の県議選で民主党が改選前議席を割り込んだ原因も、菅首相政治能力発端の復旧・復興の遅れがアダとなっているはずである。
 
 リーダーシップ(=指導力)も政策実行能力も見るべきものがない、無能そのものの政治家でありながら、衆院任期の4年間が終わるまでやらせるべきだと言う。

 だが、鳩山元首相辞任のときは口を閉ざしていた。

 これを以て盗っ人猛々しいと称する。


コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2011年9月4日放送「そこまで... | トップ | 一川保夫防衛相のワンチュク... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
wasting time (noga)
2011-11-24 00:28:15
こと普天間基地の問題においては、政治指導者も住民も ‘安全’ などに心配していないのであろう。もし、両者が事態を深刻に捉えているならば、日本人にも分離の決着はできる。福島原発とその付近に住む住民の場合がそれである。
心ここにあらずして口先だけでものを言えば、10年でも100年でも膠着状態が続く。日本人は、この種の時間の無駄を避けられないものであると捉えているようだ。議論下手の歌詠み上手がわが国民の天性なのか。

http://www11.ocn.ne.jp/~noga1213/
http://page.cafe.ocn.ne.jp/profile/terasima/diary/200812


返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Weblog」カテゴリの最新記事