民主党政権日米同盟ガタガタ説は沖縄県民優先によるもの 安倍政権日米同盟強固説は日米同盟優先によるもの

2016-10-09 10:30:00 | 政治

 民進党新代表の蓮舫が国会で稲田朋美の過去の日本核保有論と子育て予算不要論を追及したところ、稲田朋美が民主党政権時代に日米同盟がガタガタとなったから、そういった議論が必要になったと民主党政権のせいにしている。

 その発言個所のみを「産経ニュース」から引用してみる。


 2016年10月5日午前の参院予算委員会 

 蓮舫「資料に付けましたが、平成23年3月の正論という雑誌で、稲田大臣は、子育て予算と防衛予算についてなんと発言されていますか」
 稲田朋美「資料を提出いただいているこの正論、これは、私が野党時代に、そして、民主党が政権を取っている時代に安全保障、防衛等の危機感を持って、対談のなかの一部でございますので、その一部のみを個人的見解をこの場で述べることは差し控えさせて頂きます」

 (協議)

 当時の民主党政権(ヤジ)関係あります。

 『日本列島は日本人だけのものではない』という方が総理大臣になられ、辺野古について、『最低でも県外・国外』と言われ、大混乱をし、そして、この対談をする数カ月前には、尖閣で中国の公船が衝突をして、大混乱になっているなかで、私は、その当時の民主党政権の安全保障、防衛に対して、大変危機感を持って、その点についてここで指摘をさせていただいている訳であります」

 (ヤジ)

 そういった野党時代、しかも民主党政権の安全保障、防衛に関する状況について、大変危機感を持って、このままでは日本はつぶれてしまうのではないか、そういったなかにおいて、私は財源のない子供手当を付けるぐらいであれば、軍事費を増やすべきではないかということを申し上げた訳であります」

 (ヤジ)(協議)

 先程答弁申し上げたように、そういった状況のなかで、子ども手当を付けるのであれば、防衛予算を増額すべきではないかということをこの場で指摘をしているということでございます」

 蓮舫「私は、今の防衛大臣のその姿勢に危機感を覚えます。あなたが、当時個人の判断として言った発言、今の総理の予算の姿勢と真逆です。何と発言したのか、まず読んでもらえますか」

 稲田朋美「要点は、今述べたとおりでありまして、私は長い対談のなかで、この部分だけを読むことは誤解を与え、適当ではないと考えます」

 (協議)

 この資料全て読みますか。どこを読むのでしょうか」

 (ヤジ:蓮舫氏「通告していますよ」)

 資料のなかのカッコ部分だけを読み上げさせていただきます。『今、防衛費は約4兆6800億円、22年度予算でGDPの1%以下です。民主党が21年衆院選で約束した子ども手当の満額にかかる約5兆5000億よりも少ない。この子ども手当分を防衛費にそっくり回せば、軍事費の国際水準に近づきます。自分の国を自分で守ることを選ぶのか、子供手当を選ぶのかという、国民に分かりやすい議論をすべきでしょうね」

 蓮舫「私は防衛予算の必要性は否定していないです。少しでも増やして、我が国の防衛を充実させたいという考え方には共鳴をします。ただ、子育て予算を全部そちらに加算をしろというこの考えは今もお持ちですか」

 稲田朋美「先程何度も指摘をしていますように、その当時、民主党の防衛、安全保障に大変危機感を持っておりました。そのなかで、マニフェストに掲げられた子ども手当等の財源も結局は見つからなかった。そういった状況のなかで、こういう発言をしたということです。

 私は、社会保障の政策、子育て政策、大変重要だと思っています。財源を見つけて、充実をさせていくべきであります。また、防衛についても安倍政権になってから、日米同盟は強固になっております。しかしながら、日本を取り巻く環境も厳しいなかで、しっかり我が国を守るための防衛は、質も量も万全を期さなければならないと思っています」

 蓮舫「政権が変われば、野党時代に言ったことは関係ないということでしょうか。同じ雑誌で、稲田大臣は、日本独自の核保有を単なる議論や精神論ではなく、国家戦略として検討すべきではないかとおっしゃっている。今もそう考えていますか」

