【国家主義】「国家をすべてに優先する至高の存在、あるいは目標と考え、個人の権利・自由をこれに従属させる思想」(『大辞林』三省堂)
右翼の軍国主義者安倍晋三が如何に国家主義者であるかを見てみる。
安倍晋三は天皇主義者である。天皇主義者であることこそ、国家主義者の何よりの証明となる。天皇主義とは天皇を至高の存在として国家の中心に据える思想を言う。
安倍晋三「日本では、天皇を縦糸にして歴史という長大なタペストリーが織られてきたのは事実だ」(自著『美しい国へ』)
安倍晋三「むしろ皇室の存在は日本の伝統と文化、そのものなんですよ。まあ、これは壮大な、ま、つづれ織、タペストリーだとするとですね、真ん中の糸は皇室だと思うんですね」(2012年5月20日放送「たかじんのそこまで言って委員会」)
戦前では通用する思想を戦後の民主義国家日本に於いても今以て引きずって日本国の中心に天皇を据え、国民の存在を天皇の下に置いている。
天皇は「日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴」(日本国憲法)であったとしても、その地位が「主権の存する日本国民の総意に基く」と日本国憲法が規定している以上、日本国の中心は国民であって、天皇ではない。国民の総意あっての象徴天皇とは国民の存在があってこその天皇の存在ということを意味しているからだ。
あくまでも国民は天皇の上に位置する。「国民主権」とはこのことを言うはずだ。
だが、右翼の軍国主義者安倍晋三は天皇の存在あってこその国民の存在としている。この関係性が「皇室の存在は日本の伝統と文化、そのもの」という言葉となって現れている。あるいは「真ん中の糸」という言葉で皇室を日本国の中心に据えることで、天皇の存在あってこその国民の存在とする関係性を提示している。
天皇を中心に据えた国の形の優先は「万世一系」への誇りにも現れているし、「2600年の歴史」だとか、「世界に類のない男系天皇」といった誇りの言葉からも見て取ることができる。
当然、このような天皇と国民の関係性は「自民党日本国憲法改正草案・前文」にも現れることになる。
〈日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴(いただ)く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。〉――
「天皇を戴く国家」とは天皇を国民の上に置く国家という意味である。当然、天皇の存在あってこその国民の存在という関係性を描くことになる。結果として、「国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される」と保障したとしても、「国民主権」は国民が上に戴くことになる天皇によって精神的な制約を課せられることになる。
右翼の軍国主義者や保守派政治家が「国柄」という言葉を好んで使うが、その言葉を使うとき、国家主義が現れる。
2013年3月15日のTPP交渉参加決定記者会見――
安倍晋三「最も大切な国益とは何か。日本には世界に誇るべき国柄があります。息を飲むほど美しい田園風景。日本には、朝早く起きて、汗を流して田畑を耕し、水を分かち合いながら五穀豊穣を祈る伝統があります。自助自立を基本としながら、不幸にして誰かが病に倒れれば村の人たちがみんなで助け合う農村文化。その中から生まれた世界に誇る国民皆保険制度を基礎とした社会保障制度。これらの国柄を私は断固として守ります」――
2013年3月17日自民党大会――
安倍晋三「国益とは麗しい日本の国柄だ。日本は古代より朝早く起きて田畑を耕し、病気の人が出ればみんなでコメを持ち寄って助け合った。ここから生まれた国民皆保険制度は断固として守る」――
日本の国柄こそが国益だと言っている。そして「国柄」とは安倍晋三の言葉から汲み取ると、日本古来からの伝統・文化が今に続いて発展の礎となっている国の形を言っているはずだ。
だが、この思想は国の形の優先(=国家優先)を旨としていて、国家あってこその国民の存在という国家主義を描いている。