 稲田朋美「同じ時の対談ですので、その当時の日本の安全保障、防衛に関する大変な危機感のもとで対談をしております。今、私は安倍内閣の防衛大臣として、非核三原則をしっかりと守り、唯一の被爆国として核のない世界を全力あげて実現するために、尽くしていく所存でございます」

 蓮舫「当時は、核保有を国家戦略として検討、いまは非核三原則を守る、なぜ変わったのですか」

 稲田朋美「安倍政権になって、かつてないほど、日米同盟も強固になっています。当時は日米同盟がガタガタで、憲法9条の有す必要最小限度の防衛力とは何かを議論しなければならないということでございます。私の核に関する見解については、先程述べたとおり、核のない世界を実現するために全力を尽くしてまいります」

 蓮舫「気持ちいいぐらいまでの変節ですね。これだけは、確認させてください。核保有という乱暴な言葉が一人歩きしてはいけないので、当時の発言は撤回してください」

 稲田朋美「現時点の私の考え方は、核のない世界を実現するために、全力を尽くすということでありますし、現在、核保有について全く考えていませんし、考えるべきでもないと思います」

 蓮舫「撤回しないということですね。そこにあなたのホンネがあるという誤解が一人歩きするのは残念、是非撤回した方が良いと思います」

 介護と育児の予算の質問に移る。

 「その当時の民主党政権の安全保障、防衛に対して、大変危機感を持って」いて、「このままでは日本はつぶれてしまうのではないか、そういったなかにおいて、私は財源のない子供手当を付けるぐらいであれば、軍事費を増やすべきではないかということを申し上げた」

 「子ども手当分を防衛費にそっくり回せば、軍事費の国際水準に近づく。自分の国を自分で守ることを選ぶのか、子供手当を選ぶのかという、国民に分かりやすい議論をすべきでしょうね」

 稲田朋美がここで言っていることは子ども手当か軍事費の国際水準並みの充足かの二者択一論であって、「子ども手当分を防衛費にそっくり回せば、軍事費の国際水準に近づく」と、子ども手当を切り捨ててゼロとし、その分の全てを軍事費に回せば国際水準並みにもっていくことができるとする後者選択の考えに立った発言ということになる。

 この考えには明らかに軍事優先の思想が宿っている。いくら民主党政権時代に日米同盟がガタガタになったとしても、子どもの生きて在る生命(いのち)のより良い生存に向けた政治的な務めは考えず、自衛隊の世界に於ける列強に伍した軍事的活動に向けた政治的な務めのみを頭に置いている。

 この軍事優先思想が排除の対象としているのは子どものより良い生存に対してだけではなく、常にこのことと深く関わっている大人の生存――いわば国民全般の生存に対してと見なければならない。

 軍事優先が行き過ぎると、北朝鮮を見るまでもなく、あるいは戦前の日本を顧みるまでもなく、国民の生存を圧迫する危険な要件として立ちはだかることになる。

 当然、稲田朋美が国民の利益を考えて言う「国民のために」という言葉は本心からのものではないと解釈しなければならない。

 安倍晋三も2016年9月26日召集の臨時国会冒頭の所信表明演説の中で日本の安全保障・国家防衛の主たる柱は軍事力のみではなく、一般的には軍事力に加えて外交力と情報化された知能を駆使・利用して様々な多方面に亘る産業を育てて国民生活を豊かにし、それを以て国の力とする経済力等のバランスの取れた総合力に置かなければならないにも関わらず、自衛隊を主として頭に置いて壇上から自衛隊員に対して「心からの敬意を表そう」と呼びかけ、椅子から起立した大勢の自民党議員と共に拍手してその任務を讃えた偏った姿にも軍事優先の思想の宿りを見ないわけにはいかない。

 軍事優先の安倍晋三の内閣に相応しい軍事優先思想の持ち主たる稲田朋美の防衛相という相互性なのだろう。

 稲田朋美は自身の日本核保有論は「安倍政権になって、かつてないほど、日米同盟も強固になった。当時は日米同盟がガタガタで」、そういった状況を背景として「憲法9条の有す必要最小限度の防衛力とは何かを議論しなければならなかった」必要性からの結論だとしている。