もし国民優先であったなら、農村と農村生活者の現実にこそ視線を向け、少子高齢化、過疎化、後継者不足、耕作放棄による農地の荒廃等を問題にしたはずだ。当然、「息を飲むほど美しい田園風景」などといった言葉は出てこない。中身の生活が惨憺たる状況にあったなら、「美しい田園風景」はハコモノに過ぎない。
国家優先だから、「日本は古代より朝早く起きて田畑を耕し、病気の人が出ればみんなでコメを持ち寄って助け合った」と農村を美しく描くことで、そのような国家を美しいとする。
安倍晋三は国家優先・国民従属の国家主義者だから、伝統的な家族制度・伝統的な婚姻精度に拘り、伝統を断ち切った、時代に則した新しい家族のあり方、新しい結婚のあり方に拒絶反応を示して、制度の中身としてある個人の権利という幸福を無視することができる。
あくまでも昔からの形を重視する。昔からの国の形、昔からの家族の形、昔からの結婚の形・・・・というふうに形を重んじ、中身の個人を問題としない。国家主義者たる所以である。
離婚後300日以内に生まれた子は「前夫の子」と推定することを定めた民法772条の規定が離婚・再婚が当たり前となった現在、不合理な制度となっているにも関わらず、家族制度や婚姻制度の維持を口実にその見直しに忌避反応を示すのも、最終的には国家の形に拘り、国家の形に個人の権利を従属させて、その幸福を奪う国家主義から来ている忌避反応であろう。
安倍首相「(300日規定見直しは)婚姻制度そのものの根幹に関わることについて、いろんな議論がある。そこは慎重な議論が必要だ」――
右翼の軍国主義者安倍晋三の靖国神社参拝も国家主義に依拠している。
安倍晋三「国のために戦った方に尊敬の念を表することはリーダーの責務だ」――
どのような国家だったのか、国家の姿と国家の姿に制約された中身としての国民の在り様(ありよう)を問題とせずに「国のために戦った」と国家を優先させる思想は国民を国家に従属させる国家主義以外の何ものでもない。
国家主義が向かわせる靖国参拝と言うことができる。
大体が右翼の軍国主義者安倍晋三の景気政策であるアベノミクス自体が国家主義に立脚している。
大企業の経済を豊かにし、国家を富ませることを優先させて、その利益を国民に再分配することを次善とする優先順位は国家主義そのものであろう。だからこそ、非正規従業者の増加にも正規従業者と非正規従業者の所得格差にも目をつぶることができる。
国税庁の「2012年民間給与実態統計調査」によると、正規従業者平均給与467万6000円に対して非正規従業者168万円で、その格差は300万円近くにもなる。
総務省2013年11月12日公表の「労働力調査(詳細集計) 2013年7~9月期平均(速報)結果」は、役員を除く雇用者5205万人のうち,非正規の職員・従業員は1908万人、前年同期比79万人増加、四半期ごとに集計を開始した2002年1~3月期以降最多。正規の職員・従業員は3295万人、32万人減少となっていて、正規従業者の減少以上に非正規従業者が倍以上も増加し、雇用者に占める非正規従業員が 36.7%にものぼる年々増加の傾向は格差拡大の一途化を示しているはずだ。
国の形を重視し、国家を優先させる国家主義はこのような格差を無視できる。
国家を優先させ、その国家に国民を従属させる国家主義者である安倍晋三のリーダーシップのもと、特定秘密保護法案の成立が進められている。当然、特定秘密保護法は国家主義と同じ構造を取ることになる。「国民の知る権利」という国民にとっての利益よりも国家秘密を国家の優先利益とするということである。
いわば後者の国家利益に前者の国民利益を従属させることになる。このことは法案にも現れている「国民の知る権利」の軽視であろう。このような構造はときには国民の利益としてある「国民の知る権利」を軽視以上の犠牲へと持っていくことも起こり得る。
安倍晋三が国家主義主義者の立場を取っている以上、特定秘密保護法が制約することになる国家と国民の優先順位関係は変わることはないはずだ。
国民はその成立に心しなければならない。廃案が最善だが、国家主義の数の力に負けることになるだろう。
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