 だが、「日米同盟がガタガタ」となった当時の鳩山由紀夫首相は沖縄県民の気持に添うために米軍普天間飛行場の「最低でも県外・国外」への移設を唱えたのであって、その努力は外務省に妨害され、協力を得られず、結局は迷走することになったことが原因の日米同盟の弱体化であり、対して安倍政権の日米同盟の強固化は沖縄県民の意思を無視して日米同盟を優先させたことが原因となった一つの結末である。

 この前者・後者の関係に稲田朋美の子ども手当よりも国際水準並みの軍事費優先の関係を見ることができる。

 いわば軍事優先の思想が成さしめた安倍政権に於ける強固な日米同盟ということであろう。

 安倍晋三にしても民主党政権時代に日米同盟はガタガタになったと非難し、翻って安倍政権になり、日米同盟が強固になったと自身の外交政策を誇る頻繁に使う手としているが、内実はより良い国民の生存を無視した上に築いた軍事優先の日米同盟関係であって、国民主権の立場から言うと、決して褒めることはできない安倍晋三の外交成果に過ぎない。

 例え日米同盟がガタガタとなっても、沖縄の意思を優先させて普天間の辺野古移設に反対、普天間を沖縄から撤去せよとする国民は多い。

 このような考えに対して安倍晋三は4回の選挙に大勝したからと、安倍晋三の政策全てが国民の信任を得たかのように牽強付会している。

 国民にしても多くが安倍晋三が軍事優先の思想を持った国家主義者・復古主義者であることをそろそろ気づくべきだろう。

 蓮舫は稲田朋美がかつて日本核武装論を唱えながら、現在は防衛相として非核三原則の尊重と核のない世界実現への尽力を掲げていることに対して「気持ちいいぐらいまでの変節ですね」と言っている。

 自分では皮肉を効かしたつもりでいるのだろう。「核保有という乱暴な言葉が一人歩きしてはいけないので、当時の発言は撤回してください」と求めたのに対して撤回しないのだから、核保有論はホンネであって、非核三原則と核のない世界実現への尽力表明はタテマエに過ぎないということになる。

 当然、「変節」でも何でもない。ホンネはホンネとして維持しながら、国民の前ではなるべくそれを隠し、防衛相としての姿はタテマエで装おうと言うことなのだろう。

 アメリカ大統領候補のトランプが、「俺は美人が好きだ。美人以外は相手にしない。自分の会社に雇うのも美人だけで、美人でなければ雇わない。スレンダーで美人だからと雇った女が太ってかつての姿が見る影もなくなったら、クビだ。これが俺のホンネだ」としていながら、国民の前では「女性は美醜で判断しない。あくまで人柄・能力だ」と言ったとしたら、これを「変節」と言うだろうか。

 稲田朋美も然り、ホンネとタテマエの二重性を世渡りの優れた才能としているに過ぎない。

 蓮舫は稲田朋美が撤回しないと分かると、「そこにあなたのホンネがあるという誤解が一人歩きするのは残念、是非撤回した方が良いと思います」とこの件に関する追及を締め括っているが、ホンネはホンネとして自分の中にしまっておくために撤回しないのだから、ないホンネを在るが如くに解する「誤解」の範疇に入れることはできないし、また世間が誤解して、それが一人歩きするという意味で使っているのだから、稲田朋美を却って助けることになる。

 もし「一人歩き」するとしたら、稲田朋美のホンネは核保有論にある、核武装論にあるといった世間の評判か、非核三原則の尊重と核のない世界実現への尽力表明は防衛相を務め上げるためのタテマエに過ぎないと言った取り沙汰のいずれかであろう。

 どちらであっても稲田朋美という政治家の実体であって、「誤解」に当たるわけではないから、一人歩きしようが二人歩きしようが、当然の結末と見なければならない。

 言葉の使い方をそもそも間違っているから、追及が中途半端、あるいは尻切れトンボとなる。

 結果、国会論戦で目立った得点を上げることができないでいる。 

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